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第17話:王女様との関係
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オレは自由を手にして、北の名門キタエル剣士学園に入学。
謎の激ヤセでイケメン風に、クラスの女の子からも高い好感度を。
転入生のお姫様マリエルの暴走を助け、彼女と同居することになった。
◇
同居初日の朝。
「ねぇ、マリエル。朝だよ」
「えっ? ハリト様⁉ キャッ!」
マリエルは寝ぼけていた、ベッドから落ちてしまう。
ネグリジェの大きくまくれて、彼女のピンクの下着と太ももが露わなる。
プライベートの彼女は、かなり“うっかりさん”なのだ。
「大丈夫? マリエル?」
「は、はい。大変お見苦しいところを」
「オレは大丈夫だけど、その……マリエルの、か、可愛い下着が、丸見えでして……」
「ひゃっ? し、失礼いたします!」
顔を真っ赤にして、マリエルは奥の部屋に逃げていく。
メイドの控える衣装室に、制服に着替えに行ったのだ。
「ふう……なんか、騒がしくなりそうだけど、オレも準備ないと!」
オレの汚れた制服は、昨夜のうちにメイドさんが洗濯くれた。
制服に着替えて、学園に向かう準備をする。
その後は、案内に従って、屋敷の朝食会場に。
「「いただきます!」」
マリエルと一緒に挨拶をして、朝食に口をつけていく。
うん、美味しい!
すごく美味い!
出された食事は全てが、最高に美味い。
何でも、この屋敷には専用の料理人がいるという。
キタエル地方の特産品を使って、朝から豪華な食事を頂く。
あまりの美味しさに、何回もお替りしてしまった。
「ハリト様、そろそろお時間です」
「あっ、本当だ! それじゃ、行こう。マリエル」
「はい!」
二人で一緒に、屋敷の玄関を出ていく。
屋敷中の使用人が、全員で見送ってくれる。
門番の剣士さんたちが、最後に送りだしてくれた。
「これはマリエル様。それにハリト殿。お気をつけて」
「学園でのマリエル様ことは、頼みましたぞ、ハリト殿!」
どんな大貴族でも生徒は、学園内に従者や護衛を連れていけない。
王女マリエルも一人前の剣士になるため、ここから先は一人で歩いていくのだ。
二人で一緒に、校舎に向かって歩いていく。
まだ時間に余裕はある。
「うっふふ……」
歩いていると、マリエルが急に笑いだす。
いったいどうしたのかな?
「ん? どしたの?」
「いえ、こうしてハリト様と歩いていると、自然と笑みが出てきました」
「えっ? どうしてかな?」
「私もよく分かりません。不思議ですね。ふふふ……」
今日のマリエルは、朝から気分が良さそうだった。
とにかくよく笑って、元気に歩いている。
(もしかしたら王都のことをオレに告白して、心が軽くなったのかもな……)
昨日の襲撃の後、マリエルからたくさん話を聞いた。
ずっと溜まっていた靄が、心から消えたのであろう。
話を聞いてあげたオレも、なんか気分が良い。
「あっ、校舎ですわ、ハリト様」
「そうだね。そういえば、学園内で、どうする、オレたち?」
校舎に入る前に、確認したかったのは、二人の関係。
何しろマリエルは、一国の王女。
一方でオレは辺境の村出身の平民。
同居しているのを知られたら、王女であるマリエルは困るはずなのだ。
「いえ、私は知られても一向に構いません」
「えっ……でも、オレは田舎出で、普通の身分だけど……」
「この剣士学園では、身分は関係ありません。それに我が王国では、最終的“強い剣士”こそが、国を制することが出来ます」
「あっ、そっか……」
王国の国土は常に、魔物や魔獣の脅威に晒されている。
そのため有能な剣士の権力は、国内でも大きい。
手柄さえ立てたら、信じられないほど出世も可能。
過去には奴隷だった剣士が、腕一本で大貴族まで伸し上がった前例もある。
今回はオレの将来性を、当主イザベーラさんが先買い物した感じかな?
