家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから

ハーーナ殿下

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第38話:祝賀パーティー

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古代竜エンシェント・ドラゴンアバロンを討伐してから、日が経つ。
王宮で戦勝祝いの祝勝パーティーが、開催されることになった。

ギルドメンバーと共に、オレも受勲式と祝賀会が招待されることになった。



当日になる。
オレはギルドメンバーと共に、ダラク城へ向かう。
向かう場所は、城の敷地内にある王宮だ。

「ふう、いよいよか」

豪華な王宮の前に到着して、ボクは深い息を吐き出す。
自分でも分かるくらい、かなり緊張していたのだ。

同行したゼオンさんが声をかけてくる。

「はっはっは……ハリト、そんなに青い顔をしなくても大丈夫だぞ! 別に取って食われる訳じゃないんだぞ」

「はい、そうですが……こういう正装にも慣れなく、なんか緊張しちゃいます」

今日のボクは正装していた。
街の貸し衣装屋さんで、着付けをしてもらった。
タキシード風な服で、蝶ネクタイもしめてかなり窮屈な感じだ。

「ん? そうか。まぁ、そこそこ似合いっているから、心配はするな」

「ありがとうございます。それにしてもゼオンさんも似合っていますね、正装」

ゼオンさんたちギルドメンバーも、今日は正装をしていた。
いつもの冒険者の汚れた服ではなく、余所行きの服。

特にゼオンさんは騎士風な正装だ。

「まぁ、昔取った杵柄、というヤツだ。だが腹が出てきたから、着るもの大変だったっがな」

「あっはっはっは……そうなんですね。でも見たかったですね、ゼオンさんがスマートな騎士時代を……」

ダラク国王の話し方だと、騎士時代のゼオンさんはかなり有能な男だった。
アバロン討伐でも王様は、ゼオンさんが判断と士気能力を高く買っていたのだ。

「ゼオンさんは、騎士に戻るつもりはないんですか? 王様も望んでいる感じでしたが?」

「たしかに騎士の仕事も大事だ。だが冒険者にしか守れない、市民の暮らしもあるからな。オレには、そっちの方が合っているのさ」

ゼオンさんは自分の意思で、騎士と爵位を捨てていた。
何か深い理由があるのであろう。

だが今説明している、ゼオンさんの表情は清々しい。
きっと後悔はしていないのだろう。

「まぁ、それに騎士なんて固い仕事をしていたら、昼から祝い酒を飲めねぇからな! あっはっはは……」

「そうですね」

ゼオンさんは照れ隠しをしている。
いつもは頼りになるアニキ肌だが、こういう照れ屋さんなところも魅力的だ。

「さて、早く中に行くぞ! 主役様!」

「えっ⁉ はい⁉」

バラストさんの話では今日は、先に受勲式があるという。
ボクとゼオンさんは受勲される側。

凄く緊張してきたけど、頑張ろう。



その後の受勲式は、予想以上に緊張してしまった。
場所は王宮の式典の間だ。

「つぎ、自由冒険ハリト殿。陛下の前へ」

「はい!」

騎士や貴族が整列している中、ボクは玉座の王様の前に立つ。
王様から色んな褒め言葉を頂いて、服に勲章を付けてもらった。

難しくよく分からないけど、ダラクでは名誉ある勲章らしい。
有り難く頂戴して、王様と参加者にお礼を告げた。

「つぎ……」

その後も何人か、褒美を貰っていた人がいた。
ゼオンさんや守備隊長ハンスさんたち、アバロン討伐戦で頑張った人たちだ。

誰もが誇らしげにしていた。
最後は王様から激励と感謝の言葉で、受勲式は締められる。



受勲式の後は、全員で迎賓館に移動。
次はアバロン討伐の祝賀パーティーが開催される。

先ほどの受勲式とは違い、パーティーは賑やかな感じ。
立食形式の食事会で、身分の関係なく食事とお酒を楽しんでいる。

宮廷音楽の生演奏がされた、華やかなパーティー会場。

そんな中にボクも参加していた。

「もぐもぐ……うん、美味しい! この肉料理!」

会場の端にある料理コーナで、食事を堪能していた。
他のギルドメンバーは既に食事を終えて、お酒を飲みながら会話を楽しんでいる。

だが育ち盛りなボクは、お酒と会話よりも、まずは食べ物の方に夢中なのだ。

「よし、次はこの麺料理にチャレンジしてみよう!」

とにかく今は腹が空いていた。
何しろ祝賀パーティーの開幕直後、色んな人がボクに挨拶にきてくれた。
