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第二章 チーム『オリーブの芽』の躍進
新たな仲間はちょっと危ない人
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「そろそろ、夕暮れになるわね。行きましょうか」
メグは、キース村の宿屋の部屋での念入りな作戦会議を終えると、腰かけていたベッドから立ち上がった。
今日は、リットにとっての初めての魔物の森なので、戦闘は極力避ける方針。それでも戦いになるので、よく遭遇するC級の魔物の攻撃パターンや、攻略法を徹底的に叩き込み、確認した。
B級魔物に関しては、探知能力で回避できるし、今日の依頼は、B級魔物狩りではないから。
いきなり星四つ難度は、リットには厳しすぎるし、今の三人では狩れたとしても、大怪我するリスクが高いから。
だから、今日は、星三つのこの森にしか生息しないグッチという鼬の様な獣の毛皮を五枚集めるという依頼にした。
グッチは夜行性なので、この村には、昼前に着いていたけど、夜になるのを待っていた。
その間に、リットのノーミーデスとの契約の儀式をすませ、昼寝をして、先ほど作戦の最終確認もすませ、漸く狩りに動き出す。
グッチの生息場所は、森のあちこちに点在していて、どこにいるという明確な情報がないので、発見するのはかなり大変。夜の捜索となるので、あちこちに点在する虫型魔物の巣を壊したりしないかも心配。
もし、ホーネットの巣なんか壊した日には、先日の洞窟ダンジョンの二の前になりかねない。
「どんなところに、いるんでしょうね。これだけ探してるんだらか、一匹くらい見つかってもいいのに」
「泣き言いわないの。私だって、愚痴をこぼしたいのに、我慢してるんだから」
森に入り、捜索を開始して、四時間以上が経つのに、グッチが見つからない。
その間、二度、C級魔物と遭遇し、数体のD級、E級の魔物の群れとも遭遇した。幸い気づかれなかったり、逃げ切ることができたりと、戦闘にならずに済んでいる。
最初は緊張してたリットも、すっかりこの森に慣れ、もう普段通りに戻っている。
でも、肝心のグッチがどこにも見つからない。こんなに、苦戦するとは想像していなかった。
「すこし、休憩して、夜食でも食べましょうか」
そうメグが言い出した時だった。
「あそこに、グッチがいる」ケントが三十メートル程先の茂みを指刺した。
暗くて、遠くて、よく見えないが、確かに銀色に光る何かの獣が、食事をしている。
流石は狩人。こんな暗闇で、あんなに遠いのに、良く見つけられるものだと感心した。
毛皮には、できるだけ傷つけるなとの依頼なので、落雷で感電して捕獲する作戦だが、この魔法の射程距離は十メートル。
メグは、気づかれない様にそっと近づいていき、見事に感電させることに成功した。
捕獲したグッチは、腹から割いて、綺麗に皮をはがす。
先ずは一匹。
二匹目は、その二時間後に発見できたが、その傍にC級魔物が居て、魔物が居なくなるのを待っていたら、逃げられた。
そこで、作戦変更。グッチがいる場合は、メグが捕獲を優先し、残り二人で魔物を倒すことにした。
結局、夜明けを迎えてしまったが、今日は二匹を狩ることができた。一度だけ、素早い虫型D級の群れとの戦闘になったが、負傷者なし。予定の三匹は未達だったけど、まずまずの滑り出し。
明日はというか、今晩は、絶対に三匹を捕まえようと、全員で誓って、キース村に帰還した。
でも二日目は、一日目のようには上手く行かない。なぜか戦闘の山となった。
比較的直ぐに最初のグッチを見つけることができたのだが、傍にC級魔物が居た。そのC級魔物とケントとリットの二人が戦っている時、暗いので誤ってリットが鳥の巣を壊してしましまった。グッチを捕獲したメグも、直ぐに参戦したが、大変な目にあった。夜なのに、D級の鳥の群れに襲われ、体中に傷を負うことになった。
二匹目は、そっと近接していたのに、気づかれて逃げられ、追いかけていたら、D級魔物の群れに遭遇。戦いながら、追いかけようとしたが、結局逃げられ、怪我のし損で終わった。
