私って何者なの

根鳥 泰造

文字の大きさ
34 / 56
第三章 裏切りと復讐の果て

行き恥をさらすくらいなら

しおりを挟む
 気づくと、真っ暗な樽の様な狭い中に閉じ込められていた。ガタガタと揺れているので、馬車か何かで、どこかに連れて行こうとしているらしい。
 口に猿轡されて、詠唱できなくしてあるが、ここから抜け出すなんて、造作もないこと。
 そう思って、岩柱壁を発動しようとするが、何故か、魔法が発動できない。
 他の魔法も試みたが、一切の魔法が発動できなくなっていた。
『メグ様の首に付けられているのが、魔法封じのアイテムかと思います』
 そういえば、首輪が取り付けられている。
 でも、後ろ手に縛られているので、その首輪を外すことすらできない。
 仕方なく、頭突きするようにして、蓋を破ろうと試みたが、びくともしない。
 何とかここから脱出する方法はないかと、セージと相談してみたが、手が自由にならないかぎり、どうにもならず、この樽から出され、ロープを解かれるまで、じっと待つしかないという結論となった。
 でも、何時まで経っても、この樽から出してもらえない。
 お腹は減るし、尿意も我慢できなくなり、最悪の事態になった。

 そして、樽に入れられたまま、少なくとも三日程が経ち、喉の渇きも、空腹も感じなくなり、意識が朦朧として、もう死を覚悟しはじめた時だった。
 目的地に着いたらしく、メグは、樽毎、どこかに運ばれていった。

「臭いな」
 樽の蓋が開け、覗き込んできたのは、月光のリーダーレオだった。
 やはり、レオがロンブル帝国の送り込んだ工作員だった。
「とりあえず、牢屋の中に、繋いでおけ」
 メグを樽から引っ張り出したのは、トムとケンの二人だった。
「お前の所為で、俺たちは飛んでもない目に遭わされ続けることになったんだ。しっかり、その仕返しはさせてもらうからな」
 そう言って、手のロープを解いてくれたが、メグは暴れることも、首輪を外す事も出来なかった。
 三日以上も、飲まず食わずでいたので、手足が勝手に痙攣して、全くといっていいほど動かせなかったのだ。
 それでも、頑張って、もう一度、魔法を試みたが、やはり何も発動できず、彼らにされるがままに、牢屋の奥の鉄枷に手を縛られた。
「こんなに臭いまま、バロック様に献上する訳には行かんし、脱水症状で死なれても困るからな。水で綺麗に洗ってやれ」
 ケンとトムの二人は、ニヤニヤして、木のバケツに水を汲んで、再び牢屋に入っ来た。
「今から、裸にひん剥いて、全身綺麗にしてやるからな」
 ああ、こんな男たちに辱めを受けてしまうの。
 仲間も皆殺しにされたのなら、一人で生きていても、もう意味がない。いっそのこと、舌を噛み切って死んだほうがましだけど、猿轡されているので、それすらできない。
『メグ様、必ず、誰かが助けに来てくれます。今は、屈辱に耐え忍ぶ時です』
 セージには、私の気持ちは分からない。ここがどこかも分からないし、仲間も殺され、助けに来てくれる人なんて、誰もいない。ああ、死んでしまいたい。
 彼らが、メグのベルトを外し、ズボンを脱がそうとしてきた時、ドアが開いて、あの魔獣使いの男が現れた。
「あの女の様子は、どうだ」
 トムとケンも、慌てて直立姿勢を取る。
「バロック様、糞尿塗れだったので、今、綺麗にしようとしていたところでして」
「そんなことはどうでも良い。とりあえず、この薬を小さじ一杯分を、六時間於きに、飲ませ続けろ。そうすれば、この薬欲しさに、なんでも言う事を利く忠実な下部になる。俺は、牧場の用事があるので、お前たちに任せるが、薬の分量を絶対に間違えるなよ」
 そういって、バロックは再び牢屋から出て行った。

「それじゃ、続きを楽しむとするか」
 ついにズボンを脱がされてしまった。
 神様。これからは一生懸命に、信仰しますから、彼らに天罰を与えてください。
 ついに、神頼みまで始めたメグだったが、普段から神様を信仰していない彼女のことなんて、神様だって、助けるわけがない。
 ケンが、ニヤニヤしながら、パンツに手を掛けてきた。

「グワッ」 リーダーのレオの断末魔が聞こえた。
 そして、首から血を流して、パタンと倒れると、その背後に、モローが立っていた。
「メグ、待たせたな」
「くそ。どうやって、ここんなところまで」
 モローは、ナイフを手に、牢屋の中に飛び込んできて、あっという間に二人を片付けた。
 
「お前、かなり臭いぞ」
 そう言いながら、猿轡を取って、手枷を外そうとし始めた。
 モローに汚れたパンツ姿を見られて、死んでしまいたい程恥ずかしかったけど、今はお礼を言うのが先。
「モロー。もうだめかと思った。助けに来てくれて、ありがとう」
「なに、あいつらに頼まれたから、仕方なくな」
「えっ。あいつらって、皆、生きていたの?」
「ああ、俺たちが救援に駆けつけた時は、全身大火傷の瀕死だったが、なんとか三人とも、一命は取り留めた」
 ああ、よかった。ミラ、ケント、リットの三人も生きていてくれた。
「やはり、はずせないな。少し待ってろ。鍵を探す」
『手枷の鍵は、ケンの右ポケットに入っている筈です』
「その男の右ホケットに鍵が入っている筈」
「よく観察していたな。偉いぞ」
 そう言って、鍵を見つけ出し、手枷を外してくれた。
「じゃあ、逃げるぞと言いたいが、その臭いをなんとかしろ。臭くて直ぐに見つかることになるからな」
 そういって、モローは後ろを向いて、こっちを見ない様にしてくれた。
 何とかしろと言われても、このパンツを脱ぎ棄てて、身体を拭くしかないけど、見ないようにしてくれていても、猛烈に恥ずかしい。
 とりあえず、水分補給をして、首輪を外し、身体を綺麗にすることにした。
「モロー独りで、助けにきてくれたの? よくここにいると分かったね」
「いや、あの三人も、囮となって戦ってくれている。場所は、ワイバーン飼育場の近くだろうと辺りを付けて、その一番近くの砦に来てみただけさ」
 確かに、敵地に潜入して捜索するなら、盗賊のモロー独りの方が、見つからずに動けるし、誰かが騒ぎを起こし、兵隊の目をそっちに向けさせる作戦は妥当で、納得はいく。
 でも、大火傷の瀕死状態だったのなら、おそらくまだ動ける状態ではない筈。きっと、歩くのですら辛い筈。それなのに、こんな遠くまで、駆けつけて来て、兵の目を惹いて、戦ってくれている。
 私を救出するため、そんな無理までしてくれていると思うと、嬉しくてならなかった。

 さて、身体は綺麗になったけど、どうしよう。汚れたパンツや、ズボンを洗っている時間はない。
 その時、ケンの死体が目に入った。この際、仕方がない。
 ミラは、ケンのズボンを脱がせると、ノーパンのまま、それを穿き、ベルトでずれ落ちない様に、しっかりと固定した。
「準備できました。行きましょう」
 メグとモローは、その地下牢から外に出て行ったが、メグはズボンが股に食い込むのか、股間ばかり気にしていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊
ファンタジー
気が付くとまん丸と太った少女だった?! 痩せたいのに食事を制限しても運動をしても太っていってしまう。 一体私が何をしたというのよーっ! 驚愕の異世界転生、始まり始まり。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

処理中です...