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第1章
第2話「荷造」
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あの一件以降、ユウキは二人とつるむよりもゴンゾウの家に通って遊ぶようになった。
「今日も来たのかよ。ふざけんなよクソガキ。邪魔だから帰れや。」
権三はドリアンの様子を深く観察していた。
「どうせゴンゾウさん一人ぼっちなんでしょ?」
「ああ?孤高のエリート。これが俺の生き様だわボケ。」
「孤独な老害って爺ちゃんが言ってたよ。」
「だからうっせえんだよ!!はやく帰れや!!」
ユウキはベンチに座りながら畑作業を眺めていた。
「ゴンゾウさん、電話来てるよ。」
ユウキは家の窓を指し、ゴンゾウに知らせた。
「うるせえ!!知っとるわ!!」
ゴンゾウは走って窓に飛び込んだ。
「面白いなあゴンゾウさん。」
ユウキは笑っていた。
電話は息子の平夫からだった。
「父さん!子供が生まれたんだよ!」
「ああ、ああ、鬱陶しいなおめえ!!ガキは嫌いなんだよ!!」
「そんなこと言わないでさ、ほら、会ってみたら絶対可愛いって!」
「いやだね!!」
「ダメだよ!お爺ちゃんがそんなんじゃ。赤ちゃん連れてくのは厳しいから、東京会いに来てよね。」
「は?ふざけんな!!なんで俺が東京なんか」
電波が切れてしまった。
「東京行くの?」
ユウキが窓の外から会話を聞いていた。
「まだいたのかお前。お前には関係ない話しだ。」
「僕、東京から来たんだ。」
「そうか。いいか、じゃあ話してやるよ。俺は東京という町が大っ嫌いなんだ。」
「どうして?」
「いい思い出がこれっぽっちもないからだよ!」
「何があったの?」
「お前なんかが生まれるもっと昔にな、俺は東京に住んでたんだよ。あの煙臭い汚いコンクリートの森でな。散々こき使われて働いた挙句不景気で倒産だよ。ったく…。狂った町だよ。」
「ふーん…」
会話が終わるとゴンゾウは窓から外に飛び出した。
「昔のことは分からないけどさ、今の東京はいい所だと思うよ。」
「てめえに何が分かる。たかが5年くらいしか生きてねえだろ。」
ゴンゾウの文句を無視して、ユウキはスマホを取り出して写真を見せた。
「お前、ガキがそんなもん持ってんのか?」
「へへー、すごいでしょ。東京だとみんな持ってるよ。こっちだと持ってる子供は僕しかいないけどね。」
権三は写真に釘付けになった。というか、スマホ自体しっかり見たこともなかったから、得体の知れないものを見ている気持ちだった。
「おい!!何をした!!」
権三が戸惑う。
「何って、スクロールだよ。指でなぞると写真が変わるんだよ。こんなのも知らないの?」
「ああ知らねえよこんなくだらねえこと。」
「てかこの棒みたいなのなんだよ。なんでこんなの写真に撮ってるんだよ。」
「棒じゃないよ。これスカイツリーっていうんだよ。」
「す、すかいすか?」
「ゴンゾウさん、何にも知らないんだね。絶対家にテレビもネットもないでしょ。」
「だからなんだよ!!もともとそんな文明なんつーのはな、甘えなんだよ!」
「はいはい。」
権三は畑に戻って行った。
「もったいないなー。東京すごく楽しいのに。」
ユウキはぼやきながら畑仕事を眺め続けた。
明くる日も、明くる日もユウキは通い続けた。権三ももはや追い払うのも挨拶するのもだるくなり、見学を黙認するかのようだった。
「ゴンゾウさんの仕事って簡単だね。」
「は?てめえもういっぺん言ってみろ!!殺すぞ!!」
相変わらずの口の悪さだが、本気で殺そうと思っていないことに、ユウキは気付けるようになっていた。
「東京行けば、すごい農薬とか肥料とか、機械とかあるかもよー?」
ユウキは東京の名誉のためか、適当なことを抜かした。
権三の手が止まった。
「確か…あんとき同僚で今農薬作ってる奴いたな…。農薬に甘えるのは俺のプライドが許さねえが、ドリアン栽培になんか有益な情報が手に入るかも知れねえな。」
「サイバイ…?もしかしてお茶会のこと?」
完全に忘れていた。自分は近々訴訟される運命にあったのだ。どうしよう。こうなったら農薬でもなんでも頼って、最強のドリアンを作ってドリアン選手権優勝して結果残せば…裁判勝てるんじゃね?
