138 / 155
17 エマと僕
4 これは僕の勝ちだね。
今朝もちゃんと華歯さん特製の薬を食後に服用して、僕は朝食の片付けを始めた。当然、エマにも朝晩服用って言われてたみたいだから、朝食の席でブツブツぼやきながら煎じ茶を飲んでたようだったけど。どっちが最後まで耐えられるか根性比べといこう。
(絶対、エマには負けないからっ)
こんなことで勝手に競争心奮い立たせて、なんか僕、ちっぽけな奴だ。
(でもっ、僕にできることだったらどんなことだって負けないからっ)
食器を片付けながら一人で息を荒げてる。
朝食を済ませた兄様たちは持ち場の巡回に向かう。テーブルの片付けをしながらそんな兄様たちを毎朝見送ってる。こんなに賑やかで和やかな兄様たちだけど、仕事に向かう兄様たちって全然違うんだよね。兄様たちの役目は、限りない罪人を相手に裁きを施して進むべき道を導くこと。地獄の鬼は罪人をいたぶって、酷い痛みを与えて、苦しみや飢え、渇きから永遠に逃さないものだとばかり思ってた。僕たち人間の世界ではそんな言い伝えがある。でもね、僕の知ってる“地獄の鬼”はそうじゃない。罪人なんて絶対に許されない存在だよ。許してはいけない存在。そんな罪人を兄様たちは決して見捨てない。罪を犯したことは許してはいけないけれど、罪を償って新しい道を示してくれる。それが兄様たちの仕事。そんな責務を背負って向かう兄様たちの存在が僕は凄く誇らしく思う。
「あ、そう言えば‥‥」
両手に持てるだけの食器を持って下げようとしてた僕にムキ兄様が声をかけてきた。
「そろそろミツキ用のテーブル、高さが合わなくなってきているんじゃないか?」
ムキ兄様は人差し指でこめかみのところを掻きながらそう言った。
「‥‥テーブル?」
僕用のテーブルって‥‥少し考えて思いついた。僕の部屋にある僕用のテーブル。初めて地獄界に来た時にムキ兄様が作ってくれたやつだ。そう言われれば、なんだか最近、テーブルと膝の幅がすれすれに感じてたんだけど。
「ミツキが大きくなってるってことだ!ははは‥‥」
「おお、きく?」
「すぐにとはいかんが、時間を作ってまた新しいのに作り直すようにしよう」
ムキ兄様の豪快な笑い声が食堂に響いた。
(新しいのを?僕の為に?)
そんなとこまで分かっててくれてたなんて、涙が出そうです。
「ね、ルカラ兄様、ボクも一緒に行きたい」
「巡回に?行くってか?」
「だって、ずっと離れてるの寂しい」
ルカラ兄さんの腕にキュっとしがみついてエマが甘ったるい声で訴えてる。
「別にいいけど。お前が罪人らの雄叫びに耐えられるんならな。それなら、虎虎婆を迎えにやらせてもいいけど?」
ルカラ兄さんの目がキロッとエマを見下ろしてる。
「コ、コ、バ‥‥って?」
エマの両目がクリクリ動いてルカラ兄さんを見上げた。
ピ――ッ!
ルカラ兄さんはニヤリと笑って指笛を鳴らした。
ブワ――‥‥
次の瞬間、突風が吹いたかと思ったら食堂の襖が外れそうなくらい揺れた。
「オレの下僕だ」
ルカラ兄さんが襖を開けると、食堂の下の広場にでっかい黒い物体が見えた。よくよく見ると、体長は十メートル弱かな。四本の手足は節足動物みたいに異様に長くて、もそもそ地面で動いてる。身体はって言うと、獣みたいに毛むくじゃらで首から上はオオカミのような鬣を靡かせて鋭い両眼で空を見上げた。
クウォ―――ン!