そのため先ほどの屋敷の皆も、オレとマリエルの仲を、快く認めてくれたのだ。
「だからハリト様が私と一緒にいても、問題ありません。むしろ私の方こそ、ハリト様に後れをとらないように、これから頑張ってついていきます!」
「マリエル……わかった。キミの決意が、そこまで固いなら、オレも大丈夫。マリエルに付いていくよ!」
こうして二人の公での関係が、決まった。
仲良く二人で校舎に、入っていくことにした。
校舎に入ってから、すぐ。
白衣を着た女性が、目の前を横切る。
「あっ、カテリーナ先生。おはようございます!」
「先生、おはようございます」
通りかかったのは、担任のカテリーナ先生。
真面目な口調の人だけど、今日も白衣と眼鏡で、どこかエロスを発している。
「あら、おはようございます。マリエルさんも、その顔色だと、体調は大丈夫そうですね?」
「はい、ご心配おかけいたしました。お陰様で、この通りに回復いたしました」
満面の笑みでマリエルは、先生に感謝を述べる。
本当に眩しい笑顔。
昨日とは別人のような雰囲気だ。
「あら? マリエルさん、あなた……?」
そんなマリエルの内面の変化に、同じ女性の先生も気が付く。
「もしかして……昨夜“大人”になったかしら?」
いきなり先生は変なことを口走る。
「大人……ですか?」
「昨夜、『ハリト君と夜を共に』? という意味よ?」
早朝からカテリーナ先生はすごい言葉を、真顔で発してきた。
きっと、気分が爽快になったマリエルの顔を見て、勘違いしているのであろう。
これは急いで、訂正しないと。
「はい、昨夜は、“ハリト様とベッドを共”にいたしました」
だがマリエルも先走る。
真顔で先生に答えてしまう。
いや……ちょっと、待って、マリエルさん。
たしかに昨夜、同じベッドで寝たけど、その言い方だと、更に誤解が大きく……。
「やっぱり、そうでしたか。ちなみに昨夜のハリト君は、どのような感じでしたか?」
「昨夜のハリト様は優しくて、でも気がついたら私、意識を失っていました。目を覚ましたら、ハリト様の腕の中で、朝日を迎えていました……」
ぶっはー!
それを聞いてオレは、口から変な液が出てしまう。
な、なに、頬を赤くして答えているんだ、マリエルさん⁉
い、いや……たしかに、マリエルの言っていることは、間違いではない。
昨夜、彼女は疲れで、すぐに寝てしまった。
それこそ気絶してしまったように。
それに朝もマリエルの方が寝ぼけて、オレに抱きついていた。
だから彼女は嘘を言っていない。
けど、今の返答で、ますます先生に誤解を与えてしまいそうだ。
「あら、そうでしたか。それにしても“はじめて”だったマリエルさんを、昇天させるとは。見かけによらず、ハリト君は技巧派だったのですね」
(い、いえ……だから、先生、それ誤解で……)
テンパリすぎて、オレは言葉が出てこない。
真顔で褒めてくる先生に、どうやって誤解を解けばいいのか分からない。
「でもハリト君、卒業までは、ちゃんと避妊してください、マリエルさんは王女ですから」
「ひ、ひにん……って、いやっ……だから……」
「あと、校舎内での性行為は禁止です。でもハリト君が“どうしても我慢できない”ときは、私の個室に来てください。善処します」
「だ、だ、だから……」
カテリーナ先生のエスカレートぶりが半端ない。
もはや言い訳の言葉すら出てこない。
「おや? それでは、そろそろ午前の授業です。二人とも遅刻しないように」
真顔でそう一方的に言い残して、カテリーナ先生は立ち去っていく。
「あっ、あっ……はぁ……」
一方で残されたオレはため息をつきながら、呆然と立ち尽くす。
朝から精神エネルギーが、ごっそり吸い取られた感じだ。
もしかしたらカテリーナ先生は、裏で【精気吸収】の剣術技を使えるのかもしれない。
あり得そうで……少し怖い。
「あの……ハリト様。少しお尋ねしても、よろしいですか?」
そんな時、マリエルが小声で訊ねてきた。
すごく真面目な顔だ。
どうしたんだろうか?
