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第44話:王都の中
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王女マリエルの道中を影護衛しながら、無事にミカエル王都に到着。
昔に掘っておいた地下通路で、王都の地下を進んでいく。
「たしか、街の出入り口は……あった、ここだ!」
迷路のような地下通路を進み、目的の突き当たりを発見。
荷馬車から降りて、特殊な仕掛けを開錠してハンドル操作する。
キュィーーーン、ガラガラ……
少しだけ音を立てて、突き当たりが開いて、地上の陽の光が入ってくる。
顔だけ出して、周囲を確認。
よし。周りに人の気配はない。
「ドルトンさん、サラ。外に出ましょう。この先が城壁の内側です!」
後ろで心配そうにした二人に、大丈夫だと伝える。
《ハルク式荷馬車《改》》を【収納】して、徒歩で地上に出ていく。
出たらハンドル回して、秘密の出入り口を閉鎖。特殊な仕掛けで、ハンドルも隠しておく。
これで普通の人は見つけることも不可能になった。
「ふむ。ようやく地上か。ん? ここは、もしや……墓か?」
「はい、墓地です。ミカエル王都内の市民墓地です」
ボクたちが出てきたのは墓地の外れ。多くのお墓が整然と並んでいる。不気味で静かな雰囲気だ。
「なるほど、墓地か。これなら出入りを、見つかる心配もないのう」
「そうですね。風習的にミカエル市民は、あまり墓地には頻繁に訪れないみたいなので」
街の中には何個か地下通路のへの出入り口がある。その中でも墓地口は、一番ひと気がない安全な場所なのだ。
「それじゃ、まずは街の中心街にいくとするか」
「そうですね。あっ……でも、中心街って、どっちだろう?」
言われてみて気がつく。墓地から街への方角が、まるで分からないのだ。
「なんじゃと⁉ オヌシはミカエル王都に、十年間も住んでいたのだろう⁉」
「はい。でもずっと城の地下の鉱脈と地下にいたので、街に出かけたことはないんです……」
生まれた里から五歳の時に、ボクは王都にやってきた。街に到着してから、そのままミカエル王城に直行。
その後の十年間は、ひたすら採掘と鍛冶仕事ばかりしてきた。だから普通の市民のように、王都を散策したことがないのだ。
「なんと……十年間も地下で生活していたか。ドワーフ族も真っ青な青春時代じゃのう」
「あっはっはっは……だから王都は初心者です。申し訳ありません」
「気にするな。それならワシが道案内するぞ。王都には少しだけ住んでいたことがあるかのう」
「そうなんですか⁉ それじゃ、よろしくお願いします!」
ドルトンさんの案内で墓地から、中心区画へと進んでいく。
ベテラン職人であるドルトンさんは、大陸各地を放浪していたこともあるのであろう。頼もしい道案内だ。
◇
しばらく進むと、大通りにたどり着く。
「おお、ここが王都の大通りか……」
街の中は賑わっていた。
色んな方向に大通りが伸びている。
通り沿いに様々な商店が立ち並び、露店もあった。
様々な人種の通行人が行き交い、通りは荷馬車や交易商人でごった返している。
「ここが王都の大通りですか……ハメルーンよりも凄いですね!」
隣でサラが感動の声を上げている。
駆け出し魔術師の彼女は、幼い時から家に引き籠っていいた。
最近になって家の外に出ているが、今まで見たことがあるのはハメルーンの街だけ。
何倍も規模が大きい王都の賑わいに、彼女も驚いているのだ。
「街の中心街にいけば、もっと賑わうぞ」
前に住んでいたことがあるドルトンさんは、それほど驚いていない。慣れた感じで先導していく。
「うわぁ……すごい、大きな武具屋だ……」
「ハルク君、見てください。三階建ての魔術店があります!」
「サラ、あっちも凄いよ!」
「美味しそうな屋台……」
ドルトンさんの後ろをついていきながら、ボクとサラは周りをキョロ。完全なお上りさん状態だ。
そんな感じで、街の中心街広場に到着。屋台料理を食べながら、ベンチで一休みする。
「そういえばハルク。これからどうする予定じゃ? お姫さんのスケジュールはどんな感じなのだ?
