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その2
しおりを挟む若い頃の夢をみることは、時々あるが、たいてい「テスト前なのに~~ができていない」とか「新しい下宿を探している」とか、動くべき目安がなにかしらあるのが普通である。
わけもわからず、空間に放り出されるようなことは
、なかった気がする。
「ふむ。とりあえず、ヒトでも捜すとしますか」
おそらく、廊下かどこかで、若い頃の同級生か、会ったこともないはずのタレントあたりが、歩いていることだろう。
教室をでると、目の前に輪郭のぼやけた若い頃の自分の顔があった。
廊下のガラスに写った自分の姿はまちがいなく大学時代の自分だ。夢でもアイドル顔にかわってたりしないのは、じぶんの外見を案外気に入ってるのかなあとおもう。
三十歳を過ぎたいまでも、まだまだ、いけるんじゃないかとは思っていたけど、やはり、若いっていいな。なんとなく得した気になる。
いくつかの知らない教室を通り過ぎ、にぎやかな声がきこえる部屋の前についた。『学生談話室』とかいてある。
中から、ききおぼえのある声が聞こえたような気がして、ドアをあける。
「だから、誰がどんな権限で禁煙ってきめたのかってきいてるだけじゃないさ?」
壁にかかった『禁煙』の張り紙をにらみつけるようにふくれっつらではなしているのは、少しぽっちゃりしたおとこ?いや、おんな?どっちだ?たばこで嗄れているのか、すごいハスキーボイスなので声からは性別がわからない。身長は140センチぐらいだろうが、体重はそこそこありそうだ。
う~む。見た目からも男女の判別がつかない……。
「原則というか、そういう方向で行きたいなあ、というだけなんで、ヨウコさんたちは吸ってもいいって、言ってるじゃないですかあ」
気の弱そうな男が、困り果てた様子で、抗弁する。ヨウコさん?ってことは、ハスキーボイスは女なのか?
「こんな張り紙みながら、吸えるわけないっしょ?だいたい、去年まで、そんな話かけらもでてなかったじゃないさ。新三年生に喫煙者いないからここを禁煙にしたいってのはわかるけどさ。これまで吸ってきたあたしたち院生や四年生に相談なしってのは、どうなのよ」
「相談したって、ヨウコさん、却下するでしょ?」
「はぁあ?」
ソファーからたちあがって、ハスキーボイスが気弱男につめよろうとしたとき、ききなれた声がやんわりとおしとどめた。
「ヨウコさん、まあいいじゃないですか。資料室前の廊下に灰皿あるし。ああいう薄暗いとこで吸うタバコもいかがわしくていい感じですよ。それにもう、四年生は、あんまり談話室にくることもなくなってますし」
うっすら寂しそうにわらうのは……トモだ!写真でみたままの若い頃のトモがいた。
「細野くん。このトランプ、もって帰っていいかな。たしか、カズヤがもってきたやつなんだ。」
気弱男は細野というらしい。
返事を待たずに、テーブルからトランプをとりあげ、談話室のドアにむかうトモの後姿に細野が声をかける。
「あのう、トモさん達を追い出そうとか思ってないですから。てか、トモさんこないと、寂しくなりますから、今までみたいに遊びにきてくれますよね」
トモは、一拍おいてから振り向いてにっこり答える
「……うん。もちろん。じゃあね」
ユキは知っている。これは偽ったときのトモだ。
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