崩壊学園

壁蝨

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山岳キャンプ編

第7話「1日目④ 開戦」

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 翼竜に食われて(口の中に収納されて)かれこれ10分ほど経っただろうか。未だに口内には悪臭が充満しており、そしてなおかつ暗い&狭い。
「マジで臭いな、ウンコだろ、これ。ウンコ食ってんだろこのバケモン。」
亮が嘆く。
「全く…僕のタキシード15万円なのに…。」
ルイも元気がない。
「それで山来んなよ。ナメてんだろ絶対!」
「あーあー、なんでこんな学校入っちゃったんだろうなあ。」
「それ気になるわ。お前みたいな御曹司だったら、東京とかの名門私立とか行けそうなんだがな。」
「うーん…ちょっと勉強がね…。」
「え、お前バカなのか?生粋のバカだったのか?」
「頭に来る奴だね、君と言うのは。一般peopleがしゃしゃらないでもらいたい。」
「てか、そんな金持ちなら小さい頃から英才教育とか、めっちゃ教育に投資しそうだけどな!」
「確かに…家庭教師、学習塾、英会話、バレエ、水泳、絵画、ヴァイオリン、ピアノ、テニス、カバディ…習い事は週30くらいあったかな…。」
「週30…一生使わんパワーワードだぞおい。全部ダメだったのかその習い事たちは。一つくらい才能があってもいいんじゃないか?」
「僕だって頑張ったさ!父さんの期待に応えなきゃって…でもダメなんだよな。あれ以外は…。」
「あれ…ってなんだ?」
「カバディさ。僕、実は日本代表U15に選ばれたんだよね。高校入ってからは辞めちゃったけど。」
「お前、こんなことしてる場合じゃねえぞ。なんで得体の知れないバケモンの口の中にいるんだよ。お前は体育館で輝くべき逸材なんじゃないのか?」
「まあでもあれつまんないしね。ルールもよく分かんないし。」
こいつはもしかしたらガチの天才なのかも知れない、と亮は思った。

一方、翼竜の口の外では…
「ぬおおおっ!!絶対に離さんぞこのバケモン!」
ジョンソンは必死に足の指にしがみ付いていた。ふと前方に目をやると、ラクダ山の岸壁がすぐそこまで迫っていた。
「お、ちょい待て!それは流石に死ぬ!こんなことまで想定して訓練してねえ!」
その瞬間、翼竜は急降下を始め、崖の下に降り立った。ジョンソンは着地し、亮とルイも吐き出された。

そこは巣と思わしき場所だった。巨大な鳥の巣に近い。ただ地面に、木の枝葉で囲まれたスペースがあり、その中央に3人はいた。その瞬間、翼竜は爆音で咆哮をあげた後、大空に再び戻っていってしまった。周りを見ると、巣の隣には無数の骨が散乱していた。動物の骨だったり、たまに人間か猿のようなものの骸骨もあった。
「ルイ様、ご無事でしたかっ!私、やつの足先にしがみついて来ました!」
ジョンソンがすかさずルイの元に駆け寄る。
「無傷だよ。ただ、尋常じゃなく不快な空間だったよ。」
「それは私も深く共感致します。唾液のネバネバはさぞかし辛かったことでしょう。」
「そんなことより、なんかめっちゃ臭かったけどな。」
亮が口を挟む。
「っ…まあ、何食べてるか分からんし…。」
ジョンソンが言葉につまる。
「白のタキシードが茶色に汚れちゃってるよ!唾液って透明じゃなかった?なにこれ。」
ルイが不満げに話すとすかさずジョンソンは言った。
「土です、土!」
「まあいいや、で、ここどこ?」
「ルイ様っ!それがですね、ラクダ山だと思われます。」
ジョンソンが答える。
「何っ!!それは好都合だ!集合場所を探すぞ!」
亮が興奮気味に言った。
「おいおい、逃がしちまったかあのドラゴン。」
突如、崖の上で知らない声がした。
3人は巣のそばにあるその崖を見上げた。

「流石に私のレーザーキャノンは強すぎたみたいね。照準を当てただけで逃げるだなんて、案外ビビリなもんだわ。」
「おん?なんか下に人がいるぞ?」
「あら、うちの生徒かしら?」

やばい、目合ったわ、と亮がささやいた。
「何してんねん小僧。」
ジョンソンもぼやく。
「いや、一番図体でかいのお前だから!ワンチャン俺とルイは認知されてねえよ。」
「目合ったら流石に気付くでしょ。」
ルイが仲裁に入る。
「おーーーい!!君たち、豊開生かーい?」
ルイが崖の上に向かって叫んだ。

