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第二章 チーム『オリーブの芽』の躍進
悔しいけど、強すぎる
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既に、今日で遠征四日目となり、昨日のA級魔物との戦闘で、疲労困憊状態だが、四人は、魔人ベルゼゼブへのリベンジに燃え、C級魔物の群れや、B級魔物を何体も蹴散らし、三階層最深部のボスエリア直前までたどり着いていた。
この角を曲がった先に、ベルゼブブがいるという物陰で、休憩して息を整えて、改めて戦闘に備えて万全の準備をして、魔人の場所に踏み込んだ。
魔人は、椅子の様な石に腰かけて、のんびりと木を削り、鳥らしき木彫りの置物を作っていた。
そして、こちらに目もくれず、その小刀と、造りかけの彫刻を横にしまうと、ゆっくりと立ち上がった。
「やはり、あなたたちでしたか。もう懲りて、やってこないと思ったのに、本当に、困った姫様だ」
魔界語で私に話しかけてきた。他のメンバーは何を言っているのか、わからない筈だけど、どうやら、彼は私の事を知っているらしい。
私の事を知っているのかと、訪ねたいけど、魔界語が喋れると気づかれるわけにはいかない。
『セージ、やっぱり、あなたは、彼の事を知っているんでしょう』
聞こえている筈なのに、無視してきた。
もし、セージが言ったように、S級の魔人で、前回は半分の力もだしていないとしたら、私たちに勝ち目はない。どうしよう。
「今回は、二度と戦う気が起きない様に、少しきつめのお仕置きをしておきましょうか」
「メグ、ぼさっとしてないで号令をだして」
戦闘を躊躇っていたら、ミラに怒られてしまった。
事前打ちあわせにて、この素早い魔人の攻略法を考えてあった。
号令と同時に、ミラが、魔人目指して衝撃波発生させる叩きつけを出す。そして、後の三人は、所定位置に移動し、できるだけ広範囲攻撃となる技を同時に周囲に出す作戦だ。
この魔人は、昨日の蜘蛛の様な長距離の立体機動はせず、平面上を最小限度の移動で交わす。だから、逃げる場所と想定される箇所を全て潰せば、何らかの攻撃が当たるという作戦だ。
一度食らえば、二度目からは大きく回避する作戦に切り替える筈だが、既にダメージを負い、大きく避けてくれるのなら、体力を消費してくれるので、それはそれで構わない。
「行くよ。ミラ、衝撃波」
思った通り、ハンマーが当たる寸前まで、魔人は動かず、私たちの次の動きを伺い続け、さっと交わした瞬間、周辺一帯に、銃弾の雨と、つららの雨を降らせた。
作戦は見事に成功し、彼はケントが担当する銃弾の雨の中に移動した。だが、魔人はいつの間にかその手に盾を構えて、その銃弾を全てその盾で防ぎ切った。
「考えましたね。危ない所でした」
そして、その盾が塵の様に消えたかと思うと、その姿が消え、急いで弾の交換をしていたケントが洞窟の壁目掛けて吹っ飛んでいき、激突していた。
万が一のため、左銃に一発だけ弾丸を残しておき、飛び込んで来たら打つ予定だったのに、それすらさせずに、一瞬で勝負はついた。
なのに、魔人は追撃の手を緩めない。次の瞬間、苦しそうにするケントの目の前に現れ、目に見えない程の高速で彼の顔面を殴り始めた。
前回は、攻撃をかわして、カウンターの様に、腹や顔面に一発当てては、引くを繰り返し、常に全員と対峙していたが、今回は、既に戦意喪失しているケントを集中的に殴り続け、一人ずつ、葬る作戦のようだ。
ミラも急いで、援護に向かったが、背面蹴りを腹に受け、吹き飛ばされ、助けることができなかった。
鳩尾に蹴りをくらい、苦しくて呼吸もできないけど、なんとかケントの許に行くと、ケントは顔が二倍に腫れ上がり、既に気絶していた。
前歯も折れ、酷い状態にされていた。
「戦闘中止。逃げるよ」
メグは、この魔人には今の我々の実力では、絶対に敵わないと判断して、撤退命令を出す。