「先ほど先生が口にしていた『ひにん』と『せいこうい』とは、いったいどういう意味ですか?」
「ふぇっ⁉」
思わず変な声が出てしまう。
(カ、カテリーナ先生……オレはアナタを恨みますよ……はぁ……)
とりあえず真顔で聞いてきたマリエルには、適当に誤魔化しておいた。
『オレは上手く説明できないから、イザベーラさんかカテリーナ先生に、詳しく聞いてみて?』という感じで言っておいた。
「よ、よし。とりあえず、教室に行こう!」
「はい、ハリト様」
こうして朝からバタバタしながら、オレたちは教室に駆けていく。
◇
その後、教室に入ってからも、色々と大変だった。
何しろ転入してきたばかりの王女が、平民でのオレと一緒に、仲良く登校したのだ。
入った瞬間に、教室中がザワついていた。
でもクラスでの騒ぎは、オレの予想とは違う方向だった。
何故なら多くの生徒が、何かを納得していたのだ。
『我がクラス随一のイケメンのハリト……早くも王女様を陥落させたのか……』
『ああ……さすがは“魔道具クラッシャー”……女子に対しても、凄まじい破壊力……』
『あいつが相手なら、マリエル様のことは、オレたちも諦めるしかないな……』
『そうだな。敵わないな……』
男子生徒は称賛の目で、オレのことを見てくる。
中には小さく拍手してくる奴いた。
いや、ありがたいけど、その“魔道具クラッシャー”って何だ⁉
たしかに適性検査の時に、大事な魔道具を壊した。
けど、誰が、そんな変なあだ名をつけていたんだ。
しかも騒いでいるのは、男子だけはなかった。
女子の多くもザワザワしている。
『あーん、ハリト君が、奪われちゃったよー』
『でも、マリエル様が相手なら、仕方がないわよね……』
『そうね……美少年と美少女で、お似合いのカップルだからね……』
『だね。みんなで、応援していかないとね……』
『ねぇ、ねぇ、二人の結婚式には、何着ていく?』
『楽しみだねー♪』
男子よりも女子の話は、エスカレート度が凄い。
話は飛躍して、結婚式の話までしている。
いや、祝福されるのは嬉しいけど。
なんかみんな話が飛躍しすぎていて、いろいろと怖い。
でも、これでクラスの女の子のオレに対する態度が、少しでも落ちついてくれるといいな。
だが――――オレのこの予想も外れる。
「ねぇ……ハーリト君♪」
「やっほー、ハリト君♪」
クラスで一番積極的な、例の女の子たち。
またオレの密着してきたのだ。
いったいいつの間に、接近していたのでろうか?
油断していた訳でないのに、虚をつかれた。
もしかしたら、この子たちは将来すごい隠密型の剣士になるのでは。
「ねぇ、ハリト君。本命はマリエル様で、構わないから、私ともデートしようよ……」
「王家は一夫多妻制みたいだから、こっそりとね……」
油断していたので、いつも以上にグイグイくっつかれてしまう。
しかもマリエルから見えない角度から。
「楽しみだね、ハリト君との夜は……なんか夜の方も、“すごい”みたいだら……ね♪」
「マリエル様の“小さくて可愛いの”を食べ飽きたら……私の“大きいの”を食べてもいいんだよ……」
今日の密着度は、いつも以上に強引。
たしかにマリエルの胸は、形は良いけど少しだけ小ぶり。
対抗するように大きくて柔らかい胸を、オレの手に押し当ててアピールをしてくる。
「い、いや……だから……ご、ごめんさい!」
これはまずい。
今日の説得は不可能。
どうにもならないので、男子の集団の方に走って逃げることにした。
ふう……あとはカテリーナ先生が来るまで、この子たちから逃げ切るしかない。
(まったく……みんなで、オレのことをイジって遊んできて。まぁ、数日もすれば落ち着くか……)
あまり気を落とさないように、自然体で授業に励むことにした。
◇
その後の一週間、クラスの中は相変わらずザワザワしていた。
みんなでオレとマリエルの仲の良さを、何かと祝ってくる。
だが金曜日ともなれば、騒ぎも落ち着いていった。
オレもほっとひと息。
これでゆっくり剣の鍛錬に励める。
あと、もう一つのオレの心配事。
マリエルとの同居も、なんとか上手いっていた。
というかマリエル邸の生活は快適すぎた。
何しろ食事が美味しくて、家事も全部メイドさんがやってくれる。
お蔭でオレは授業と剣士の修行に、前より専念できるようになった。
本当に有り難い同居生活だ。
あっ、でも。
唯一大変なのは“夜の方”。
