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110話 安定プレイ
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俺達が得た経験をレスティー班に伝えて彼らに交代したのは、最初の十字路へと戻ってからのことだった。
十字路の左側は探査終了。
次は中央と右側だ。
「じゃ、後は頼んだから」
「まったく、気楽に言ってくれるぜ」
軽い口調の俺にユーベルトがぼやく。
その表情はまさに〝鬱だ死のう〟と言わんばかりだ。
「トシオくん、本当に僕達だけで大丈夫かな?」
「危なかったらすぐに援護射撃を入れるから心配するな」
ユーベルトと同様に不安を口にするアレッシオを安心させるため、昨日言った〝書き肉食い放題だ!〟と同じ明るさで言葉を返す。
まぁアレッシオに比べて、ユーベルト達前衛の方がよっぽどプレッシャーが強いだろうけど。
俺のPTにはククというメイン盾が居てくれるので、後方に敵が流れてくる心配が極めて低い。
それが俺達の支柱となり、後衛は安全に火力や回復などの支援に徹することが出来ている。
極端な話、前衛のお仕事とは後衛の壁であり、一匹も敵を通さないことに他ならない。
ましてや俺達の冒険者としての稼働期間は短く、本来ならばまだ駆け出しの初心者といったところだ。
実戦の経験値が圧倒的に不足している。
俺は魔法職故か、なんかもう慣れちゃったけど。
「手本は見せただろ? 冒険者なら文句を言う前にやってみせろ」
「はいそうですかって出来るかよ!」
未だに暗い顔をしているユーベルトに言いつけるも、きっぱり出来ないと言われてしまった。
ユーベルトは反射神経が良く運動性能もそこそこ高い、敏捷性を生かせばデスナイトにだって引けは取らないはずだとにらんでいる。
そもそも、クレアル湖のデブワニと比べたら全然余裕なはずだ。
一体今更何にビビっているんだか。
ユーベルトの隣では、ディオンも緊張気味といった様子。
しかし、ユーベルト程あたふたもしていない。
「ディオン、あんたはどうだ?」
「そうだな……最上級職にジョブチェンジした上に、異世界人と同等のステータス補正も入っている。彼女達程とはいかないだろうがやってみせるさ」
ディオンが遊んでいるトトとメリティエに目を向け、肩を竦めながら言ってのけた。
流石中級冒険者だ、潜って来た場数が違う。
「あたしもディオンと同意見だ。けどね、迷宮でもデスナイトの居る階層は〝死に易い場所〟と呼ばれるほど危険な場所だ。もしもの時はよろしく頼んだよ」
「任せろ」
リザードマンのクサンテが珍しく緊張した声音で俺に念押ししてきたので、俺も真剣な顔で頷いた。
俺のPTのククの立ち位置を、レスティー達のPTはクサンテが受け持つ。
いくら鬼教官のクサンテ姐さんとはいえ、プレッシャーを感じても不思議はない。
「ユーベルト、お前は兎に角場数を踏め、何も一対一でやり合えって言ってるんじゃないんだから。てかデスナイトなんて倒したらモテるんじゃないのか? 女性冒険者からしたらその辺どうなんです?」
「お姉さんだったら意識しちゃうかな~」
美少女ロイヤルガードのマルグリットさんに話を振ると、俺の意図を察してか、思わせぶりな視線をユーベルトに向ける。
「お、俺は別に、女にモテたいから冒険者をやってる訳じゃない!」
その視線を受けたユーベルトが、フンっと鼻息を荒げてそっぽを向いた。
耳を赤くしながら。
解り易いのは良いのだが、男のツンデレとか可愛くもなんともない。
だがよしのん的には良かったらしく、よだれを拭う仕草をしやがった。
拗らせてるな……。
そんなレスティー班だが、俺達とはレベルと経験に差があるため二人一組とはいかず、PT全員による総力戦でデスナイトを討伐していった。
アーヴィンは相変わらず歌いながらの詠唱をし、詠唱の終わりに合わせてレスティーが牽制と陽動の魔法を使うといった形に工夫をしている。
でもそのアーヴィンの歌声にうっとり顔のカリオペさんが聞き惚れている様で、全然戦闘に集中できていない風なのなんなの?