でも、既に、ミラはベルゼブブと交戦中だった。ハンマーを振り回す攻防一体の回転攻撃を魔人に繰り出していた。
流石の魔人も、中に飛び込んで行けず、近づけずにいるが、紙一重の所で交わし続け、回転が止まった瞬間、彼女背後に回り込んだ。そして、両腕を回して胴を羽交い絞めして、身体をのけ反らせ、石が剥き出しの床に、頭から叩きつけて、失神させた。
既に勝負はついているのに、魔人は、そのまま馬乗りになり、彼女の顔面に何発も殴り続ける。
助けに行きたいけど、今はケントに、ヒールを発動している最中。
でも、リットが救援として、背後から鎌鼬を放ってくれた。
たが、魔人は目が後ろに突いてるかのように、高くジャンプして交わし、そのまま、失神するミラの顔面に膝を落とし、彼女の顔面を破壊した。
そして、今度は、リットを狙う。リットは、既に全力でその場を逃げ出していて、二十メートル程の距離にいたが、魔人は、ものすごい速度で、リットを追いかける。
私は、早く治療しないと死んでしまうかもしれないので、ミラに治癒魔法を掛けるしかなく、彼の援護には行けない。
魔人は、あっという間に追いついて、リットの背後に迫ったが、その瞬間を待っていたかのように、リットは振り返り、あの爆裂魔法を発動させた。
勿論、魔人は、さっと横に避けて回避するが、それは想定済み。石の玉目掛けて、ファイアを既に放っていて、大爆発が起きた。
リットもその爆心地近くにいて、吹き飛んだと思ったが、爆炎が治まると、巨大な石壁が消え、リットが無事に立っていた。三連続目として岩柱壁の魔法まで繰り出し、爆風の直撃を凌いでいた。
流石の魔人も血まみれになって、倒れている。
そこに、残るすべての魔法をつぎ込んで、止めを刺しに行ったが、魔人の姿はいつの間にか消えていて、リットの背後に立ち、首に手刀を当てて気絶させた。
「まさか、あんな魔法まであったとは、油断しました。私が傷を負わされるなんて、何年振りでしょう」
魔界語で、そう言うと、彼をその足で、壁際に蹴り飛ばし、壁に挟まれて動けない状態で、何度も何度も蹴り飛ばし続けた。
「お願い、死んじゃうから。もうやめて」
「この子だけは、殺しておくつもりでしたが、まあ、いいでしょう。この辺で勘弁してあげます」
魔人も、治癒魔法が使えるようで、手を自らの傷口に当てると、みるみる傷が塞がっていく。
ミラが治療を終えて、急いで、リットの許に駆けつけるも、もう虫の息。直ぐに治癒魔法を掛けないと、死んでしまいかねないのに、クールタイム中で発動できない。
発動可能になると、直ぐにヒールを掛けたが、全身骨折だけじゃなく、内臓まで破裂していて、ケントやミラの様に、回復する兆しが見られない。
「リット、死なないで、頑張って生きる気力をしっかりと持って。お願い」
必死に声を掛けるが、一向に回復傾向が現れてくれない。
もう一度、治癒魔法を掛けたいが直ぐにはできない。
メグはクールタイムが終わるまでの間に、さっきの疑問を訊くことにした。
「あなたは、私を知っているの?」
「記憶をなくしているとは聞いていたが、本当だったんですね。あなたは、この地下三階に軟禁されていたマーガレット・ヴィダー姫。何度も、一緒に遊んであげたのに、お忘れですか?」
「軟禁? 私は魔王に捕らわれていたの?」
「大魔王ヴァンサン様は、……」
魔人は、急に頭を押さえて、苦しみ出した。何が起きているのか、さっぱりわからない。
でも、それで、魔界語が直ぐに習得できた理由も理解した。
私は、魔界語が話せたのに、その記憶を封印していただけ。日本語と同じだった。
実は、二回目の前世の夢をセージに話した時、前世の世界の言語を習得するかと質問され、日本語を取得した。その時、なんとなく、記憶をなくす前の私が話せた言語を意図的に、封印していただけではないかと気づいた。そうだとすると、魔界語も話せていたことになり、その理由が不思議でならなかった。
でも、ずっとこの魔人と一緒に生活していたのなら、話せるようになっていても、何ら不思議ではない。
