僕はボーナス加護で伸し上がりました

根鳥 泰造

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第一章 のんびり異世界ライフをおくれるんじゃなかったのか

1-1 僕の人生は最悪のままでした

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 前期試験が終わった七月末の今日、最後の試験が終わると直ぐ、水谷咲が嬉しそうに、遣って来た。
「篠崎君のお蔭で、試験もばっちりできたよ。お礼にカラオケに行かない」
 彼女は青山学院大学経済学部1Cクラスの同級生で、五月ごろから仲良く話すようになった。でもこれは、どう考えてもデートのお誘いだ。
「カラオケなんてずっと行ってないけど、勿論、いくよ。誘ってくれてありがとう」
 図書館で一緒に勉強できるだけでも幸せだったが、漸く僕にも青春の日々か訪れる。

 僕は今月二十歳になったばかりだが、十六歳になってからの大切な三年間は、不毛な日々を送ってしまった。
 中学までは公立で、運動は苦手だったが、頭だけは良く、それなりに楽しい毎日が遅れていた。
 だが、高校一年の時、僕の人生は大きく狂う事になった。開成高校に合格し、これで東大進学に向けて歩みだせると信じていたのだが、そこで僕は山際やまぎわ武の隣の席になり、友達になったことで、彼とその取り巻きから、虐めを受けることになったのだ。
 彼が得意だった将棋で、僕が勝ち続けたのが失敗で、その翌日から、体力を鍛えるためだという名目で苛めを受けた。暴力や陰湿ないじめではなく、本当に体力を鍛えるものだったが、荷物持ちさせられたり、おんぶして階段を上らされたり、授業中、椅子無しで空気椅子をさせられたりした。受け身の練習だと、プレハブ小屋の屋根から飛び降りろと言われて、捻挫もした。
 それで、問題になって、学校内でのいじめはしなくなったが、それからは悪質な虐めに変わって行った。万引きさせられたり、カラオケで全裸にされて、服を外に捨てられて放置されたり、駅の女子トイレに忍び込めと命令され、痴漢で駅員につかまって長時間説教されたりもした。
 それで僕は高校を中退し、ニートになってゲーム三昧の生活を送ることになった。
 だが、去年、このままではいけないと奮起し、高卒認定試験を受けて、大学受験したという訳た。
 皆より一つ年上になった上、受験勉強が遅れたので国立も早慶も合格できなかったが、それでも大学生になれた。最終学歴も中卒から大学卒になれそうで、彼女もできて、人生をやり直せる機会を得ることができた。

 水谷咲と渋谷のカラオケ店に向かって、雑談しながら歩いると、彼女が信じらない事を言い出した。
「明日、もし予定がないなら、プール行かない。お台場のヒルトン東京のプール入場券を二枚お父さんが貰って来たんだけど、一緒にどうかなって思って」
 カラオケに行けるだけでも、信じられないほど嬉しいのに、プールに誘ってきた。二人でプールに行くという事は、僕は彼女の恋人として認められていることになる。
「僕なんかでいいの」
「気乗りしないなら無理しなくてもいいや」
「嫌、行きたい。お願いですから、同伴させて下さい」
「仕方ないから、篠崎君で我慢してあげる」
 水谷咲は、美人というより可愛い感じの子だけど、胸はそれなりにありスタイルはいい。彼女のビキニ姿を想像すると、むくむくと息子が勝手に大きくなってしまった。