地面が揺れるくらいの遠吠えを轟かせてルカラ兄さんを見ている。
「な、に‥‥あれ‥‥」
青褪めたエマの顔が引き攣ってルカラ兄さんの背中にぴとりとくっついて隠れてしまった。
「見た目は恐ろしい奴だけど、いい奴だ。それにしっかり仕事もしてくれるからな」
ルカラ兄さんは回廊へ出て行くとその生き物を優しい目で見ていた。
「ルカラ、ナニカヨウ?」
その生き物は銀色の目でルカラ兄さんを見てる。
「あ‥‥‥」
僕は階段を下りて駆け出してた。
「ココちゃん!久しぶり!元気してた?」
その獣の首元に抱きついて頬ずりする。
そう、知らない生物じゃないんだ。初めて地獄界に来た時にハバラ兄さんに地獄界の案内をしてもらったことがあったんだけど、ルカラ兄さんの八寒地獄にも連れて行ってもらった。そこで、この生物に出会ったんだ。初めて間近で人間の僕を見たこの子は、本当に獣そのものだったよ。絶対に食べられちゃうんだって身体中の震えが止まらなかったのを覚えてる。
「ふふ‥‥いい子」
ココちゃんの首の辺りを撫でると
「グルルル‥‥」
喉を鳴らして摺り寄って来るんだ。
「コ、コ‥‥ちゃん‥‥って‥‥」
エマがルカラ兄さんの背中越しにこっちを見てる。
「エマ~!おいでよ!この子、いい子なんだよ」
僕はエマに向かって手招きした。
(いやいやっ‥‥ミツキ、頭おかしいんじゃないのぉっ?振り返った瞬間に、頭からパクって‥‥)
エマは必死に頭を振ってる。
「虎虎婆は罪人とそうでない奴との区別はできる。だからオレも信頼してる。ま、お前はどうか分からんがな」
そう言いながらルカラ兄さんがこっちへ下りてきた。
「んあああ―――っ!ルカラ!朝からドタバタうるせぇぞっ!別に用もねぇのに、ココバ呼んでんじゃねぇよっ!」
その後ろからハバラ兄さんの大声が降って来て
「オレの勝手だろ?いちいちうるせぇんだよ、お前は‥‥ちったぁ落ち着きやがれ!」
「なんだとぉ?!」
はい、また始まった。
「はい、はい、お前ら、行くぞ」
そんな光景を見ながら大らかに笑うムキ兄様が、パンパン!と手を鳴らして制圧。
「ルカラ兄さん、行ってらっしゃい」
「行ってきます」
ココちゃんを撫でながらルカラ兄さんは笑った。
始まりの朝の空に向かって兄様たちがそれぞれの持ち場に飛んで行く。流れ星みたいな群衆に手を振って僕は見送った。
朝食の片付けも全部終わって、今度は洗濯だ。兄様たちの服やシーツを毎日交互に洗ってる。さすがにこの兄様たちの分ってなると一日かかっても洗いきれない。華歯さんも手伝ってくれて、洗濯の時間は二人でおしゃべりしながら楽しい時間を過ごしてる。あ、でも、レンさんヨウさんは一応、女子だしね、自分たちで洗うからって、前は華歯さんに全部やってもらってたみたいだけど、僕が来てからは自分のことは自分でするようになったって。華歯さんがくすくす笑ってた。
(いいお嫁さんになるかもね。でも、レンさんヨウさんがお嫁さんになるなんて‥‥ごめん、想像できない‥‥)
僕は心の中でこっそり笑った。
「お弁当、作っておきましたので、後で‥‥」
「ほんとぉ?嬉しいっ!いつもありがとう華歯さん!」
