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君への興味
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買い出しを終えたナタンたちが「躍る子熊亭」に戻ると、宿の主人から、部屋の準備が済んだと知らされた。
案内されたのは、四人まで宿泊できるという部屋だった。
四つの寝台で部屋は満杯に近いが、寝るだけであれば十分だろう。
もっと価格帯の安い宿では、見知らぬ者たちと相部屋で雑魚寝という話もあり、それに比べたなら遥かに贅沢と言える。
「寝台で寝るの、久々です。……モントリヒトから、ここに来るまでは、乗り物の中で仮眠をとるだけだったので」
寝台の一つに腰を下ろしたリリエは、そう言うと、雑貨屋で購入した冊子を取り出して広げた。
最初の頁には、『帝都跡』の全体図が描かれている。
リリエは、更に、折りたたまれた一枚の紙を取り出した。
寝台の上に広げられた紙には、やはり『帝都跡』の地図が描かれている。
「それも、『帝都跡』の地図だね?」
ナタンは首を傾げた。
「こちらは、『帝都跡』に行ったことがあるという方から譲っていただいたものですが、作られたのは十年近く前と聞いています。最新のものは、やはり、探索済みの区域が広がっていますね」
発掘人たちによる探索が始まった当初の「帝都跡」は、廃墟と化し長い間放置された帝都に植物が繁茂し、一見すると森のようだったという。
やがて、発掘人たちによって道が踏み固められ、発掘の進んだ場所であれば、それほど苦労せずに辿り着ける状態になっているらしい。
「所々に休憩できる小屋まで作ったのか。観光地の山のようだな」
フェリクスが、感心した様子で言った。
「……この辺りが、かつて皇帝の住む皇宮のあった場所とされています」
リリエが指差したのは、何もない空白のような場所だった。
「かつて高度な魔法文明を誇り繫栄したアルカナム魔導帝国は、世界全てを支配する為、あらゆる国に戦争を仕掛けていた……というのは、知っていますよね?」
「うん、歴史で習ったよ。圧倒的な力で大陸全土を焼き尽くさんばかりだった帝国だが、ある時、一夜にして帝都が壊滅し、それから長い間、混乱が続いた……ってやつだろ」
「そうですね」
ナタンの言葉に、リリエは頷いた。
「一夜にして都市が壊滅した事例としては、戦争以外であれば、火山の爆発や大地震によるものがあります。でも、帝都『マグヌス』については、そういった自然災害が原因と考えるには腑に落ちない点が幾つもあります。魔導絡繰りが多数発掘されている場所には、建物の痕跡も残っていますが、こうして見ると、不自然だと思いませんか?」
リリエが指差す部分を視線でなぞっていたナタンも、彼女の言わんとすることが分かる気がした。
「帝都の中心部なら建物が密集していた筈なのに、痕跡の残っているところと、削り取られたみたいに何もない部分の差が極端だね」
「そうなんです。そして、こちらが『爆心地』と呼ばれる場所です」
次にリリエが指し示したのは、どう見ても不自然な「谷」とも巨大な「穴」ともつかない場所だった。
「平地の中に、突然でっかい穴が開いてるのか。地盤沈下とかの可能性もあるかもしれないけど」
「明らかに、地殻変動などの自然現象でできたものではないと思われます。あと、その穴の地表には、ありえない程の……現代の技術では到底生み出せない高温に晒された痕跡があるそうです」
「へぇ……その『高温』が、当時の魔法の技術によって生まれたってこと?」
「そうです! 私は、そう考えているんです」
ナタンの言葉に、リリエは少し興奮した様子で何度も頷いた。
「帝都壊滅の原因は、魔導絡繰りを用いた兵器の暴走や起動実験の失敗ではないか、というのが、私の仮説です。街の中で、削り取られたように消失している部分も、高出力の破壊光線のようなものが照射されたのではないかと」
「なるほどねぇ」
頬を赤らめ、生き生きと語るリリエを見て、ナタンも嬉しい気持ちになった。
「ただ、問題はそこではなくて、当時の高出力な魔導絡繰りを再現できたなら、世界にはあらゆる面で革命が起きるということです。もちろん、平和的な利用に限定しなければいけませんけど」
「そんな技術を兵器に転用したら、大変なことになるもんな」
そう言うのと同時に、ナタンの腹の虫が派手な鳴き声をあげた。
「わわ……ごめん!」
「す、すみません……!」
ナタンとリリエは、同時に叫んだ。
「な、何で、君が謝るの?」
「は、話すのに夢中になって、時間を忘れていて……」
リリエが、肩を窄めて言った。
「俺は、君の話を聞くのが楽しくて、腹が減ってるの忘れてたよ」
ナタンは、からからと笑った。
「で、でも、私の話に興味を持って聞いてもらえて嬉しい……です」
リリエも、恥じらうように微笑んだ。
君に興味があるから、君の話も聞きたいんだ――ナタンは、そう言いかけたが、少し恥ずかしい気がして、その言葉は飲み込んだ。
ふと、リリエがフェリクスとセレスティアに目をやった。
二人は、心なしか困惑の入り混じった複雑な表情を見せている。
「あ、あの、さっきの話、何か矛盾点や、おかしなところがありましたか?」
「いや、残された痕跡からの考察として合理的だし、矛盾は無いと思う。俺に、難しいことは分からないが」
リリエに尋ねられ、フェリクスは曖昧な笑みを浮かべた。
「ナタンが、お腹を空かせているみたいだし、食堂に行きませんか」
セレスティアの提案に反対する者がいる訳はなく、一同は、階下の食堂へ夕食を摂りに向かった。
