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第1章 零星
嫌われる人間
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「私は近衛隊騎士のドーランと申します。こちらは王宮医師のビアード様です。貴女のお名前は?」
「……リラです。」
ミーシャという侍女に着替えさせられると、リラは先ほどの部屋に戻された。
恐ろしい形相をしていた王とは違い、リラの目前に立つ2人は取り付きやすい表情を作っている。彼女を怖がらせたくないという意識の表れかもしれない。
「まず聞きたいのですが、どうやって王宮へ?一応、人間は立ち入れない筈なんですが…」
「わたしにも、分かりません。湖に散歩へ行って…光の扉が現れて、気がつけばあのお風呂にいたんです。」
「光の扉…?」
ドーランの言葉に、リラはこくりと頷いた。小鳥たちのことも言うべきかと思ったが、敢えて言わないでいた。
今は言わない方がいいと感じたからだ。
「あの、あなたたちは人間じゃないんですか?」
「まぁ、貴女の疑問は最もです。見た目は変わりませんしね…」
「そうじゃな。リラさん、ワシらは“星の民”という。見た目は人間と変わらんが、全く違うんだよ、生物学的にの。」
「星の民…?」
リラには、その名前に覚えがあった。
小鳥たちが言っていた言葉だ。
「まずワシらは寿命が長い。平均的には500歳くらいか…」
「ちなみに私は132歳です。ビアード様は…」
「ワシのことは言わんでよいわ!」
「おや、失礼」
初老の医師・ビアードはドーランを小突いた。自分が危機に面していると感じながらも、2人のやり取りに、リラは戸惑いを隠せない。
言葉を失っているリラを見て、ドーランが咳払いをして切り替えた。
「まぁ、私たちのことはおいおい話すとして…貴女は何処の人間ですか?ここから1番近いのは、東の海かな」
「えーと、東の海が何かは知りませんけど…出身は日本です。」
「ニホン?…ビアード様、ご存知ですか?」
「いや、この老ぼれも知らんなぁ」
「私も聞いたことがない。妙ですね…リラ、貴女魔法は使えるんですか?」
「え、魔法ですか!?…そんなもの使えません!」
ドーランが口にした魔法、というワードにリラは驚嘆した。
人間が忌々しいであったり、星の民という不老の種族がいたり、一体ここは何なんだ、とリラは内心で突っ込まずにはいられなかった。
治癒の力は持っているが、彼女はそれを魔法とは思っていない。
魔法と言われてリラが思い浮かべるのは、火を出したりするものだった。
「やはりそうですよね。人間が魔法を使えたりしたら、それこそ世界の終わりだ。」
「根掘り葉掘り聞くのも可哀想じゃから、今日はここまでにしよう。続きは明日じゃ。」
「そうですね…ミーシャ、引き続き彼女の世話を頼みます。部屋はここを使ってください。」
リラは2人の会話に胸を撫で下ろした。
ひとまず、今すぐに命を取られることはないとわかり安心したのだ。
「リラ、息苦しいでしょうがくれぐれも外に出ないで下さいね。…星の民は、人間をよく思ってないので。」
「え?」
「ミーシャ、あとは頼みましたよ。」
「かしこまりました。」
ドーランとビアードを先頭に、侍女以外は部屋から出て行った。
残されたリラは緊張がとけたのか、いくらから表情に余裕が出ていた。
侍女たちは残っているが、兵士たちに囲まれるよりは楽だった。
「…っ…」
「今はそっとしておきましょう。」
リラの瞳から涙が流れるのを見たミーシャは、他の侍女にそう声をかけたのだった。
ーーーー
部屋を出たドーランは、ビアードと別れ1人王の間へと向かっていた。
リラが現れたあの部屋はいわゆる王のプライベートルームで、王が休息を取るための部屋だ。
リラを見るなり部屋を捨てると言い去った王の気持ちも解せないわけではなかったが、身元もはっきりしない不審者に対してあからさま過ぎると、ドーランは感じている。