「話はここまで。もう二度と、ここには来ないでください。とはいえ、ここから無事、帰ることができればの話ですが……」
何があったのか、さっぱりわからないけど、魔人は頭痛が治まったのか、そう言って、いつもの定位置に戻って、椅子の様な石に腰かけた。
『セージ、どうしたらいいの。このままじゃ、リットは死んじゃうし、ミラも、ケントも大怪我していて、当分は歩くこともできない』
やはり、セージは無視し続けている
クールタイムが終わると、もう一度、治癒魔法を発動した。何度も掛けても、効果は変わらないという話だけど、回復の兆候が見られない限り、掛け続けるつもりでいた。
『内臓よりも、頭から治療してください。壁に蹴り飛ばされた際、脳内出血が起きていて、それため、他の箇所の回復が起きないのだと、思われますゆえ』
漸く、セージが応えてくれた。
そして、言われたように、頭の方に手を当てると、漸く、少しずつ回復の兆候が見え始めた。
「よかった。これで、きっと助かる。セージありがとう」
素直に感謝してあげたのに、セージはまた沈黙を決め込んでしまった。
「メグ、ういだったか」
漸く、ケントが目を覚ましたみたいだけど、唇が大きく腫れているためか、口の中が切れているためかは分からないが、上手に話せなくなっていた。
メグは、急いで、ケントの許に駆け寄る。
「魔人に降参して、二度と戦わない約束で、見逃してもらったの。魔人はそこに座ってるけど、もう大丈夫だから。でも、ミラは、鼻骨や顎が陥没していて、頭蓋骨にも皹が入ってるかもしれない重傷で、リットに関しては、肋骨が肺に刺さっていて、内臓も破裂しているみたいで、絶対安静の重態なの。どうしよう」
「うろさないあくそくなら、たすえをよんれくれ」
殺さない約束なら、助けを呼んでくれと、ケントが言ってきた。ケントは三人の中で、一番軽症で、四時間後に、もう一度、治癒魔法を掛ければ、自力で治癒しそうだけど、残りの二人は、直ぐにでもちゃんと治療を受けさせないと、もう冒険者を続けることすら困難になる。
「分かった。待っててね。必ず、救援隊を呼んでくるから」
魔人が番をしているエリアには、他の魔物が侵入してこない保証はどこにもないし、こんなところに、救援者が来てくれるとも思えないが、それでも、メグは駆け出して行った。
この角を曲がった先に、ベルゼブブがいるという物陰で、休憩して息を整えて、改めて戦闘に備えて万全の準備をして、魔人の場所に踏み込んだ。
魔人は、椅子の様な石に腰かけて、のんびりと木を削り、鳥らしき木彫りの置物を作っていた。
そして、こちらに目もくれず、その小刀と、造りかけの彫刻を横にしまうと、ゆっくりと立ち上がった。
「やはり、あなたたちでしたか。もう懲りて、やってこないと思ったのに、本当に、困った姫様だ」
魔界語で私に話しかけてきた。他のメンバーは何を言っているのか、わからない筈だけど、どうやら、彼は私の事を知っているらしい。
私の事を知っているのかと、訪ねたいけど、魔界語が喋れると気づかれるわけにはいかない。
『セージ、やっぱり、あなたは、彼の事を知っているんでしょう』
聞こえている筈なのに、無視してきた。
もし、セージが言ったように、S級の魔人で、前回は半分の力もだしていないとしたら、私たちに勝ち目はない。どうしよう。
「今回は、二度と戦う気が起きない様に、少しきつめのお仕置きをしておきましょうか」
「メグ、ぼさっとしてないで号令をだして」
戦闘を躊躇っていたら、ミラに怒られてしまった。
事前打ちあわせにて、この素早い魔人の攻略法を考えてあった。
号令と同時に、ミラが、魔人目指して衝撃波発生させる叩きつけを出す。そして、後の三人は、所定位置に移動し、できるだけ広範囲攻撃となる技を同時に周囲に出す作戦だ。
この魔人は、昨日の蜘蛛の様な長距離の立体機動はせず、平面上を最小限度の移動で交わす。だから、逃げる場所と想定される箇所を全て潰せば、何らかの攻撃が当たるという作戦だ。