「前に聞いた感じだと、明日から忙しいみたいです」
出発に前、王都での情報をマリエルから、何気なく聞き出していた。
彼女が王都に滞在するのは一ケ月程度。
期間中はミカエル新国王と謁見。重臣と会合や会議も、数回行う。
また王都の中にハメルーン大使館の設置の準備もするらしい。
更にはミカエル商工ギルドや、職人ギルドの幹部とも会合と会議。
国交が回復した両国の橋渡しのために、マリエルは色々と忙しいらしいのだ。
そんなスケジュールの中でも今日は特に予定なし。たしか宿泊先に向かっているはずだ。
「ふむ、そうか。それなら宿泊地の警護にいくのか?」
「いえマリエルは専用の館に泊まるみたいなので、とりあえず今日は大丈夫かと思います」
マリエルが王都で宿泊するのは、ミカエル王国の上級貴族の屋敷。
ハメルーンと遠い親戚にあるらしく、マリエルとも友好関係。そのため警備上も問題ない。
今後マリエルに危険があるとしたら、屋敷から移動した先。王城や商工ギルドなど、会合場所は危険があるだろう。
「なるほど、そうか。それなら今日は、どうする? ワシらも宿を探すか?」
マリエルに併せて、ボクたちも王都に滞在。少なくても一ヶ月間、滞在できる宿が欲しいのだ。
「あっ、それなら“アテ”があります! とりあえず、そこに行ってみましょう。ここの場所なんですが……ドルトンさん、分かりますか?」
ボクは収納から一枚の紙を取り出す。王都内の番地と住所が書かれた書類だ。
「ふむ、何となく分かるが、行ったことがない区画じゃのう? 聞きながらいったほうが確実じゃ」
「そうです。それじゃ、とりあえず向かいますか!」
番地の場所へ、三人で歩いていく。途中で商店の人や通行人、道を尋ねていく。
◇
目的の場所へと近づいてきた。
「ハルク君……通りの雰囲気が、なんか変わりましたね?」
「あっ、そういえば⁉」
サラに指摘されて気がつく。先ほどの繁華街とは、周囲の雰囲気が違う。
たどり着いた先は、一言で説明するなら“高級屋敷街”。
高い塀に囲まれた屋敷が、通りの両側に並んでいたのだ。
「おい、小僧。本当にこの近くにあるのか? オヌシの言う“アテ”の場所が?」
「はい、間違いないはずです。でも、ボクも心配になってきました……」
三人で心配になりながら、屋敷街を移動。通りの番地の数字を確認していく。
「あっ、ここだ!」
書類と同じ数字の場所を発見。目的の場所にたどり着いたのだ。
なんとか迷わずに到着できてよかった。
「二人とも、ここが“アテ”がある場所です!」
「えっ……こ、ここですか、ハルク君……?」
「おい、待て! 本当にここなのか⁉ どう見ても“貴族の屋敷”だぞ⁉」
「あっ、そう言われてみれば、たしかに……」
指摘されて気がつく。
ボクが中に入っていこうとしたのは、高い塀に囲まれた屋敷。
鉄製の正門の奥に見えるのは、大きな館だった。
「ちなみにハルク君。どういう“アテ”がある場所なんですか、ここは?」
「えーと、前にお世話になった王様から……先々代のミカエル国王に、鍛冶仕事を頑張った褒美として、直々に頂戴した場所だよ」
「褒美の場所だと⁉ こんな大きな屋敷を丸ごとか⁉ いったい、どういうとじゃ⁉」
「やっぱり、そうですよね……ボクもまさか、こんな大きな屋敷だったとは、思っていなかったんですが」
昔、先々代の王様から貰ったのは、番地の書いてある書類だけ。
……『ハルクはミカエル王国の発展のために、本当によくやっている。この書類の土地と建物は自由に使え!』と先々代の王様に言われていたのだ。
ボクの予想では『王都内のへき地の小さな小屋』だと思っていた。
まさか、こんな豪華な館付きの屋敷とは、ボクも夢にも思っていなかったのだ。
それに正門も閉まっているし、どうしたらいいんだろう。
――――そんな困っていた時だった。
「おい! そこのお前たち、そんな所で何をしている⁉」
正門の奥に詰所があったらしい。
中から武装した人たちが、こちらに駆けてくる。恰好的にミカエル軍の正規の衛兵だ。
