上 下
77 / 77

第77話:害虫とは

しおりを挟む
地下鉱脈の怪しげな神殿風の建造物の調査の結果、同じような神殿が近くにある可能性が高い。
“ハルク式荷馬車チャリオット・参式”を発進させて、更に下の階層の空洞へと向かうことにした。

「ここから下が第三階層です!」

下の階層への縦穴に到着。“ハルク式荷馬車チャリオット・参式”でも降りていける下り坂だ。

「うっ……ガラス越しでも分かるくらいに、この下は魔素が濃いわね……」

縦穴を前にして、赤髪の女剣士エルザが言葉を失っていた。
彼女が単独で探索したのは、今いる第二階層まで。更に下の階層は足も踏み入れていないという。

「あっ、でも下も荷馬車と《対環境服ノーマル・スーツ》あれば大丈夫だから安心していいよ。それじゃ降りていくね!」

荷馬車の中で全員の準備を最終確認。発進させて下り坂を降りていく。
周囲を警戒しながら降りていくが、今のところ怪しい変化はない。昔と同じような光景だ。

「着きました。ここが第三層です」

しばらくして横長の坑道に到着する。ミスリル鉱脈の第三階層だ。

「見た感じは上と似ているけど、魔素の濃さは段違いね、ここは……」

「ふむ、そうじゃのう。ワシらドワーフ族でも、《対環境服ノーマル・スーツ》が無ければ危険じゃのう、ここは」

「でも、幻想的で綺麗な場所ですね、ここは……」

エルザたち三人の同行者は、ミスリルガラス越に第三層の光景を見つめていた。
たしかに第三層は上よりも幻想的な場所。まだ採掘していない場所もあるので、どこか自然な坑道な雰囲気もあるのだ。

「この辺は安全そうです。それじゃ再出発します!」

ボクが予想している場所へと向かって発進する。その場所は上の神殿があった空洞を、似た雰囲気の場所。
サラの知識が正しければ、そこに二対目の神殿がある可能性が高いのだ。

“ハルク式荷馬車チャリオット・参式”で坑道内を走行していく。

「それにしても危険そうな場所ね。そういえば、ハルク。ここは魔物や魔獣はいないの? 魔素の濃さ的に、かなり危険な魔物が、ここに住み着いているはずなんだけど?」

坑道内を警戒しながら、エルザが訊ねてきた。内容はミスリル鉱脈の危険さについてだ。

「魔物? 今まで一度も見たことはなかったかな。あっ、でも“害虫”はけっこういたよ、ここは。今はボクが“駆除”したからほとんどいないけど」

「えっ、“害虫”? なんか嫌な予感がするけど、それってどんなヤツだったの?」

「えーと、こんなヤツだったよ」

ボクは運転しながら、【収納】から一冊のノートを取り出す。ボクが幼い時から駆除してきた害虫を、絵日記風に記録してノートだ。

エルザはノートをパラパラと確認していく。

「えっ⁉ こ、これって、全部“魔物”じゃないの⁉」

「えっ、違うよ、エルザ。だって、《魔物辞典》にそんな形の魔物はいなかったよ」

エルザの間違いを指摘する。当時国王だったルインズ様から《魔物辞典》を借りて、ボクは読破していた。
だがこのミスリル鉱脈にいた生物は、どこにも載っていなかった。つまりボクが今まで駆除してきたのは、全て《害虫》なのだ。

「あっ、そういえば害虫でも駆除すると、魔石を落とすんだよ。知ってた? よく考えると不思議だよね」

ボクが【収納】に入れてある魔石のほとんどは、駆除した害虫から採取したもの。かなり高純度なもので、今でもミスリルモーターの原動力に使っている。

「うっ……この禍々しい形って、もしかして、『魔素が濃すぎて突然変異した魔物』じゃない⁉ こんな危険な強化魔物を、五歳の時から虫扱いして駆除してきたハルクって、いったい……」

「エルザ嬢ちゃん。何度も言うが、あまり深く考えすぎるな。精神が壊れてしまうぞ。深く考えずにいる……それが小僧と一緒に行動していくコツじゃ」

「そうですよ、エルザさん。ハルク君は本当に凄いんですから!」

「はぁ、そうね……一応私も《剣聖》なんだけど、段々と自信が無くなってきたわ」

何やら後ろで三人は絵日記を見ながら、親密な話をしている。
一番前の運転席でのボクはよく聞こえないけど、何やら新人のエルザと友好を深めているようだ。
三人が仲良くなると、ボクもなんとなく嬉しくなる。

「ん? 見えてきました、あの空洞です!」

そんなことをしながら進んでいると、目的の場所が見えてきた。細い坑道が一気に開けてくる空洞だ。

「あっ、ハルク君! あそこに!」

空洞の奥に人工的な構造物を、サラが発見する。先ほどの神殿と似たような形だ。

「じゃが、規模は大きいぞ、アレは」

第三階層の空洞にあったのは、かなり大規模な神殿。人が住めそうな建物もある。先ほどのとは明らかに雰囲気が違う。

「そうですね……これは油断できないですね」

こうして怪しい神殿の調査に向かうのであった。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(52件)

2022.03.21 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

解除
キョウ
2022.02.24 キョウ

読点の位置がおかしく違う意味に読める文になってたり、意味は通じるけど意識して読点をスルーしないといちいち引っかかったりと面倒くさい文になっています。
この感想は読点を最小限にしていますが、問題なく読めると思いますしストレスは無いはずです。分かり難ければ、投稿前に音読されることをお勧めします。

解除
武藤
2020.12.28 武藤

16話 弩の読みがなのミス

解除

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。