「篠崎じゃないか。引きこもってるとばかり思っていたが、女とデートとはな」
 カラオケ店に入ろうとすると、店から三人の大学生が出てきて、その一人が、僕を虐めた山際武だった。とんでもない男と出会ってしまった。
「この人、知り合い?」
「うん、高校の時の同級生」
「こいつ高一で中退したから、半年だけの同級生だけどな。俺、山際武。東京大学の二回生です。これからボーリングに行く予定だったんだけど、こんなヒッキーといないで、僕たちと一緒に遊ばない」
 水谷は、何も答えず、怖そうに震え、僕の背中をぎゅっと握りしめて来た。
「そんなに怖がらないでよ。嫌がる女性を無理やり誘うつもりはないからさ。そうだ面白い写真をみせてあげる」
 そう言って、山際は、スマホを取り出して、弄り始めた。
 僕は、何を見せようとしているかが直ぐに分かった。
「水谷さん、行こう」僕はさっさと立ち去ろうとしたが、山際は彼女の手を掴んだ。
「やめてください」
「写真をみていけよ。消してないはずなんだが……。あった」
 やはり、あの時の僕の全裸写真だった。身体にブラジャーを落書きされ、「包茎ウンチ君」と中央に大きく書いてあり、脇には、「変態」「M男」「アナル開発済み」とも書いてある。
 当時、仮性包茎で運動が苦手なのは本当だが、それ以外は嘘のでたらめだ。

 でも、彼女はそうは思わなかったらしい。
「最低。さっきの話、無しだから」 水谷はしっかり写真を見てから、そう言って走って逃げて帰ってしまった。
「俺にも見せてくれよ」
「ああ、沢山あるから笑ってやってくれ」
 彼の友達にもそれをみせていた。
 僕は、山際の事を殺したい程恨んだが、文句をいう勇気はなく、その場をすごすごと逃げ出す事しかできなかった。

 一人になると、水谷さんの携帯に電話したが、即切りされ、ラインをいれても既読にすらならなくなった。
 僕が高校を出ていないことも話していなかったので、完全に嫌われてしまったらしい。

 その日、僕はお酒は強くなかったのに、ヤケ酒をあおって、悪酔いして、渋谷の路地裏で嘔吐していた。
「キャイン、キャン、キャン」どこからか犬の悲鳴の様な鳴き声が聞こえて来た。
 僕は犬が虐められているのではと、急いでその声がした方に向かった。そこは袋小路になっていて、血の跡があり、その行き止まりで、OLらしき女性が背を向け、蹲っていた。
「大丈夫ですか」
「見てしまったのね」彼女は顔だけ振り向いて、こっちを向いて立ち上がった。
 ブラウスのボタンを全てはずしていて、ブラもしておらず、胸がちらりと見えていた。直ぐにボタンを締め始めたが、服には返り血のような血痕がついていた。

「坊や。何も見なかったことにしてくれる。いいことさせてあげるから」
 彼女は、バックから、薄手のウインドブレーカーを取り出して、真夏だというのに、それを羽織って血痕を隠し、僕の腕に胸を押し寄せる様に、抱き着いてきた。

 その瞬間、僕の理性は吹っ飛んでしまった。水谷咲にも振られ、絶望していたこともあるが、彼女に童貞を捨てさせてもらおうと、そんな謎の凶悪な女性の誘いに乗ってラブホテルに入ってしまったのだ。

 部屋に着くなり、「こっちを見ないでね」と彼女は服を脱ぎ始めた。
 僕は直ぐに背中を向けたが、「坊やも、裸になりなさい」と背後から声。
 言われた通りに、僕も服を脱ぎ、パンツ姿になったが、僕の心臓が激しく高鳴り、ビンビンに勃起していた。
「もういいよ」
 彼女が僕の背後から抱きつい来た。背中に彼女の乳房の感触がする。
 そのままお風呂場につれていかれ、そこで漸く向き合って、パンツまで脱がされ、浴室に連れ込まれた。
 そして、キスをしたまま、タイルの上に押し倒されたのだが、次の瞬間、激痛がして、血飛沫がまった。
 なんと、彼女のお腹に巨大な口があり、僕の身体をかみちぎって食べ始めたのだ。
「化け物。ぎゃあ」再び、ガブリと内臓を食べられた。
 もう、声もあげられず、意識が遠のいていく。
 がぶっ。巨大な口で、また噛みつかれた。
 僕は、寄生獣という映画を思い出しながら、意識を失った。

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