クサンテは前方に意識が集中しているため気付いてないが、もし彼女にばれたら情け容赦の無い893キックが飛びかねんぞ。
そして彼女と同時加入したディオンは抜きん出た物は見当たらないが、クサンテと同じ周囲を観察して動く冷静派。
突出しがちなユーベルトのサポートに回り、両手剣で牽制攻撃を繰り出しているので、今までその役目を担っていたクサンテが、PT全体の壁としてデスナイトの前に立ち塞がることに集中できている。
そしてジルケにつけたエクソシストの神聖魔法による攻撃が、アーヴィンやユーベルトの仕留め損ねたデスナイト相手に要所で刺さる。
アレッシオにもエクソシストの職をつけているが、彼は回復と補助に専念していた。
やはりレスティー達の班はPT全体の安定感が高い。
俺達の班は個人の殲滅力が高いのと、魔法職が多いせいであんな効率重視のツーマンセルで討伐をしているが、冒険者としては本来こう在るべきなのだろうな。
レスティー達の戦闘を観察しつつ、PTのスタイルなどについてリシア達と意見を交わしながら迷宮を進んでいく。
―――――――――――――――――――――――
投稿量が少なくて申し訳ないです。
言い訳としては、風邪ひきました。
十字路の左側は探査終了。
次は中央と右側だ。
「じゃ、後は頼んだから」
「まったく、気楽に言ってくれるぜ」
軽い口調の俺にユーベルトがぼやく。
その表情はまさに〝鬱だ死のう〟と言わんばかりだ。
「トシオくん、本当に僕達だけで大丈夫かな?」
「危なかったらすぐに援護射撃を入れるから心配するな」
ユーベルトと同様に不安を口にするアレッシオを安心させるため、昨日言った〝書き肉食い放題だ!〟と同じ明るさで言葉を返す。
まぁアレッシオに比べて、ユーベルト達前衛の方がよっぽどプレッシャーが強いだろうけど。
俺のPTにはククというメイン盾が居てくれるので、後方に敵が流れてくる心配が極めて低い。
それが俺達の支柱となり、後衛は安全に火力や回復などの支援に徹することが出来ている。
極端な話、前衛のお仕事とは後衛の壁であり、一匹も敵を通さないことに他ならない。
ましてや俺達の冒険者としての稼働期間は短く、本来ならばまだ駆け出しの初心者といったところだ。
実戦の経験値が圧倒的に不足している。
俺は魔法職故か、なんかもう慣れちゃったけど。
「手本は見せただろ? 冒険者なら文句を言う前にやってみせろ」
「はいそうですかって出来るかよ!」
未だに暗い顔をしているユーベルトに言いつけるも、きっぱり出来ないと言われてしまった。
ユーベルトは反射神経が良く運動性能もそこそこ高い、敏捷性を生かせばデスナイトにだって引けは取らないはずだとにらんでいる。
そもそも、クレアル湖のデブワニと比べたら全然余裕なはずだ。
一体今更何にビビっているんだか。
ユーベルトの隣では、ディオンも緊張気味といった様子。
しかし、ユーベルト程あたふたもしていない。
「ディオン、あんたはどうだ?」
「そうだな……最上級職にジョブチェンジした上に、異世界人と同等のステータス補正も入っている。彼女達程とはいかないだろうがやってみせるさ」
ディオンが遊んでいるトトとメリティエに目を向け、肩を竦めながら言ってのけた。
流石中級冒険者だ、潜って来た場数が違う。
「あたしもディオンと同意見だ。けどね、迷宮でもデスナイトの居る階層は〝死に易い場所〟と呼ばれるほど危険な場所だ。もしもの時はよろしく頼んだよ」
「任せろ」
リザードマンのクサンテが珍しく緊張した声音で俺に念押ししてきたので、俺も真剣な顔で頷いた。
俺のPTのククの立ち位置を、レスティー達のPTはクサンテが受け持つ。
いくら鬼教官のクサンテ姐さんとはいえ、プレッシャーを感じても不思議はない。
「ユーベルト、お前は兎に角場数を踏め、何も一対一でやり合えって言ってるんじゃないんだから。てかデスナイトなんて倒したらモテるんじゃないのか? 女性冒険者からしたらその辺どうなんです?」
「お姉さんだったら意識しちゃうかな~」
美少女ロイヤルガードのマルグリットさんに話を振ると、俺の意図を察してか、思わせぶりな視線をユーベルトに向ける。
「お、俺は別に、女にモテたいから冒険者をやってる訳じゃない!」
その視線を受けたユーベルトが、フンっと鼻息を荒げてそっぽを向いた。
耳を赤くしながら。
解り易いのは良いのだが、男のツンデレとか可愛くもなんともない。
だがよしのん的には良かったらしく、よだれを拭う仕草をしやがった。
拗らせてるな……。
そんなレスティー班だが、俺達とはレベルと経験に差があるため二人一組とはいかず、PT全員による総力戦でデスナイトを討伐していった。
アーヴィンは相変わらず歌いながらの詠唱をし、詠唱の終わりに合わせてレスティーが牽制と陽動の魔法を使うといった形に工夫をしている。
でもそのアーヴィンの歌声にうっとり顔のカリオペさんが聞き惚れている様で、全然戦闘に集中できていない風なのなんなの?
クサンテは前方に意識が集中しているため気付いてないが、もし彼女にばれたら情け容赦の無い893キックが飛びかねんぞ。
そして彼女と同時加入したディオンは抜きん出た物は見当たらないが、クサンテと同じ周囲を観察して動く冷静派。
突出しがちなユーベルトのサポートに回り、両手剣で牽制攻撃を繰り出しているので、今までその役目を担っていたクサンテが、PT全体の壁としてデスナイトの前に立ち塞がることに集中できている。
そしてジルケにつけたエクソシストの神聖魔法による攻撃が、アーヴィンやユーベルトの仕留め損ねたデスナイト相手に要所で刺さる。
アレッシオにもエクソシストの職をつけているが、彼は回復と補助に専念していた。
やはりレスティー達の班はPT全体の安定感が高い。
俺達の班は個人の殲滅力が高いのと、魔法職が多いせいであんな効率重視のツーマンセルで討伐をしているが、冒険者としては本来こう在るべきなのだろうな。
レスティー達の戦闘を観察しつつ、PTのスタイルなどについてリシア達と意見を交わしながら迷宮を進んでいく。
―――――――――――――――――――――――
投稿量が少なくて申し訳ないです。
言い訳としては、風邪ひきました。
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