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183話 デスタッチ
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「んで、まだやるの? 降参するなら命だけは見逃してやるけど?」
「俺様はこの世界の覇者になる男だ! 貴様如きガリチビが、俺様を見下すんじゃあねぇ!」
震える腕で魔法剣を掲げるマルケオスへ降伏を促すも、往生際が悪くそれを拒まれた。
そしてマルケオスが周囲に血走った視線を彷徨わせ、目当ての者を見つけて走る。
「トモノリ、いつまでボサっとしてやがる! お前も戦いやがれ!」
「え、あ、あ……」
先程までの威勢はどこへやら、ケンカすらしたことのなさそうなぽっちゃり少年にマルケオスが近付くと、少年の胸倉を掴んでガクガクと揺さぶり地面に投げ捨てた。
ゲホゲホと咳き込むトモノリ。
トモノリくんたちゅけて~ってか?
流石にその図体と先程の態度でそれは恥ずかしすぎやしませんかね?。
当のトモノリからはエネミー反応が消えており、投げ捨てられた後もこちらに敵意を向けている様子はない。
「テメェには大金かけたんだぞ、ちったぁ役に立ってみせろ!」
少年は厳つい大男に怒鳴られ更に委縮する。
だがその顔にはマルケオスへの不信感が色濃く表れている。
「ぼ、僕は……あなたに、手を貸すことは、で、出来ません……!」
〝大金をかけたのはお前らの勝手だろ〟なんて思っていると、トモノリは震えながらもマルケオスを見上げ、オドオドしながらもきっぱりと拒絶した。
「今なんて言った? よく聞こえなかったからもう1度言ってみてくれるか?」
「マ、マルケオスさん、さっき言ってましたよね? 〝弱い人は玩具になれば良い〟〝女の人に無理やりするのが楽しい〟って、そ、そんなの間違ってますよ!」
戦闘中は放心していたとばかり思っていたが、どうやら彼は俺達の会話はちゃんと聞いていた様だ。
「人がやって良い事じゃないです……!」
「ほぅ……。つまり、テメェも俺様に逆らうって言うんだな?」
「ひっ!?」
尚も食い下がろうとしたトモノリに、マルケオスはあろうことか少年の首元に硬質ふぁらすの様な剣を突き付けた。
「今のは聞かなかったことにしてやる。早く奴を攻撃しろ!」
「で、出来、ません……!」
苛立ちを隠さないマルケオス。
トモノリは目をぎゅっと閉じ、怯えながらも拒絶した。
まだ16歳の気弱そうな少年が、こんな強面の男に剣を突き付けられても尚口答えする勇気とはいかほどのものか。
もし昔の自分だったら、怖くて絶対に逆らえなかっただろう。
それだけに、彼の勇気が胸に来る。
助けなければ。
力を込めて1歩を踏み出し、わざとジャリっと鳴るよう地面を踏みしめる。
音に気付いてこちらを向いたマルケオスへ、光を宿す短槍を見せつける
「取り込み中のところ悪いんだけど、内輪もめは後にしてもらえるか?」
「動くんじゃねぇ、今すぐその槍を捨てて降伏しろ。でないとこいつの首が胴体から離れるぜ?」
彼を助けるために行動しなければと注意をこちらに向けようと身構えたが、マルケオスは手にした魔法剣をトモノリの首へ更に近付けた。
剣切っ先が少年の首に触れ、血の雫が一筋流れる。
これでは迂闊に近寄れない……。
「……お前の仲間がなんで俺に対する人質になると思ってるんの?」
「人質にならんのなら、こいつ諸共俺様を攻撃しているはずだ。それをしないってことは、こいつは十分人質として使えるってことだ」
マルケオスがしてやったりとばかりに口角を上げる。
殴りたい、あの笑顔。
