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148話 箱庭の世界
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ライシーン第五迷宮五十階層。
長い下り坂を抜け足を踏み入れた場所は、広大と言いたくなる程の草原だった。
背後には四十九階層とを繋ぐ通路の入り口が切り立った岩壁にぽっかりと開いており、その岩壁は緩いカーブを描いて前方に伸びている。
そして数キロ先、草原のど真ん中には岩の丘が見えた。
「五十階層から景色が一変するとは聞いてはいたけど、まさかこんなに広いなんて」
「天井もかなりの高さですね」
リシアが感嘆を口にし、ユニスの言葉に皆が天を仰ぐ。
フロア全体は相変わらず青緑色に発光し、天井は高層ビルとまではいかないがちょっとしたデパートなら収まりそうな高さである。
ここに来る途中に受けた説明では、五十階層からは円形の箱庭の様な空間で、次への階層への入り口は階層の中心にあるそうだ。
「おいおい、こんな何もない所を進むのか?」
「これではまるで、敵に襲ってくれと言ってるようなものだな」
チャドさんのボヤキにザァラッドさんが具体的な危険を述べる。
つまり、このだだっ広い草原を通ってあの岩場にまで行かなければいけないってことだ。
「ソノ敵ガ見当タラナイノダガ?」
寡黙なワトキンさんが迷宮としての異常性を訴える。
あ、そんな声してたんですね。
「ちょっと待ってください、索敵しますんで」
〈サーチエネミー〉を走らせると、ユニスの背から飛び立ったミネルバが上空を旋回し周囲を伺う。
「……何も反応しないな」
「こっちもです」
よしのんも同じ結果を報告してくる。
上空から帰って来たミネルバが、ユニスの背に留まり羽の先を横に伸ばす。
その先を視線で追うと、遠く離れた岩の丘に当たる。
〈視覚強化〉のスキルで凝視すると、何やら白い物体が動いているのがなんとなく見える。
「なにか居る……よな?」
「羽の生えた人……」
「羽の生えた人?」
「ちー……」
こくりと頷くミネルバ。
「ハーピーでしゅかね?」
「違う……。羽は背中から生えてる……」
「では翼人種でしょうか……? でも翼人は亜人種だから……」
「魔物とは違いましゅから、魔物として迷宮に出るなんてことは無いはずでふよ?」
「ではハーピーの亜種かしら……?」
フィローラとセシルが予測を立て合うも、ミネルバは興味を無くしたのか最小サイズに縮み、人馬の背で潰れ饅頭と化した。
「でも、ミネルバが居るだけにハーピーとはやり合いたくないなぁ」
「ふわぁ……気にしなくていい……」
潰れ饅頭があくびをしながらそう言うと寝息を立て始めた。
本人が気にするなと言ってもこっちが気にするわ。
だが四十七階層の化け猫カシャの時みたく、あんな舐めた攻略が出来る地形じゃないことは容易に想像出来る。
先程ザァラッドさんが言った様に、身を隠す場所の無い状況で襲われるのは地形的な不利が否めない。
ましてや翼の生えた敵に襲われるとんると、その危険度は一気に跳ね上がる。
そな状況で手加減なんて出来るはずがない。
覚悟はとっくに出来ている。
気を引き締めろ。
「まずはあの草原をどうやって抜けるかが肝心だな」
「そうですねぇ……」
岩丘へ目を向けるザァラッドさんの横で同じようにそちらを見ながら、五十階層攻略を試案した。
――――――――――――――――――――――――
次回も投稿が遅れます。
長い下り坂を抜け足を踏み入れた場所は、広大と言いたくなる程の草原だった。
背後には四十九階層とを繋ぐ通路の入り口が切り立った岩壁にぽっかりと開いており、その岩壁は緩いカーブを描いて前方に伸びている。
そして数キロ先、草原のど真ん中には岩の丘が見えた。
「五十階層から景色が一変するとは聞いてはいたけど、まさかこんなに広いなんて」
「天井もかなりの高さですね」
リシアが感嘆を口にし、ユニスの言葉に皆が天を仰ぐ。
フロア全体は相変わらず青緑色に発光し、天井は高層ビルとまではいかないがちょっとしたデパートなら収まりそうな高さである。
ここに来る途中に受けた説明では、五十階層からは円形の箱庭の様な空間で、次への階層への入り口は階層の中心にあるそうだ。
「おいおい、こんな何もない所を進むのか?」
「これではまるで、敵に襲ってくれと言ってるようなものだな」
チャドさんのボヤキにザァラッドさんが具体的な危険を述べる。
つまり、このだだっ広い草原を通ってあの岩場にまで行かなければいけないってことだ。
「ソノ敵ガ見当タラナイノダガ?」
寡黙なワトキンさんが迷宮としての異常性を訴える。
あ、そんな声してたんですね。
「ちょっと待ってください、索敵しますんで」
〈サーチエネミー〉を走らせると、ユニスの背から飛び立ったミネルバが上空を旋回し周囲を伺う。
「……何も反応しないな」
「こっちもです」
よしのんも同じ結果を報告してくる。
上空から帰って来たミネルバが、ユニスの背に留まり羽の先を横に伸ばす。
その先を視線で追うと、遠く離れた岩の丘に当たる。
〈視覚強化〉のスキルで凝視すると、何やら白い物体が動いているのがなんとなく見える。
「なにか居る……よな?」
「羽の生えた人……」
「羽の生えた人?」
「ちー……」
こくりと頷くミネルバ。
「ハーピーでしゅかね?」
「違う……。羽は背中から生えてる……」
「では翼人種でしょうか……? でも翼人は亜人種だから……」
「魔物とは違いましゅから、魔物として迷宮に出るなんてことは無いはずでふよ?」
「ではハーピーの亜種かしら……?」
フィローラとセシルが予測を立て合うも、ミネルバは興味を無くしたのか最小サイズに縮み、人馬の背で潰れ饅頭と化した。
「でも、ミネルバが居るだけにハーピーとはやり合いたくないなぁ」
「ふわぁ……気にしなくていい……」
潰れ饅頭があくびをしながらそう言うと寝息を立て始めた。
本人が気にするなと言ってもこっちが気にするわ。
だが四十七階層の化け猫カシャの時みたく、あんな舐めた攻略が出来る地形じゃないことは容易に想像出来る。
先程ザァラッドさんが言った様に、身を隠す場所の無い状況で襲われるのは地形的な不利が否めない。
ましてや翼の生えた敵に襲われるとんると、その危険度は一気に跳ね上がる。
そな状況で手加減なんて出来るはずがない。
覚悟はとっくに出来ている。
気を引き締めろ。
「まずはあの草原をどうやって抜けるかが肝心だな」
「そうですねぇ……」
岩丘へ目を向けるザァラッドさんの横で同じようにそちらを見ながら、五十階層攻略を試案した。
――――――――――――――――――――――――
次回も投稿が遅れます。
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