氷の薔薇は愛に目覚める~婚約破棄された令嬢と救国の王子~

イアペコス

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陽光の来訪 6

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ルシアンの、その力強く、そして未来への確信に満ちた言葉の一つ一つは、エリザベスにとって、まるで、何ヶ月もの間閉ざされていた、暗く冷たい地下牢の分厚い扉が、突如として開け放たれ、そこから、目が眩むほどに力強く、そして温かい陽光が、一気に差し込んできたかのように感じられた。それは、単なる空虚な慰めや、上辺だけの同情ではなく、彼女の、今や失われかけていた能力と、無限の可能性を、心の底から信じ、彼女に、新たな、そしてより大きな生きる目的と、未来への希望を、力強く与えようとする、魂の奥底からの、熱いメッセージだった。
彼は、彼女を、ただ守られるべき、哀れな被害者として扱っているのではなかった。むしろ、どんなに困難な状況にあっても、それに果敢に立ち向かい、自らの力でそれを乗り越え、そして新たな価値を創造することのできる、強く、賢明で、そして気高い魂を持った人間として、心の底から認め、そして期待してくれていた。
「わたくしが…この村を…蘇らせる…?わたくしに…そんなことが…本当に…?」エリザベスは、まるで夢物語でも聞いているかのように、信じられないというように呟いた。
「そうだ。君ならできる。いや、君にしかできないことなのかもしれない。そして、私は、私の持てる全ての力と、シルヴァリア王国の全ての資源を使って、全力で君を支えることを、ここに誓おう。君が必要とする、専門的な知識を持った人材も、開発に必要な潤沢な資金も、そして、君の身の安全を守るための屈強な兵士たちも、私が必ず、このエルム村へと手配しよう。だから、エリザベス、どうか、顔を上げてほしい。そして、もう一度、あの夜会で私が見た、どんな困難にも屈しない、あの気高い瞳で、強く、前を向いてほしいのだ」
ルシアンは、エリザベスの両手を取り、その、涙で濡れながらも、わずかに決意の光を宿し始めた瞳を、まっすぐに見つめて、そう言った。そのアイスブルーの眼差しには、揺るぎない信頼と、彼女への深い、そして計り知れないほどの愛情が、惜しみなく溢れていた。

エリザベスの心の中で、長い、長い間、まるで永久凍土のように固く凍りついていた何かが、ゆっくりと、しかし確実に、そして温かく溶け始めていくのを、彼女ははっきりと感じた。それは、希望という名の、そして愛という名の、何よりも温かく、そして何よりも力強い感情だった。
ルシアンの、この奇跡のような来訪は、単に彼女を、この地獄のような物理的な苦境から救い出すというだけでなく、彼女の、もはや死にかけ、枯れ果てていた魂に、再び、生きるという意味と、未来を切り開くための力を、与えてくれたのだ。
エリザベスは、深く、そしてゆっくりと息を吸い込んだ。エルム村の空気は、依然として骨身に染みるほど冷たく、そして厳しいものだったが、もはやそれは、彼女を打ちのめし、絶望させるだけの、死の色だけをまとったものではなかった。それは、これから始まるであろう、困難だが、しかしエキサイティングな新たな挑戦への、身も心も引き締まるような、そしてどこか心地よい緊張感を伴う予感を、豊かに含んでいるように感じられた。
「ルシアン様…ありがとう…本当に、ありがとう…ございます…わたくし…わたくし、もう一度…信じてみようと…思います…あなた様と…そして、自分自身を…」
彼女の声は、まだ微かに震えていたが、そこには、確かに、闇夜を貫く暁の光のような、新たな、そして力強い光が、確かに灯り始めていた。陽光は、確かに、この、世界から見捨てられたかのような、凍てついた辺境の地に、そして、エリザベスの、一度は死んだかのように思われた心に、力強く、そして温かく、訪れたのだった。
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