「ん…あれ、入学式ヘリで来てた野郎じゃねえか?」
「そうかもしれないわ。どうする?返事してみる?」
「まあ、まだ戦いは始まった訳じゃねえしな。初めて会うライバル達だ。挨拶くらいしたるか。」

「おい、上からロープが降りて来たぞ。」
亮が言う。
「お前先登れ。」
ジョンソンが急かす。
「いや、罠かも知れねえだろ!SPなんだからお前先行けや!」
亮が言い返す。
「全く…仲が悪いもんだね二人は。」
そう言ってルイはロープに手を伸ばした。
「ルイ様っ!やはりここは私が!いや、しかし、万が一罠だとした場合、この小僧が平気で私だけなんか怪我する、とかはプライドが許しません。どうしたら良いでしょうか!!」
「君クビにしようかな。」
「いやああああっそれだけはご勘弁をっ!」

「何やってんだあいつら…。」
「揉めてるみたいね…チームワークのかけらも無いわ。私達の相手にもならないかもしれないわ。」
「おいっ!!お前ら早く登ってこい!!こちとら待ってんだ!!」

しばらくかかって、3人とも崖を登り切った。
「お前がルイってやつか…案外小柄だな。」
男が言う。
「君達は?」
ルイが訪ねた。
「俺はアカハシ、4組の番はってらあ。」
「もう、馬鹿ね。まだ入学3日目じゃないの。あ、私はエリナ。同じ4組よ。」
亮とジョンソンも自己紹介を終えた。
「君達2人しかいないの?」
亮が聞く。
「ああ…一応もう1人いんだけどよ。」
「ココダヨ!」
よく見ると、アカハシの左肩に小人が乗っていた。
「ヤットキヅイテクレタ!モウムカツイテハゲチラカストコロダッタ。」
「亮、よく聞こえねえよな。ちゃんと喋れや。」
アカハシが肩に向かって言う。
「僕は、コビ。小人族なんだ。」
小人が頑張って大きな声で話した。
「んな訳あるか?グンマー帝国にくりゃなんでもありなのか?」
亮がそう言うと、コビは反論した。
「遺伝子操作されたせいで、僕のひいお爺ちゃんの代から体が異常に小さくなっちゃったんだ。」
「もう一体、仲間がいるわよ。」
エリナの後ろから、銀ピカの人型の巨体が現れた。
「ウィー。」
なんかよく分からない鳴き声みたいなのをあげている。
「これは私の作った戦闘ロボット、テツ56よ。」
「ウィー。」
「君は機械に精通しているようだね。」
ルイが言う。
「ええ、メカニックのことなら誰にも負けないわ。実は、MITマサチューセッツ工科大学にも合格しているのよ。」
「なっ…MIT蹴りで豊開入学だと?しかも中卒の時点で飛び級合格できたってことか?MITと豊開なんて月とスッポンどころか、太陽とミジンコじゃないか!」
ジョンソンが驚きを露わにした。
「ええ…でも、MITはまたここを卒業してからでも行けるわ。私にはここに来た大切な理由があるの…。」
エリナはそっと視線をアカハシに向ける。
「んああ?どした?」
なんでもない、とアカハシに答え、エリナは視線を逸らした。頬が若干赤らんでいた。
「そういうことか。」
亮がにやついた。
「どんだけ偏差値高くても言動はおバカちゃんってパターンもあるんだな!恋のために人生棒に振っちまったな。」
亮は何故か嬉しそうに話す。
「私に後悔は無いわ。まずは、アカハシが私の気持ちに気づくまで頑張るわ。」
「え、まだその段階なの?」
ルイが言う。確かにアカハシは赤髪で特攻服を着たゴリゴリのヤンキーであり、性格も乱暴で大雑把そうな印象であったので、恋にメチャクチャ鈍感というのも何となく分かる気がした。当の本人アカハシは、木の枝で地面に絵を描いていた。精神年齢もかなり幼いらしい。
「っていうか時間は大丈夫なの?集合場所目指してるんだよね?」
ルイが我に帰り質問した。
「あと1時間よ。でももうすぐそこだから、今私の作った新兵器で遊んでた所なの。」
「お前たちも、人数少なく無いか?」
アカハシが聞いてきた。
「途中ではぐれちゃったんだよね。」
ルイが答える。
「それじゃ集合は認められないわ。時刻までに全員が揃ってないと失格よ?」
エリナが忠告する。
「いや、いいんだ。あいつらの命さえ助かればそれに越したことはない。とにかく集合して、先生達に助けを求めるつもりだ。時間とか成績とかもうどうでもいいよ。」
亮が状況を説明した。
「じゃ、救助も早い方が良いわね。来なさい。一緒に集合場所に行きましょう。」
八森の会の残党3人と、チーム:RED-BRIDGEの4人は共に歩き始めた。

