36 / 72
35.お互いの報告
しおりを挟むキール様と、婚約式の話も行った。
婚約式は、教会で行われる。双方の相違がないことを、神の前で誓う形式だ。そして、両家で事前に話し会われた契約書が読み上げられる。読み上げる事で、皆に内容を知らしめ不正が起こらぬように水晶へ記録される。
お互いに契約書を持つが、把握するためだけの意味をもつ。契約書に違反がある事をすれば、決められた、対価を払う事になるのだ。
その契約書の内容を、少し話したが2人が特別に望むものはなかった。浮気はしない、もしした場合の賠償、離縁など一般的なもので、当主としての仕事の内容も話したが、シルフィの思うようにしてよいと言われた。
キール様は、役に立たないとは言われたが、一緒に努力したいとも言ってくれる。シルフィはそれがとても嬉しかった。
学園ではシェリー様の噂話が勢いよく広まっており、周りにはいつもよりたくさんの人がいた。未来の皇后に近づいておこうという魂胆がわかる。
シルフィが近寄ると、シェリー様は輪の中から抜け出して来て、シルフィの手を引いてきた。
「来てくれてよかった。癒しがいないと気が滅入ってたの」
シェリー様は疲れた表情をした。
「私にも、シルフィ嬢の指輪がほしいわ・・・1日でこの有様よ。話し方から噂の真相とか聞きたくてしょうがないってのが、わかりやす過ぎなんだから」
「お疲れ様です。ご実家でも大変だったみたいですね。私もシェリー様に報告したい事があって・・・」
「聞いてるわよ。キールお兄様と婚約の話でしょ?」
シェリー様は小声で話される。
「はい」
「学園で静かに過ごしたいなら、発表までは周りに知られない方がいいわね。シルフィ嬢の場合、指輪があるから大丈夫でしょうけど・・・話をするには人が多いし、帰りに私の屋敷へいらっしゃいよ。私も聞いてほしくて待ってたの」
「ぜひ。顔合わせはありますが、リーディア様にももう一度ご挨拶させてもらいたいです」
「勿論。母なら家にいるから、呼んであげるわ。兄から話は聞いたけど、父が今私の事でピリピリしてるから、お兄様からも婚約っていう話が出た時、お父様の冷気で凍えそうだったわ。あっ、貴方達のは反対してないのよ?勿論私の・・・。せっかくデュークと思い会えたのに父に反対されてるから、あの夜会の日から会えてないのよ」
シェリー様は寂しそうだ。
「父ってば、話を聞いたらすぐに、転移魔法で王宮に向かおうとするから・・・、止めるのに苦労したわ。デュークを氷漬けにしてやるなんて怖い事いうし・・・」
シェリー様はため息を付いて遠い目をするのだった。
5
あなたにおすすめの小説
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?
いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー
これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。
「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」
「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」
冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。
あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。
ショックで熱をだし寝込むこと1週間。
目覚めると夫がなぜか豹変していて…!?
「君から話し掛けてくれないのか?」
「もう君が隣にいないのは考えられない」
無口不器用夫×優しい鈍感妻
すれ違いから始まる両片思いストーリー
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。
ねーさん
恋愛
あ、私、悪役令嬢だ。
クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。
気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる