聖女な幼馴染に裏切られた少年、地獄の【一万倍の次元】の修行を突破。最強剣士として学園生活を満喫する

ハーーナ殿下

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第21話:猫獣人ミーケ

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 オレは自由を手にして、北の名門キタエル剣士学園に入学。
 お姫様マリエルと同居を開始。魔の森に実戦式の特訓にきた。

危険な魔物から、獣人の少女ミーケを助け出す。
マリエルと一緒に事情を聞くことにした。



「それより、ミーケ。なんで、こんな危ないところに一人でいたんだ?」

「ハリトにゃん……実はミーは……」

先ほどまで陽気だった獣人の子ミーケ。
急に神妙な顔になる。

「実はミーは……“強く”なるため、武者修行をしていた最中だニャン……」

「でも、ミーケさん、あんなに強いの……どうしてですか?」

マリエルが不思議がるのも無理はない。
先ほどのミーケの戦い方は、見事なものだった。

今回は上位魔獣で相手が悪すぎた。
普通に戦ったなら、たいがいの敵は倒せる。

おそらくキタエル学園の生徒と比べても、かなり上位の強さには入るであろう。

そんな彼女がもっと強くなりたい。
遠い獣人の里を離れ、こんな危険な森の奥まできて。

「何か、事情があるの、ミーケ?」

「そうニャン……実はミーの生まれ故郷が、滅ぼされてしまったニャン……」

「えっ……獣人の里が⁉」

「そうニャン。だから無力なミーは、もっと強くならないといけないニャン……」

「そうだったのか……」

ミーケの話を聞いて、オレは言葉を失う。
かなり重い内容。

生まれ故郷を滅ぼされてということは、ミーケの家族は全員……。

「ちなみ相手は誰か分かるの?」

「それがミーには分からないニャん……里が何者かに襲われてミーは滝つぼに落ちて……その後、気がついたら、里の皆は……だから危険を避けて、ここまで移動してきたニャン」

「そうだったのか。辛いことを聞いて、ごめんね」

「うんうん。大丈夫ニャン。ミーたち猫獣人は、気持ちの切り替えが早いのが、モットーにゃん」

そう強がりながらもミーケの顔は、まだ神妙だった。
きっと自分の中に悔しさが、残っているのであろう。

「だからミーは早く強いならいといけないニャン! 仇を討てるように、もっと強く!」

ミーケの目には強い意志が燃えていた。
絶対に強くなるための覚悟だ。

彼女は誰よりも真っ直ぐ。
だから危険を承知で、単身で魔の森に修行に来ていたのだ。

「でもミーケ。単独での魔物狩りは、まだ止めておいた方がいいよ。リスクが高すぎる」

「それは分かっているニャン。でもハリたん、ミーは強くならないといけないニャン……」

ミーケはかなり頑固な性格のようだ。
決意の意思は固く、説得に応じてくれない。

「うっうっう……」

そんな時である。
少女の泣き声が聞こえてきた。

「ミーケさん、可愛そう……」

泣いていたのはマリエルだった。
大粒の涙を流しながら、ミーケの想いに共感している。

「ハリト様……」

そしてオレのことを、じっと見つめてくる。
涙に濡れた瞳は、静かに物語っていた。

――――『ハリト様。ミーケさんのこと、助けることは可能ですか』という意志が。

もしかしたら、オレの一方的な勘違いかもしれない。

だがオレも男だ。
こんな悲しく純粋な瞳で見つめられたら、手助けをするしかない。

でもミーケの願いを叶えるためには、いったいどうすれば?

(ん……あっ、そうか!)