何度かお使いに行くことはあるんだけど、華歯さんはその度に僕たちにお弁当を作ってくれた。僕たちに食べやすい大きさで、色んなお弁当メニューを考えてくれて、毎回楽しみだった。そして、お使いに行くときはいつもあの子たちも一緒で、初めてお弁当を見た時の驚きようったら‥‥‥
「よし、これで全部‥‥」
最後の洗濯物を干して、お使いへ行く準備をしようと裏口から厨房の方へ戻ろうとした時だった。
「へ~洗濯もやるんだね。毎日、ご苦労様」
エマがそこに立ってた。
「当たり前だよ。僕の仕事だからね」
「ふ~ん‥‥」
って言ったきり、エマは黙った。僕を茶化しに来たんだと思ってたけど、逆に何も言わないと変な気分になる。
「で‥‥エマはこんな所に何の用?」
「別に、朝の散歩だよ」
悠長でいいよね。ま、僕にはそんな生活耐えられないけど。そんなエマに、話しても無駄なことだろうとは思ったけど
「あ、そう言えば、前に果樹園の話したことあるよね?」
「ん—、何となく覚えてるけど?」
「あそこにお使い頼まれたから一緒に行かない?」
「お使い?ボクが?」
でしょうよ。ご身分のお高い人はお使いなんて行ったこともないんだろうね。どうせとは思ってたから
「だよね。じゃ、また機会があったら一緒に行こう」
「一人で?行くの?」
「ううん。友達と」
「友達?こんなとこに、友達なんているの?」
「そう。あの子たちもいい子なんだ」
「あの子、たち?って?え?また、さっきの獣みたいなの?それだったら絶対いいっ!」
エマの表情が硬くなってる。相当、ココちゃんに恐怖心を持ったんだね。それも仕方ないか、人それぞれに感受性は違うものだからね。僕はそういうの全然平気、というより、地獄界へ来て抵抗力がついたのかもしれない。
「でも‥‥先住者の僕からアドバイスしとくよ。ここは地獄だからね。それ相応の心構えもいるよ」
クイン兄さんを始め(クイン兄さん、ごめんなさい)あのココちゃんや小鬼くんたち、それに地獄界の生物ではないけど、白虎さんや朱雀さんみたいな巨大な生き物だって居る。常識じゃない世界を受け入れられるようにならなきゃね。
「そ、そんなの、前に会った牛面の獣で十分だ‥‥」
僕も二度とは会いたくないけどね。
「気が向いた‥‥」
ワキャ――――ッ!!
言いかけた時、
菜園の向こうから黒い影の波がこっちへやって来る。
「そら、来た」
「へ?なに?何の声?え?え?」
エマが身構えて菜園の方を見た。
ワキャワキャ―――ッ!
噂をすれば小鬼くんたち登場です。押し寄せてきたと思ったら僕の足元でぴょこぴょこ飛び跳ねてる。
「はは‥‥おはよ、小鬼くんたち。今日も一緒にお使いお願いします」
一匹?じゃないな、一鬼の小鬼くんが僕の肩まで上って来て目の前に居るエマをじっと見た。
「いや‥‥これ、な、に?」
小鬼くんと目が合ったエマが唇をカタカタさせて引いてる。
「さっき言ってたでしょ?僕の友達。初めましてだね。小鬼くんたち、この子はエマっていうんだ。僕の一応、弟になるんだけどね。ね、エマ、この子たちかわいいでしょ?すっごくいい子たちなんだ。手伝いもよくしてくれるんだよ」
「いや‥‥いや‥‥な、なに?ネ、ネズミ?うぅ‥‥‥」