「どうした、早くしな」
腹立たしくも顔をしかめて構えを解き、槍を横に投げ捨てた。
「その鎧もだ」
極力平静を装いながら、エインヘリヤルを解除する。
「はっ、最初からそいしてりゃあ良い――」
マルケオスが武装解除する俺を見てにやりと笑った瞬間、大男の巨体がおかしな速度で真横に吹き飛んだ。
先程マルケオスの居た場所に入れ替わりで立っていたのは、拳を振りぬいた姿のメリティエだった。
彼女が忍び寄るのに気付いていたからこその武装解除。
まさにしてやったりである。
「ナイスメ――」
〝ナイスメリー〟
親指を立てて褒めようとしたら、流れる動作でメリティエの回し蹴りがトモノリの胸部にクリーンヒット。
マルケオスとは逆方向へ飛ばされ、民家の壁に激突した。
「ふん、他愛ない」
満足げに鼻を鳴らすメリティエ。
両者共意識を失ってはいるが、命に別状がないことを確認する。
これで死んだら流石に目覚めが悪い。
「せ、せやな。けどあっちの子はもう戦意が無かったから、これ以上攻撃しなくていいからね」
「わかった」
メリティエに注意しながらマルケオスを魔法の紐で縛り、ライシーン第五迷宮四十七階層に放り込んだ。
ちなみにメリティエが相手をしていたヒストールがどうなったかと言うと、全身に無数の陥没痕を穿たれ地面にはいつくばり痙攣していた。
マルケオスの戦闘中も索敵魔法〈フリズスキャールヴ〉で確認していた対戦内容だが、途中まではメリティエが押され気味に戦いは進んでいた。
しかし、回避不能なタイミングで放たれたメリティエのカウンターがヒストールの武器を破壊するや、殴り合いでの戦闘へ移行してから流れが一気に変わる。
ヒストールの放つパンチを横から叩いて潰し、放たれたキックは神回避からのカウンターが突き刺さる。
しかもそのすべてにグラップラーの超打撃スキル〈鬼神瀑布〉を乗せるものだから、攻撃を繰り出したヒストールが逆に触れた部位を粉砕されるという、容赦の無いごり押しが発生した。
一撃の威力で親友のトトに敵わない事を悟ってからは、強打の連打と回避からのカウンターを主眼に置いて訓練に取り組んだ彼女が辿り着いた境地がこれである。
デスタッチ(物理)
完全にやべぇパワーワードが来たな。
ノーデスタッチ・ノーライフ。
俺の嫁がデスタッチを使うわけがない。
デスタッチアート・オンライン。
Re:デスタッチから始まる異世界生活。
異世界でデスタッチを使うのは間違いだろうか。
デスタッチという単語が頭の中を駆け巡る中、折れたオリハルコンの刀身を回収し、元冒険者だった死体を全て迷宮の肥やしにしておいた。
絵面的には完全に殺人の証拠を隠滅する裏社会の掃除屋である。
事実この国限定で言えばその通りなので否定出来ない。
今は気分的にハイになっているため罪悪感は湧かないが、平時にフラッシュバックを起こしそうだ。
とりあえず、ヒストールも縛って迷宮監獄へご案内っと。
本日何度目かの溜息を吐くと、トモノリを抱えて一旦自宅へと引き上げた。
「俺様はこの世界の覇者になる男だ! 貴様如きガリチビが、俺様を見下すんじゃあねぇ!」
震える腕で魔法剣を掲げるマルケオスへ降伏を促すも、往生際が悪くそれを拒まれた。
そしてマルケオスが周囲に血走った視線を彷徨わせ、目当ての者を見つけて走る。
「トモノリ、いつまでボサっとしてやがる! お前も戦いやがれ!」
「え、あ、あ……」
先程までの威勢はどこへやら、ケンカすらしたことのなさそうなぽっちゃり少年にマルケオスが近付くと、少年の胸倉を掴んでガクガクと揺さぶり地面に投げ捨てた。
ゲホゲホと咳き込むトモノリ。
トモノリくんたちゅけて~ってか?
