独裁王国を追放された鍛冶師、実は《鍛冶女神》の加護持ちで、いきなり《超伝説級》武具フル装備で冒険者デビューする。あと魔素が濃い超重力な鉱脈で

ハーーナ殿下

文字の大きさ
39 / 46

第70話:劣悪な環境でいる存在

しおりを挟む
新たに追加装備した超魔具のお蔭で、過酷な環境に対しての対応は万端。
ボクたちは更に下層を目指す。

ヴィ――――ン!

ミスリル鉱脈に本格的に入ったので、“ハルク式荷馬車チャリオット・参式”はあまり速度を出せない。
速度ギアをパワー重視モードに切り替え、第一階層を安全に走行していく。

「うん、今のところ、ここは異常ないかな?」

下層への入り口に向かいながら、第一階層の現状を確認していく。ボクが採掘していた時と、なんの変化もなく異常もない。
おそらくミカエル王国の誰も、この辺には足を踏み入れてないのだろう。まるで時間が止まっていたかのような雰囲気だ。

「ちなみにハルク君。ここでヒニクン国王にバッタリ遭遇する、危険性はないんですか?」

「今のところ大丈夫かな、サラ? ミカエル城からの入り口は、もっと奥の方だし。それに“人の気配”もないし」

ボクたちが入ってきた秘密の入り口は、鉱脈的にけっこう南の方に位置していた。対してミカエル城からの入り口は北にある。
つまりここから更に北に進まないと、ミカエル城の入り口から入ってきた人には遭遇しないのだ。

「なるほど、それなら、まだ安心ですね。あっ……でも不思議ですね。こんな大変な環境なのに、どうやってヒニクン国王は鉱脈に入れるんですかね?」

「あっ、そういえば、たしかに!」

サラの疑問に思わず賛同する。何しろこのミスリル鉱脈は、一般の人には普通の環境じゃない。下層に降りていくほど魔素が濃くなり、重力も強くなる。
ボクは慣れているから平気だけど、普通の人はサラのように具合が悪くなるのだ。

「ふむ。もしかしたらヒニクン国には、何かしらの“力や加護”があるのかもしれんのう?」

「えっ、“力や加護”ですか?」

博学のドワーフ職人のドルトンさんは、何か知っているのだろう。意味深なことを口にしてきた。

「ああ、そうじゃ。こうした悪い環境でも神具を持った連中や、加護持ちの奴らは自由に動けるはずじゃ」

「なるほど、そうだったんですね」

大陸には色んな力や加護をもった人たちがいる。有名なのは《大賢者》や《聖女》などの選ばれた存在だ。
彼らは神が作りしたと言われている“神具”を有している人も、劣悪な環境でも戦うことが可能だという。

「つまりヒニクン国王も加護や神具を有していて、このミスリル鉱脈でも自由に動ける、ということですか?」

「ふむ、そこまではワシも分からん。だが間違いなく大人数では、この鉱脈には潜れないはずだ」

ヒニクン国王が加護持ちだという情報は、実父のルインズ様から聞いてはいない。ということは何かしらの神具を所有している可能性が高い。

だが大陸に現存している神具の数は、それほど多くはない。つまりミスリル鉱脈に潜っている時のヒニクン国王は、少人数で動いている可能性が高いのだ。

「あと、別の可能性もあるが……まぁ、そっちは無いことに祈るしかないのう」

ドルトンさんは独り言のようにつぶやく。何やら思うこともあるようなので、深く聞かないことにした。

「情報ありがとうございます、ドルトンさん。つまり、このミスリル鉱脈で見かけた者は、『加護を有している凄い人』か『神具を所有している人』『何か危険な力を持った人』だけ、という訳ですね!」

客観的な情報をまとめていく。
そう考えると、このミスリル鉱脈で人と出会う可能性はかなり低い。つまりもう少しペースアップをして調査をしてもいいのかもしれない。

ヴィ――――ン!

ボクは“ハルク式荷馬車チャリオット・参式”の速度をアップ。第二下層への入り口へと急いで向かう。

「あっ、あそこです! 下への入口は!」

しばらく進むと、また縦穴が見えてきた。先ほどとは違いそれほど大きくないが、ギリギリ荷馬車は通れる坂道だ。

「あっ、そうだ。あのゲートを開けないと、駄目なんだ」

この入り口にボクは金属製のゲートを付けていた。それを動かさないと“ハルク式荷馬車チャリオット・参式”は通過できないのだ。

「ちょっと、外に行ってきます。待っていてください!」

“ハルク式荷馬車チャリオット・参式”から降りて、ゲートを開けに向かう。

うん、久しぶりのミスリル鉱脈だけど、空気が美味しい。
地上の澄んだ空気も悪くないけど、ボクにはこっちの魔素が濃い空気も好きなのだ。

「さて、ゲートの開錠は……ん?」

ゲートに近づいた時だった。
その先に一人の人影があることに気がつく。

「なっ⁉ な、何者だ、キサマは⁉」

相手の人影が声を上げる。
ボクは呑気に鼻歌を歌っていたので、向こうも気がつかれてしまった。

「こんな場所にいるなんて、キサマ、まさか上級魔族か⁉」

ゲートの前にいた人影は剣先を向けてきた。
相手は一人の少女……女剣士だ。

「えっ、魔族じゃない? あんたはまさか、あの時の⁉」

相手もボクの顔を確認して、表情が変わる。何故なら互いに前に会ったことがあるからだ。

(あっ……この子は……)

剣を向けてきたのは赤髪の女剣士、“一角ウサギもどき”の死骸の側にいた、赤髪の女剣士だった。
しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

放逐された転生貴族は、自由にやらせてもらいます

長尾 隆生
ファンタジー
旧題:放逐された転生貴族は冒険者として生きることにしました ★第2回次世代ファンタジーカップ『痛快大逆転賞』受賞★ ★現在4巻まで絶賛発売中!★ 「穀潰しをこのまま養う気は無い。お前には家名も名乗らせるつもりはない。とっとと出て行け!」 苦労の末、突然死の果てに異世界の貴族家に転生した山崎翔亜は、そこでも危険な辺境へ幼くして送られてしまう。それから十年。久しぶりに会った兄に貴族家を放逐されたトーアだったが、十年間の命をかけた修行によって誰にも負けない最強の力を手に入れていた。 トーアは貴族家に自分から三行半を突きつけると憧れの冒険者になるためギルドへ向かう。しかしそこで待ち受けていたのはギルドに潜む暗殺者たちだった。かるく暗殺者を一蹴したトーアは、その裏事情を知り更に貴族社会への失望を覚えることになる。そんな彼の前に冒険者ギルド会員試験の前に出会った少女ニッカが現れ、成り行きで彼女の親友を助けに新しく発見されたというダンジョンに向かうことになったのだが―― 俺に暗殺者なんて送っても意味ないよ? ※22/02/21 ファンタジーランキング1位 HOTランキング1位 ありがとうございます!

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

処理中です...