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惑星の瞳(挿し絵有り)
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運転席では、中年と思われる女性が、ぐったりと車輪操舵装置に寄りかかっている。見開かれた目に光はなく、既に息をしていなかった。致命傷を負っていたのだろう。
後部座席には、白いドレスをまとった美しい少女が倒れていた。十代後半というところだろうか。腰まで伸びた、絹糸を思わせる、白に近い金髪が目を引いた。
こちらは、奇跡的に目立つ外傷などはなく、気を失っているだけのようだ。
フェリクスは、追いついたアーブルと共に、二人を車内から運び出し、柔らかい草の生えた地面に寝かせた。
「この二人、服装からすると身分の高い人みたいだな。母娘……にしては似てないけど」
アーブルが言って、開いたままだった中年女性の目を、指先で静かに閉じさせた。
彼の言葉の通り、中年女性と少女の着ているドレスは、それほど飾り気のないものだが、よく見れば、上質な生地で作られているのが分かる。
と、少女が微かに呻いて、薄らと目を開けた。
その目は、一見、普通の青い瞳だが、瞳孔の周囲には緑や橙色の部分が入り混じる、不思議な色をしていた。
まるで、宇宙から見た惑星のようだ、とフェリクスは思った。だが、何故、自分が「宇宙から見た惑星」を知っているのか……どこで、そのようなものを見たのかは、全く思い出せなかった。
少女は、よろよろと身を起こしたが、肩の辺りを手で押さえ、少し顔をしかめた。目に見えて大きな傷がないとはいえ、車両が横転した際に、身体のあちこちを打ったのだろう。
「無理をするな」
フェリクスは、咄嗟に腕で少女の身体を支えてやった。
少女は、フェリクスの顔を見上げると、驚いた様子で目を見張った。
「……『ばあや』は……?!」
澄んだ声で小さく叫んだ少女は、傍らに横たわる中年女性の亡骸に気付くと、彼女に縋った。
「俺たちが来たときには、もう亡くなってたんだ……」
アーブルが、すまなそうに言った。
少女は、亡くなった中年女性の服の端を掴んだまま、呆然とした表情で座り込んだ。
「ばあや」と呼ばれる、この女性は、少女にとって大切な存在だったのだろう。
うちひしがれる少女の姿を見たフェリクスは、自分がモンスとシルワの死を知った時のことを思い出した。
目の前の残酷な事実を受け入れられず、何も考えられない……この少女も、あの時の自分と同じなのかもしれない――フェリクスは、半ば無意識に、どうにかしてやらなければと考えていた。
だが、具体的に何をするべきかが分からず、彼は歯痒い気持ちになった。
少なくとも、彼女をここに置いていく訳にはいかないと、フェリクスは思った。
後部座席には、白いドレスをまとった美しい少女が倒れていた。十代後半というところだろうか。腰まで伸びた、絹糸を思わせる、白に近い金髪が目を引いた。
こちらは、奇跡的に目立つ外傷などはなく、気を失っているだけのようだ。
フェリクスは、追いついたアーブルと共に、二人を車内から運び出し、柔らかい草の生えた地面に寝かせた。
「この二人、服装からすると身分の高い人みたいだな。母娘……にしては似てないけど」
アーブルが言って、開いたままだった中年女性の目を、指先で静かに閉じさせた。
彼の言葉の通り、中年女性と少女の着ているドレスは、それほど飾り気のないものだが、よく見れば、上質な生地で作られているのが分かる。
と、少女が微かに呻いて、薄らと目を開けた。
その目は、一見、普通の青い瞳だが、瞳孔の周囲には緑や橙色の部分が入り混じる、不思議な色をしていた。
まるで、宇宙から見た惑星のようだ、とフェリクスは思った。だが、何故、自分が「宇宙から見た惑星」を知っているのか……どこで、そのようなものを見たのかは、全く思い出せなかった。
少女は、よろよろと身を起こしたが、肩の辺りを手で押さえ、少し顔をしかめた。目に見えて大きな傷がないとはいえ、車両が横転した際に、身体のあちこちを打ったのだろう。
「無理をするな」
フェリクスは、咄嗟に腕で少女の身体を支えてやった。
少女は、フェリクスの顔を見上げると、驚いた様子で目を見張った。
「……『ばあや』は……?!」
澄んだ声で小さく叫んだ少女は、傍らに横たわる中年女性の亡骸に気付くと、彼女に縋った。
「俺たちが来たときには、もう亡くなってたんだ……」
アーブルが、すまなそうに言った。
少女は、亡くなった中年女性の服の端を掴んだまま、呆然とした表情で座り込んだ。
「ばあや」と呼ばれる、この女性は、少女にとって大切な存在だったのだろう。
うちひしがれる少女の姿を見たフェリクスは、自分がモンスとシルワの死を知った時のことを思い出した。
目の前の残酷な事実を受け入れられず、何も考えられない……この少女も、あの時の自分と同じなのかもしれない――フェリクスは、半ば無意識に、どうにかしてやらなければと考えていた。
だが、具体的に何をするべきかが分からず、彼は歯痒い気持ちになった。
少なくとも、彼女をここに置いていく訳にはいかないと、フェリクスは思った。
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