僕はボーナス加護で伸し上がりました

根鳥 泰造

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第三章 力を持つと人は道を踏み外すのかな

3-2 レベルアップは急務だのに

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 僕は、毎日レベルアップし続け、四日後にはレベル15に到達して、もう一度、肉体増強進化した。
 これ以上のマッチョになるのは嫌だったが、フェイはもっとマッチョな方が好みだろうし、急激な能力アップが図れるので、レベルアップすることにした。
 ただ、その場で進化すると、肉体進化での効果が確認できない。
 そこで、進化は一旦保留にして、滝に戻り、事前に鑑定して能力値を確認してから、進化してみた。

「なんだ、ううっ。ぎゃぁ、ああっ、うっ、ぎゃあ~~~~っ」
 今回の痛みは前回までの比ではなく、身体が焼かれるように熱いし、絶叫してしまう程の激痛で、しかも二分もその痛みが続いた。
 でも、ボディービルダーの様なマッチョにはならず、前回と何も変わっていない。腕や足の太さも同じで、固さも以前と全く変わらなかった。
 進化に失敗したのかなと、思いつつ、再鑑定して確認してみたら、創造力、知力、精神力、機動力は変わらないが、伸び悩んでいた防御力と耐久力が大幅にあがり、攻撃力も上がっていた。
 攻撃力4257、防御力4840、耐久力5008となって、耐久力に関しては当初目標を超えていた。
 肝心の攻撃力が思ったほど上がっていないが、あと3つレベルアップすれば、間違いなく到達しそうた。
 フェイは、レベル20必要といっていたが、この分ならレベル18で、レベル70相当の能力値になれる。

 今日は少し早いが、このまま洞窟に入ろうとして、漸く、今回の進化がなんだったか分かった。以前は立ったまま入れたのに、屈んで入らなけばならなくなっていた。
 明確に何センチ身長大きくなったかは、分からないが、十五センチ以上は確実に大きくなり、手や足も全て、同一比率で大きくなっている。
 
「只今」 洞窟のダイニングに行くと、フェイが小さくなった気さえした。
「また進化したのね。今度は全体に大きくなったんだ」
 恐らく、体重も二十キロ程増えているに違いない。
 アソコも大きくなっているのかが、気になったが、今はもうフェイと一緒にお風呂に入っても、勃起しなくなっていて、なかなか確認できずにいた。だが、やはり一回り大きくなった。
「アソコも大きくなったんだ」とその夜は垂涎ものに喜んで、「大きいのに硬くて、最高」といつも以上に行き捲って喜んでいた。
 因みに僕もだいぶ強烈な絶頂感になれてきて、今は身体がビクンと一回痙攣する程度で収まるようになった。

 だが、そこからのレベルアップは至難だった。
 今の僕の攻撃力は、レベル10の時の二倍以上なので、三十分も掛かっていたレベル30クラスの魔物も、僅か数分で倒すことができる。だから、一日でかなりの魔物を狩れていたのだが、その魔物が見つからなくなってしまった。
 僕が毎日、何十匹も狩りまくっていたので、このあたりの魔物を僕が狩り尽くしてしまったらしい。
 気配感知を発動しても、魔物が見つからず、三十分以上も探し歩かなければならなくなった。
 因みに今回のレベルアップにより、『気配感知レベル4』となり、半径四百メートル圏内まで魔物サーチ可能となっている。それでも見つからないのだから、もうこの近くには魔物がほとんどいないと言っていいくらいだ。
 
 その上、レベルアップさせるまでに倒さなければならない魔物の数も、どんどん増えていく。レベル10の時は僅か七匹でレベルアップしていたのに、前回は二十匹もかかった。
 
 そんな訳で、この日は、帰宅時刻になっても、レベルアップできずに、夕焼け空の帰宅時間になってしまった。
 でも、このままレベルアップせずに帰るのは悔しい。二十匹倒しても、レベルアップしない気はするが、せめてあと一匹、二十匹を倒しきるまではと、フェイが洞窟で待っているのに、魔物の森で狩り続けた。

 だが、こういう時に限って、魔物は見つからない。魔物一匹を見つけ出すのに、一時間も掛かり、すっかり陽がくれていた。しかも、当然かもしれないが、レベルアップもせず。

 仕方なく、帰還したが、僕が戻るとフェイが「健斗」と抱きついてきた。
「何かあったと思って心配したんだよ」目に一杯涙を浮かべていた。
 無断で帰りを遅らせたのは、悪かったと深く反省し、その日の夜は、いつも以上に頑張って、フェイの機嫌を取ってあげた。
 流石に、フェイも疲れたのか、終わると直ぐに、スヤスヤと眠りに落ちていた。
 その笑顔を見ると、こんなに幸せで、良いのかと思ってしまう。
 僕の帰りが一時間遅いだけで、涙を流して心配するほど、愛されている。
 もう二度と、無断で遅くなったりせず、心配かけたりしないからと、彼女のそっとキスをして、ハッとした。