対面し判明したことを伝える為に王の間へと向かう彼であったが、本人はあまり乗り気ではない。
「失礼します、陛下」
「遅かったな、ドーラン」
「(やはり機嫌が悪いな…はぁ…)」
不機嫌な王の相手をしなければならないのが、ドーランにはとてつもなく疲れることなのだ。
「何か情報を得たのか?」
「えぇ、勿論。大体のことは“読み”ましたよ。」
「大体だと?私は全てと命じた筈だが」
「それがですね、陛下。気になることがありまして…」
「なんだ」
「あの娘、守られてますよ。同胞の魔力に」
「なんだと?」
王の機嫌はますます悪くなった。
顔には出ていないが、空気が張り詰めているのだ。
ドーランは胃が痛くなりそうだった。
「ならば、内通者がいるということか」
「可能性はゼロではないと思いますが…」
「なんだ」
「いえ、なにも」
「早々に見つけ出せ。…人間共々処刑だ。」
「(処刑…)」
ドーランは内心複雑だったが、逆らうわけにもいかないため命令には従う。
そもそも反人間の思想にすらドーランは否定的だ。古の時代のことを今にまで引きずらなくてもいいのではないかと、彼はそう考えている。
「本当に死刑にするつもりなのか、サリウス。」
「それはどういう意味だ、ドーラン」
「命令には従う。だが今は、友として聞いているんだ。」
「人間は我らを裏切った。」
「あぁそうだな、だがそれは神代…1万年以上前の話だ。」
自分たちが忌み嫌う必要はないのではないか、とドーランは続けた。
「ドーラン、いくらお前でも許さんぞ。」
「…確認したかっただけたよ、サリウス。安心してくれ、命令には従う。」
ドーランは視線を下に下ろしながら踵を返し、王であるサリウスの視線を背に感じながら王の間を後にした。
部屋を出てすぐ、ドーランは動かなかった。
だたが少ししたのち、足をリラのいる部屋へと向ける。
「(どうにかしないとな…)」
どうにかしてリラを救いたいと、そればかり考えていた。
「……リラです。」
ミーシャという侍女に着替えさせられると、リラは先ほどの部屋に戻された。
恐ろしい形相をしていた王とは違い、リラの目前に立つ2人は取り付きやすい表情を作っている。彼女を怖がらせたくないという意識の表れかもしれない。
「まず聞きたいのですが、どうやって王宮へ?一応、人間は立ち入れない筈なんですが…」
「わたしにも、分かりません。湖に散歩へ行って…光の扉が現れて、気がつけばあのお風呂にいたんです。」
「光の扉…?」
ドーランの言葉に、リラはこくりと頷いた。小鳥たちのことも言うべきかと思ったが、敢えて言わないでいた。
今は言わない方がいいと感じたからだ。
「あの、あなたたちは人間じゃないんですか?」
「まぁ、貴女の疑問は最もです。見た目は変わりませんしね…」
「そうじゃな。リラさん、ワシらは“星の民”という。見た目は人間と変わらんが、全く違うんだよ、生物学的にの。」
「星の民…?」
リラには、その名前に覚えがあった。
小鳥たちが言っていた言葉だ。
「まずワシらは寿命が長い。平均的には500歳くらいか…」
「ちなみに私は132歳です。ビアード様は…」
「ワシのことは言わんでよいわ!」
「おや、失礼」
初老の医師・ビアードはドーランを小突いた。自分が危機に面していると感じながらも、2人のやり取りに、リラは戸惑いを隠せない。
言葉を失っているリラを見て、ドーランが咳払いをして切り替えた。
「まぁ、私たちのことはおいおい話すとして…貴女は何処の人間ですか?ここから1番近いのは、東の海かな」
「えーと、東の海が何かは知りませんけど…出身は日本です。」
「ニホン?…ビアード様、ご存知ですか?」
「いや、この老ぼれも知らんなぁ」
「私も聞いたことがない。妙ですね…リラ、貴女魔法は使えるんですか?」
「え、魔法ですか!?…そんなもの使えません!」
