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チュートリアル
主人公は引きこもり?
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「突然ですが、あなたの夢を――ジャックさせていただきました!」
目の前にいるピエロのぬいぐるみが、唐突にそう告げた。
何もない正方形の白い部屋。広さは一辺3メートルほどだろうか?
ここにいるのは僕だけのようで、正面の壁の傍に立つピエロが、カタカタと震えていた。
「簡単ですが、状況を説明させていただきますね! とはいえ、私は単なるプログラムですので、要件を一方的に伝えるだけです。質問には一切応じられませんので、何卒ご了承ください!」
ピエロは紳士のようにサッと頭を下げて一礼すると、再び顔をあげて、ケタケタと笑い始めた。僕は言葉を発しようとしたが、それより早くピエロが話を続ける。
「今あなたがいる場所は、眠った時に見る夢の中です。ある仕組みを利用して、私達が干渉をさせていただいております。目的を伝えることは出来ませんが、まあ――ゲームとでも思っていただければ幸いです」
ピエロの発言を受けて、僕は右手を握ってみたが、感触はあるようなないような――。
立ってはいるが、特に身体の重さも感じない。
服装は眠ったままの状態が反映されるのか、白いTシャツに黒のハーフパンツ。
昨日の夜、いつものように眠り、気づいたらこの場所にいた。
単に夢を見ているだけなら、目を覚ませばこの茶番も終わるということか。
「ですが、これを単なる夢と思わないでくださいよ! 普通なら自分の意思で目を覚ますことも出来ますが、この中ではそれも出来ません! 『特定のミッションをこなす』か、『一定時間が経過する』まで、朝を迎えることは出来ませんからね!」
僕は茫然とピエロの言葉を聞きながら、目を覚まそうとした。怖い夢を見ている時によくやるあの感覚だ。
だがピエロが言うように、まばたきこそ行えるものの、現在の状況になんら変化は起こらなかった。
「とりあえず最初の目的は、動作に慣れることです。これからチュートリアルを始めますので、現れる敵を倒してみてください。『スリーピング・フォレスト』のルールはシンプル! 目の前に現れる敵を戦って倒す! これだけなのです!」
ピエロはファイティングポーズを取ると、ボクシングのジャブように左腕を前後させた。僕は、ここで初めて口を挟むことに成功した。
「戦いだって? 僕は格闘技どころか、スポーツすらまともにやったことない。何と戦わされるか知らないけど、勝手に話を進めないでくれ!」
僕こと「足立 勇気」(16歳)は、市内の学校に通って「いた」高校二年生。
今は「とある理由」により、不登校になっているが、筋金入りの運動音痴。
生まれてこの方、ケンカすらやったことない、ごく平凡な帰宅部の男子なのだ。
「痛みや死といった概念はないのでご安心ください! 運動神経や筋肉量といった要素も関係ありません! 勝敗を決めるのは、慣れと作戦……そして『ルン』ですね。あ、ルンというのは、戦闘力とでも思ってください」
僕の発言を見事にスルーしつつ、ピエロは話を続ける。文句を言ってやりたかったが、反応しないのであれば無駄なだけだ。
大人しく話を聞くしかなかった。
「指でおでこを二回、トントンと叩いてみてください! 自分のルンがウインドウ表示されます! ルンは手や足といった特定の部位に振り分けることが出来ます。ルンは戦いに勝利するほど増えていきますので、勝てばどんどん強くなれるということです!」
僕は軽くため息をついた後に、右手の人差し指でおでこをトントンと叩いてみた。
シュンという機械音と共に、ゲームでよく見るようなステータスウインドウが表示された。
*********************
ネーム:ユーキ
ルン:100
---------------
頭:10
胴体:10
右手:10
左手:50
右足:10
左足:10
--------------
*********************
どうやらこれが、僕に与えられた初期ステータスのようだった。
目の前にいるピエロのぬいぐるみが、唐突にそう告げた。
何もない正方形の白い部屋。広さは一辺3メートルほどだろうか?
ここにいるのは僕だけのようで、正面の壁の傍に立つピエロが、カタカタと震えていた。
「簡単ですが、状況を説明させていただきますね! とはいえ、私は単なるプログラムですので、要件を一方的に伝えるだけです。質問には一切応じられませんので、何卒ご了承ください!」
ピエロは紳士のようにサッと頭を下げて一礼すると、再び顔をあげて、ケタケタと笑い始めた。僕は言葉を発しようとしたが、それより早くピエロが話を続ける。
「今あなたがいる場所は、眠った時に見る夢の中です。ある仕組みを利用して、私達が干渉をさせていただいております。目的を伝えることは出来ませんが、まあ――ゲームとでも思っていただければ幸いです」
ピエロの発言を受けて、僕は右手を握ってみたが、感触はあるようなないような――。
立ってはいるが、特に身体の重さも感じない。
服装は眠ったままの状態が反映されるのか、白いTシャツに黒のハーフパンツ。
昨日の夜、いつものように眠り、気づいたらこの場所にいた。
単に夢を見ているだけなら、目を覚ませばこの茶番も終わるということか。
「ですが、これを単なる夢と思わないでくださいよ! 普通なら自分の意思で目を覚ますことも出来ますが、この中ではそれも出来ません! 『特定のミッションをこなす』か、『一定時間が経過する』まで、朝を迎えることは出来ませんからね!」
僕は茫然とピエロの言葉を聞きながら、目を覚まそうとした。怖い夢を見ている時によくやるあの感覚だ。
だがピエロが言うように、まばたきこそ行えるものの、現在の状況になんら変化は起こらなかった。
「とりあえず最初の目的は、動作に慣れることです。これからチュートリアルを始めますので、現れる敵を倒してみてください。『スリーピング・フォレスト』のルールはシンプル! 目の前に現れる敵を戦って倒す! これだけなのです!」
ピエロはファイティングポーズを取ると、ボクシングのジャブように左腕を前後させた。僕は、ここで初めて口を挟むことに成功した。
「戦いだって? 僕は格闘技どころか、スポーツすらまともにやったことない。何と戦わされるか知らないけど、勝手に話を進めないでくれ!」
僕こと「足立 勇気」(16歳)は、市内の学校に通って「いた」高校二年生。
今は「とある理由」により、不登校になっているが、筋金入りの運動音痴。
生まれてこの方、ケンカすらやったことない、ごく平凡な帰宅部の男子なのだ。
「痛みや死といった概念はないのでご安心ください! 運動神経や筋肉量といった要素も関係ありません! 勝敗を決めるのは、慣れと作戦……そして『ルン』ですね。あ、ルンというのは、戦闘力とでも思ってください」
僕の発言を見事にスルーしつつ、ピエロは話を続ける。文句を言ってやりたかったが、反応しないのであれば無駄なだけだ。
大人しく話を聞くしかなかった。
「指でおでこを二回、トントンと叩いてみてください! 自分のルンがウインドウ表示されます! ルンは手や足といった特定の部位に振り分けることが出来ます。ルンは戦いに勝利するほど増えていきますので、勝てばどんどん強くなれるということです!」
僕は軽くため息をついた後に、右手の人差し指でおでこをトントンと叩いてみた。
シュンという機械音と共に、ゲームでよく見るようなステータスウインドウが表示された。
*********************
ネーム:ユーキ
ルン:100
---------------
頭:10
胴体:10
右手:10
左手:50
右足:10
左足:10
--------------
*********************
どうやらこれが、僕に与えられた初期ステータスのようだった。
応援ありがとうございます!
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