三匹目はなかなか発見できず、捜索中にC級に見つかり、逃げているとまたC級に出くわし、挟み撃ちにされ、戦わざるを得ない事態に。
またも怪我をしたが、治療中に、三匹目が向こうからやって来て、捕獲できた。
そして、空が白々としてきた頃、最後の一匹を見つけた。これを捕まえれば任務完了。
今、その一匹を追跡中だが、B級魔物がいる気配の方に、逃げていく。
「この先に、おそらくB級がいる。どうする?」
「ここまで来て諦められるか。なにも、仕留める必要はない。俺とリットで食い止めるから、その間に仕留めてくれ」
「B級なら私がいく。ケントがボーガンで射止めて。リットは無理しないでね」
そんな作戦に変更し、最後のグッチの追跡を続けていたら、前方から「ドリャ」と声が聞こえてきた。
既にどこかのチームが、こんな明け方なのに、魔物狩りをしているらしい。
B級一体だけなら、私一人でも何とかなるけど、初見の場合は話が別。私自身、無傷でいられるかもわからないし、リットを守れる自信もなかった。だから、誰かが先に戦っていてくれて、本当に助かった。
そう思って近づくと、なんとあの時の兎獣人の女戦士ミラが、バーサーカーになって、たった一人でフートクロウと戦っていた。
フートクロウは、人間位の大きさの梟の魔獣。火の魔法が苦手の魔物だが、ほとんど空中で戦い、魔法を放っても、素早く交わし、逆に、鎌鼬や、精神錯乱させる超音波を放つ。そして、こっちが混乱したり、隙を見せると、爪による急降下攻撃をしてきて、致命傷を与える。
攻略法は、その急降下攻撃を誘い、その瞬間に火魔法や、打撃技を繰り出し、叩き落とす戦術になる。
だから、地上で何もせずに、梟が攻撃してくるのを待つのが、一般戦術だが、ミラは、重そうなハンマーを振りかざしたまま、飛びまわる梟にジャンプして、叩き落とそうとしている。
攻略セオリー無視の無茶苦茶な戦い方だが、あと少しで当たりそうなところまで、飛び上がれる跳躍力は脅威的。
ただ、鎌鼬を何度も浴びたらしく、全身傷だらけで、血まみれだ。
「リット、火が弱点。遠距離じゃ当たらないから、急降下してくる所を狙って。それから、上空で停止したら、鎌鼬や超音波攻撃してくるから、何かしてきそうに思ったら、さっと逃げて」
そう言って、彼女の背後から、攻略法をアドバイスしようと近づいたら、いきなり振り向きざまに、ハンマーをこっちに振り下ろして来て、殺されかけた。
「御免。つい、殺気がしたんで……」
その隙に、梟が爪を立てて、急降下してきた。
「こんのぉ。でやぁ」
リットが今だとばかりに、飛び込んで魔法を放とうとしたのに、ミラが思いっきりハンマーを振り回すから、魔法を発動できず、困惑している。
「ちょっと、冷静になって。敵が急降下してくるのを待って……」
攻略法を教えてあげようと思ったのに、再び、空高くジャンプして、無駄な攻撃を始めてしまった。
驚異的な身体能力は認めるけど、なんて、力任せで、無謀な人なんだろう。
もしかして、超音波攻撃で錯乱しているの? どうしよう。
「よし、仕留めた。どうする」
後方からケントの声が聞こえた。もう、最後の鼬を射止めたらしい。
「この人一人を見捨てられる訳ないでしょう。全員でしとめるわよ」
そう叫んだ時、梟が上空でこっちを向いて停止した。超音波か、鎌鼬を放とうとしているのは明らか。
なのに、メグは、再び、高くジャンプして、梟を殴りに行く。
案の定、小型の鎌鼬を無数に放ち、メグはそれを一身に受けて、血しぶきを出して、落下していく。
「怪我人は、何もしないで、少し休んでいて」
彼女がいると、こっちも安心して攻撃できないので、そう言って、三人で戦い始めた。
ケントの矢は、通常の矢の速度より、三倍位速いが、梟はさっと交わして、矢が当たらない。
「ケントもこっちに来て攻撃して、リットは、ケントが着き次第、放出系魔法を連続で、放って」
『セージも、放出系魔法を放ち続けて』
そして、地上から、三人の同時乱射攻撃を開始した。
それでも梟は、その弾道を見極めて、交わすが、これは想定通り。
メグは、梟が地上ばかりに気を取られている隙に、上空から落雷をお見舞いした。
そこからは一方的。感電して地上に落下してしまえば、こっちのもの。
ケントが矢を何本も打ち込み、リットが火魔法を連発し、メグが羽を切り落とし、瀕死にした。