あれから毎晩、マリエルと一緒に同じベッドで寝ている。
一人用のシングルベッドで。
「お、おじゃまします、マリエル……」
「はい、今日もよろしくお願いします、ハリト様……」
ベッドに入る時、互いの肌がくっつかないように、オレは気を付けて横になる。
でも狭いベッドなので、どうしても肌が触れ合ってしまう時もある。
そんな時は、お互いの心臓の鼓動が、聞こえてくるほどドキドキしてしまう。
「ハリト様……」
「マ、マリエル……あっ、そういえば、今日は授業でさ……」
そんな時は、二人で話をして心を落ち着かせる。
一杯いろんな話を。
「そういえばハリト様、私は今日……」
「へー、そうだったんだ……それは凄いね……」
ベッド中で静かに楽しく話をしていく。
本当に幸せな時間だ。
「ハリト……様……すぅ……すぅ……」
いつも先に寝落ちしてしまうのは、マリエルの方。
天使のように可愛い寝顔が、すぐ横にある。
そんな天国のような雰囲気の中、オレも眠りに入る。
だいたい二人とも毎晩、熟睡。
あっとう間に朝になる。
「むにゃ……むにゃ……ふぇ、ハリト様⁉」
相変わらずマリエルの抱きクセは、すごい。
いつもネグリジェから真っ白な胸元や、太ももを出してオレに抱きつてくる。
「も、申し訳ございません……また……」
話によると彼女は幼い時、母親を亡くした。
また父親は厳しいことで有名な国王。
そのため家族の愛情に飢えているのだ。
だから彼女の抱き癖のことは、オレも気にしないことにした。
まぁ……ちょっと……ドキドキするのを、オレが我慢すればばいいからね。
◇
そんな感じで同居してから一週間は、あっとう間に経つ。
そして今日は土曜日。
待ちに待った週末がやってきたのだ。
土曜と日曜は学園の授業なく、生徒は休み。
自由な時間なのだ。
「おはよう、マリエル。予定通り、今日は特訓にいくよ!」
「はい、ハリト様。そういえば向かう先は、どちらに?」
「それは着いてのお楽しみ!」
オレたちは制服姿に剣を装備、キタエルの街を飛び出す。
向かう先は、少し離れた所にある深い森。
そこは通称“魔の森”。
魔獣が出没する危険な場所だ。
「よし、着いたよ!」
こうしてオレたちは一人前の剣士になるために、魔獣相手に実戦訓練に挑むのであった。
謎の激ヤセでイケメン風に、クラスの女の子からも高い好感度を。
転入生のお姫様マリエルの暴走を助け、彼女と同居することになった。
◇
同居初日の朝。
「ねぇ、マリエル。朝だよ」
「えっ? ハリト様⁉ キャッ!」
マリエルは寝ぼけていた、ベッドから落ちてしまう。
ネグリジェの大きくまくれて、彼女のピンクの下着と太ももが露わなる。
プライベートの彼女は、かなり“うっかりさん”なのだ。
「大丈夫? マリエル?」
「は、はい。大変お見苦しいところを」
「オレは大丈夫だけど、その……マリエルの、か、可愛い下着が、丸見えでして……」
「ひゃっ? し、失礼いたします!」
顔を真っ赤にして、マリエルは奥の部屋に逃げていく。
メイドの控える衣装室に、制服に着替えに行ったのだ。
「ふう……なんか、騒がしくなりそうだけど、オレも準備ないと!」
オレの汚れた制服は、昨夜のうちにメイドさんが洗濯くれた。
制服に着替えて、学園に向かう準備をする。
その後は、案内に従って、屋敷の朝食会場に。
「「いただきます!」」
マリエルと一緒に挨拶をして、朝食に口をつけていく。
うん、美味しい!
すごく美味い!
出された食事は全てが、最高に美味い。
何でも、この屋敷には専用の料理人がいるという。
キタエル地方の特産品を使って、朝から豪華な食事を頂く。
あまりの美味しさに、何回もお替りしてしまった。
「ハリト様、そろそろお時間です」
「あっ、本当だ! それじゃ、行こう。マリエル」
「はい!」
二人で一緒に、屋敷の玄関を出ていく。
屋敷中の使用人が、全員で見送ってくれる。
門番の剣士さんたちが、最後に送りだしてくれた。
「これはマリエル様。それにハリト殿。お気をつけて」
「学園でのマリエル様ことは、頼みましたぞ、ハリト殿!」
どんな大貴族でも生徒は、学園内に従者や護衛を連れていけない。
王女マリエルも一人前の剣士になるため、ここから先は一人で歩いていくのだ。
二人で一緒に、校舎に向かって歩いていく。
まだ時間に余裕はある。
「うっふふ……」
歩いていると、マリエルが急に笑いだす。
いったいどうしたのかな?
