アストルムクロニカ-箱庭幻想譚-(挿し絵有り)

くまのこ

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◆荒野に咲く花1

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 セレスティアたちを乗せた飛空艇は、反帝国組織「リベラティオ」からの迎えが待つ合流地点に到着した。
「我々は、引き続き国外における情報収集にあたります。セレスティア殿たちの、ご健勝を祈ります」
 サレは、そう言い残すと、仲間と共に、再び飛空艇で飛び立った。
 組織の「迎え」は、魔導絡繰まどうからくりを用いた「車両」――辺境の小国で育ったセレスティアが見ても、かなりの費用がかかっていると分かる高性能なものだ。
「ここからは、我々が『頭領』のところまでお連れします」
 組織の構成員たちが、セレスティアたちを出迎えた。
「反帝国組織とは、本当に結構な余裕があるんだな」
 思わず呟いたフェリクスに、構成員が説明した。
「『頭領』は、さる高貴なお方でもあり、組織の活動の為に私財を投入されています。その他にも、我々の活動に賛同し、密かに協力してくださっている方々も存在するのです」
 彼らを乗せた車両は、やがて国境付近に差し掛かった。
 地面から僅かに浮上して滑るように進む「車両」の乗り心地は、快適なものだ。
「国境を超える際に、検問などはないのですか」
 セレスティアは、不安を感じて、同行している構成員に尋ねた。
「我々が通る経路は、『頭領』の領地内である為、この車両であれば止められることもありません」
 構成員が、こともなげに答えた。
「ちょっと待って。『頭領』って、実は本当に相当な大物なのか?」
「それは、ご本人から直接説明したいと承っています……」
 アーブルが問いかけたものの、構成員は言葉を濁した。
 今はまだ、正式に協力関係を結んでいない段階でもあり、正体を明かしたくないのだろう。
「それほど広大な領地を持っていることから考えると、『頭領』は貴族階級か、あるいは富豪なのかもしれませんね」
「だが、どちらにしても、現在の帝国では既得権益を得ている立場ではないのか。そういう者が、社会の基盤と化している『智の女神』の排除を目論んだりするだろうか」
 セレスティアの言葉に、フェリクスが疑問を呈した。
「『頭領』は、ご自分だけが恵まれていればよいなどとお考えになる方ではありません。皆が平等に豊かさを享受できる社会への変革を目指されているのです」
 構成員の言葉から、彼らの「頭領」に対する信頼感がうかがえると、セレスティアは感じた。
 国境を超えてから、整備された街道を数時間走り続けた車両は、比較的大きいと言える街に入った。
 車窓から見える、整然とした街並みや、人々で賑わう商店街の様子は、とても、この国が世界中に戦争を仕掛けているとは思えない、平和なものだ。
「今日は、この街で一泊します。明日の朝に出発すれば、日没の頃には目的地に着く予定です」
 セレスティアたちを宿まで送り届けた構成員たちが、今後の予定を説明した。
「念の為、こちらを着用してください」
 車両から出ようとしたセレスティアたちは、構成員から頭巾の付いた外套を渡された。
「ちょっと、街を見て回っちゃ不味まずいかな?」
 賑わう街を興味ありげに見ていたアーブルが言った。
「申し訳ありませんが、人目につくような行動は控えてください。食事や必要な物品なども、部屋に届けさせますので」
「そうか……そうだよな」
 構成員にたしなめられ、アーブルは肩を落とした。
 たしかに、反帝国組織と関わった以上、不用意な行動を取るのは危険だろう。
 特に、セレスティアは帝国側に顔を知られている。
 しかし、同時に、自分たちは組織からも監視される立場になったのだと、セレスティアは思った。
 案内された宿は、帝国内では、むしろ安価なところだと聞いたが、一目見て清潔で快適そうな様子が分かる。
 国境の外側の荒れ果てた世界と、内側の豊かで穏やかな世界が見せる、あまりの落差に、セレスティアは眩暈に似た感覚を覚えた。
 セレスティアたちは宿泊する部屋へ通された。フェリクスとアーブルは、当然のようにセレスティアとは別の部屋を宛てがわれた。
 案内された部屋で、セレスティアは、運ばれた夕食を独りきりでった。
 料理自体は、故郷で平穏な生活を送っていた頃と同等、あるいは、それよりも豊富な食材が使用されているものだ。
 しかし、フェリクスたちと行動を共にするようになってから初めて味わう孤独な食卓は、彼女にとって味気ないものに思えた。
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