「止めは、どうぞ。ご自分で」
そして、ミラがハンマーで止めを刺した。
「あなたミロのお姉さんのミラさんだよね。なんで、こんなところで魔物狩りなんかしているの?」
メグは彼女に治癒魔法を掛けながら、話しかけた。
「そうか、あの時、ミロと一緒に牢屋に入れられ、売られそうになっていた女か。ありがとう」
ミラはそう言うと、バーサク化を解いて、普通の可愛い兎獣人の女に戻った。
「ボクたちは、ミロの仇を探していた。この近くで、目撃したという情報を貰ってな」
「仇って、ミロの身に何かあったの?」
「三週間程前、厄災の黒龍に殺された。ボクたちの村にやって来て、火炎をまき散らして、仲間の半数以上がやられた。隠れていたミロも、家ごと焼かれ、助からなかった」
「それって、フェルニゲシュ?」
「ボクたちは、厄災の黒龍と呼んでいるが、そういえばあの男もそんな名で呼んでいたな」
あの時のフェルニゲシュの生き残りは僅か三人。まさかと思い、その男について、詳しく訊いてみると、やはりモローのようだった。
三日ほど前に、出会ったそうだが、既に他のチームに加入していたらしく、六人組でこの森にきていたのだそう。
これで、完全に、モローに加入してもらえる可能性は消えたけど、目の前に、独りで戦っていた戦士がいる。
「私たちも、フェルニゲシュに恨みがあるの。彼は村を滅ぼされ、この子は母親を殺され、私も母親の様に思ってきたリーダーを殺された。フェルニゲシュは、絶対に一人では倒せないし、私たちのパーティーに入らない」
ダメもとで、誘ってみた。
「そうだな。ボクと一緒に討伐にきた仲間も、皆、死んでしまったし、腰抜け達の所に戻っても、仕方がないから、そうしようか」
きっと敬遠されると思っていたのに、意外にもあっさり、了承してくれた。
これで、強い前衛も補充できたけど、少し寂しく感じるのはなぜだろう。
任務は完了したし、リン達の墓標もこの近くだったので、少し寄り道をして、墓詣りした。
モローが備えてくれたのか、野草が一輪ずつ、墓標の前に添えてあった。
それを見て、寂しく感じた理由もわかった。一緒の時は、虐められて嫌な人と思っていたけど、やはりモローの事を、本当の兄のように思っていて、大好きだったんだと気づいた。
メグは、暫く手を合わせて黙祷したあと、その時の詳細を、リットとミラにも話し、改めて、今度こそ、フェルニゲシュを仕留めると、誓うのだった。
メグは、キース村の宿屋の部屋での念入りな作戦会議を終えると、腰かけていたベッドから立ち上がった。
今日は、リットにとっての初めての魔物の森なので、戦闘は極力避ける方針。それでも戦いになるので、よく遭遇するC級の魔物の攻撃パターンや、攻略法を徹底的に叩き込み、確認した。
B級魔物に関しては、探知能力で回避できるし、今日の依頼は、B級魔物狩りではないから。
いきなり星四つ難度は、リットには厳しすぎるし、今の三人では狩れたとしても、大怪我するリスクが高いから。
だから、今日は、星三つのこの森にしか生息しないグッチという鼬の様な獣の毛皮を五枚集めるという依頼にした。
グッチは夜行性なので、この村には、昼前に着いていたけど、夜になるのを待っていた。
その間に、リットのノーミーデスとの契約の儀式をすませ、昼寝をして、先ほど作戦の最終確認もすませ、漸く狩りに動き出す。
グッチの生息場所は、森のあちこちに点在していて、どこにいるという明確な情報がないので、発見するのはかなり大変。夜の捜索となるので、あちこちに点在する虫型魔物の巣を壊したりしないかも心配。
もし、ホーネットの巣なんか壊した日には、先日の洞窟ダンジョンの二の前になりかねない。
「どんなところに、いるんでしょうね。これだけ探してるんだらか、一匹くらい見つかってもいいのに」
「泣き言いわないの。私だって、愚痴をこぼしたいのに、我慢してるんだから」
森に入り、捜索を開始して、四時間以上が経つのに、グッチが見つからない。
その間、二度、C級魔物と遭遇し、数体のD級、E級の魔物の群れとも遭遇した。幸い気づかれなかったり、逃げ切ることができたりと、戦闘にならずに済んでいる。
最初は緊張してたリットも、すっかりこの森に慣れ、もう普段通りに戻っている。