ナタンは、先刻のフェリクスとセレスティアの様子に微かな違和感を覚えたものの、気の所為だと片付けて、白米に合いそうな料理を思い浮かべた。
案内されたのは、四人まで宿泊できるという部屋だった。
四つの寝台で部屋は満杯に近いが、寝るだけであれば十分だろう。
もっと価格帯の安い宿では、見知らぬ者たちと相部屋で雑魚寝という話もあり、それに比べたなら遥かに贅沢と言える。
「寝台で寝るの、久々です。……モントリヒトから、ここに来るまでは、乗り物の中で仮眠をとるだけだったので」
寝台の一つに腰を下ろしたリリエは、そう言うと、雑貨屋で購入した冊子を取り出して広げた。
最初の頁には、『帝都跡』の全体図が描かれている。
リリエは、更に、折りたたまれた一枚の紙を取り出した。
寝台の上に広げられた紙には、やはり『帝都跡』の地図が描かれている。
「それも、『帝都跡』の地図だね?」
ナタンは首を傾げた。
「こちらは、『帝都跡』に行ったことがあるという方から譲っていただいたものですが、作られたのは十年近く前と聞いています。最新のものは、やはり、探索済みの区域が広がっていますね」
発掘人たちによる探索が始まった当初の「帝都跡」は、廃墟と化し長い間放置された帝都に植物が繁茂し、一見すると森のようだったという。
やがて、発掘人たちによって道が踏み固められ、発掘の進んだ場所であれば、それほど苦労せずに辿り着ける状態になっているらしい。
「所々に休憩できる小屋まで作ったのか。観光地の山のようだな」
フェリクスが、感心した様子で言った。
「……この辺りが、かつて皇帝の住む皇宮のあった場所とされています」
リリエが指差したのは、何もない空白のような場所だった。
「かつて高度な魔法文明を誇り繫栄したアルカナム魔導帝国は、世界全てを支配する為、あらゆる国に戦争を仕掛けていた……というのは、知っていますよね?」
「うん、歴史で習ったよ。圧倒的な力で大陸全土を焼き尽くさんばかりだった帝国だが、ある時、一夜にして帝都が壊滅し、それから長い間、混乱が続いた……ってやつだろ」
「そうですね」
ナタンの言葉に、リリエは頷いた。
「一夜にして都市が壊滅した事例としては、戦争以外であれば、火山の爆発や大地震によるものがあります。でも、帝都『マグヌス』については、そういった自然災害が原因と考えるには腑に落ちない点が幾つもあります。魔導絡繰りが多数発掘されている場所には、建物の痕跡も残っていますが、こうして見ると、不自然だと思いませんか?」
リリエが指差す部分を視線でなぞっていたナタンも、彼女の言わんとすることが分かる気がした。
「帝都の中心部なら建物が密集していた筈なのに、痕跡の残っているところと、削り取られたみたいに何もない部分の差が極端だね」
「そうなんです。そして、こちらが『爆心地』と呼ばれる場所です」
次にリリエが指し示したのは、どう見ても不自然な「谷」とも巨大な「穴」ともつかない場所だった。
「平地の中に、突然でっかい穴が開いてるのか。地盤沈下とかの可能性もあるかもしれないけど」
「明らかに、地殻変動などの自然現象でできたものではないと思われます。あと、その穴の地表には、ありえない程の……現代の技術では到底生み出せない高温に晒された痕跡があるそうです」
「へぇ……その『高温』が、当時の魔法の技術によって生まれたってこと?」
「そうです! 私は、そう考えているんです」
ナタンの言葉に、リリエは少し興奮した様子で何度も頷いた。
「帝都壊滅の原因は、魔導絡繰りを用いた兵器の暴走や起動実験の失敗ではないか、というのが、私の仮説です。街の中で、削り取られたように消失している部分も、高出力の破壊光線のようなものが照射されたのではないかと」
「なるほどねぇ」
頬を赤らめ、生き生きと語るリリエを見て、ナタンも嬉しい気持ちになった。
「ただ、問題はそこではなくて、当時の高出力な魔導絡繰りを再現できたなら、世界にはあらゆる面で革命が起きるということです。もちろん、平和的な利用に限定しなければいけませんけど」
「そんな技術を兵器に転用したら、大変なことになるもんな」
そう言うのと同時に、ナタンの腹の虫が派手な鳴き声をあげた。
「わわ……ごめん!」
「す、すみません……!」
ナタンとリリエは、同時に叫んだ。
「な、何で、君が謝るの?」
「は、話すのに夢中になって、時間を忘れていて……」
リリエが、肩を窄めて言った。
「俺は、君の話を聞くのが楽しくて、腹が減ってるの忘れてたよ」
ナタンは、からからと笑った。
「で、でも、私の話に興味を持って聞いてもらえて嬉しい……です」
リリエも、恥じらうように微笑んだ。
君に興味があるから、君の話も聞きたいんだ――ナタンは、そう言いかけたが、少し恥ずかしい気がして、その言葉は飲み込んだ。
ふと、リリエがフェリクスとセレスティアに目をやった。
二人は、心なしか困惑の入り混じった複雑な表情を見せている。
「あ、あの、さっきの話、何か矛盾点や、おかしなところがありましたか?」
「いや、残された痕跡からの考察として合理的だし、矛盾は無いと思う。俺に、難しいことは分からないが」
リリエに尋ねられ、フェリクスは曖昧な笑みを浮かべた。
「ナタンが、お腹を空かせているみたいだし、食堂に行きませんか」
セレスティアの提案に反対する者がいる訳はなく、一同は、階下の食堂へ夕食を摂りに向かった。
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