「ん? どしたの?」
「いえ、こうしてハリト様と歩いていると、自然と笑みが出てきました」
「えっ? どうしてかな?」
「私もよく分かりません。不思議ですね。ふふふ……」
今日のマリエルは、朝から気分が良さそうだった。
とにかくよく笑って、元気に歩いている。
(もしかしたら王都のことをオレに告白して、心が軽くなったのかもな……)
昨日の襲撃の後、マリエルからたくさん話を聞いた。
ずっと溜まっていた靄が、心から消えたのであろう。
話を聞いてあげたオレも、なんか気分が良い。
「あっ、校舎ですわ、ハリト様」
「そうだね。そういえば、学園内で、どうする、オレたち?」
校舎に入る前に、確認したかったのは、二人の関係。
何しろマリエルは、一国の王女。
一方でオレは辺境の村出身の平民。
同居しているのを知られたら、王女であるマリエルは困るはずなのだ。
「いえ、私は知られても一向に構いません」
「えっ……でも、オレは田舎出で、普通の身分だけど……」
「この剣士学園では、身分は関係ありません。それに我が王国では、最終的“強い剣士”こそが、国を制することが出来ます」
「あっ、そっか……」
王国の国土は常に、魔物や魔獣の脅威に晒されている。
そのため有能な剣士の権力は、国内でも大きい。
手柄さえ立てたら、信じられないほど出世も可能。
過去には奴隷だった剣士が、腕一本で大貴族まで伸し上がった前例もある。
今回はオレの将来性を、当主イザベーラさんが先買い物した感じかな?
そのため先ほどの屋敷の皆も、オレとマリエルの仲を、快く認めてくれたのだ。
「だからハリト様が私と一緒にいても、問題ありません。むしろ私の方こそ、ハリト様に後れをとらないように、これから頑張ってついていきます!」
「マリエル……わかった。キミの決意が、そこまで固いなら、オレも大丈夫。マリエルに付いていくよ!」
こうして二人の公での関係が、決まった。
仲良く二人で校舎に、入っていくことにした。
校舎に入ってから、すぐ。
白衣を着た女性が、目の前を横切る。
「あっ、カテリーナ先生。おはようございます!」
「先生、おはようございます」
通りかかったのは、担任のカテリーナ先生。
真面目な口調の人だけど、今日も白衣と眼鏡で、どこかエロスを発している。
「あら、おはようございます。マリエルさんも、その顔色だと、体調は大丈夫そうですね?」
「はい、ご心配おかけいたしました。お陰様で、この通りに回復いたしました」
満面の笑みでマリエルは、先生に感謝を述べる。
本当に眩しい笑顔。
昨日とは別人のような雰囲気だ。
「あら? マリエルさん、あなた……?」
そんなマリエルの内面の変化に、同じ女性の先生も気が付く。
「もしかして……昨夜“大人”になったかしら?」
いきなり先生は変なことを口走る。
「大人……ですか?」
「昨夜、『ハリト君と夜を共に』? という意味よ?」
早朝からカテリーナ先生はすごい言葉を、真顔で発してきた。
きっと、気分が爽快になったマリエルの顔を見て、勘違いしているのであろう。
これは急いで、訂正しないと。
「はい、昨夜は、“ハリト様とベッドを共”にいたしました」
だがマリエルも先走る。
真顔で先生に答えてしまう。
いや……ちょっと、待って、マリエルさん。
たしかに昨夜、同じベッドで寝たけど、その言い方だと、更に誤解が大きく……。
「やっぱり、そうでしたか。ちなみに昨夜のハリト君は、どのような感じでしたか?」
「昨夜のハリト様は優しくて、でも気がついたら私、意識を失っていました。目を覚ましたら、ハリト様の腕の中で、朝日を迎えていました……」
ぶっはー!