でも、肝心のグッチがどこにも見つからない。こんなに、苦戦するとは想像していなかった。
「すこし、休憩して、夜食でも食べましょうか」
そうメグが言い出した時だった。
「あそこに、グッチがいる」ケントが三十メートル程先の茂みを指刺した。
暗くて、遠くて、よく見えないが、確かに銀色に光る何かの獣が、食事をしている。
流石は狩人。こんな暗闇で、あんなに遠いのに、良く見つけられるものだと感心した。
毛皮には、できるだけ傷つけるなとの依頼なので、落雷で感電して捕獲する作戦だが、この魔法の射程距離は十メートル。
メグは、気づかれない様にそっと近づいていき、見事に感電させることに成功した。
捕獲したグッチは、腹から割いて、綺麗に皮をはがす。
先ずは一匹。
二匹目は、その二時間後に発見できたが、その傍にC級魔物が居て、魔物が居なくなるのを待っていたら、逃げられた。
そこで、作戦変更。グッチがいる場合は、メグが捕獲を優先し、残り二人で魔物を倒すことにした。
結局、夜明けを迎えてしまったが、今日は二匹を狩ることができた。一度だけ、素早い虫型D級の群れとの戦闘になったが、負傷者なし。予定の三匹は未達だったけど、まずまずの滑り出し。
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二匹目は、そっと近接していたのに、気づかれて逃げられ、追いかけていたら、D級魔物の群れに遭遇。戦いながら、追いかけようとしたが、結局逃げられ、怪我のし損で終わった。
三匹目はなかなか発見できず、捜索中にC級に見つかり、逃げているとまたC級に出くわし、挟み撃ちにされ、戦わざるを得ない事態に。
またも怪我をしたが、治療中に、三匹目が向こうからやって来て、捕獲できた。
そして、空が白々としてきた頃、最後の一匹を見つけた。これを捕まえれば任務完了。
今、その一匹を追跡中だが、B級魔物がいる気配の方に、逃げていく。
「この先に、おそらくB級がいる。どうする?」
「ここまで来て諦められるか。なにも、仕留める必要はない。俺とリットで食い止めるから、その間に仕留めてくれ」
「B級なら私がいく。ケントがボーガンで射止めて。リットは無理しないでね」
そんな作戦に変更し、最後のグッチの追跡を続けていたら、前方から「ドリャ」と声が聞こえてきた。
既にどこかのチームが、こんな明け方なのに、魔物狩りをしているらしい。
B級一体だけなら、私一人でも何とかなるけど、初見の場合は話が別。私自身、無傷でいられるかもわからないし、リットを守れる自信もなかった。だから、誰かが先に戦っていてくれて、本当に助かった。
そう思って近づくと、なんとあの時の兎獣人の女戦士ミラが、バーサーカーになって、たった一人でフートクロウと戦っていた。
フートクロウは、人間位の大きさの梟の魔獣。火の魔法が苦手の魔物だが、ほとんど空中で戦い、魔法を放っても、素早く交わし、逆に、鎌鼬や、精神錯乱させる超音波を放つ。そして、こっちが混乱したり、隙を見せると、爪による急降下攻撃をしてきて、致命傷を与える。
攻略法は、その急降下攻撃を誘い、その瞬間に火魔法や、打撃技を繰り出し、叩き落とす戦術になる。
だから、地上で何もせずに、梟が攻撃してくるのを待つのが、一般戦術だが、ミラは、重そうなハンマーを振りかざしたまま、飛びまわる梟にジャンプして、叩き落とそうとしている。
攻略セオリー無視の無茶苦茶な戦い方だが、あと少しで当たりそうなところまで、飛び上がれる跳躍力は脅威的。
ただ、鎌鼬を何度も浴びたらしく、全身傷だらけで、血まみれだ。
「リット、火が弱点。遠距離じゃ当たらないから、急降下してくる所を狙って。それから、上空で停止したら、鎌鼬や超音波攻撃してくるから、何かしてきそうに思ったら、さっと逃げて」
そう言って、彼女の背後から、攻略法をアドバイスしようと近づいたら、いきなり振り向きざまに、ハンマーをこっちに振り下ろして来て、殺されかけた。
「御免。つい、殺気がしたんで……」
その隙に、梟が爪を立てて、急降下してきた。
「こんのぉ。でやぁ」
リットが今だとばかりに、飛び込んで魔法を放とうとしたのに、ミラが思いっきりハンマーを振り回すから、魔法を発動できず、困惑している。
