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第二章 逆さ鳥居の神社編

79話

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 妹のベッドを俺の部屋に移動し、夕食の準備を終えたところで、山城綾子が脱衣場から出てくる。

「えっと……、何だか……、すごく変な雰囲気なんだけど、どうかしたの?」

 料理をリビングのテーブルへ運んでいると、ぎこちない表情で、俺に話しかけてくる山城綾子。
 軽く事情を説明すると、「あー、なるほどね」と、妙に納得し綾子はテーブル席に腰を下ろす。
 そして、食事を始めたところで――、

「お兄ちゃん」
「どうした?」
「お兄ちゃん、私の部屋で寝るんだよね?」
「まぁ、そんな感じだな」
「別に優斗君は、私の部屋に泊まってもいいのよ?」
「「それは絶対にダメです!」」

 山城綾子からの提案に、即! 否を告げる妹と都。
 さっきから不機嫌なのは良いんだが、反応する時はキチンと反応するんだよな。

「優斗君は、胡桃ちゃんの部屋で寝泊りするけどベッドが無いのよね? それなら、私と一緒に寝るのが合理的だと思うけど?」
「そんなのはダメです! それなら、私がお兄ちゃんと寝るのが普通です! 妹は、お兄ちゃんと寝る法律があるの!」
「綾子、妹を揶揄うのもやめてくれ」
「それなら、優斗とは近日中に結婚する予定の私が一緒に寝るのが普通よね!」
「いつから結婚する話になった……」
「大丈夫!」

 バン! と、テーブルの上に置かれる一枚の紙。
 そして、その用紙を颯爽と奪いビリビリに破く妹。

「何ですか! 婚姻届けって!」
「ほら、私って優斗の彼女だから」
「そんなの! 胡桃は、許可していません!」
「胡桃ちゃん。そんなにブラコンだと優斗は困ると思うわよ? だいたい、優斗が、妹ちゃんのせいで婚期を逃したらどうするの?」
「そしたら! ――く、胡桃が……」

 都と妹が、何やらヒートアップしていく。
 それを横目で見ながら、俺は味噌汁を口にする。

「優斗君って、こういう場面は慣れているの?」
「さあ」

 俺は肩を竦める。
二人共言い争いことしているが、普段は二人とも仲がいいので、問題ないだろう。
まぁ遊びみたいなモノだ……きっと。
それでも婚姻届けまで用意しているとは、手が込んでいるよな。
 それから食事も終わり、リビングのソファーで、ダラダラとする俺達。

「そういえば、お兄ちゃんは山城さんと一緒に病院に行ってきたんだよね?」
「まぁ、そんな感じだな」
「それで、病院には生徒会のお仕事で行って来たの?」
「そうだな……」

 まヵ実際は、山城親子のために時間が浪費された訳だが、それを説明する必要はないか。
 山城綾子も、黙っていることから下手に詮索されたくは無いようだしな。

 適当な所で切り上げて部屋――、妹の部屋に入る。
 妹の部屋は、ぬいぐるみが所狭しと並んでいる。
 俺はドアを閉めたあと、背中を室内の壁に預けてズボンのポケット内から携帯電話を取り出す。
 時刻は、午後9時近くを指し示していた。

「そろそろ行かないとな」

 周囲の気配を察知しながら、まずは妹の部屋の鍵を閉める。
 そして――、住んでいる家に向けられている気配が薄らいだところで窓から飛び降りて近くの物陰に隠れる。
 もちろん靴も持参済み。

 俺は、誰にも気がつかれず待合場所である本千葉駅へ向かう。
 身体強化をして、屋根上を移動していた事もあり、10分も掛からず本千葉駅が見えてくる。
 そして――、交番があるロータリーには見慣れた車が停まっていた。


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