それを聞いてオレは、口から変な液が出てしまう。
な、なに、頬を赤くして答えているんだ、マリエルさん⁉
い、いや……たしかに、マリエルの言っていることは、間違いではない。
昨夜、彼女は疲れで、すぐに寝てしまった。
それこそ気絶してしまったように。
それに朝もマリエルの方が寝ぼけて、オレに抱きついていた。
だから彼女は嘘を言っていない。
けど、今の返答で、ますます先生に誤解を与えてしまいそうだ。
「あら、そうでしたか。それにしても“はじめて”だったマリエルさんを、昇天させるとは。見かけによらず、ハリト君は技巧派だったのですね」
(い、いえ……だから、先生、それ誤解で……)
テンパリすぎて、オレは言葉が出てこない。
真顔で褒めてくる先生に、どうやって誤解を解けばいいのか分からない。
「でもハリト君、卒業までは、ちゃんと避妊してください、マリエルさんは王女ですから」
「ひ、ひにん……って、いやっ……だから……」
「あと、校舎内での性行為は禁止です。でもハリト君が“どうしても我慢できない”ときは、私の個室に来てください。善処します」
「だ、だ、だから……」
カテリーナ先生のエスカレートぶりが半端ない。
もはや言い訳の言葉すら出てこない。
「おや? それでは、そろそろ午前の授業です。二人とも遅刻しないように」
真顔でそう一方的に言い残して、カテリーナ先生は立ち去っていく。
「あっ、あっ……はぁ……」
一方で残されたオレはため息をつきながら、呆然と立ち尽くす。
朝から精神エネルギーが、ごっそり吸い取られた感じだ。
もしかしたらカテリーナ先生は、裏で【精気吸収】の剣術技を使えるのかもしれない。
あり得そうで……少し怖い。
「あの……ハリト様。少しお尋ねしても、よろしいですか?」
そんな時、マリエルが小声で訊ねてきた。
すごく真面目な顔だ。
どうしたんだろうか?
「先ほど先生が口にしていた『ひにん』と『せいこうい』とは、いったいどういう意味ですか?」
「ふぇっ⁉」
思わず変な声が出てしまう。
(カ、カテリーナ先生……オレはアナタを恨みますよ……はぁ……)
とりあえず真顔で聞いてきたマリエルには、適当に誤魔化しておいた。
『オレは上手く説明できないから、イザベーラさんかカテリーナ先生に、詳しく聞いてみて?』という感じで言っておいた。
「よ、よし。とりあえず、教室に行こう!」
「はい、ハリト様」
こうして朝からバタバタしながら、オレたちは教室に駆けていく。
◇
その後、教室に入ってからも、色々と大変だった。
何しろ転入してきたばかりの王女が、平民でのオレと一緒に、仲良く登校したのだ。
入った瞬間に、教室中がザワついていた。
でもクラスでの騒ぎは、オレの予想とは違う方向だった。
何故なら多くの生徒が、何かを納得していたのだ。
『我がクラス随一のイケメンのハリト……早くも王女様を陥落させたのか……』
『ああ……さすがは“魔道具クラッシャー”……女子に対しても、凄まじい破壊力……』
『あいつが相手なら、マリエル様のことは、オレたちも諦めるしかないな……』
『そうだな。敵わないな……』
男子生徒は称賛の目で、オレのことを見てくる。
中には小さく拍手してくる奴いた。
いや、ありがたいけど、その“魔道具クラッシャー”って何だ⁉
たしかに適性検査の時に、大事な魔道具を壊した。
けど、誰が、そんな変なあだ名をつけていたんだ。
しかも騒いでいるのは、男子だけはなかった。
女子の多くもザワザワしている。
『あーん、ハリト君が、奪われちゃったよー』
『でも、マリエル様が相手なら、仕方がないわよね……』
『そうね……美少年と美少女で、お似合いのカップルだからね……』
『だね。みんなで、応援していかないとね……』
『ねぇ、ねぇ、二人の結婚式には、何着ていく?』
『楽しみだねー♪』
男子よりも女子の話は、エスカレート度が凄い。
話は飛躍して、結婚式の話までしている。
いや、祝福されるのは嬉しいけど。
なんかみんな話が飛躍しすぎていて、いろいろと怖い。
でも、これでクラスの女の子のオレに対する態度が、少しでも落ちついてくれるといいな。
だが――――オレのこの予想も外れる。
「ねぇ……ハーリト君♪」
「やっほー、ハリト君♪」
クラスで一番積極的な、例の女の子たち。
またオレの密着してきたのだ。
いったいいつの間に、接近していたのでろうか?
