九十九鬼夜行 ~孤独だった僕が鬼様=兄様に溺愛されてるわけ~

田神ナ子

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7 鬼様は兄様

5 母様は神様です!


 「こほん。夕食ができております」

  華歯は軽く咳払いをして、いつものように告げた。


「この椅子の数って…みんなの分?」
 食事時はいつもの定位置があるらしくて、ハバラ兄さんは上座の方から3番目の席に座った。

 その横にちょこんて。
これは、あのぉ…よくホテルとかで見かけるよ。ちっちゃい子が座る、ほら、お父さん、お母さんとかと一緒に同じ高さになって食事とかするやつの、椅子‥‥。造りはこっちの方が豪華だけどね。
 それはないでしょぉぉぉ。いくらなんでも身体が小さいからって、華奢な僕だからって!
ちょっと不服な顔になって僕はその椅子に座って…座って…て…え?
(なに?なんで座れない??)
 侮ってた。
そう、僕はずっとハバラ兄さんの肩の上で景色を見てたから、自分がそんな風になってたんだ。感覚が違ってたんだ。ハバラ兄さんの大きさで、目線の高さでいた僕はちょっとだけ大きく(気分的に)なってたんだ。
(調子に乗りすぎだ‥‥)

「ミツキ‥‥」
 そんな落ち込んでる僕を察してくれたのか、おっきな腕がエスコートしてくれた。
「あ…ありがと」
「これからぁ、ミツキの席はオレの横♪」

 それでも‥‥
僕には嬉しかった。
 学校でも、家庭でも、どこにいたって居場所がない僕にとって、こんな僕が受け入れてもらえてることが。
たとえこれが夢だったとしても、少しぐらい夢見る幸せな時間、あってもいいよね。


 夕食は僕から見てすっごく贅沢に映った。グロいのではという考えは一掃して
「これ‥‥華歯さんが全部作るの?」
「ん…ふぁな。(まあな)ま、でも厨房に大勢、使用人がいるから手伝ってもらってるよ。華歯はその指導者みたいなんかな~」
 口いっぱいに入れ込んで豪快に食べてる。
「だろうね。こんなたくさんの料理、しかも何人分なの?手伝いする人くらいいなきゃね‥‥」

 テーブルにはあっという間に肉料理や煮物なのかな?そんなのとか、もちろん!なくてはならないでしょ!おにぎりなんかも、つやっつやのご飯が食欲をかき立てた。
 合掌
「いただきます」
 僕にこんな食欲があったなんて。僕ってこんなに食べられたんだっけ?
ほんとに、ほんとにおいしかった。あったかかった。

「いっぱい食べろ!ミツキ!」
 僕の横でリスみたいにほっぺを膨らませてるハバラ兄さんが顔いっぱいで笑ってた。


 夕食の時間なのに、席はガラガラ。

 ホテルみたいな感覚で
『夕食会場は1階宴会の場でございます。夕食の時間は6時30分からとなっております』的な?

 それもそうだ。
この椅子の数、兄弟の分にしては多すぎる。普通に考えても一般的なホテルでもこの数はないよ。
家族そろって——なんて待ってたらキリがない。

「みんな、好きな時間にきて食べて、食事がすんだら部屋に帰るの?」
 ハバラ兄さんにとっては日常のことだから「なに言ってる?」みたいな顔して僕を見てたけど、そこは面倒くさがらずにちゃんと話してくれた。
「兄弟が多いと、んなもんよ。食べた後も一時は酒飲んだり、食後の別腹?ての?デザート食って兄弟で話したり、まったり過ごしてるよ」
「で、これまたデザートもうまいんだわ!」
 ハバラ兄さんの顔がとろけた。

「兄弟って‥‥何人いるの?」
 この椅子の数を見れば一目瞭然だけどね。
「ん?と…九十八!」
「‥‥九十八ぃぃぃ?!」
 にしてもびっくりする。大所帯も大所帯。
「で、ミツキが新たにオレたちの兄弟になったってことで、九十九!」
 その中に、僕?!
ちょっと待って、いつから僕は兄弟になったんだ?いつから僕は鬼になったの?
いや…僕は人間で、鬼に生まれ変わったつもりもないし、感覚なんてのもない!
「ま、待って、僕が兄弟って、誰が決めたの?」
「え?‥‥母様」
「母様‥‥って?」
「鬼子母神」
「鬼子母神ね」
「そう。鬼子母神」
 ‥‥僕とハバラ兄さんは何回、このやり取りをしただろ。
 鬼子母神——ねぇ‥‥
「鬼子母神っっ?!」
 聞いたことがある名前だけど、それって、大昔の神の話じゃないの?

 “鬼子母神は子育てや子授けの神として信仰されている”

これがの信拠だ。世界には様々な宗教があって、人間もそれぞれに宗教の信仰がある。
 鬼子母神っていったらそんな世界の神であって、崇められてる存在だというのに、地獄ここでは
(母…様だって‥‥?)
 箸の動きが止まる。
(それに…僕を鬼の兄弟にしたのは‥‥)
 ハバラ兄さんには九十九の兄弟がいて、その九十九番目がになったってこと。

 九十八の兄弟ってどんな兄弟なんだろ?まだ誰の顔も見てないや。
今日から、でいいのかなぁ?「兄弟になりました」って、挨拶回りしなきゃいけないかな。こりゃ、大変だ。

「ひょっとして、あの席が鬼子母神…様の席なの?」
 僕は先の先にある上座の席に視線を送った。
 金色の透けた垂れ絹がその存在感を写し出しているようだった。
今は居ない…みたいだけどね。
(鬼子母神って‥‥どんなお姿なのかな‥‥)
 僕は微かに揺れている垂れ絹を見つめながら、の想像をしてた。
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