氷の薔薇は愛に目覚める~婚約破棄された令嬢と救国の王子~

イアペコス

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氷解の兆し 6

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彼女はまず、専門家たちから提供された、この痩せこけて、石ころだらけの、まるで呪われたような土地でも、わずかながらでも収穫量を増やすことができると期待される、改良型の、そして村人たちでも扱いやすいシンプルな構造の農具や、厳しいエルム村の寒冷な気候でも比較的容易に育ち、そして何よりも栄養価が高いとされる、新しい種類の作物の種子を、村の、最も影響力を持つと思われる長老たちや、わずかに残っていた、先祖代々の土地を必死で守り続けてきた自作農たちのもとへ、雪の深い日も、風の強い日も、毎日毎日、自ら足を運び、一人一人に、まるで子供に教え諭すかのように丁寧に、そして彼らが理解できる平易な言葉を選び、そして彼らの疑問や不安に、真摯に、そして根気強く耳を傾けながら説明し、まずは試験的に、ほんの小さな、家の裏庭のような区画で良いから、試しに栽培してみてほしいと、かつての公爵令嬢としてのプライドなど微塵も見せず、深々と、そして何度も頭を下げて懇願した。
最初は、ほとんどの者が、頑なに、そして疑念に満ちた表情で首を横に振り、「そんな、見たことも聞いたこともねえ得体の知れないものを植えて、もしそれが全部枯れちまって、いつもの作物さえもダメになっちまったら、俺たちは、この冬を越せずに飢え死にするだけだ。奥様の甘い言葉に乗るわけにはいかねえ」と、長年の経験からくる、強い警戒心と不信感を露わにしていた長老たちも、エリザベスの、およそ貴族の令嬢とは思えないほどに謙虚で、そして何よりも、彼らの、そして彼らの家族の生活を、心の底から本気で心配していることが、その真摯な瞳と言葉の端々から痛いほどに伝わってくる真摯な態度と、同行した農学の専門家たちの、科学的なデータと、他の地域での成功例に基づいた、熱心で、そして分かりやすい説得に、少しずつ、ほんのわずかずつではあったが、その頑なだった心を動かされ、やがて、村の中でも特に頑固者として知られ、誰の言うことも聞かないと評判だった数人の、しかし影響力のある者たちが、「奥様が、そこまで、俺たちみてえな者のために頭を下げておっしゃるなら…それに、このままじゃ、どのみち俺たちは、この冬を越せるかどうかも分からねえだ…一度、ほんの少しだけなら…試してみても、いいかもしれねえな…」と、まだ半信半疑ではあったものの、重い、そして長年閉ざされていた心の扉を、ほんの少しだけ開け、試験栽培に協力してくれるようになった。それは、エリザベスにとって、まさに暗闇の中に差し込んだ、最初の、そして何よりも貴重な一筋の光だった。
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