一度食らえば、二度目からは大きく回避する作戦に切り替える筈だが、既にダメージを負い、大きく避けてくれるのなら、体力を消費してくれるので、それはそれで構わない。
「行くよ。ミラ、衝撃波」
思った通り、ハンマーが当たる寸前まで、魔人は動かず、私たちの次の動きを伺い続け、さっと交わした瞬間、周辺一帯に、銃弾の雨と、つららの雨を降らせた。
作戦は見事に成功し、彼はケントが担当する銃弾の雨の中に移動した。だが、魔人はいつの間にかその手に盾を構えて、その銃弾を全てその盾で防ぎ切った。
「考えましたね。危ない所でした」
そして、その盾が塵の様に消えたかと思うと、その姿が消え、急いで弾の交換をしていたケントが洞窟の壁目掛けて吹っ飛んでいき、激突していた。
万が一のため、左銃に一発だけ弾丸を残しておき、飛び込んで来たら打つ予定だったのに、それすらさせずに、一瞬で勝負はついた。
なのに、魔人は追撃の手を緩めない。次の瞬間、苦しそうにするケントの目の前に現れ、目に見えない程の高速で彼の顔面を殴り始めた。
前回は、攻撃をかわして、カウンターの様に、腹や顔面に一発当てては、引くを繰り返し、常に全員と対峙していたが、今回は、既に戦意喪失しているケントを集中的に殴り続け、一人ずつ、葬る作戦のようだ。
ミラも急いで、援護に向かったが、背面蹴りを腹に受け、吹き飛ばされ、助けることができなかった。
鳩尾に蹴りをくらい、苦しくて呼吸もできないけど、なんとかケントの許に行くと、ケントは顔が二倍に腫れ上がり、既に気絶していた。
前歯も折れ、酷い状態にされていた。
「戦闘中止。逃げるよ」
メグは、この魔人には今の我々の実力では、絶対に敵わないと判断して、撤退命令を出す。
でも、既に、ミラはベルゼブブと交戦中だった。ハンマーを振り回す攻防一体の回転攻撃を魔人に繰り出していた。
流石の魔人も、中に飛び込んで行けず、近づけずにいるが、紙一重の所で交わし続け、回転が止まった瞬間、彼女背後に回り込んだ。そして、両腕を回して胴を羽交い絞めして、身体をのけ反らせ、石が剥き出しの床に、頭から叩きつけて、失神させた。
既に勝負はついているのに、魔人は、そのまま馬乗りになり、彼女の顔面に何発も殴り続ける。
助けに行きたいけど、今はケントに、ヒールを発動している最中。
でも、リットが救援として、背後から鎌鼬を放ってくれた。
たが、魔人は目が後ろに突いてるかのように、高くジャンプして交わし、そのまま、失神するミラの顔面に膝を落とし、彼女の顔面を破壊した。
そして、今度は、リットを狙う。リットは、既に全力でその場を逃げ出していて、二十メートル程の距離にいたが、魔人は、ものすごい速度で、リットを追いかける。
私は、早く治療しないと死んでしまうかもしれないので、ミラに治癒魔法を掛けるしかなく、彼の援護には行けない。
魔人は、あっという間に追いついて、リットの背後に迫ったが、その瞬間を待っていたかのように、リットは振り返り、あの爆裂魔法を発動させた。
勿論、魔人は、さっと横に避けて回避するが、それは想定済み。石の玉目掛けて、ファイアを既に放っていて、大爆発が起きた。
リットもその爆心地近くにいて、吹き飛んだと思ったが、爆炎が治まると、巨大な石壁が消え、リットが無事に立っていた。三連続目として岩柱壁の魔法まで繰り出し、爆風の直撃を凌いでいた。
流石の魔人も血まみれになって、倒れている。
そこに、残るすべての魔法をつぎ込んで、止めを刺しに行ったが、魔人の姿はいつの間にか消えていて、リットの背後に立ち、首に手刀を当てて気絶させた。
「まさか、あんな魔法まであったとは、油断しました。私が傷を負わされるなんて、何年振りでしょう」
魔界語で、そう言うと、彼をその足で、壁際に蹴り飛ばし、壁に挟まれて動けない状態で、何度も何度も蹴り飛ばし続けた。
「お願い、死んじゃうから。もうやめて」
「この子だけは、殺しておくつもりでしたが、まあ、いいでしょう。この辺で勘弁してあげます」
