獣人の番!?匂いだけで求められたくない!〜薬師(調香師)の逃亡〜【本編完結】

ドール

文字の大きさ
37 / 117

36.気付薬

しおりを挟む
 

 ゾディアス様がリンジェーラから目線を逸らさないため、リンジェーラは嫌な予感がして焦った。


 リンジェーラの予定では、香の効果で目の前の彼女に反応をするはずだと思ったが、見られているのはリンジェーラだ。


 ゾディアス様は、子爵令嬢が離れ、すぐに行動をおこしてきた。

 ゾディアス様がリンジェーラを見る目は、獲物を見るような目だが、その内には欲も見てとれ、リンジェーラは鳥肌が立った。
 ゾディアス様が近づいてくる、少し足早に・・・。
 
 やはりゾディアス様は、惑わされているようで、リンジェーラをいきなり抱えようとしてきた。


「団長!」
 リンジェーラは抱えらる前に、すぐさま団長を呼ぶ。団長は心得ていたようで既に近くに待機していた。


 ゾディアス様は団長を睨みつけたが、行動をおこすのは団長ではない。団長は、今からリンジェーラが行動をおこした後に必要なのだ。


 ゾディアス様は団長を睨みつけたまま、リンジェーラを抱きかかえてきた。とりあえずは状況を確認するために、ゾディアス様に抱えられても抵抗はせずに、自分が落ちないようにゾディアス様の肩に手を添えた。

「ゾディアス様・・・、おろしてもらえませんか?皆んなが見ています」


「だめだ。見せつけてやればいい。君は俺のなのだから・・・。それに今からでもいいと言っただろう」
 ゾディアス様は子爵令嬢が言った言葉を、リンジェーラが言ったと思い込んでいる。・・・目は少し虚だ。


「私は何も言っていませんよ、いつ言いましたか?」


「抱きついてきた時に・・・」
 焦点の合わない目で答えられる。

「それは私ではありません。抱きついたのは、あちらの子爵令嬢です」
 リンジェーラは、子爵令嬢に視線を向ける。彼女はゾディアス様が自分ではなくリンジェーラに向かったため、意味がわからず、唖然と立ち尽くしていた。


「だが、俺はお前が欲しい・・・」
 ゾディアス様は、リンジェーラの目尻、頬に口付けてくる。


「ッ・・・えっと、それはいつからですか」
 見られているため、恥ずかしいが、なんとか耐えて質問する。


「匂い・・・抱きつかれた時の・・・そしたら、欲しくなった」
 ゾディアス様がそういうと、子爵令嬢の顔が青ざめていく。


「そうですか・・・なら私の特製をあげますね」
 リンジェーラはポケットから、気付薬を取り出してゾディアス様に嗅がせた。


 ゾディアス様は、きつかったのか、失神しそうなくらいの反応をして、リンジェーラから手を離した。

「きゃッ」


 リンジェーラは手を離され、落下の浮遊感に悲鳴を上げた。


 だが、そこはすかさず、待機していた団長が受け止めてくれる。団長の役割は、気付薬を嗅いだゾディアス様が、抱えたリンジェーラを落とすであろうと予想したうえでの、ヘルプ要員だ。


 本当は子爵令嬢に欲情したら、同じように質問して、気付薬をおおみまいした際の、ヘルプを予定をしていたのだったが、予定が狂ってしまった。

 とりあえずは子爵令嬢の悪事が暴かれるであろうし、リンジェーラは怪我をしなくてすんだので、いいという事にしておこう。


 団長から降ろされると、顔を大層歪めているゾディアス様が目に入る。気付薬は獣人には辛いだろうが致し方ない。リンジェーラなりの都合がいいと言われたことの仕返しだ・・・。


 獣人にとって、嗅覚を攻撃するのは、少しやり過ぎたかなとは思ったが、リンジェーラも傷ついたのだからと思い、ゾディアス様には悪いが、保身にはしってしまうのだった。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

