家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから

ハーーナ殿下

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第12話:因縁の依頼

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家出したボクは都市国家ダラクで、憧れの冒険者のなることが出来た。
盗賊団を皆で退治して、隣街との交易ルートの足がかりを作れた。

そんな中、新たな依頼人の騎士ハンス。
なにやらゼオンさんと因縁がありそうだった。



「依頼内容は前と同じように、北の城壁の夜間警備だ」

「やっぱり、そうか。また、あのクソッたれ場所の仕事か……」

“北の城壁の夜間警備”と聞いて、ゼオンさんの顔が急に曇る。
あまりよくない仕事の依頼らしい。

「それでは依頼したぞ。さっそく今日の夜からだ」

そう言い残し、ハンスという騎士は話を終える。
この人はゼオンさんと、どういう関係なんだろう?

「何を見ている? ん? 子どものくせに冒険者か、お前は?」

「あっ、すみませんでした」

あまり凝視しすぎていたらしい。
怒られたので、素直に謝る。

「ふん。こんな年端もいかぬ子供までいるとは、ダラク冒険者ギルドも堕ちたものだな。ふん!」

そう言い残し、騎士ハンスギルドを立ち去っていく。

ふう……何だろう。
冒険者ギルドに対して、やけに厳しい言い方の人だったな。

特にゼオンさんに対して、辛辣しんらつな感じだった。
二人は、何か関係があるのかな。

ちょっと、聞いてみよう。

「あの……ゼオンさん」

「あいつ……ハンスは、このダラクの街の警備担当の騎士だ」

「えっ? あ、そうだったんですか」

どうやらボクは顔に出ていたらしい。
素直にゼオンさんの話を聞くことにした。

「アイツとは昔からの関係で……まぁ、同じ歳の幼馴染というヤツだ」

「同じ歳……ゼオンさんの方が上に見えました」

「うるせー。ふう……少し昔話をしてもいいか?」

「えっ……はい、お願いします」

「ハンスは昔から正義感に溢れて、真面目な男だった。努力して騎士になって、街の平和のために必死に頑張っていた」

「えっ……正義感に溢れて、真面目な……」

先ほどの印象と、まるでイメージが違う話だ。
何かあったのかな?

「数年前から、このダラクは魔物や盗賊団に襲われるようになった。オレもアイツと一緒に、街を守るために戦った」

ダラクの城の宝物庫には、お宝がある。
数年前から、急に魔物の群れや、盗賊団に狙われるようになったのだ。

「戦いの連続でダラクの街は、段々と疲弊していった。そしてある夜、北の城門が巨大な魔物によって破壊され、街の住人も被害が出ちまった」

「巨大な魔物……ですか」

「ああ。その被害者の中に、ハンスの家族もいた。特に、息子は崩落した家の下敷きになり、寝たきりになっちまったのさ。それ以来、あいつは変わっちまった。北の城壁を担当していた冒険者ギルドと、責任者だったオレを、憎むようになったのさ」

「そんなことがあったんですね……お二人には……」

話を聞いて何となく分かった。
ハンスさんが、あそこまでゼオンさんに厳しくあたる理由が。
“北の城壁の夜間警備”と聞いて、ゼオンさんが顔を暮らせた理由が。

「それでも今回も、仕事は引き受けたんですよね?」

「ああ。北の城壁はダラク外壁の中でも、一番損傷が激しい。今度の『満月の襲撃』からは守り切る必要がある」

「なるほどです……ん? 『満月の襲撃』?」

初めて聞く単語だ。
なんだろう。

「『満月の襲撃』は月に一度、近隣の魔物が活性化。その悪影響で魔物群れが、ダラクを襲撃してくることだ」

「満月による魔物の活性化……ああ、なるほどです」

野生の魔物や魔獣は、満月の時期になると凶暴性が増す。

特にダラク城の宝物庫は、近隣の魔物によって狙われやすい。
そのため満月の夜近辺は、ダラクの襲撃が多いのだろう。

「でも大きくは損した北の城壁の夜間警備……かなり危険じゃないですか? どして冒険者ギルドが、また担当を?」

「この数年間の戦いで、騎士と兵士の数も大きく減っている。だから魔物との戦闘に慣れているオレたちが、踏ん張らないといけないのさ。このクソッたれな街を守るために」

「なるほど、そうですよね。それならボクも微力ながら、お手伝いします!」

「お前に、そう言ってもらえると助かる。それなら準備をしておいてくれ。あと明け方までの長期戦なる。週末は昼のうちに、仮眠もしておけ」

「はい、分かりました!」

城壁の夜間警備の任務を、ボクも手伝うことになった。



『満月の襲撃』まで数日ある。
それまでの期間は、ボクは冒険者ギルドの雑務の仕事をこなしていく。

そういえば城壁の夜間警備のことを、マリアに話をしたら心配された。

ダラク市民にとって、『満月の襲撃』はかなり危険な夜。
当日は彼女も、お手伝いとして、教会で待機しているという。

ザワザワ……ザワザワ……

そして『満月の襲撃』の日が近づくにつれて、市民たちの様子も変わっていく。
せっかく明るくなってきた雰囲気が、また暗い感じなっていた。

それほどまで『満月の襲撃』はダラクの街にとって、死活問題な夜なのであろう。
改めて実感する。

――――そして『満月の襲撃』の当日となる。
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