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戻ってきた日常
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「うーん!久しぶりの我が家は最高ね!」
五日間の入院を終えた私は屋敷へと帰ってきた。
すると、ハオルにゼオンやアイリスを始めとする使用人たちが出迎えてくれた。
「姉様!お帰りなさい!」
「お嬢様、お帰りなさいませ」
「お嬢様!会えなくて寂しかったですよ!面会も一回だけということでしたし!」
お嬢様には来客が多いと思われるので、使用人は各自一回の面会とします。
ゼオンが面会時に報告してくれた。
その予想通り、ひっきりなしに面会客が来てくれるものだからゼオンの決定には助けられたと思うわ。
「ほらほらアイリス。無事に帰ってきたのだから離れなさいな。苦しいわ」
「もう無茶しちゃダメなんですからね!」
「うふふ、無茶はしたつもりないのだけど?」
「お嬢様!」
「わかったからそんなに怒らないで、アイリス」
今後、同じようなことがあれば私はやはり同じことをするだろう。
私の力で助けられる人がいれば助けたい。
もちろん、自分が死ぬつもりはないけどね。
「では、一段落着いたところでお嬢様?お仕事がたっぷりと溜まっておりますので、処理をお願いいたします」
「……嘘でしょ?治癒院から帰ってきたばかりなのに?今日くらいはゆっくりと……」
はっきり言って、治癒院生活は慣れない場所での生活だった上に面会客の対応などであまりゆっくりと休めていない。
「無理ですね。決裁待ちが溜まっております。代行としてハオルシア様がこなしてくれたものもありますが、お嬢様自らがサインしなければならないものはたくさんございます」
「ほ、ほら……今はまだハオルが当主代行ということで?」
「姉様!?ボク結構頑張ったんですよ!?」
ハオルは私の言葉に泣きそうになりながら訴えてきた。
書類作業、ハオルは苦手なのよね。
それでも頑張ってくれた弟にこれ以上無理を言うのは可哀想か。
「わかったわよ。着替えたらすぐに取り掛かるから。アイリス、ワンちゃんの足跡の刺繍がされたパジャマを用意してちょうだい」
「お嬢様!昼間からパジャマはダメです!」
「普通の服だとまだ左腕が痛いの……ゆったりとした服が着たいな……」
うるうる。
私は涙を瞳に溜めて、アイリスにお願いした。
「うっ……そんなことを言われたら断れないじゃないですか……」
「アイリスは優しい娘だものね?」
「むぅぅぅ……お嬢様?本当に痛むんですか?」
なんということでしょう?
純粋で可愛らしいアイリスが私を疑ってくるなんて……
「私の言うことが信じられないなんて……アイリスはいつからそんな悪い娘になってしまったの?」
「……わかりました。お嬢様を信じます」
「いい娘ね。アイリス」
「姉様、アイリスをあまりからかわないであげてくださいね?寂しそうにしてたんですから」
「わ、わかってるわよ。ほら可愛い娘ほどからかいたくなるものでしょ?」
「ボクにはその感覚はわかりません」
おかしいわね。
年ごろの男の子はそういうものだと、聞いたことがあるのだけれど。
「……お嬢様?からかっていたのですか?」
「あら、そんなことはないわよ。少しもて遊んでいただけ」
「なお悪いじゃないですか!」
「うふふ、それじゃ着替えを手伝ってくれる?その後髪に櫛をかけてほしいわ。専属の看護師さんがやってくれたのだけど、やっぱりアイリスが一番だから」
「そうでしょうとも!何年お嬢様のお世話をしていると思っているんですか!お任せください!」
先ほどまでプンプンと怒っていたアイリスが、ふふんと小さな胸を張り愛らしい。
「はい、お願いします」
こうして、アイリスとともに自室へと戻ると、すごく懐かしく感じるものがあった。
それにちり一つ落ちていなく、ベッドもピシッと整えられている。
「綺麗にしてくれていたのね」
「当然です!毎日お掃除させていただきました!」
「偉い偉い」
私がナデナデと頭を撫でると、
「えへへぇ♪」
アイリスはすっかりとご機嫌になる。
そんなアイリスに着替えを手伝ってもらった後に、髪を梳いてもらった。
うーん……とっても幸せね……
コンコン。
「お嬢様?ずいぶんと支度に時間がかかっておられるようですが?」
そんなときに不粋な輩がやってくる。
「わかったわよ。アイリスありがとう」
「いいえ!お仕事がんばってください!」
「ええ、頑張るわ」
さて、お仕事を始めましょうか。
そうモチベーションを上げたのだけど、
「……何よこれ」
執務室に入った途端、一瞬で地の底まで下がっていった。
「書類ですが?」
「それはわかってるわよ!なによこの量は!」
机の上にはおびただしいほどの書類の束がある。
「こちらが優先度の低いものの締め切りが近いものと、こちらが優先度が高いものとなっておりますので、こちらから先に決裁していただきたく思いますが」
「優先度が低いものってハオルがやっていてくれたんじゃないの?」
「ええ、ハオルシア様は頑張ってくださいました。ですがお嬢様の処理速度と比べては可哀想です」
「そうね……小説一本読むのも時間がかかる子だものね……」
ええい!やってやるわよ!
