バイスクル

トマト

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その6

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 写真撮影って、もしか、意識がとんだときの写真じゃないだろうか。

だとしたら、その写真は元にもどるための鍵になるのかもしれない。

お金とトランプをジャケットのポケットにつっこんで、急いで学食をでる。

 撮影は学食から近い教育学部の校舎前ロータリーでおこなわれていた。あの写真でみたのとそっくりの構図。ユキがいる位置からは70メートルほど。


「ちょっと、まっ……」
階段を駆け下りようとしたとき、ドスンとおなかになにかぶつかった。

「あぶないじゃないさ」

 ロータリーのほうに気とられて、下から階段をのぼってくる小柄な人影にきがつかなかったのだ。ギロリとユキを見上げているのは例のハスキーボイスだった。

「子供じゃないんだから、階段おりるときぐらいちゃんと前見て歩きなさいよ。ころげおちたら、どうすんのさ」

「すみません。すみません」

 ひたすらぺこぺこ 頭を下げる。(あなたも前見てなかったから、ぶつかったんだろう)と一方的に攻められるのは納得がいかない気もしたが、間近でみるヨウコさんには文句を言わせない迫力があった。 

「ヨウコさーん。一緒にいちまい写してもらいましょうよー」

 ロータリーから、トモがてまねきしている。他の学生達はもう半分ぐらいに減っていた。あの写真はとりおわってしまったのか。

トモはどんな表情で写ったんだろう。あの空っぽの表情で宙をみていたんだろうか。
撮影がおわったのにユキはまだここにいる。
写真撮影はもとにもどるための鍵じゃあなかったんだろうか。
それとも、自分はまにあわなかったのだろうか。もう元にもどる鍵はなくなってしまったのか。

楽しそうにはなしているトモとヨウコをぼんやり眺めながら、ユキは途方にくれていた。

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