魔人も、治癒魔法が使えるようで、手を自らの傷口に当てると、みるみる傷が塞がっていく。
ミラが治療を終えて、急いで、リットの許に駆けつけるも、もう虫の息。直ぐに治癒魔法を掛けないと、死んでしまいかねないのに、クールタイム中で発動できない。
発動可能になると、直ぐにヒールを掛けたが、全身骨折だけじゃなく、内臓まで破裂していて、ケントやミラの様に、回復する兆しが見られない。
「リット、死なないで、頑張って生きる気力をしっかりと持って。お願い」
必死に声を掛けるが、一向に回復傾向が現れてくれない。
もう一度、治癒魔法を掛けたいが直ぐにはできない。
メグはクールタイムが終わるまでの間に、さっきの疑問を訊くことにした。
「あなたは、私を知っているの?」
「記憶をなくしているとは聞いていたが、本当だったんですね。あなたは、この地下三階に軟禁されていたマーガレット・ヴィダー姫。何度も、一緒に遊んであげたのに、お忘れですか?」
「軟禁? 私は魔王に捕らわれていたの?」
「大魔王ヴァンサン様は、……」
魔人は、急に頭を押さえて、苦しみ出した。何が起きているのか、さっぱりわからない。
でも、それで、魔界語が直ぐに習得できた理由も理解した。
私は、魔界語が話せたのに、その記憶を封印していただけ。日本語と同じだった。
実は、二回目の前世の夢をセージに話した時、前世の世界の言語を習得するかと質問され、日本語を取得した。その時、なんとなく、記憶をなくす前の私が話せた言語を意図的に、封印していただけではないかと気づいた。そうだとすると、魔界語も話せていたことになり、その理由が不思議でならなかった。
でも、ずっとこの魔人と一緒に生活していたのなら、話せるようになっていても、何ら不思議ではない。
「話はここまで。もう二度と、ここには来ないでください。とはいえ、ここから無事、帰ることができればの話ですが……」
何があったのか、さっぱりわからないけど、魔人は頭痛が治まったのか、そう言って、いつもの定位置に戻って、椅子の様な石に腰かけた。
『セージ、どうしたらいいの。このままじゃ、リットは死んじゃうし、ミラも、ケントも大怪我していて、当分は歩くこともできない』
やはり、セージは無視し続けている
クールタイムが終わると、もう一度、治癒魔法を発動した。何度も掛けても、効果は変わらないという話だけど、回復の兆候が見られない限り、掛け続けるつもりでいた。
『内臓よりも、頭から治療してください。壁に蹴り飛ばされた際、脳内出血が起きていて、それため、他の箇所の回復が起きないのだと、思われますゆえ』
漸く、セージが応えてくれた。
そして、言われたように、頭の方に手を当てると、漸く、少しずつ回復の兆候が見え始めた。
「よかった。これで、きっと助かる。セージありがとう」
素直に感謝してあげたのに、セージはまた沈黙を決め込んでしまった。
「メグ、ういだったか」
漸く、ケントが目を覚ましたみたいだけど、唇が大きく腫れているためか、口の中が切れているためかは分からないが、上手に話せなくなっていた。
メグは、急いで、ケントの許に駆け寄る。
「魔人に降参して、二度と戦わない約束で、見逃してもらったの。魔人はそこに座ってるけど、もう大丈夫だから。でも、ミラは、鼻骨や顎が陥没していて、頭蓋骨にも皹が入ってるかもしれない重傷で、リットに関しては、肋骨が肺に刺さっていて、内臓も破裂しているみたいで、絶対安静の重態なの。どうしよう」
「うろさないあくそくなら、たすえをよんれくれ」
殺さない約束なら、助けを呼んでくれと、ケントが言ってきた。ケントは三人の中で、一番軽症で、四時間後に、もう一度、治癒魔法を掛ければ、自力で治癒しそうだけど、残りの二人は、直ぐにでもちゃんと治療を受けさせないと、もう冒険者を続けることすら困難になる。
「分かった。待っててね。必ず、救援隊を呼んでくるから」
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