「ちょっと、冷静になって。敵が急降下してくるのを待って……」
攻略法を教えてあげようと思ったのに、再び、空高くジャンプして、無駄な攻撃を始めてしまった。
驚異的な身体能力は認めるけど、なんて、力任せで、無謀な人なんだろう。
もしかして、超音波攻撃で錯乱しているの? どうしよう。
「よし、仕留めた。どうする」
後方からケントの声が聞こえた。もう、最後の鼬を射止めたらしい。
「この人一人を見捨てられる訳ないでしょう。全員でしとめるわよ」
そう叫んだ時、梟が上空でこっちを向いて停止した。超音波か、鎌鼬を放とうとしているのは明らか。
なのに、メグは、再び、高くジャンプして、梟を殴りに行く。
案の定、小型の鎌鼬を無数に放ち、メグはそれを一身に受けて、血しぶきを出して、落下していく。
「怪我人は、何もしないで、少し休んでいて」
彼女がいると、こっちも安心して攻撃できないので、そう言って、三人で戦い始めた。
ケントの矢は、通常の矢の速度より、三倍位速いが、梟はさっと交わして、矢が当たらない。
「ケントもこっちに来て攻撃して、リットは、ケントが着き次第、放出系魔法を連続で、放って」
『セージも、放出系魔法を放ち続けて』
そして、地上から、三人の同時乱射攻撃を開始した。
それでも梟は、その弾道を見極めて、交わすが、これは想定通り。
メグは、梟が地上ばかりに気を取られている隙に、上空から落雷をお見舞いした。
そこからは一方的。感電して地上に落下してしまえば、こっちのもの。
ケントが矢を何本も打ち込み、リットが火魔法を連発し、メグが羽を切り落とし、瀕死にした。
「止めは、どうぞ。ご自分で」
そして、ミラがハンマーで止めを刺した。
「あなたミロのお姉さんのミラさんだよね。なんで、こんなところで魔物狩りなんかしているの?」
メグは彼女に治癒魔法を掛けながら、話しかけた。
「そうか、あの時、ミロと一緒に牢屋に入れられ、売られそうになっていた女か。ありがとう」
ミラはそう言うと、バーサク化を解いて、普通の可愛い兎獣人の女に戻った。
「ボクたちは、ミロの仇を探していた。この近くで、目撃したという情報を貰ってな」
「仇って、ミロの身に何かあったの?」
「三週間程前、厄災の黒龍に殺された。ボクたちの村にやって来て、火炎をまき散らして、仲間の半数以上がやられた。隠れていたミロも、家ごと焼かれ、助からなかった」
「それって、フェルニゲシュ?」
「ボクたちは、厄災の黒龍と呼んでいるが、そういえばあの男もそんな名で呼んでいたな」
あの時のフェルニゲシュの生き残りは僅か三人。まさかと思い、その男について、詳しく訊いてみると、やはりモローのようだった。
三日ほど前に、出会ったそうだが、既に他のチームに加入していたらしく、六人組でこの森にきていたのだそう。
これで、完全に、モローに加入してもらえる可能性は消えたけど、目の前に、独りで戦っていた戦士がいる。
「私たちも、フェルニゲシュに恨みがあるの。彼は村を滅ぼされ、この子は母親を殺され、私も母親の様に思ってきたリーダーを殺された。フェルニゲシュは、絶対に一人では倒せないし、私たちのパーティーに入らない」
ダメもとで、誘ってみた。
「そうだな。ボクと一緒に討伐にきた仲間も、皆、死んでしまったし、腰抜け達の所に戻っても、仕方がないから、そうしようか」
きっと敬遠されると思っていたのに、意外にもあっさり、了承してくれた。
これで、強い前衛も補充できたけど、少し寂しく感じるのはなぜだろう。
任務は完了したし、リン達の墓標もこの近くだったので、少し寄り道をして、墓詣りした。
モローが備えてくれたのか、野草が一輪ずつ、墓標の前に添えてあった。
それを見て、寂しく感じた理由もわかった。一緒の時は、虐められて嫌な人と思っていたけど、やはりモローの事を、本当の兄のように思っていて、大好きだったんだと気づいた。
メグは、暫く手を合わせて黙祷したあと、その時の詳細を、リットとミラにも話し、改めて、今度こそ、フェルニゲシュを仕留めると、誓うのだった。
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