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53.彼の退化現象
しおりを挟む彼への仕返しに、もどかしいであろう刺激を続けていたが、彼は我慢できなかったのか、すぐに根をあげた。
「悪かったッ、手を離してくれ」
自分でディミドラの手を払いのければいいだけなのに、彼はディミドラに離すように言ってくる。
「離したらどうするんすか?」
ディミドラは彼が行動をおこさないため、強気に出てみた。
「ッ・・・」
彼は欲の瞳をディミドラに向けてきた。
「その顔をみたら、見当はつきますね・・・」
彼は我慢しているのだ。ディミドラが欲しいのだと彼の目から読み取れる。彼に我慢を強いり仕返しをしていると、彼は限界のようで、苦しげに声を出した。
「あまり煽るな・・・」
彼は顔を見られないように、手で隠したと同時に何かが彼の頭から出てきて、ディミドラの視線は釘付けになった。
「耳・・・?」
彼の頭の上には、どうみても虎耳が生えているようにしか見えなかった。
「ッ」
つい手を伸ばして触ると、彼はピクリと反応した。
「・・・退化?」
よく見ると彼の背後で尾が揺れている・・・。さすがに尾に触ろうとしたら避けられた。
「尾には触るな・・・手加減出来なくなる」
彼はそういいディミドラの身体に付いた石鹸を洗い流すと、ディミドラをかかえてバスタブに入った。
ディミドラは彼の耳や尾が気になって仕方なく、彼に抱き抱えられた事も気にならずに、彼の胸にもたれながら耳を凝視してしまっていた。
「大人しいな・・・そんなに気になるか?」
彼はディミドラの額に軽く口付けてくる。
「まぁ・・・気になりますね」
ディミドラは彼の行動を気にする事なく、じっと見つめ続けた。
「そんなに気になるなら、あとで触らせてやってもいい」
彼はディミドラが興味を示したのが珍しいのか、さらにひきつける事を言ってきた。
「えっ?いいんですか?」
触るのを嫌うかと思ったが、どうやら問題ないようだ。
「まあ、お互い様ならな・・・」
だが彼はお互い様だと言った。それは、ディミドラも触らせないといけないということだ。
珍しい退化現象で、獣人の耳を触る機会はこれから訪れる事はないだろう・・・。この貴重ともいえるチャンスに、ディミドラは悩んでしまった。
「・・・この耳はいつもなるんですか?」
「いや・・・。ここまで退化する前には対策をとっていたから、予兆はあってもこの様になる事は無かった」
では何故今回は退化してしまったのだろうか
「なら、今回は何故対策されなかったんですか?」
「・・・」
彼は何故かディミドラから視線を逸らした。
「・・・対策は、欲求を発散させる事だからな。今回はそれが出来なかっただけだ・・・」
彼はディミドラのせいだとは言わなかった。彼が今回発散できなかったのはディミドラを番として認識したため、他の人とでは行為が出来なかったからだ。
彼はディミドラに無理やり迫る事をしなかったので、今回は退化してしまったのだった。
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