権三はプライドがあってないようなもので、弱気になると急に意志が薄っぺらく、そして極めて非教養で単純な人間だったので簡単に結論が出てしまった。
「俺東京行くわ。」
権三が宣言した。
「え!ほんとに!?寂しくなるなあ。」
ユウキが喜ぶ。なんだか初めて自分が認められた気がした。
「おい!!何してる!こっちに来い。」
初めて権三がユウキを畑に入れさせた。事故的でなく、だが。
「俺がいない数日、水やりをやれ。雑草も抜いてもらう。」
「うん!!いいよ!!」
ユウキはとても嬉しかった。本当にようやく自分を認められたと思った。いつしか、自分もドリアンが好きになっていた。
「勘違いすんなよ。一回でも水やり忘れてみろ。マジで殺すからな。」
「大丈夫だよ!だって一日でも僕が来なかった日ある?」
「雑草一本につき指一本切断するからな!!」
「警察に捕まるよ。」
「うるせえ野郎だ。今からやり方教える。」
「なんかご褒美あるの?」
「ああ?なんだよ話聞けよガキが。」
「ご褒美ないとやだなあー」
「ああうるせえ!!ドリアン食わせてやるから黙ってろ。」
「やったーー!!」
農作業を簡単に教えると、権三は家の冷蔵庫からドリアンを取り出した。
「俺の記憶力じゃ忘れかねないから先払いだ。お前の働きようによっちゃこれが最後の晩餐にもな…」
「オエエッ!!こんな不味いの??ドリアンって食べると余計に臭いね。」
「てめえ殺すぞ!!」
「あ、東京いったらその口の聞き方直した方がいいよ。ここみたいな田舎じゃいいけど、東京の人達すぐ警察呼ぶと思うよ。」
「クソガキが。」
そういって権三は荷造りを始めた。
「行き方教えろガキ。」
「いいよ!」
「今日も来たのかよ。ふざけんなよクソガキ。邪魔だから帰れや。」
権三はドリアンの様子を深く観察していた。
「どうせゴンゾウさん一人ぼっちなんでしょ?」
「ああ?孤高のエリート。これが俺の生き様だわボケ。」
「孤独な老害って爺ちゃんが言ってたよ。」
「だからうっせえんだよ!!はやく帰れや!!」
ユウキはベンチに座りながら畑作業を眺めていた。
「ゴンゾウさん、電話来てるよ。」
ユウキは家の窓を指し、ゴンゾウに知らせた。
「うるせえ!!知っとるわ!!」
ゴンゾウは走って窓に飛び込んだ。
「面白いなあゴンゾウさん。」
ユウキは笑っていた。
電話は息子の平夫からだった。
「父さん!子供が生まれたんだよ!」
「ああ、ああ、鬱陶しいなおめえ!!ガキは嫌いなんだよ!!」
「そんなこと言わないでさ、ほら、会ってみたら絶対可愛いって!」
「いやだね!!」
「ダメだよ!お爺ちゃんがそんなんじゃ。赤ちゃん連れてくのは厳しいから、東京会いに来てよね。」
「は?ふざけんな!!なんで俺が東京なんか」
電波が切れてしまった。
「東京行くの?」
ユウキが窓の外から会話を聞いていた。
「まだいたのかお前。お前には関係ない話しだ。」
「僕、東京から来たんだ。」
「そうか。いいか、じゃあ話してやるよ。俺は東京という町が大っ嫌いなんだ。」
「どうして?」
「いい思い出がこれっぽっちもないからだよ!」
「何があったの?」
「お前なんかが生まれるもっと昔にな、俺は東京に住んでたんだよ。あの煙臭い汚いコンクリートの森でな。散々こき使われて働いた挙句不景気で倒産だよ。ったく…。狂った町だよ。」
「ふーん…」
会話が終わるとゴンゾウは窓から外に飛び出した。
「昔のことは分からないけどさ、今の東京はいい所だと思うよ。」
「てめえに何が分かる。たかが5年くらいしか生きてねえだろ。」
ゴンゾウの文句を無視して、ユウキはスマホを取り出して写真を見せた。
「お前、ガキがそんなもん持ってんのか?」
「へへー、すごいでしょ。東京だとみんな持ってるよ。こっちだと持ってる子供は僕しかいないけどね。」
権三は写真に釘付けになった。というか、スマホ自体しっかり見たこともなかったから、得体の知れないものを見ている気持ちだった。
「おい!!何をした!!」
権三が戸惑う。
「何って、スクロールだよ。指でなぞると写真が変わるんだよ。こんなのも知らないの?」
「ああ知らねえよこんなくだらねえこと。」
「てかこの棒みたいなのなんだよ。なんでこんなの写真に撮ってるんだよ。」
「棒じゃないよ。これスカイツリーっていうんだよ。」
「す、すかいすか?」
「ゴンゾウさん、何にも知らないんだね。絶対家にテレビもネットもないでしょ。」
「だからなんだよ!!もともとそんな文明なんつーのはな、甘えなんだよ!」
「はいはい。」
権三は畑に戻って行った。
「もったいないなー。東京すごく楽しいのに。」
ユウキはぼやきながら畑仕事を眺め続けた。
明くる日も、明くる日もユウキは通い続けた。権三ももはや追い払うのも挨拶するのもだるくなり、見学を黙認するかのようだった。
「ゴンゾウさんの仕事って簡単だね。」
「は?てめえもういっぺん言ってみろ!!殺すぞ!!」
相変わらずの口の悪さだが、本気で殺そうと思っていないことに、ユウキは気付けるようになっていた。
「東京行けば、すごい農薬とか肥料とか、機械とかあるかもよー?」
ユウキは東京の名誉のためか、適当なことを抜かした。
権三の手が止まった。
「確か…あんとき同僚で今農薬作ってる奴いたな…。農薬に甘えるのは俺のプライドが許さねえが、ドリアン栽培になんか有益な情報が手に入るかも知れねえな。」
「サイバイ…?もしかしてお茶会のこと?」
完全に忘れていた。自分は近々訴訟される運命にあったのだ。どうしよう。こうなったら農薬でもなんでも頼って、最強のドリアンを作ってドリアン選手権優勝して結果残せば…裁判勝てるんじゃね?
権三はプライドがあってないようなもので、弱気になると急に意志が薄っぺらく、そして極めて非教養で単純な人間だったので簡単に結論が出てしまった。
「俺東京行くわ。」
権三が宣言した。
「え!ほんとに!?寂しくなるなあ。」
ユウキが喜ぶ。なんだか初めて自分が認められた気がした。
「おい!!何してる!こっちに来い。」
初めて権三がユウキを畑に入れさせた。事故的でなく、だが。
「俺がいない数日、水やりをやれ。雑草も抜いてもらう。」
「うん!!いいよ!!」
ユウキはとても嬉しかった。本当にようやく自分を認められたと思った。いつしか、自分もドリアンが好きになっていた。
「勘違いすんなよ。一回でも水やり忘れてみろ。マジで殺すからな。」
「大丈夫だよ!だって一日でも僕が来なかった日ある?」
「雑草一本につき指一本切断するからな!!」
「警察に捕まるよ。」
「うるせえ野郎だ。今からやり方教える。」
「なんかご褒美あるの?」
「ああ?なんだよ話聞けよガキが。」
「ご褒美ないとやだなあー」
「ああうるせえ!!ドリアン食わせてやるから黙ってろ。」
「やったーー!!」
農作業を簡単に教えると、権三は家の冷蔵庫からドリアンを取り出した。
「俺の記憶力じゃ忘れかねないから先払いだ。お前の働きようによっちゃこれが最後の晩餐にもな…」
「オエエッ!!こんな不味いの??ドリアンって食べると余計に臭いね。」
「てめえ殺すぞ!!」
「あ、東京いったらその口の聞き方直した方がいいよ。ここみたいな田舎じゃいいけど、東京の人達すぐ警察呼ぶと思うよ。」
「クソガキが。」
そういって権三は荷造りを始めた。
「行き方教えろガキ。」
「いいよ!」
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