屋敷の前でウロウロしていたボクたちを、不審者だと思ったのだろう。
(ここで逃げたら怪しまれちゃうな。でも、ボクは追放された身、衛兵にバレたらヤバイな……)
かなりマズイことになってしまった。
昔に掘っておいた地下通路で、王都の地下を進んでいく。
「たしか、街の出入り口は……あった、ここだ!」
迷路のような地下通路を進み、目的の突き当たりを発見。
荷馬車から降りて、特殊な仕掛けを開錠してハンドル操作する。
キュィーーーン、ガラガラ……
少しだけ音を立てて、突き当たりが開いて、地上の陽の光が入ってくる。
顔だけ出して、周囲を確認。
よし。周りに人の気配はない。
「ドルトンさん、サラ。外に出ましょう。この先が城壁の内側です!」
後ろで心配そうにした二人に、大丈夫だと伝える。
《ハルク式荷馬車《改》》を【収納】して、徒歩で地上に出ていく。
出たらハンドル回して、秘密の出入り口を閉鎖。特殊な仕掛けで、ハンドルも隠しておく。
これで普通の人は見つけることも不可能になった。
「ふむ。ようやく地上か。ん? ここは、もしや……墓か?」
「はい、墓地です。ミカエル王都内の市民墓地です」
ボクたちが出てきたのは墓地の外れ。多くのお墓が整然と並んでいる。不気味で静かな雰囲気だ。
「なるほど、墓地か。これなら出入りを、見つかる心配もないのう」
「そうですね。風習的にミカエル市民は、あまり墓地には頻繁に訪れないみたいなので」
街の中には何個か地下通路のへの出入り口がある。その中でも墓地口は、一番ひと気がない安全な場所なのだ。
「それじゃ、まずは街の中心街にいくとするか」
「そうですね。あっ……でも、中心街って、どっちだろう?」
言われてみて気がつく。墓地から街への方角が、まるで分からないのだ。
「なんじゃと⁉ オヌシはミカエル王都に、十年間も住んでいたのだろう⁉」
「はい。でもずっと城の地下の鉱脈と地下にいたので、街に出かけたことはないんです……」
生まれた里から五歳の時に、ボクは王都にやってきた。街に到着してから、そのままミカエル王城に直行。
その後の十年間は、ひたすら採掘と鍛冶仕事ばかりしてきた。だから普通の市民のように、王都を散策したことがないのだ。
「なんと……十年間も地下で生活していたか。ドワーフ族も真っ青な青春時代じゃのう」
「あっはっはっは……だから王都は初心者です。申し訳ありません」
「気にするな。それならワシが道案内するぞ。王都には少しだけ住んでいたことがあるかのう」
「そうなんですか⁉ それじゃ、よろしくお願いします!」
ドルトンさんの案内で墓地から、中心区画へと進んでいく。
ベテラン職人であるドルトンさんは、大陸各地を放浪していたこともあるのであろう。頼もしい道案内だ。
◇
しばらく進むと、大通りにたどり着く。
「おお、ここが王都の大通りか……」
街の中は賑わっていた。
色んな方向に大通りが伸びている。
通り沿いに様々な商店が立ち並び、露店もあった。
様々な人種の通行人が行き交い、通りは荷馬車や交易商人でごった返している。
「ここが王都の大通りですか……ハメルーンよりも凄いですね!」
隣でサラが感動の声を上げている。
駆け出し魔術師の彼女は、幼い時から家に引き籠っていいた。
最近になって家の外に出ているが、今まで見たことがあるのはハメルーンの街だけ。
何倍も規模が大きい王都の賑わいに、彼女も驚いているのだ。
「街の中心街にいけば、もっと賑わうぞ」
前に住んでいたことがあるドルトンさんは、それほど驚いていない。慣れた感じで先導していく。
「うわぁ……すごい、大きな武具屋だ……」
「ハルク君、見てください。三階建ての魔術店があります!」
「サラ、あっちも凄いよ!」
「美味しそうな屋台……」
ドルトンさんの後ろをついていきながら、ボクとサラは周りをキョロ。完全なお上りさん状態だ。
そんな感じで、街の中心街広場に到着。屋台料理を食べながら、ベンチで一休みする。
「そういえばハルク。これからどうする予定じゃ? お姫さんのスケジュールはどんな感じなのだ?