小鬼くんたちを目の前にして嘔吐いてんの?それはあんまりじゃない?失礼な奴だ。
「ま、少しずつ慣れていけばいいと思うよ」
「う、うぅ‥‥‥」
顔色のないエマにちょっとだけ優越感を感じた。
(絶対、エマには負けないからっ)
こんなことで勝手に競争心奮い立たせて、なんか僕、ちっぽけな奴だ。
(でもっ、僕にできることだったらどんなことだって負けないからっ)
食器を片付けながら一人で息を荒げてる。
朝食を済ませた兄様たちは持ち場の巡回に向かう。テーブルの片付けをしながらそんな兄様たちを毎朝見送ってる。こんなに賑やかで和やかな兄様たちだけど、仕事に向かう兄様たちって全然違うんだよね。兄様たちの役目は、限りない罪人を相手に裁きを施して進むべき道を導くこと。地獄の鬼は罪人をいたぶって、酷い痛みを与えて、苦しみや飢え、渇きから永遠に逃さないものだとばかり思ってた。僕たち人間の世界ではそんな言い伝えがある。でもね、僕の知ってる“地獄の鬼”はそうじゃない。罪人なんて絶対に許されない存在だよ。許してはいけない存在。そんな罪人を兄様たちは決して見捨てない。罪を犯したことは許してはいけないけれど、罪を償って新しい道を示してくれる。それが兄様たちの仕事。そんな責務を背負って向かう兄様たちの存在が僕は凄く誇らしく思う。
「あ、そう言えば‥‥」
両手に持てるだけの食器を持って下げようとしてた僕にムキ兄様が声をかけてきた。
「そろそろミツキ用のテーブル、高さが合わなくなってきているんじゃないか?」
ムキ兄様は人差し指でこめかみのところを掻きながらそう言った。
「‥‥テーブル?」
僕用のテーブルって‥‥少し考えて思いついた。僕の部屋にある僕用のテーブル。初めて地獄界に来た時にムキ兄様が作ってくれたやつだ。そう言われれば、なんだか最近、テーブルと膝の幅がすれすれに感じてたんだけど。
「ミツキが大きくなってるってことだ!ははは‥‥」
「おお、きく?」
「すぐにとはいかんが、時間を作ってまた新しいのに作り直すようにしよう」
ムキ兄様の豪快な笑い声が食堂に響いた。
(新しいのを?僕の為に?)
そんなとこまで分かっててくれてたなんて、涙が出そうです。
「ね、ルカラ兄様、ボクも一緒に行きたい」
「巡回に?行くってか?」
「だって、ずっと離れてるの寂しい」
ルカラ兄さんの腕にキュっとしがみついてエマが甘ったるい声で訴えてる。
「別にいいけど。お前が罪人らの雄叫びに耐えられるんならな。それなら、虎虎婆を迎えにやらせてもいいけど?」
ルカラ兄さんの目がキロッとエマを見下ろしてる。
「コ、コ、バ‥‥って?」
エマの両目がクリクリ動いてルカラ兄さんを見上げた。
ピ――ッ!
ルカラ兄さんはニヤリと笑って指笛を鳴らした。
ブワ――‥‥
次の瞬間、突風が吹いたかと思ったら食堂の襖が外れそうなくらい揺れた。
「オレの下僕だ」
ルカラ兄さんが襖を開けると、食堂の下の広場にでっかい黒い物体が見えた。よくよく見ると、体長は十メートル弱かな。四本の手足は節足動物みたいに異様に長くて、もそもそ地面で動いてる。身体はって言うと、獣みたいに毛むくじゃらで首から上はオオカミのような鬣を靡かせて鋭い両眼で空を見上げた。
クウォ―――ン!
