1 / 13
第1話:窮屈な世界1位の日々
しおりを挟む
この世界には《天神》が啓示する《冒険者ランキング》が存在する。
世界中にいる十万人以上いる冒険者を、最下層の“Fランク”から、最高位の“Sランク”まで七段階に分類。
特に最高位のSランクは細かく順位づけされている。
《ランクS1位》から《ランクS20位》までの二十人の冒険者は、神の領域ともされていた。
そんな中でこの二年間、常に《ランクS1位》に君臨している青年がいた。
彼の名はザガン。
《武王》と呼ばれる大陸最強の冒険者である。
そんなザガンは今、疲れ果てていた。
冒険による疲労ではない。
理由はランク戦。AランクとSランクの上位者の義務である《ランク戦》、その殺伐としたシステムに辟易していたのだ。
今日もSランク3位の《邪眼のマリアンヌ》を圧倒的な力で退けて、王都の屋敷でため息をついていた。
◇
「ふう……ランク戦か。どうにか廃止できないのか」
自室で酒を飲みながら、オレは思わずため息をつく。
室内に控えていたメイドが、声をかけてくる。
「失礼ながら、ザガン様。《ランク戦》は天神様から与えられた栄誉であり、高ランカーの義務であります。廃止など出来ませんと、私は思いますが」
少し辛口なメイドのキサラに、言われるまでもない。
冒険者ギルドに最初に登録する時、誰もが天神に制約と契約を交わす。
その中の一つに《高ランカーのランク戦の出場の義務》があるのだ。
だから決して破ることは出来ないのだ。
「もしかしてザガン様はランク戦を、お嫌いですか? 戦っている時は、あれほど嬉しそうな笑みを浮かべて、相手を叩き斬っていますが、いつも?」
「どちらかといえば嫌いではない。強者との戦いは、心が躍るからな」
ランク戦では大陸最高峰の冒険者たちを、ガチで戦うことが出来る至高の場。
戦闘狂でもあるオレは、ランク戦自体は嫌いではない。
「では、どうしてですか、ザガン様?」
「オレは戦闘よりも、“普通の冒険”の方が好きなんだ」
「“普通の冒険”……ですか?」
「ああ。未知なる迷宮を探索したり、薬草を採取したり、困っている村人を助ける……そういった“普通の冒険”のことだ」
「さすがザガン様、冗談がお上手ですね。仮に本気だとしても、最高位のランクS1位のザガン様では、残念ながらそのような依頼は、もはや受けられません」
「ああ、そうだな。どうして、こんな不自由な身になったんだろうな、オレは」
オレも若い時……十歳で登録した頃は、普通の冒険者だった。
辺境の村を飛び出して、一番近い街のギルドで冒険者としての日々。
色んな仲間たちとパーティーを組み、多くの依頼をこなしてきた。
本当に多くの冒険をこなしてき十数年間だった。
だが二十歳前半を過ぎ、気がつくとオレは《武王》と呼ばれる高ランカーになっていた。
昔の仲間たちは次々と引退して、自分だけが孤独なランク戦に明け暮れていたのだ。
「高ランカーの冒険者か……」
出来ればオレも、高ランカー冒険者など辞めたい。
一介の剣士としてどこかの知らない村で、普通の冒険者と生きていきたいのだ。
「お言葉ですが、それは困ります。ザガン様が高ランカーの冒険者を辞めたら、世界はどうなると思いますか? 先日の“狂い古代竜”の討伐戦でも、ザガン様がいなければ、間違いなく王国は滅んでいました」
「ああ、そうだな。大陸と国の危機への対応は、高ランカーの義務だからな……」
高ランカーの冒険者を引退できない理由に、現在の大陸の危機の多さがあった。
客観的に見てオレがいないと、王国は邪悪な存在によって、三度ほど滅亡している。
だから辞められないのだ。
「ふう……。誰かオレの代わりに、《ランクS1位》の任務を全うしてくれたら、気兼ねなく自由な暮らしを出来んだがな」
「ふっふっふ……またまた冗談が上手でね、ザガン様。あら? それでは定時なので、私は失礼させていただきます」
メイドのキサラは変わった女だ。
定時なると必ず帰宅する。
理由は彼女も高ランカーの一人。
オレとは違う部門――――“隠密暗殺者”の高ランカーなのだ。
訳あって今はメイドで雇っている。
だが本来はこんな場所で、働いていい存在ではないのだ。
キサラが帰宅して、広い屋敷に一人きりになる。
「ふう……それにしても“普通の冒険”ができる身に、なりないな」
一人になったところで、もう一度、自分の今の夢を口にする。
叶わないことは十分に承知していたが、口にせずにはいられないのだ。
――――だが翌日、意外な形で、願いは叶うことになる。
世界中にいる十万人以上いる冒険者を、最下層の“Fランク”から、最高位の“Sランク”まで七段階に分類。
特に最高位のSランクは細かく順位づけされている。
《ランクS1位》から《ランクS20位》までの二十人の冒険者は、神の領域ともされていた。
そんな中でこの二年間、常に《ランクS1位》に君臨している青年がいた。
彼の名はザガン。
《武王》と呼ばれる大陸最強の冒険者である。
そんなザガンは今、疲れ果てていた。
冒険による疲労ではない。
理由はランク戦。AランクとSランクの上位者の義務である《ランク戦》、その殺伐としたシステムに辟易していたのだ。
今日もSランク3位の《邪眼のマリアンヌ》を圧倒的な力で退けて、王都の屋敷でため息をついていた。
◇
「ふう……ランク戦か。どうにか廃止できないのか」
自室で酒を飲みながら、オレは思わずため息をつく。
室内に控えていたメイドが、声をかけてくる。