「前に聞いた感じだと、明日から忙しいみたいです」
出発に前、王都での情報をマリエルから、何気なく聞き出していた。
彼女が王都に滞在するのは一ケ月程度。
期間中はミカエル新国王と謁見。重臣と会合や会議も、数回行う。
また王都の中にハメルーン大使館の設置の準備もするらしい。
更にはミカエル商工ギルドや、職人ギルドの幹部とも会合と会議。
国交が回復した両国の橋渡しのために、マリエルは色々と忙しいらしいのだ。
そんなスケジュールの中でも今日は特に予定なし。たしか宿泊先に向かっているはずだ。
「ふむ、そうか。それなら宿泊地の警護にいくのか?」
「いえマリエルは専用の館に泊まるみたいなので、とりあえず今日は大丈夫かと思います」
マリエルが王都で宿泊するのは、ミカエル王国の上級貴族の屋敷。
ハメルーンと遠い親戚にあるらしく、マリエルとも友好関係。そのため警備上も問題ない。
今後マリエルに危険があるとしたら、屋敷から移動した先。王城や商工ギルドなど、会合場所は危険があるだろう。
「なるほど、そうか。それなら今日は、どうする? ワシらも宿を探すか?」
マリエルに併せて、ボクたちも王都に滞在。少なくても一ヶ月間、滞在できる宿が欲しいのだ。
「あっ、それなら“アテ”があります! とりあえず、そこに行ってみましょう。ここの場所なんですが……ドルトンさん、分かりますか?」
ボクは収納から一枚の紙を取り出す。王都内の番地と住所が書かれた書類だ。
「ふむ、何となく分かるが、行ったことがない区画じゃのう? 聞きながらいったほうが確実じゃ」
「そうです。それじゃ、とりあえず向かいますか!」
番地の場所へ、三人で歩いていく。途中で商店の人や通行人、道を尋ねていく。
◇
目的の場所へと近づいてきた。
「ハルク君……通りの雰囲気が、なんか変わりましたね?」
「あっ、そういえば⁉」
サラに指摘されて気がつく。先ほどの繁華街とは、周囲の雰囲気が違う。
たどり着いた先は、一言で説明するなら“高級屋敷街”。
高い塀に囲まれた屋敷が、通りの両側に並んでいたのだ。
「おい、小僧。本当にこの近くにあるのか? オヌシの言う“アテ”の場所が?」
「はい、間違いないはずです。でも、ボクも心配になってきました……」
三人で心配になりながら、屋敷街を移動。通りの番地の数字を確認していく。
「あっ、ここだ!」
書類と同じ数字の場所を発見。目的の場所にたどり着いたのだ。
なんとか迷わずに到着できてよかった。
「二人とも、ここが“アテ”がある場所です!」
「えっ……こ、ここですか、ハルク君……?」
「おい、待て! 本当にここなのか⁉ どう見ても“貴族の屋敷”だぞ⁉」
「あっ、そう言われてみれば、たしかに……」
指摘されて気がつく。
ボクが中に入っていこうとしたのは、高い塀に囲まれた屋敷。
鉄製の正門の奥に見えるのは、大きな館だった。
「ちなみにハルク君。どういう“アテ”がある場所なんですか、ここは?」
「えーと、前にお世話になった王様から……先々代のミカエル国王に、鍛冶仕事を頑張った褒美として、直々に頂戴した場所だよ」
「褒美の場所だと⁉ こんな大きな屋敷を丸ごとか⁉ いったい、どういうとじゃ⁉」
「やっぱり、そうですよね……ボクもまさか、こんな大きな屋敷だったとは、思っていなかったんですが」
昔、先々代の王様から貰ったのは、番地の書いてある書類だけ。
……『ハルクはミカエル王国の発展のために、本当によくやっている。この書類の土地と建物は自由に使え!』と先々代の王様に言われていたのだ。
ボクの予想では『王都内のへき地の小さな小屋』だと思っていた。
まさか、こんな豪華な館付きの屋敷とは、ボクも夢にも思っていなかったのだ。
それに正門も閉まっているし、どうしたらいいんだろう。
――――そんな困っていた時だった。
「おい! そこのお前たち、そんな所で何をしている⁉」
正門の奥に詰所があったらしい。
中から武装した人たちが、こちらに駆けてくる。恰好的にミカエル軍の正規の衛兵だ。
屋敷の前でウロウロしていたボクたちを、不審者だと思ったのだろう。
(ここで逃げたら怪しまれちゃうな。でも、ボクは追放された身、衛兵にバレたらヤバイな……)
かなりマズイことになってしまった。
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