地面が揺れるくらいの遠吠えを轟かせてルカラ兄さんを見ている。
「な、に‥‥あれ‥‥」
青褪めたエマの顔が引き攣ってルカラ兄さんの背中にぴとりとくっついて隠れてしまった。
「見た目は恐ろしい奴だけど、いい奴だ。それにしっかり仕事もしてくれるからな」
ルカラ兄さんは回廊へ出て行くとその生き物を優しい目で見ていた。
「ルカラ、ナニカヨウ?」
その生き物は銀色の目でルカラ兄さんを見てる。
「あ‥‥‥」
僕は階段を下りて駆け出してた。
「ココちゃん!久しぶり!元気してた?」
その獣の首元に抱きついて頬ずりする。
そう、知らない生物じゃないんだ。初めて地獄界に来た時にハバラ兄さんに地獄界の案内をしてもらったことがあったんだけど、ルカラ兄さんの八寒地獄にも連れて行ってもらった。そこで、この生物に出会ったんだ。初めて間近で人間の僕を見たこの子は、本当に獣そのものだったよ。絶対に食べられちゃうんだって身体中の震えが止まらなかったのを覚えてる。
「ふふ‥‥いい子」
ココちゃんの首の辺りを撫でると
「グルルル‥‥」
喉を鳴らして摺り寄って来るんだ。
「コ、コ‥‥ちゃん‥‥って‥‥」
エマがルカラ兄さんの背中越しにこっちを見てる。
「エマ~!おいでよ!この子、いい子なんだよ」
僕はエマに向かって手招きした。
(いやいやっ‥‥ミツキ、頭おかしいんじゃないのぉっ?振り返った瞬間に、頭からパクって‥‥)
エマは必死に頭を振ってる。
「虎虎婆は罪人とそうでない奴との区別はできる。だからオレも信頼してる。ま、お前はどうか分からんがな」
そう言いながらルカラ兄さんがこっちへ下りてきた。
「んあああ―――っ!ルカラ!朝からドタバタうるせぇぞっ!別に用もねぇのに、ココバ呼んでんじゃねぇよっ!」
その後ろからハバラ兄さんの大声が降って来て
「オレの勝手だろ?いちいちうるせぇんだよ、お前は‥‥ちったぁ落ち着きやがれ!」
「なんだとぉ?!」
はい、また始まった。
「はい、はい、お前ら、行くぞ」
そんな光景を見ながら大らかに笑うムキ兄様が、パンパン!と手を鳴らして制圧。
「ルカラ兄さん、行ってらっしゃい」
「行ってきます」
ココちゃんを撫でながらルカラ兄さんは笑った。
始まりの朝の空に向かって兄様たちがそれぞれの持ち場に飛んで行く。流れ星みたいな群衆に手を振って僕は見送った。
朝食の片付けも全部終わって、今度は洗濯だ。兄様たちの服やシーツを毎日交互に洗ってる。さすがにこの兄様たちの分ってなると一日かかっても洗いきれない。華歯さんも手伝ってくれて、洗濯の時間は二人でおしゃべりしながら楽しい時間を過ごしてる。あ、でも、レンさんヨウさんは一応、女子だしね、自分たちで洗うからって、前は華歯さんに全部やってもらってたみたいだけど、僕が来てからは自分のことは自分でするようになったって。華歯さんがくすくす笑ってた。
(いいお嫁さんになるかもね。でも、レンさんヨウさんがお嫁さんになるなんて‥‥ごめん、想像できない‥‥)
僕は心の中でこっそり笑った。
「お弁当、作っておきましたので、後で‥‥」
「ほんとぉ?嬉しいっ!いつもありがとう華歯さん!」
何度かお使いに行くことはあるんだけど、華歯さんはその度に僕たちにお弁当を作ってくれた。僕たちに食べやすい大きさで、色んなお弁当メニューを考えてくれて、毎回楽しみだった。そして、お使いに行くときはいつもあの子たちも一緒で、初めてお弁当を見た時の驚きようったら‥‥‥
「よし、これで全部‥‥」
最後の洗濯物を干して、お使いへ行く準備をしようと裏口から厨房の方へ戻ろうとした時だった。
「へ~洗濯もやるんだね。毎日、ご苦労様」
エマがそこに立ってた。
「当たり前だよ。僕の仕事だからね」
「ふ~ん‥‥」
って言ったきり、エマは黙った。僕を茶化しに来たんだと思ってたけど、逆に何も言わないと変な気分になる。
「で‥‥エマはこんな所に何の用?」
「別に、朝の散歩だよ」