 森が開けた広いキャンプ場があった。レジャー用ではなく、今回の合宿用に仮設された教師陣のベースキャンプだ。そこに行くと、既に参加者がゾロゾロと集まっていた。こんな厳しい条件の中、一晩でこれだけのチームが時間通りに集合場所に集まったのは意外だった。全員で、ざっと80人ほどであろうか。

鐘の音が鳴り響いた。カンカンカンッ。
「時間だー。それでは点呼を始めるー。」
チビハゲデブの学年主任・鶴田先生が前に出た。チーム名が続々と読み上げられ、人数のチェックがされた。やはり他のチームでも、ここまでの厳しい道のりで脱落した者がおり、数チームがこの段階で失格となった。
「RED-BRIDGE。4人いるな。ん?そいつロボットだよな。まあいい、1人に換算しとくわ。」
「はい次ー、八森の会。八森の会ィー。全員いるかぁ?よし、ok。」
なぜか合格した。
「どういうことだ?」
隊列の先頭にいたルイは後ろを確認した。なぜか7人いる。
「え?ん?」
亮とジョンソンも異変に気づく。
「あああっ、!!イッペイとボブじゃねえかこんにゃろ!」
亮が叫ぶ。
「気付くの遅すぎるぞ。ずっと後ろにいたぞ。」
イッペイが笑いながら言う。
「いやあ、無事で何よりだ。」
亮が言う。
「いや、お前ら誰やねん。」
亮が原始人の格好をした2人を指差した。
「俺、藻蔵っつーんだ。地下世界の内通者、とでも言えば伝わるか?」
「俺、ミズノだぽ。イタークラ村の新鋭狩人だぽ。」
混乱している亮、ルイ、ジョンソンに、イッペイが詳しい状況を説明した。
「残念だが、俺はここで離脱する。」
そして、この言葉と共に脚を負傷したボブの離脱も決まった。あいにく点呼では人数が足りているかの確認しかしていないという、ずさんな有様だったので、この残った6人でも一応チームとしての生存が認められた。
「…フランクリンは何処か誰も分からないんだな…。」
ルイのこの言葉に、チームは暗くなった。
「貴方達、再会できたのね!?すごいわ!ドラチックね!」
隣にいたチームのエリナが話しかけてきた。
「でもまだ1人見つかってなくて…。」
ルイが言う。
「んー。まあでも、ここまで来たら貴方達はこの合宿続けた方がいいわ。彼の救助は教師達に任せなさい。貴方達がこの学校生活を生き延びることだって考えた方がいいわ。大切な仲間かもしれないけど…。こんな学校に入ってしまった私たちにとって、目の前の無理難題に対処して、良い成績を残して無事に卒業することが、将来に繋がるのよ。」
エリナはしっかりと考えを持った人間だった。頭脳明晰なのも納得だ。
「俺、あいつなら何処かで生きてると思うんだ。」
帰りの準備をしながら、ボブが言った。
「ルイ様がカバディの代表遠征で中東に行った時、フランクリンだけ運悪くテロ組織に捕まったことがあるんだが、銃弾を20発近く浴びながら逃げ帰って来たことがあるんだ。」
ボブが懐かしそうに話す。
「確かに、訓練中も俺らSPの中でもトップクラスの身体能力を発揮してるもんな。ボブだって生き延びたあの湖の断崖絶壁だぞ?あんな生命力の塊みたいな奴が、あれ如きで死ぬとは思えん。」
ジョンソンも話した。
「いや、、あそこで何人か確実に死んでるぞ。俺のチームがそうだった。」
藻蔵が申し訳なさそうに口を開いた。
「どうする?合宿を続けるなら早く次のミッションに進まなければならない。」
亮が言った。
「僕はやりたい。僕、気付いたんだ。僕は確かに意気地なしだし、真っ先に帰りたかったけど、合宿ここで頑張って結果を出せば、きっとフランクリンも喜ぶんじゃないかなって。」
ルイが言った。
「SP2人とルイがそう言うなら、おいどんはついてくぜ?」
イッペイは続行に賛成した。
続いて亮と藻蔵もそれに同意し、今ここで新たなる八森の会が生まれた。

<メンバー確認>
1年2組 八森ルイ(リーダー)
1年2組 山本亮
1年2組 イッペイ
1年3組 藻蔵ケンジ
現地民 ミズノ
SP ジョンソン
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