氷の薔薇は愛に目覚める~婚約破棄された令嬢と救国の王子~

イアペコス

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氷解の兆し 5

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しかし、エリザベスが直面した、そしてこれから乗り越えなければならない最も困難で、そして最も時間のかかる課題は、これらの、目に見える物理的な資源の開発よりも、むしろ、長年の、いや、世代を超えて連綿と続く、終わりの見えない貧困と、領主や役人たちからの絶え間ない搾取、そして打ち続く天災や不運によって、完全に心を閉ざし、他人を、そして自分自身さえも信じることを忘れ、未来への、ほんのわずかな希望さえも完全に失ってしまった村人たちとの、人間的な、そして魂のレベルでの信頼関係を、一から築き上げていくことだった。彼らは、エリザベスや、王都から来た、身なりの良い専門家たちの、精力的な、そして明らかに村のためを思っての活動を、依然として、まるで遠い、自分たちとは全く関係のない世界の出来事であるかのように、冷ややかに、そしてその心の奥底に、拭い去ることのできない深い疑念と不信に満ちた目で見つめていた。「どうせ、お偉い王都のお貴族様たちの、いつもの、一時的な気まぐれだろうて。飽きたらすぐに、俺たちを見捨てて帰っちまうに決まってる」「俺たちみてえな、泥にまみれて、字も読めねえ貧乏人から、さらに何か新しい、巧妙なやり方で搾り取ろうと、何か良からぬことを企んでいるに違いねえだ。そうでなきゃ、こんな肥溜めみてえな村に、わざわざ来るわけがねえ」。そんな、長年の苦しみと絶望から生まれた、諦めと不信と、そしてわずかな敵意さえも滲む声が、まるで冷たく湿った風のように、エリザベスの耳にも、嫌というほど、そして心を抉るように届いてきた。

エリザベスは、しかし、決して焦らなかったし、彼らの不信に対して怒ったり、失望したりすることもなかった。彼女は、かつての、若く、そして傲慢だった自分であれば、その持ち前の、誰にも負けない怜悧な頭脳と、人を魅了する弁舌の才を駆使して、彼らを論理的に、そして感情的に説得し、屈服させようとしたかもしれない。しかし、このエルム村での、筆舌に尽くしがたいほどの苦しみと、そして何よりも、ルシアンとの、魂の奥底で響き合うような出会いを経て、彼女は、人の心を本当に、そして深く動かすものは、巧みな言葉の綾や、論理的な正しさだけではなく、むしろ、日々の、地道で誠実な行動の積み重ねであり、そして何よりも、相手の痛みや苦しみに、ただひたすらに寄り添い、共感しようとする、その無償の心の力であることを、まさに骨身に染みて、痛いほどに学んでいた。彼女は、言葉で彼らを性急に説き伏せるよりも、まず、自らの、献身的で、そして一切の見返りを求めない行動で、彼らに、自分は彼らの敵ではなく、味方であり、そして共に未来を築きたいと願っている人間なのだという、信頼の証を、時間をかけて、そして粘り強く示していくことを選んだ。
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