ドーランが口にした魔法、というワードにリラは驚嘆した。
人間が忌々しいであったり、星の民という不老の種族がいたり、一体ここは何なんだ、とリラは内心で突っ込まずにはいられなかった。
治癒の力は持っているが、彼女はそれを魔法とは思っていない。
魔法と言われてリラが思い浮かべるのは、火を出したりするものだった。
「やはりそうですよね。人間が魔法を使えたりしたら、それこそ世界の終わりだ。」
「根掘り葉掘り聞くのも可哀想じゃから、今日はここまでにしよう。続きは明日じゃ。」
「そうですね…ミーシャ、引き続き彼女の世話を頼みます。部屋はここを使ってください。」
リラは2人の会話に胸を撫で下ろした。
ひとまず、今すぐに命を取られることはないとわかり安心したのだ。
「リラ、息苦しいでしょうがくれぐれも外に出ないで下さいね。…星の民は、人間をよく思ってないので。」
「え?」
「ミーシャ、あとは頼みましたよ。」
「かしこまりました。」
ドーランとビアードを先頭に、侍女以外は部屋から出て行った。
残されたリラは緊張がとけたのか、いくらから表情に余裕が出ていた。
侍女たちは残っているが、兵士たちに囲まれるよりは楽だった。
「…っ…」
「今はそっとしておきましょう。」
リラの瞳から涙が流れるのを見たミーシャは、他の侍女にそう声をかけたのだった。
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部屋を出たドーランは、ビアードと別れ1人王の間へと向かっていた。
リラが現れたあの部屋はいわゆる王のプライベートルームで、王が休息を取るための部屋だ。
リラを見るなり部屋を捨てると言い去った王の気持ちも解せないわけではなかったが、身元もはっきりしない不審者に対してあからさま過ぎると、ドーランは感じている。
対面し判明したことを伝える為に王の間へと向かう彼であったが、本人はあまり乗り気ではない。
「失礼します、陛下」
「遅かったな、ドーラン」
「(やはり機嫌が悪いな…はぁ…)」
不機嫌な王の相手をしなければならないのが、ドーランにはとてつもなく疲れることなのだ。
「何か情報を得たのか?」
「えぇ、勿論。大体のことは“読み”ましたよ。」
「大体だと?私は全てと命じた筈だが」
「それがですね、陛下。気になることがありまして…」
「なんだ」
「あの娘、守られてますよ。同胞の魔力に」
「なんだと?」
王の機嫌はますます悪くなった。
顔には出ていないが、空気が張り詰めているのだ。
ドーランは胃が痛くなりそうだった。
「ならば、内通者がいるということか」
「可能性はゼロではないと思いますが…」
「なんだ」
「いえ、なにも」
「早々に見つけ出せ。…人間共々処刑だ。」
「(処刑…)」
ドーランは内心複雑だったが、逆らうわけにもいかないため命令には従う。
そもそも反人間の思想にすらドーランは否定的だ。古の時代のことを今にまで引きずらなくてもいいのではないかと、彼はそう考えている。
「本当に死刑にするつもりなのか、サリウス。」
「それはどういう意味だ、ドーラン」
「命令には従う。だが今は、友として聞いているんだ。」
「人間は我らを裏切った。」
「あぁそうだな、だがそれは神代…1万年以上前の話だ。」
自分たちが忌み嫌う必要はないのではないか、とドーランは続けた。
「ドーラン、いくらお前でも許さんぞ。」
「…確認したかっただけたよ、サリウス。安心してくれ、命令には従う。」
ドーランは視線を下に下ろしながら踵を返し、王であるサリウスの視線を背に感じながら王の間を後にした。
部屋を出てすぐ、ドーランは動かなかった。
だたが少ししたのち、足をリラのいる部屋へと向ける。
「(どうにかしないとな…)」
どうにかしてリラを救いたいと、そればかり考えていた。
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