四人で話せば賢者の知恵? ~固有スキル〈チャットルーム〉で繋がる異世界転移。知識と戦略を魔法に込めて、チート勇者をねじ伏せる~

藤ノ木文

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72話 魔水晶

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 今日も早朝から迷宮を歩く。
 三十七階層では、60センチ程の緑色の肉の塊に、大きな目玉と触手の生えた〈デビルアイ〉なる魔物が、通路を浮遊しながら巡回していた。


 デビルアイ Lv37
 属性:闇
 耐性:魔法半減。
 弱点:光ダメージ2倍。
 状態異常:なし。


 魔法ダメージ半減持ちとか、どう見ても劣化ビボ〇ダーですね、わかります。

 だが交戦は危険だと判断し、全てユニスによる先制物理射撃で仕留めていった。
 幸い生息数も少なかったため、難なくボス部屋に到着した。

「ここのボスって何かわかる?」
「私は知りましせん!」
「デビルアイの上位種はイビルアイのはずです……」

 元気いっぱいのフィローラに不安げなセシル。
 
 態度と発言内容をとりかえてくれませんかね?
 そしたら俺も情報の信頼性に安心できるので。

「とりあえず、皆補助魔法やスキルをかけ直してくれ。出現と同時に全力で攻撃だ」

 俺の言葉に皆が頷くと、門を開いて突入する。

 ボス部屋のど真ん中に浮かび上がる魔法陣の中から煙と共に現れたのは、デビルアイの色違いで、肉塊部分が赤黒い。


 イビルアイ Lv37
 属性:闇
 耐性:魔法ダメージ半減。
 弱点:光ダメージ2倍。
 状態異常:なし。


 ステータスは同じだが、危険そうなのでこいつも速攻で仕留めに行く!

「属性と耐性はさっきの奴らと同じだ! リシア、光属性付与! 光か雷で押しつぶせ!」
「ホーリーエンチャント! サモンエレメンタル、ウィル・オー・ウィスプ!」
「心眼・スパイラルショット!」
「サモンエレメンタル、ウィル・オー・ウィスプ!」
「ライトニングブラスト!」
「ライトニングランス!」

 光属性の乗った矢が射出され、紫よ純白の光が部屋を染める。
 イビルアイも防御魔法を展開したが、それもむなしく一瞬で崩壊し、俺達の全力全開の暴力の前に討滅を余儀なくされた。
 
 身も蓋もない。

「容赦が微塵もありませんね」
「してあげる理由も無いからね」

 戦闘の感想を述べたユニスへそう返すも、それは俺達が無詠唱で魔法を使えるからであって、長々と詠唱をしなければならない状況ではまた違った戦闘となるだろう。
 
 ドロップアイテムの巨大な黒い宝石〈オニキス〉を回収し、MP回復を待って三十八階層へと降りた。
 


 三十八階層の最初の十字路に差し掛かると、隅に50センチはある緑に輝く水晶の様な鉱物が飛び出すように生えていた。

「なにこれー?」
「綺麗ですね」

 先頭を行くククとトトの二人が興味津々といった様子で見つめる。

魔水晶マナクリスタルでふねっ」
「これほど大きな物は始めてみました……」
「おそらく末端価格で金貨五十枚は下りませんよ」
「そんなにするの!?」

 リシアの鑑定額に思わず叫んでしまう。

「はい。リベクさんのお供をしていた時に何度か拝見してますので、間違いありません」

 なぞの鑑定眼を発揮したリシアが言い切る。

 それは何が何でも持ち帰えらねばなるまい。
 ……ところで、これどうやって採掘すればいいのかな?

 と思っていると、メリティエが魔水晶の先端に手をかけ、手前に引き寄せるように力を込めた。 

「ふん」

 するとあっさり地面から離れ、メリティエの胸元に倒れこむ魔水晶。

 きのこでも採るように簡単に採れるものなのね。

 メリティエが魔水晶を掴んで俺に差し出してきたので、下から収納袋様に入れて無事に回収する。

「クリスタルでなにが出来るの?」
「魔水晶に溜まった魔力を消費することで、レベルUPに使ったり、スライムが落とす魔核の代わりにもなるそうです。大半は国や貴族の方達が買い取り、ご子息やお抱え兵団のレベルUPに使われますね」
「金貨五十枚分ならかなりの経験値を蓄えてそうだなぁ」

 説明するリシアの言葉にそう漏らすと、「試されてはいかがです?」と言われた。

「どうせならレスティー達が居る場所で使いたい」

 教えてくれたのでリシアの頭を優しく撫でて礼の代わりとする。

「でも、こういうのって迷宮内ならどこにでも生えてるものなの?」
「迷宮では下層に行くほど時折こういうものが生えていまふっ」
「い、一説では魔物がこれを利用して進化することがあるとも言われています……。稀に大広間に居る階層ボスよりも強い固体が恐らくそうではないかと……」
「納得」

 豆知識を披露してくれるセシルに頷くメリティエ。

 これを使って一気にレベルが上がった奴が、何らかの方法で更に強くなっていったと見る方が自然かな。
 何らかの方法の最有力が共食いな訳だが……。

 まぁそんなのは学者や研究者が解明すれば良いことであって、俺達が今すぐする必要は無い。

「魔水晶の話はこれくらいにして、先に進もうか」

 適当なところで話を切り上げた。

 
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