公爵様のバッドエンドを回避したいだけだったのに、なぜか溺愛されています

六花心碧
恋愛
お気に入り小説の世界で名前すら出てこないモブキャラに転生してしまった! 『推しのバッドエンドを阻止したい』 そう思っただけなのに、悪女からは脅されるし、小説の展開はどんどん変わっていっちゃうし……。 推しキャラである公爵様の反逆を防いで、見事バッドエンドを回避できるのか……?! ゆるくて、甘くて、ふわっとした溺愛ストーリーです➴⡱ ◇2025.3 日間・週間1位いただきました!HOTランキングは最高3位いただきました!  皆様のおかげです、本当にありがとうございました(ˊᗜˋ*) (外部URLで登録していたものを改めて登録しました! ◇他サイト様でも公開中です)

【電子書籍化・1月末削除予定】余命一カ月の魔法使いは我儘に生きる

大森 樹
恋愛
【本編完結、番外編追加しています】 多くの方にお読みいただき感謝申し上げます。 感想たくさんいただき感謝致します。全て大切に読ませていただいております。 残念ですが、この度電子書籍化に伴い規約に基づき2026年1月末削除予定です。 よろしくお願いいたします。 ----------------------------------------------------------- 大魔法使いエルヴィは、最大の敵である魔女を倒した。 「お前は死の恐怖に怯えながら、この一カ月無様に生きるといい」 死に際に魔女から呪いをかけられたエルヴィは、自分の余命が一カ月しかないことを知る。 国王陛下から命を賭して魔女討伐をした褒美に『どんな我儘でも叶える』と言われたが……エルヴィのお願いはとんでもないことだった!? 「ユリウス・ラハティ様と恋人になりたいです!」 エルヴィは二十歳近く年上の騎士団長ユリウスにまさかの公開告白をしたが、彼は亡き妻を想い独身を貫いていた。しかし、王命により二人は強制的に一緒に暮らすことになって…… 常識が通じない真っ直ぐな魔法使いエルヴィ×常識的で大人な騎士団長のユリウスの期間限定(?)のラブストーリーです。 ※どんな形であれハッピーエンドになります。

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

【完結】ハメられて追放された悪役令嬢ですが、爬虫類好きな私はドラゴンだってサイコーです。

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
 やってもいない罪を被せられ、公爵令嬢だったルナティアは断罪される。  王太子であった婚約者も親友であったサーシャに盗られ、家族からも見捨てられてしまった。  教会に生涯幽閉となる手前で、幼馴染である宰相の手腕により獣人の王であるドラゴンの元へ嫁がされることに。  惨めだとあざ笑うサーシャたちを無視し、悲嘆にくれるように見えたルナティアだが、実は大の爬虫類好きだった。  簡単に裏切る人になんてもう未練はない。  むしろ自分の好きなモノたちに囲まれている方が幸せデス。

【恋愛】目覚めたら何故か騎士団長の腕の中でした。まさかの異世界トリップのようです?

梅花
恋愛
日下美南(くさかみなみ)はある日、ひょんなことから異世界へとトリップしてしまう。 そして降り立ったのは異世界だったが、まさかの騎士団長ベルゴッドの腕の中。 何で!? しかも、何を思ったのか盛大な勘違いをされてしまって、ベルゴッドに囲われ花嫁に? 堅物騎士団長と恋愛経験皆無の喪女のラブロマンス?

身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される

絵麻
恋愛
 桐島花は父が病没後、継母義妹に虐げられて、使用人同然の生活を送っていた。  父の財産も尽きかけた頃、義妹に縁談が舞い込むが継母は花を嫁がせた。  理由は多額の結納金を手に入れるため。  相手は二十五歳も歳上の、海軍の大佐だという。  放り出すように、嫁がされた花を待っていたものは。  地味で冴えないと卑下された日々、花の真の力が時東邸で活かされる。  

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

処理中です...