 僕は、余りに幸せな毎日に、当初の目的を忘れかけていた。
 一刻も早く、エルデンリングを壊滅させなけばならないのに、いつの間にかあの場所での魔物狩りが目的になっていた。
 魔物がいないのなら、いる場所に移動すればいいだけだ。森の奥に進むほど、魔物が強くなるとの話だが、今の僕の力なら、強い魔物こそ、大歓迎だ。
 
 明日は、今日の遅れを挽回すべく、強い魔物を求めて、森の奥へ行こうと決意した。

 レベルアップできなかった翌日、ここに来て六日目となる日、僕は更に森の奥に踏み込むことにした。
 途中で気配感知にとらえた魔物を二匹、瞬殺したが、やはり二十二匹を倒した程度ではレベルアップしない。

 僕はどんどん奥へと進んだ。
 すると、森からでてしまい、急に視界が開けた。
 といっても、森から完全に出てしまったのではなく、右や、左、更に奥には広大な森が広がっている。目の前が絶壁になっていて、眼前に巨大なクレータの様な丸く窪んだ空間が有るだけの話だ。
 絶壁の二百メートル程下には、半径二キロメートル程の茶色い荒野が不自然に存在していて、その中央に蛇行する様に、大きな川が流れている。右の絶壁の穴から、左絶壁の穴へ流れているので、この森の地下の巨大水脈が地表に露出しているようだ。
 遥か昔、巨大な隕石でも落下して、こんな荒野がうまれたのかもしれない。

 視界を上にむけ、左右の森を確認すると、こことは高さが明らかに異なっていた。つまり、僕がいた森ではないということになり、そっちに行くべきかとも思ったが、かなりの距離がある。
 眼下の荒野に、連続瞬歩で降りて行った方が早いと、この小さな窪地に降り立つことに決めた。

 魔物の森の中といっても、ここだけはサバンナの荒野で、木がほとんどなく、照り付ける日差し身体を焼く。
 でも、魔物は、沢山いるようで、気配感知に既に三匹の魔物をとらえている。
 ここから最も近い一匹の許に歩み寄ると、蠍の魔物だった。敵も僕の気配を察知して、こちらを睨みつけ、戦闘態勢にはいった。

   分類   魔虫 デス・スコルピオス
   レベル  49
   名前   なし
   年齢   5歳 成虫
   性別   雌
   HP: 852/852
   MP:  10/ 10
   SP:  88/100

 今まではレベル30前後だったのに、いきなりレベル50前後の魔物エリアにきてしまった。

   攻撃力 3513
   防御力 2846
   耐久力 8967
   精神力 100
   機動力 1862
   知力  100
   創造力 100

 でも、能力パラメータは、遥かに格下で、攻撃力、防御力も大した事はなく、魔法も使えない鈍間蠍だ。ただ、耐久力だけは、僕より遥かに高く、化け物級の体力を持つので、長期戦は覚悟しなければならない。

 魔法を使う必要はないなと、連続瞬歩で、高く飛んで、敵の尻尾攻撃を空中で交わしながら、近接して切りつけた。だが、防御力が低い筈なのに、何故かダメージが入らない。外骨格の鎧が結構硬く、身体に傷をつけられないのだ。どこか、柔らかい部分はないかと、いろいろの場所を切ってみたが、どこも同じで、HPバーがほとんど変化していかない。
 防御力が低い筈なのに、なぜだろうと、火球を放ってみると、面白いようにHPが減った。どうやら、スライムの様に物理攻撃耐性が高いだけらしい。防御力は各防御力の平均が表示されているので、詳細まで調べておけば、分かった筈で、今後の戦闘のための勉強になった。

 その後は、空を駆け回りながら、落雷と火球とで、HPを削り続け、三分の一にまで低下させ、これなら、十分もかからずに倒せそうだと確信した時だった。
 遠くから、砂ぼこりが近づいてきている事に気が付いた。
 ここからだと気配感知外だが、どうやら魔物がこっちを目指して近づいてきている。
 さて、どうしたものかと悩みながら、蠍との戦闘を続けていたら、なんとその数八匹。しかも、かなりの移動速度で近づいてくる。蠍に止めを刺しきらないうちに、奴らに遭遇することになるので、僕は戦闘を中止して、その場から逃げ出すことにした。レベル50クラス八匹が相手では、僕も流石に勝てない。
 蠍は、必死に僕を追いかけてきたが、突然、振り向いて、押し寄せる軍団に気づき、慌てて逃走を図った。
 だが、砂ぼこりを上げる魔物の軍勢も蠍が逃げる方向に進路を変える。
 軍勢は、大きさは二メートル程の狼の魔物の群れで、そのまま蠍に襲い掛かり、僕の刀では傷をつけることもできなかった硬い外骨格なのに、バリバリとかみ砕いて、生きたまま食べだした。

