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その7
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「あ・・・」
構内をふらふらと歩いているうち、不意にあることに思い至った。
4年の頃、トモは下宿生活をしていたはずだ。県内にある自宅はそう遠くないが、毎日通うのは辛かったらしい。
心配性の両親が毎週のようにトモの下宿に食料をもってくるので、自宅に帰ることはめったになかったときいたことがある。
さっき、トモは今日、自宅に帰るといわなかったか。記憶に中にあるトモの手首に残る傷跡が浮かんだ。さっき敬礼したときの左手首にきずはあったか。いや、なかった。まだ、傷ひとつないきれいなままだった。
。。回想。。
「何で、死のうとおもったの?」
「うーーん。なんでだろう。自分でもよくわからない」
数年前にユキがずっと気になっていたトモの手首の傷跡のことをきいたとき、ごまかしている風でもなく、本当にわからない様子でトモは答えた。
「死んでしまった友達は関係あるのかな?」
「少しは、あるのかもしれない。でも、もっと前からなんとなく もういいかなあって気はしてたとおもう。」
「もういいって?」
「もう、充分楽しかったし、この先 なにか欲しいものがあるってわけでもない。もしかしたら、すごくいやなことがあるのかもしれない。だったら、もう終わってもいいんじゃないかと。」
「だれかに相談とかしなかったの?」
「しなかった。うまく、伝わるとおもえなかったし」
当時うまく伝わらないと思ったことを、言葉を捜しながら自分には伝えてくれる。長い時間があいまいな気持ちを少しずつ形にしていったからかもしれないし、別に伝わらなくてもかまわないとおもっているのかもしれない。だけど、もし、ユキならわかるかもしれないと思ってくれているんだったら、少し嬉しい。
「親には?」
「もちろん、なにも相談とかしてなかった。だから、病院で眼が覚めたとき、とうさんは、ずっとだまって怒った顔してたし、かあさんは……『珍しく家に帰ったとおもったら、妙にはしゃいでるし、ちょっと、おかしいとは思ったけど、まさか死のうとしてるなんて、思わなかった。なにがあったんだ』って、泣いてた。」
「そりゃ泣くでしょう。」
「そうだね。そのときは、いやいや、だから、死にたかったんじゃなくて、はじめからいなかったみたいに消える方法があればよかったんだけどなあっって、おもった。親にいやな思いさせたかったわけじゃないし。」
「今は?生きててよかったって思える?消えてしまおうとかはおもわない?」
「……うん。生きてて良かったし、消えたいとかおもわないよ。」
トモは一拍おいて答えると、にっこりわらった。
少し、裏切られたきがした。
構内をふらふらと歩いているうち、不意にあることに思い至った。
4年の頃、トモは下宿生活をしていたはずだ。県内にある自宅はそう遠くないが、毎日通うのは辛かったらしい。
心配性の両親が毎週のようにトモの下宿に食料をもってくるので、自宅に帰ることはめったになかったときいたことがある。
さっき、トモは今日、自宅に帰るといわなかったか。記憶に中にあるトモの手首に残る傷跡が浮かんだ。さっき敬礼したときの左手首にきずはあったか。いや、なかった。まだ、傷ひとつないきれいなままだった。
。。回想。。
「何で、死のうとおもったの?」
「うーーん。なんでだろう。自分でもよくわからない」
数年前にユキがずっと気になっていたトモの手首の傷跡のことをきいたとき、ごまかしている風でもなく、本当にわからない様子でトモは答えた。
「死んでしまった友達は関係あるのかな?」
「少しは、あるのかもしれない。でも、もっと前からなんとなく もういいかなあって気はしてたとおもう。」
「もういいって?」
「もう、充分楽しかったし、この先 なにか欲しいものがあるってわけでもない。もしかしたら、すごくいやなことがあるのかもしれない。だったら、もう終わってもいいんじゃないかと。」
「だれかに相談とかしなかったの?」
「しなかった。うまく、伝わるとおもえなかったし」
当時うまく伝わらないと思ったことを、言葉を捜しながら自分には伝えてくれる。長い時間があいまいな気持ちを少しずつ形にしていったからかもしれないし、別に伝わらなくてもかまわないとおもっているのかもしれない。だけど、もし、ユキならわかるかもしれないと思ってくれているんだったら、少し嬉しい。
「親には?」
「もちろん、なにも相談とかしてなかった。だから、病院で眼が覚めたとき、とうさんは、ずっとだまって怒った顔してたし、かあさんは……『珍しく家に帰ったとおもったら、妙にはしゃいでるし、ちょっと、おかしいとは思ったけど、まさか死のうとしてるなんて、思わなかった。なにがあったんだ』って、泣いてた。」
「そりゃ泣くでしょう。」
「そうだね。そのときは、いやいや、だから、死にたかったんじゃなくて、はじめからいなかったみたいに消える方法があればよかったんだけどなあっって、おもった。親にいやな思いさせたかったわけじゃないし。」
「今は?生きててよかったって思える?消えてしまおうとかはおもわない?」
「……うん。生きてて良かったし、消えたいとかおもわないよ。」
トモは一拍おいて答えると、にっこりわらった。
少し、裏切られたきがした。
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