悠長でいいよね。ま、僕にはそんな生活耐えられないけど。そんなエマに、話しても無駄なことだろうとは思ったけど
「あ、そう言えば、前に果樹園の話したことあるよね?」
「ん—、何となく覚えてるけど?」
「あそこにお使い頼まれたから一緒に行かない?」
「お使い?ボクが?」
でしょうよ。ご身分のお高い人はお使いなんて行ったこともないんだろうね。どうせとは思ってたから
「だよね。じゃ、また機会があったら一緒に行こう」
「一人で?行くの?」
「ううん。友達と」
「友達?こんなとこに、友達なんているの?」
「そう。あの子たちもいい子なんだ」
「あの子、たち?って?え?また、さっきの獣みたいなの?それだったら絶対いいっ!」
エマの表情が硬くなってる。相当、ココちゃんに恐怖心を持ったんだね。それも仕方ないか、人それぞれに感受性は違うものだからね。僕はそういうの全然平気、というより、地獄界へ来て抵抗力がついたのかもしれない。
「でも‥‥先住者の僕からアドバイスしとくよ。ここは地獄だからね。それ相応の心構えもいるよ」
クイン兄さんを始め(クイン兄さん、ごめんなさい)あのココちゃんや小鬼くんたち、それに地獄界の生物ではないけど、白虎さんや朱雀さんみたいな巨大な生き物だって居る。常識じゃない世界を受け入れられるようにならなきゃね。
「そ、そんなの、前に会った牛面の獣で十分だ‥‥」
僕も二度とは会いたくないけどね。
「気が向いた‥‥」
ワキャ――――ッ!!
言いかけた時、
菜園の向こうから黒い影の波がこっちへやって来る。
「そら、来た」
「へ?なに?何の声?え?え?」
エマが身構えて菜園の方を見た。
ワキャワキャ―――ッ!
噂をすれば小鬼くんたち登場です。押し寄せてきたと思ったら僕の足元でぴょこぴょこ飛び跳ねてる。
「はは‥‥おはよ、小鬼くんたち。今日も一緒にお使いお願いします」
一匹?じゃないな、一鬼の小鬼くんが僕の肩まで上って来て目の前に居るエマをじっと見た。
「いや‥‥これ、な、に?」
小鬼くんと目が合ったエマが唇をカタカタさせて引いてる。
「さっき言ってたでしょ?僕の友達。初めましてだね。小鬼くんたち、この子はエマっていうんだ。僕の一応、弟になるんだけどね。ね、エマ、この子たちかわいいでしょ?すっごくいい子たちなんだ。手伝いもよくしてくれるんだよ」
「いや‥‥いや‥‥な、なに?ネ、ネズミ?うぅ‥‥‥」
小鬼くんたちを目の前にして嘔吐いてんの?それはあんまりじゃない?失礼な奴だ。
「ま、少しずつ慣れていけばいいと思うよ」
「う、うぅ‥‥‥」
顔色のないエマにちょっとだけ優越感を感じた。
あなたにおすすめの小説
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
【完結】束縛彼氏から逃げたのに、執着が想像以上に重すぎた
鱗。
BL
束縛の強い恋人、三浦悠真から逃げた風間湊。
逃げた先で出会ったのは、優しく穏やかな占い師、榊啓司だった。
心身を癒やされ、穏やかな日常を取り戻したかに見えた——はずだった。
だが再び現れた悠真の執着は、かつてとは比べ物にならないほど歪んでいて。
そして気付く。
誰のものにもなれないはずの自分が。
『壊れていく人間』にしか愛を見出せないということに。
依存、執着、支配。
三人の関係は、やがて取り返しのつかない形へと崩れていく。
——これは、『最も壊れている人間』が愛を選び取る物語。
逃げた先にあったのは、『もっと歪んだ愛』だった。
【完結済み】
女子が苦手になったイケメン家庭教師の行き先は男子に向いた
henoru
BL
女子が苦手になったイケメン家庭教師の行き先は男子に向いた
子供の頃から勉強一筋で 気がつけば女性との接触が苦手になっていた
得意の勉強を 生かして 家庭教師のアルバイトを始める 性の吐口は-----
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。