その時、一つアイデアが浮かんできた。

(うん、これは悪くないかもしれない)

このアイデアが上手くいけば、ちょうどオレの抱えていた、ある悩みも解決できる。
よし、ミーケに聞いてみよう。

「ねぇ、ミーケに提案があるんだけど?」

「えっ……提案ニャン?」

「そう。ミーケは強くなりたいだよね?」

「そうニャン!」

「それなら、今後はオレたちと……オレとマリエルと一緒に、武者修行していかない?」

「えっ、ハリたんたちと⁉」

「そう。修行といっても、特に難しいことはないから。魔物を狩りながら実戦稽古的な感じかな?」

この提案には、オレにもメリットがある。

どうしても今後、マリエルと二人きりで修行しても限界が来てしまう。
だが三人でパーティーを組めば、効率は向上する。

それにマリエルとミーケは女同士で同性。
修行中や移動中も、女子同士で気が休まるだろう。


あっ、そうだ。
ミーケの返事を聞く前に、マリエルにも大丈夫か聞いてみないと。

「えーと、マリエル。事後報告みたいだけど、大丈夫?」

「はい、ハリト様! 私は大賛成です!」

マリエルは心が広く優しい子。
満面の笑みで、ミーケ本人の返事を待っている。

「マリエルたん……それにハリトたん……本当にありがとう……にゃん」

「ということは?」

「もちろんミーはオーケーにゃん! むしろミーの方からお願いするニャン!」

ミーケはぺこり頭を深く下げてくる。
猫耳が可愛く揺れる。

「これから頼むニャン!」

上げたミーケノ顔は、先ほどから一変していた。

清々しいほどの表情。

彼女は生まれ故郷からの逃走してきた。
ずっと靄《もや》がかかっていた顔が、一気に明るくなったのだ。

「ミーケさん、これから、よろしくです……」

「マリエルたんも、こちらこそよろしくニャン! ……ってマリエルたん、また泣いているニャン?」

「ご、ごめんなさい、ミーケさん。 なんか、嬉しくなったら、また急に涙が止まらなくて……」

「そんな……こんなミーのために……」

「あっ、ミーケさんも、涙が溢れてきちいましたね……」

「こ、これは違うニャン! あ、汗が目に入って……だニャン!」

「うっふふ……そうですね」

「そ、そう……にゃん」

少女二人は自然とハグし合う。

二人とも泣きながら、そして笑っていた。

本当に不思議が光景。

そして眩しすぎる光景だった。

さっき会ったばかりの二人。
でも今は往年の親友のように談笑している。

年頃の女の子同士は、こういったものなんだろう。

男子であるオレは立ち入る隙がない、神聖なる光景。
少し離れて、静かに見守っていくことにした。

「ん? 陽の角度が……そろそろ戻る時間だな」

けっこうな時間が経っていた。
門限もあるので、そろそろ学生寮に戻らないといけない。

「マリエル、ミーケ、とりあえず寮に戻ろう?」

「はい、そうですね。ハリト様」

「わかったニャン、ハリトたん」

二人とも気持ちを切り替えて、帰り支度をする。
とりあえず落ちていた赤大蛇の魔石は、オレが代表して管理しておくことにした。

今後、修行で倒した魔物の魔石は、三人で山分けがいいだろう。
後でパーティーの簡単なルールとかも、決めておこう。

「あっ、そういえば……ミーケの住まいはどうしよう……」

ふと問題に気が付く。
逃走してきたミーケには家がない。

キタエルの街に住むとしても、長期間だと生活費もバカにならない。
ミーケは着の身着のままで、お金持ちではなさそうだ。

「それならハリト様。私たちの屋敷に、一緒に住むのはどうですか?」

「なるほど。でも大丈夫かな? 叔母さんに聞かなくて?」

「たしかに、そうですわね……空いている客室をどうにかすれば……」

マリアンヌは少しだけ悩んでいる。
何故なら彼女も、あの屋敷に住まわせてもらっている身なのだ。

「ん? 住む場所なら、ミーはちょっとでいいニャん。部屋の押し入れとか」

「えっ? 押入れに?」

「証拠を見せるニャン…………『猫獣人……秘技……【変化】』ニャン!」

ボワン!

直後、凄いことが起こる。
ミーケが小さな茶色の猫に変身したのだ。

『それじゃ、お世話になるニャン、ご両人たん♪』

こうして新しい仲間……“猫獣人”ミーケと、オレたちは新たなパーティーを結成するのであった。

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