嬉しかったけど、お蔭で食事を食べられずにいた。

だから今は少し遅い食事タイム。
あまり人がいない料理コーナを独占状態していた。
気兼ねなく料理を堪能していく。

そんな場所に近づいてくる少女がいた。

「あっ! ハリト君!」

「ん? えっ……マリア?」

やってきたのは同居人の少女マリア。
だが声は同じだが、恰好はいつものマリアではない。

「マリア、そのドレスは……?」

「はい、貸し衣装です。変ですかね?」

「うんうん、凄く素敵だよ! 凄く可愛いよ!」

マリアはパーティードレスを着ていた。
ふわふわしたスカートで、まるでお姫様のようだ。

あと胸元も少し空いていて、セクシーさもある。
マリアによく似合ったドレスだ。

「あ、ありがとうございます……なんか、照れますね。ハリト君に、そう言われると」

「そうかな。でも本当によく似合っているよ! ん? そういえば、今日もマリアも受勲式に参加を?」

「はい、教会の者は午前中に、受勲式がありました。有りがたいことに私は、こんな大きな勲章を頂きました」

「おお、それは凄いね!」

「はい、ありがたいのですが、王宮の色んな人たちから『女神の代行者マリア様!』とか『時世だの大聖女様!』と呼ばれてしまい、なんか色々と混乱しています」

「あっはっはっは……お互い、大変なことになったね」

「ふう……まったくこれも全てハリト君のせいなんですかならね。でも、本当に感謝しています。ダラクの街と救ってくれて」

「まぁ、皆で頑張ったお蔭だよ。ここにいる全員の頑張りのお蔭だよ!」

今回のアバロン討伐戦では、奇跡的に一人も死者が出なかった。
古代竜エンシェント・ドラゴン級の魔物との戦いでは、あり得ない軽被害だという。

理由は精鋭部隊と市民、全員の協力があったお蔭だ。

皆の頑張りのお蔭で、今まで不遇な環境にあったダラクが、新しい幸せの時代へと突入していたのだ。

「そういえばハリト君。受勲式の陛下の話では、北の肥沃地帯に、開拓団が派遣されるみたいですね?」

「うん、そうみたいだね。王様の話だと、かなり広いみたいだね」

都市国家ダラクの北部には、肥沃な平地が広がっていた。
だが数百年に渡り、誰も開墾に成功したことはない。
理由は北の暴君アバロンのテリトリーだったからだ。

「開拓が成功したら、ダラクの街は一気に豊かになると思います。今まで穀物や酪農品は、他国に依存していたので」

「たしかにそうだね。今後が楽しみだね!」

国策として北の開拓を、王様は宣言していた。
市民の中から有志を集い、北の平地に新たな村を作っていくのだ。

数年後にはダラクの街には、自国の食糧で溢れかえっているだろう。

「ちなみにハリト君も、お手伝いするんですか?」

「うん、そうだね。ゼオンさんの話だと、ボクは開墾の最初を手伝うみたい。大地魔法を使えるか、って聞かれたから」

「ハ、ハリト君の大地魔法ですか。ちなみに、ハリト君が大地魔法を“少し”頑張れば、どうなるんですか?」

「うーん、そうだね。自信はないけど、たぶん北の平地は一週間あれば、開墾の基礎はできるかな? 邪魔な岩とか木なら、撤去できるよ!」

「ふう……あの広大な平地を、たった一人で、しかもたった一週間で開墾ですか……見るのが怖いです……」

「あっはっはっは……そうかな? とにかくダラクのために頑張るよ!」

ダラク市民の生活の向上のためには、ボクも協力は惜しまない。
今後もギルドメンバーとして頑張っていくつもりだ。

……「マリア!」

そんな話をしていた時。
マリアは神官長様に呼ばれる。
何か大事な話があるみたいだ。

「それではハリト君、また後で」

「うん。またね!」

マリアが立ち去って、また料理コーナに一人になる。
さて、次は何を食べようかな?

――――そう思った時だった。

「ん? この視線は?」

誰かに見られている、視線を感じた。
会場の人からではない。

もう上かな?
迎賓の間にある二階席、そこかの視線だ。

「あそこかな……ん? あれは?」

視線の先にいたのは、一人の少女。
隠れるように、ボクのことを見ている。
あと賑やかな会場のことも、寂しげな表情で見ていた。

「あれは……クルシュ……?」

視線の主は王女であるクルシュ。
ドレスを着ているが参加せず、祝勝パーティーを羨ましそうに見ていた。

どうしたのだろうか?

彼女の元に向かってみることにした。
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