油断していた訳でないのに、虚をつかれた。
もしかしたら、この子たちは将来すごい隠密型の剣士になるのでは。
「ねぇ、ハリト君。本命はマリエル様で、構わないから、私ともデートしようよ……」
「王家は一夫多妻制みたいだから、こっそりとね……」
油断していたので、いつも以上にグイグイくっつかれてしまう。
しかもマリエルから見えない角度から。
「楽しみだね、ハリト君との夜は……なんか夜の方も、“すごい”みたいだら……ね♪」
「マリエル様の“小さくて可愛いの”を食べ飽きたら……私の“大きいの”を食べてもいいんだよ……」
今日の密着度は、いつも以上に強引。
たしかにマリエルの胸は、形は良いけど少しだけ小ぶり。
対抗するように大きくて柔らかい胸を、オレの手に押し当ててアピールをしてくる。
「い、いや……だから……ご、ごめんさい!」
これはまずい。
今日の説得は不可能。
どうにもならないので、男子の集団の方に走って逃げることにした。
ふう……あとはカテリーナ先生が来るまで、この子たちから逃げ切るしかない。
(まったく……みんなで、オレのことをイジって遊んできて。まぁ、数日もすれば落ち着くか……)
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だが金曜日ともなれば、騒ぎも落ち着いていった。
オレもほっとひと息。
これでゆっくり剣の鍛錬に励める。
あと、もう一つのオレの心配事。
マリエルとの同居も、なんとか上手いっていた。
というかマリエル邸の生活は快適すぎた。
何しろ食事が美味しくて、家事も全部メイドさんがやってくれる。
お蔭でオレは授業と剣士の修行に、前より専念できるようになった。
本当に有り難い同居生活だ。
あっ、でも。
唯一大変なのは“夜の方”。
あれから毎晩、マリエルと一緒に同じベッドで寝ている。
一人用のシングルベッドで。
「お、おじゃまします、マリエル……」
「はい、今日もよろしくお願いします、ハリト様……」
ベッドに入る時、互いの肌がくっつかないように、オレは気を付けて横になる。
でも狭いベッドなので、どうしても肌が触れ合ってしまう時もある。
そんな時は、お互いの心臓の鼓動が、聞こえてくるほどドキドキしてしまう。
「ハリト様……」
「マ、マリエル……あっ、そういえば、今日は授業でさ……」
そんな時は、二人で話をして心を落ち着かせる。
一杯いろんな話を。
「そういえばハリト様、私は今日……」
「へー、そうだったんだ……それは凄いね……」
ベッド中で静かに楽しく話をしていく。
本当に幸せな時間だ。
「ハリト……様……すぅ……すぅ……」
いつも先に寝落ちしてしまうのは、マリエルの方。
天使のように可愛い寝顔が、すぐ横にある。
そんな天国のような雰囲気の中、オレも眠りに入る。
だいたい二人とも毎晩、熟睡。
あっとう間に朝になる。
「むにゃ……むにゃ……ふぇ、ハリト様⁉」
相変わらずマリエルの抱きクセは、すごい。
いつもネグリジェから真っ白な胸元や、太ももを出してオレに抱きつてくる。
「も、申し訳ございません……また……」
話によると彼女は幼い時、母親を亡くした。
また父親は厳しいことで有名な国王。
そのため家族の愛情に飢えているのだ。
だから彼女の抱き癖のことは、オレも気にしないことにした。
まぁ……ちょっと……ドキドキするのを、オレが我慢すればばいいからね。
◇
そんな感じで同居してから一週間は、あっとう間に経つ。
そして今日は土曜日。
待ちに待った週末がやってきたのだ。
土曜と日曜は学園の授業なく、生徒は休み。
自由な時間なのだ。
「おはよう、マリエル。予定通り、今日は特訓にいくよ!」
「はい、ハリト様。そういえば向かう先は、どちらに?」
「それは着いてのお楽しみ!」
オレたちは制服姿に剣を装備、キタエルの街を飛び出す。
向かう先は、少し離れた所にある深い森。
そこは通称“魔の森”。
魔獣が出没する危険な場所だ。
「よし、着いたよ!」
こうしてオレたちは一人前の剣士になるために、魔獣相手に実戦訓練に挑むのであった。
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