流石にその図体と先程の態度でそれは恥ずかしすぎやしませんかね?。
当のトモノリからはエネミー反応が消えており、投げ捨てられた後もこちらに敵意を向けている様子はない。
「テメェには大金かけたんだぞ、ちったぁ役に立ってみせろ!」
少年は厳つい大男に怒鳴られ更に委縮する。
だがその顔にはマルケオスへの不信感が色濃く表れている。
「ぼ、僕は……あなたに、手を貸すことは、で、出来ません……!」
〝大金をかけたのはお前らの勝手だろ〟なんて思っていると、トモノリは震えながらもマルケオスを見上げ、オドオドしながらもきっぱりと拒絶した。
「今なんて言った? よく聞こえなかったからもう1度言ってみてくれるか?」
「マ、マルケオスさん、さっき言ってましたよね? 〝弱い人は玩具になれば良い〟〝女の人に無理やりするのが楽しい〟って、そ、そんなの間違ってますよ!」
戦闘中は放心していたとばかり思っていたが、どうやら彼は俺達の会話はちゃんと聞いていた様だ。
「人がやって良い事じゃないです……!」
「ほぅ……。つまり、テメェも俺様に逆らうって言うんだな?」
「ひっ!?」
尚も食い下がろうとしたトモノリに、マルケオスはあろうことか少年の首元に硬質ふぁらすの様な剣を突き付けた。
「今のは聞かなかったことにしてやる。早く奴を攻撃しろ!」
「で、出来、ません……!」
苛立ちを隠さないマルケオス。
トモノリは目をぎゅっと閉じ、怯えながらも拒絶した。
まだ16歳の気弱そうな少年が、こんな強面の男に剣を突き付けられても尚口答えする勇気とはいかほどのものか。
もし昔の自分だったら、怖くて絶対に逆らえなかっただろう。
それだけに、彼の勇気が胸に来る。
助けなければ。
力を込めて1歩を踏み出し、わざとジャリっと鳴るよう地面を踏みしめる。
音に気付いてこちらを向いたマルケオスへ、光を宿す短槍を見せつける
「取り込み中のところ悪いんだけど、内輪もめは後にしてもらえるか?」
「動くんじゃねぇ、今すぐその槍を捨てて降伏しろ。でないとこいつの首が胴体から離れるぜ?」
彼を助けるために行動しなければと注意をこちらに向けようと身構えたが、マルケオスは手にした魔法剣をトモノリの首へ更に近付けた。
剣切っ先が少年の首に触れ、血の雫が一筋流れる。
これでは迂闊に近寄れない……。
「……お前の仲間がなんで俺に対する人質になると思ってるんの?」
「人質にならんのなら、こいつ諸共俺様を攻撃しているはずだ。それをしないってことは、こいつは十分人質として使えるってことだ」
マルケオスがしてやったりとばかりに口角を上げる。
殴りたい、あの笑顔。
「どうした、早くしな」
腹立たしくも顔をしかめて構えを解き、槍を横に投げ捨てた。
「その鎧もだ」
極力平静を装いながら、エインヘリヤルを解除する。
「はっ、最初からそいしてりゃあ良い――」
マルケオスが武装解除する俺を見てにやりと笑った瞬間、大男の巨体がおかしな速度で真横に吹き飛んだ。
先程マルケオスの居た場所に入れ替わりで立っていたのは、拳を振りぬいた姿のメリティエだった。
彼女が忍び寄るのに気付いていたからこその武装解除。
まさにしてやったりである。
「ナイスメ――」
〝ナイスメリー〟
親指を立てて褒めようとしたら、流れる動作でメリティエの回し蹴りがトモノリの胸部にクリーンヒット。
マルケオスとは逆方向へ飛ばされ、民家の壁に激突した。
「ふん、他愛ない」
満足げに鼻を鳴らすメリティエ。
両者共意識を失ってはいるが、命に別状がないことを確認する。
これで死んだら流石に目覚めが悪い。
「せ、せやな。けどあっちの子はもう戦意が無かったから、これ以上攻撃しなくていいからね」
「わかった」
メリティエに注意しながらマルケオスを魔法の紐で縛り、ライシーン第五迷宮四十七階層に放り込んだ。
ちなみにメリティエが相手をしていたヒストールがどうなったかと言うと、全身に無数の陥没痕を穿たれ地面にはいつくばり痙攣していた。
マルケオスの戦闘中も索敵魔法〈フリズスキャールヴ〉で確認していた対戦内容だが、途中まではメリティエが押され気味に戦いは進んでいた。
しかし、回避不能なタイミングで放たれたメリティエのカウンターがヒストールの武器を破壊するや、殴り合いでの戦闘へ移行してから流れが一気に変わる。
ヒストールの放つパンチを横から叩いて潰し、放たれたキックは神回避からのカウンターが突き刺さる。
しかもそのすべてにグラップラーの超打撃スキル〈鬼神瀑布〉を乗せるものだから、攻撃を繰り出したヒストールが逆に触れた部位を粉砕されるという、容赦の無いごり押しが発生した。
一撃の威力で親友のトトに敵わない事を悟ってからは、強打の連打と回避からのカウンターを主眼に置いて訓練に取り組んだ彼女が辿り着いた境地がこれである。
デスタッチ(物理)
完全にやべぇパワーワードが来たな。
ノーデスタッチ・ノーライフ。
俺の嫁がデスタッチを使うわけがない。
デスタッチアート・オンライン。
Re:デスタッチから始まる異世界生活。
異世界でデスタッチを使うのは間違いだろうか。
デスタッチという単語が頭の中を駆け巡る中、折れたオリハルコンの刀身を回収し、元冒険者だった死体を全て迷宮の肥やしにしておいた。
絵面的には完全に殺人の証拠を隠滅する裏社会の掃除屋である。
事実この国限定で言えばその通りなので否定出来ない。
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