私って何者なの

根鳥 泰造

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プロローグ

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 これは、とある異世界のモーリー王国に突如現れた美少女勇者ミラのお話。

 この大陸には、三つの大国と弱小のモーリー王国が存在し、三強国による壮絶な覇権争いが繰り広げられていた。
 モーリー王国は、幸いにも魔物の森と険しい山脈に囲まれた地にあったため、戦火に巻き込まれることなく、強国から侵略されずに生き残ってきた。
 他にもエルフの里や獣人の村もあるが、ほとんどは大国の侵略されて滅ぼされ、現存するのは、モーリー王国辺境に僅かに点在するだけだ。
 この世界には、火薬はなく、魔法はあるが使える人間は極めて少なく、戦闘は主に剣や槍、斧で行われる。だが、近年になり、魔弾砲撃という新たな攻撃手段が加わった。
 B級レベル以上の魔物を倒した時に手に入る魔結晶を加工して、それをハンマー投げの要領で、遠心力投擲することで、大砲の様な大爆発を引き起こせる。
 この発明で、魔物の森での魔物狩りが盛んに行われる様になったが、魔物側も組織的に対抗し始め、現在は、魔結晶はレアアイテムとして、高値で取引されるようになっている。

 因みに、戦争で魔法攻撃がほとんど使われないのは、魔法師が少ないだけではなく、極大魔法や爆裂魔法の類が開発されておらず、攻撃力がさほど大きくないからだ。
 放水、かまいたち、氷柱、火炎放射、地形変形等の魔法攻撃でも、それなりの威力はあるので、昔は人質を取り、エルフ部隊を編成していたが、既にそれも壊滅し、無くなった。
 人間で魔法攻撃部隊を編成することは可能だが、その威力と貴重な魔法師を失うリスクとの兼ね合いで、近年は魔法攻撃はほとんど使われていない。
 魔法は、主に、敵位置の探知、負傷兵の回復、兵士の身体強化等に使われる。
 
 一方で、小国モーリー王国は、近年、急速に人口が増え、発展途上にあった。魔結晶で一攫千金を狙う冒険者が、沢山集まるようになったからだ。
 魔物の森の三強国側には、魔物の砦が多数存在し、魔結晶を入手するのも極めて困難な状態だが、モーリー王国側は手薄で、比較的、魔物狩りがしやすい。
 そのため、多くの冒険者がモーリー王国に流れ、魔物の森の入り口近くには、冒険者の拠点となるキースという宿場村まで、形成されている。
 
 そんなキース村から五キロ程離れた魔物の森の外郭に位置する森に、隕石でも落ちて来たかのように、一筋の光が降ってきた。
 夜だというのに、鳥たちが声を上げて慌てて飛び立ち、森の木々もそこだけ穴が開いたようになり、月光がスポットライトの様に、降り注いでいる。
 その月光を浴びた位置に、一人の少女が倒れている。
 どこかのお嬢様のような綺麗なドレスを着た十五歳くらいの美少女だ。
 彼女は、意識を失っているのか、死んでいるのか分からないが、全く動かない。
 やがて、森の小動物達が集まって来て、彼女の周りを群れ始める。
 彼女の身体の上に乗るものまで現れる。
 それでも、彼女は目を覚まさない。

 そして、一時間程の時が流れ、虎の様な巨大な魔物が突如現われた。
 彼女の周りにいた小動物は、雲散霧消して姿を隠す。
 この虎は、魔物の森の奥深くに住んでいる森の主のS級モンスター。彼は、この地に光が降り注いだことに気づき、五十キロもの道のりを、僅か一時間で走破して、様子を見に来たのだ。

 そこに寝そべる少女を見つけたその魔物の虎は、暫く少女を眺めてから、ぺろぺろと舐め始めた。

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