『能力レベルが16に上昇しました。スキル「鑑定阻害」を習得しました。耐性「熱耐性レベル1」が「熱耐性レベル2」に上がりました。魔法「エクスプロージョン」を習得しました』
 僕が止めを刺したわけではないが、蠍が絶命した様で、ちゃんと獲得経験値は貰えたみたいだ。

 この狼が何者なのか気になったが、目を合わすと襲い掛かってくると思ったので、鑑定はできなかった。
 一匹だけでも、簡単には倒せないレベル50クラスの魔物が、八匹もで集団行動しているだなんて、恐ろしい所にきてしまったなと後悔した。
 でも、この狼軍団以外の、単体の魔物を狩ればいいだけの話だ。

 僕は、次の魔物に向かう事にしたが、狼軍も、僕が向かっている方向へと走り出した。
 とんでもない高速で移動し、程なく、僕が狙っていた獲物を飲み込んで行った。目視できないので、何が起きているかは分からないが、おそらく、その魔物を食べているに違いない。
 狼たちは、更に三匹目を目指して走り出した。
 これじゃ、経験値を獲得できず、何しにここに来たのか分からない。
 
 仕方なく狼たちが走り去った方向とは逆に進んで、魔物を探していると、上から見えていた川だと思われる広大な川を見つけた。川幅がとんでもなく広く、流れもほとんどない。
 気配感知には、検知範囲ぎりぎりに魔物が一つ映っていたが、四百メートルも離れているので襲われることはないはずだ。
 そこで、自分に鑑定を掛け、『エクスプロージョン』の使い方を調べることにした。
 やはり位置指定型広範囲型の上級爆裂魔法で、魔法発動には、長い呪文を声に出しながら詠唱しなければならないのと、ダンスのようなポーズが必要だった。
 恥ずかしくこんなことできないという条件だったが、これを使えば、さっきの狼の群れにも対処できそうだ。
 ただ、魔力消費がバカにならない。今の最大MPは432だが、なんとMP350も消費する。
 それでも、狼にリベンジすることにし、必死にマナヒールを掛けて、MP回復を計った。それと共に、今後の魔物討伐には魔法を倹約することに決めた。

 そして、気配感知で感知ていた魔物に近づいていくと、一匹と思っていたのは斥候だったみたいで、巨大な赤い塊に向かって戻って行き、その中に飲み込まれて行った。巨大な赤い塊とは、その数が尋常じゃないほど多いという事だ。

 いったい、何だろうと様子を見に行くと、体長十センチ程の、蜂の魔物の大軍だった。その数は分からないが、何百匹もいるのは間違いない。
 逸れてこっちにやって来た蜂に鑑定してみると、メリッサと言うレベル30の魔虫で、機動性はそこそこだが、かなり弱い。これなら何匹居ても勝てそうだし、レベルが低くても数で稼げる。
 僕は、この蜂の軍団と対戦すると決めた。
 魔法を倹約すると決めていたが、数いる敵を相手にするには魔法は不可欠だ。飛行型多数に有効な魔法は、重力魔法グラビティだ。範囲も広いので、動けなくして、刀で突き刺して仕留めて行けばいい。
 八倍体重にして、次々と殺していたら、体長五十センチ程の蜂の魔虫が四匹、メリッサたちの救援にやって来た。
 鑑定してみたら、ホーネットレベル48で、機動性が僕よりもかなり高いなかなかの強敵。これ位が倒せないようだと、エルデンリング壊滅なんてできないと、迎え撃つことにした。
 先ずは、重力魔法を使おうとしたが、さっと散開して、四方から襲い掛かって来た。分散されていると範囲魔法も発動できず、素早く動き回るので、火球や電撃も当てられない。
 刀で攻撃した隙を、毒針を刺してきて、毒消し薬を使う暇もなく、継続ダメージで苦戦する羽目になった。
 それでも、なんとか逃げ回りながら、二匹に重力魔法を掛けることに成功。
 その二匹は地面に落ちずに飛行し続けたが、鈍間になったので、火球を当てられるようになり、比較的簡単に始末できた。
 問題は残り二匹。長期戦になったので、メリッサに掛けていた重力魔法も解除され、一斉に逃げ出されてしまった。その二匹もそれを確認すると高速で飛んで逃げて行った。
 結局、倒せたのはレベル30前後のメリッサ二十匹程と、レベル48のホーネットが二匹だけ。三十分も戦闘して、HPも大幅に削られることになったのに、狩れたのはたったそれだけだった。
 この地帯の魔物は本当に厄介な敵ばかりだ。

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