「失礼ながら、ザガン様。《ランク戦》は天神様から与えられた栄誉であり、高ランカーの義務であります。廃止など出来ませんと、私は思いますが」
少し辛口なメイドのキサラに、言われるまでもない。
冒険者ギルドに最初に登録する時、誰もが天神に制約と契約を交わす。
その中の一つに《高ランカーのランク戦の出場の義務》があるのだ。
だから決して破ることは出来ないのだ。
「もしかしてザガン様はランク戦を、お嫌いですか? 戦っている時は、あれほど嬉しそうな笑みを浮かべて、相手を叩き斬っていますが、いつも?」
「どちらかといえば嫌いではない。強者との戦いは、心が躍るからな」
ランク戦では大陸最高峰の冒険者たちを、ガチで戦うことが出来る至高の場。
戦闘狂でもあるオレは、ランク戦自体は嫌いではない。
「では、どうしてですか、ザガン様?」
「オレは戦闘よりも、“普通の冒険”の方が好きなんだ」
「“普通の冒険”……ですか?」
「ああ。未知なる迷宮を探索したり、薬草を採取したり、困っている村人を助ける……そういった“普通の冒険”のことだ」
「さすがザガン様、冗談がお上手ですね。仮に本気だとしても、最高位のランクS1位のザガン様では、残念ながらそのような依頼は、もはや受けられません」
「ああ、そうだな。どうして、こんな不自由な身になったんだろうな、オレは」
オレも若い時……十歳で登録した頃は、普通の冒険者だった。
辺境の村を飛び出して、一番近い街のギルドで冒険者としての日々。
色んな仲間たちとパーティーを組み、多くの依頼をこなしてきた。
本当に多くの冒険をこなしてき十数年間だった。
だが二十歳前半を過ぎ、気がつくとオレは《武王》と呼ばれる高ランカーになっていた。
昔の仲間たちは次々と引退して、自分だけが孤独なランク戦に明け暮れていたのだ。
「高ランカーの冒険者か……」
出来ればオレも、高ランカー冒険者など辞めたい。
一介の剣士としてどこかの知らない村で、普通の冒険者と生きていきたいのだ。
「お言葉ですが、それは困ります。ザガン様が高ランカーの冒険者を辞めたら、世界はどうなると思いますか? 先日の“狂い古代竜”の討伐戦でも、ザガン様がいなければ、間違いなく王国は滅んでいました」
「ああ、そうだな。大陸と国の危機への対応は、高ランカーの義務だからな……」
高ランカーの冒険者を引退できない理由に、現在の大陸の危機の多さがあった。
客観的に見てオレがいないと、王国は邪悪な存在によって、三度ほど滅亡している。
だから辞められないのだ。
「ふう……。誰かオレの代わりに、《ランクS1位》の任務を全うしてくれたら、気兼ねなく自由な暮らしを出来んだがな」
「ふっふっふ……またまた冗談が上手でね、ザガン様。あら? それでは定時なので、私は失礼させていただきます」
メイドのキサラは変わった女だ。
定時なると必ず帰宅する。
理由は彼女も高ランカーの一人。
オレとは違う部門――――“隠密暗殺者”の高ランカーなのだ。
訳あって今はメイドで雇っている。
だが本来はこんな場所で、働いていい存在ではないのだ。
キサラが帰宅して、広い屋敷に一人きりになる。
「ふう……それにしても“普通の冒険”ができる身に、なりないな」
一人になったところで、もう一度、自分の今の夢を口にする。
叶わないことは十分に承知していたが、口にせずにはいられないのだ。
――――だが翌日、意外な形で、願いは叶うことになる。
23
あなたにおすすめの小説
二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした
セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。
牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。
裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。
Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。
足手まといだと言われて冒険者パーティから追放されたのに、なぜか元メンバーが追いかけてきました
ちくわ食べます
ファンタジー
「ユウト。正直にいうけど、最近のあなたは足手まといになっている。もう、ここらへんが限界だと思う」
優秀なアタッカー、メイジ、タンクの3人に囲まれていたヒーラーのユウトは、実力不足を理由に冒険者パーティを追放されてしまう。
――僕には才能がなかった。
打ちひしがれ、故郷の実家へと帰省を決意したユウトを待ち受けていたのは、彼の知らない真実だった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
転生大賢者の現代生活
サクラ近衛将監
ファンタジー
ベイリッド帝国の大賢者として173歳で大往生したはずのロイドベル・ダルク・ブラームントは、何の因果か異世界のとある若者に転生を遂げた。
ロイドベルの知識、経験、能力、更にはインベントリとその中身まで引き継いで、佐島幸次郎として生き返ったのである。
これは、21世紀の日本に蘇った大賢者の日常の生活と冒険を綴る物語である。
原則として、毎週土曜日の午後8時に投稿予定です。
感想は受け付けていますけれど、原則として返事は致しませんので悪しからずご了承ください。
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる