105 / 117
番外編
後日談:兄弟
しおりを挟むリンジェーラは今、2人の獣人同士の睨み合いの間に挟まれている。
1人はリンジェーラの夫であるゾディアス様・・・、もう1人はゾディアス様の兄・・・のようだ。兄の方も上位種のようで、ゾディアス様と同じ髪色をしていた。ゾディアス様よりもガタイが大きく筋肉質で、髪はクセがあり野生感がある人だ。
ゾディアス様に兄弟がいると知ったのは、ついさきほどのこと。
自分の番探しのため、放浪の旅に出たと言う兄が、わざわざゾディアス様が嫁をとり、子供ができたと言うことで帰ってきたのだった。
しかし、出迎えたのがゾディアス様ではなく、薬草の世話をしていたエプロン姿のリンジェーラとたまたま遭遇してしまったのだ。
だからか、使用人と勘違いされたのか、気に入ったといいだしリンジェーラを担ぎ上げた。そして、ゾディアス様が現れリンジェーラを気に入ったからもらうと宣言してしまった。
その言葉を聞いたゾディアス様は、いきなり屋敷におしかけてふざけた事をいう彼の鳩尾に一発食らわせた。そしてリンジェーラを奪い返して現在にいたる・・・。
「いきなり現れたと思えば、俺の番に勝手に触れるとはな」
ゾディアス様の表情は、かなり険しい顔つきで自分の兄を睨みつけている。
「知らなかったのだから仕方がないだろ。それに気にいってしまったんだ・・・本能にはさからわん」
ゾディアス様の番だと説明しているが兄の方は、悪びれもせず本能だといいきる。
「彼女は俺の番だから、諦めて今すぐに帰ってくれ。たとえ兄でもリンジーに触れたやつは許す気がおきん」
ゾディアス様は不快感を隠す事なく対峙する。
「せっかく祝いに来てやったんだ。そう追い返そうとするな。それに人族は我々とは違う。番の概念などない。だから彼女が私を受け入れれば問題はなかろう。お前の番は、俺とも相性がいいかもしれないしな」
そういい、彼はまたしてもリンジェーラの腰に手をかけ引き寄せてきた。つまり彼は、自分にもリンジェーラを共有させろとゾディアス様に言ったのだ。
彼がリンジェーラを引き寄せたとたん、ゾディアス様からは殺気がダダ漏れた。だがリンジェーラはゾディアス様の兄に、普段と同じ要領で、痴漢撃退スプレーを容赦なくお見舞いしてあげた。
彼もゾディアス様と同じ獣人・・・。大変よく効いたようで、強烈な匂いにのたうちまわりだす。
「なんだッこれは、何をかけたッ」
「私、よく痴漢にあっていましたので、獣人ようの撃退スプレーを携帯しているのです。どうしても夫以外から触られると・・・虫唾が走り、反射で、つい・・・かけてしまうのです。ですから、私にむやみに触れない方がよろしいですよ?」
やってしまった後ではあるが、繰り返さないためにリンジェーラは笑顔で、ついやってしまうと強調し注意した。
「これでは、ゾディアスも被害をうけるではないかッ」
彼は眉間に皺がよっているゾディアス様を指差した。
リンジェーラはゾディアス様の顔色をみて、憤慨している彼には見られないように、例の薬を口に含んでゾディアス様に口づけ、服薬させようとした。
それなのに、ゾディアス様は薬を理解しているはずなのに、リンジェーラの薬を遊ぶように口内で転がし、リンジェーラを翻弄しはじめてしまう。側から見たら、ただただ口づけを見せつけているだけだった。
口づけはしたが、ゾディアス様が離してくれないとは思わず、リンジェーラは深くなる口づけに抗議するように、ゾディアス様の胸板を叩いてやっと唇が離される。
「ゾディアス様ッ。遊ばないで下さい」
「リンジーからの口づけに嬉しくてついな・・・許せ」
ゾディアス様はさらりと、リンジェーラが弱い甘い笑みを浮かべて許せと言った。
「何をしてるッ正気か!」
側では彼がうるさく吠えた。リンジェーラの行動に、驚いているようで、信じられないという表情をして叫んだのだ。彼からしたら獣人が嫌いな匂いを放つ者からの口づけだ。ゾディアス様がどうにかなると思ったのだろう。
「ゾディアス様は平気ですよ。私が認めた方ですから・・・それに私はゾディアス様と結婚するまでは、常に獣人が嫌うこのような匂いをまとっていましたので、耐えられない方とは男女の関係にすらなりえません。まあ、ゾディアス様は最初から嫌な顔をせず私に接してくれてましたが・・・」
そこでふとリンジェーラは不思議に思ってしまった。
「そういえば・・・何故だったんでしょう?ゾディアス様は匂い、平気でしたか?」
「さあな・・・ただ、匂いよりも惹かれるものがあれば、その匂いは気にならなかったのではないか?」
「・・・・・・そう、かもしれませんね」
リンジェーラの疑問にゾディアス様はさらりと答えられたが、それはゾディアス様が初めからリンジェーラが好きだと言っているも同然で、リンジェーラの声は照れてちいさくなる。
「俺は未だリンジーに惹かれ続けているからな・・・早く兄を追い出して、今日も可愛い妻をめでたいくらいだ」
ゾディアス様は、またしてもサラリとリンジェーラが恥ずかしくなる事を口にし、さっさと自身の兄を追い出しにかかった。
「リンジーに拒否されたのだから、諦めて早く帰ってくれ。彼女を誰とも共有するつもりはないし、リンジーを狙う男を近寄らせたくはないし、視界にも入れさせたくない」
ゾディアス様に捲し立てられて、彼は渋々だが、諦めの発言をして追い出されるように帰って行くのだった。
「よかったのですか?諦めてもらえましたし、折角帰ってこられたのだから、娘にくらい会ってもらえば良かったのに」
リンジェーラはおいだす形になってしまったのを、少し申し訳なく思ってしまう。
「いい・・・。次は娘を嫁にくれと言い出しかねないからな」
だが、ゾディアス様は、また別の懸念を口にした。
「そんな訳・・・」
「ある」
「そうですか・・・」
ゾディアス様はだいぶ自身の兄に対して警戒心が強いようで、速攻で断言されてしまった。
そして、触られた所を消毒しようと言い、ゾディアス様はリンジェーラをかかえあげ、寝室に連れられてしまうのだった。
そもそも、匂いがしっかりついていなかったのが原因でもあるとゾディアス様は考え、しっかり寝室でマーキングをされる数日間を送る羽目になるのは、まあ別の話・・・。
26
あなたにおすすめの小説
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
公爵様のバッドエンドを回避したいだけだったのに、なぜか溺愛されています
六花心碧
恋愛
お気に入り小説の世界で名前すら出てこないモブキャラに転生してしまった!
『推しのバッドエンドを阻止したい』
そう思っただけなのに、悪女からは脅されるし、小説の展開はどんどん変わっていっちゃうし……。
推しキャラである公爵様の反逆を防いで、見事バッドエンドを回避できるのか……?!
ゆるくて、甘くて、ふわっとした溺愛ストーリーです➴⡱
◇2025.3 日間・週間1位いただきました!HOTランキングは最高3位いただきました!
皆様のおかげです、本当にありがとうございました(ˊᗜˋ*)
(外部URLで登録していたものを改めて登録しました! ◇他サイト様でも公開中です)
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
【電子書籍化・1月末削除予定】余命一カ月の魔法使いは我儘に生きる
大森 樹
恋愛
【本編完結、番外編追加しています】
多くの方にお読みいただき感謝申し上げます。
感想たくさんいただき感謝致します。全て大切に読ませていただいております。
残念ですが、この度電子書籍化に伴い規約に基づき2026年1月末削除予定です。
よろしくお願いいたします。
-----------------------------------------------------------
大魔法使いエルヴィは、最大の敵である魔女を倒した。
「お前は死の恐怖に怯えながら、この一カ月無様に生きるといい」
死に際に魔女から呪いをかけられたエルヴィは、自分の余命が一カ月しかないことを知る。
国王陛下から命を賭して魔女討伐をした褒美に『どんな我儘でも叶える』と言われたが……エルヴィのお願いはとんでもないことだった!?
「ユリウス・ラハティ様と恋人になりたいです!」
エルヴィは二十歳近く年上の騎士団長ユリウスにまさかの公開告白をしたが、彼は亡き妻を想い独身を貫いていた。しかし、王命により二人は強制的に一緒に暮らすことになって……
常識が通じない真っ直ぐな魔法使いエルヴィ×常識的で大人な騎士団長のユリウスの期間限定(?)のラブストーリーです。
※どんな形であれハッピーエンドになります。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される
絵麻
恋愛
桐島花は父が病没後、継母義妹に虐げられて、使用人同然の生活を送っていた。
父の財産も尽きかけた頃、義妹に縁談が舞い込むが継母は花を嫁がせた。
理由は多額の結納金を手に入れるため。
相手は二十五歳も歳上の、海軍の大佐だという。
放り出すように、嫁がされた花を待っていたものは。
地味で冴えないと卑下された日々、花の真の力が時東邸で活かされる。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる