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その4
しおりを挟む「これ、おともだちにかえすんですか?」
ユキの問いかけにトモの表情が一瞬凍りついた。
「ううん。彼は遠くにいっちゃったんで。これは、記念にもらっておこうかなと」
作ったような微笑を浮かべるトモをみて、ユキは後悔する。
このトランプの持ち主だった青年はもう生きていないのだ。3年生の秋に事故で死んでしまったという友人。それが、カズヤという名のトランプの持ち主だったのだろう。どうしてきいてしまったんだろう。
トモが学生時代のことを話すとき、今でも辛そうな顔をするのは、死んでしまった友人のことを思い出すからだ。
名前は聞いたことなかったけど、なんとなくトランプのひとがそうなんじゃないかという予感はあったのに。いや、予感があったからこそ、たしかめてみたくなってしまったんだ。
(ソレハカタミノシナデスカ?)
小さな好奇心でトモを傷つけた。夢だとしても、いい気分じゃない。
おきろ。おきろ。もう、この夢はおしまいだ。大丈夫、どうしようもない失敗をした夢は、いつだって、すぐに醒めるはず。ぎゅうっと眼を瞑る。
そっと、眼を開いたとき、視界に入ったのは半分のみかけのブラックコーヒーだった。
「どうしました?顔色があまり、よくないですよ。」
心配そうに覗き込むトモは若いままだ。なぜ、めがさめないんだろう。夢じゃないのか。
「すみません。ちょっとトイレいってきます」
一度、頭を整頓する必要がありそうだ。
「入口の階段の近くにありますけど、ひとりでだいじょうぶですか」
「大丈夫。だいじょうぶです」
夢じゃないとすると、タイムワープというやつか。タイムワープって、自分の年はかわらないんじゃなかったのか。
きっかけが、トモの写真だってこと。実際の歴史の中では会わなかったはずの大学生のトモとユキが話しているってこと。この2つから、導き出される答えは……
何者の意思かは、わからないが、トモがひとりで沈んでいたらしき時代にユキが介入するチャンスを得たということなのではないか。
犯罪を阻止しようとか、万馬券をあてようとか、だれかの命を救おうとか、そんなたいそうなことじゃない。
ときおり、ぽつりぽつりときいていたトモのなげやりな青春時代。聞くたびに、まだ心の一部をおいてきたままなんじゃないかと不安になるその時代に、今、ユキは存在している。
もしかしたら、ほんの少しだけ、トモを楽にしてあげられるかもしれない。コレが、夢であれ幻であれ、自分が元の自分にもどれるための鍵は、そこにあるようなきがした。
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