私は椅子に座ると、即座に書類の山を読み始めた。
決裁!決裁!修正!決裁決裁決裁ぃぃぃ!
ポンポンポンポン!
そして凄まじい勢いで判子を押す。
「素晴らしいです。流石お嬢様」
ああ……日常に戻ってきたと今更ながら実感するのだった……
五日間の入院を終えた私は屋敷へと帰ってきた。
すると、ハオルにゼオンやアイリスを始めとする使用人たちが出迎えてくれた。
「姉様!お帰りなさい!」
「お嬢様、お帰りなさいませ」
「お嬢様!会えなくて寂しかったですよ!面会も一回だけということでしたし!」
お嬢様には来客が多いと思われるので、使用人は各自一回の面会とします。
ゼオンが面会時に報告してくれた。
その予想通り、ひっきりなしに面会客が来てくれるものだからゼオンの決定には助けられたと思うわ。
「ほらほらアイリス。無事に帰ってきたのだから離れなさいな。苦しいわ」
「もう無茶しちゃダメなんですからね!」
「うふふ、無茶はしたつもりないのだけど?」
「お嬢様!」
「わかったからそんなに怒らないで、アイリス」
今後、同じようなことがあれば私はやはり同じことをするだろう。
私の力で助けられる人がいれば助けたい。
もちろん、自分が死ぬつもりはないけどね。
「では、一段落着いたところでお嬢様?お仕事がたっぷりと溜まっておりますので、処理をお願いいたします」
「……嘘でしょ?治癒院から帰ってきたばかりなのに?今日くらいはゆっくりと……」
はっきり言って、治癒院生活は慣れない場所での生活だった上に面会客の対応などであまりゆっくりと休めていない。
「無理ですね。決裁待ちが溜まっております。代行としてハオルシア様がこなしてくれたものもありますが、お嬢様自らがサインしなければならないものはたくさんございます」
「ほ、ほら……今はまだハオルが当主代行ということで?」
「姉様!?ボク結構頑張ったんですよ!?」
ハオルは私の言葉に泣きそうになりながら訴えてきた。
書類作業、ハオルは苦手なのよね。
それでも頑張ってくれた弟にこれ以上無理を言うのは可哀想か。
「わかったわよ。着替えたらすぐに取り掛かるから。アイリス、ワンちゃんの足跡の刺繍がされたパジャマを用意してちょうだい」
「お嬢様!昼間からパジャマはダメです!」
「普通の服だとまだ左腕が痛いの……ゆったりとした服が着たいな……」
うるうる。
私は涙を瞳に溜めて、アイリスにお願いした。
「うっ……そんなことを言われたら断れないじゃないですか……」
「アイリスは優しい娘だものね?」
「むぅぅぅ……お嬢様?本当に痛むんですか?」
なんということでしょう?
純粋で可愛らしいアイリスが私を疑ってくるなんて……
「私の言うことが信じられないなんて……アイリスはいつからそんな悪い娘になってしまったの?」
「……わかりました。お嬢様を信じます」
「いい娘ね。アイリス」
「姉様、アイリスをあまりからかわないであげてくださいね?寂しそうにしてたんですから」
「わ、わかってるわよ。ほら可愛い娘ほどからかいたくなるものでしょ?」
「ボクにはその感覚はわかりません」
おかしいわね。
年ごろの男の子はそういうものだと、聞いたことがあるのだけれど。
「……お嬢様?からかっていたのですか?」
「あら、そんなことはないわよ。少しもて遊んでいただけ」
「なお悪いじゃないですか!」
「うふふ、それじゃ着替えを手伝ってくれる?その後髪に櫛をかけてほしいわ。専属の看護師さんがやってくれたのだけど、やっぱりアイリスが一番だから」
「そうでしょうとも!何年お嬢様のお世話をしていると思っているんですか!お任せください!」
先ほどまでプンプンと怒っていたアイリスが、ふふんと小さな胸を張り愛らしい。
「はい、お願いします」
こうして、アイリスとともに自室へと戻ると、すごく懐かしく感じるものがあった。
それにちり一つ落ちていなく、ベッドもピシッと整えられている。
「綺麗にしてくれていたのね」
「当然です!毎日お掃除させていただきました!」
「偉い偉い」
私がナデナデと頭を撫でると、
「えへへぇ♪」
アイリスはすっかりとご機嫌になる。
そんなアイリスに着替えを手伝ってもらった後に、髪を梳いてもらった。
うーん……とっても幸せね……
コンコン。
「お嬢様?ずいぶんと支度に時間がかかっておられるようですが?」
そんなときに不粋な輩がやってくる。
「わかったわよ。アイリスありがとう」
「いいえ!お仕事がんばってください!」
「ええ、頑張るわ」
さて、お仕事を始めましょうか。
そうモチベーションを上げたのだけど、
「……何よこれ」
執務室に入った途端、一瞬で地の底まで下がっていった。
「書類ですが?」
「それはわかってるわよ!なによこの量は!」
机の上にはおびただしいほどの書類の束がある。
「こちらが優先度の低いものの締め切りが近いものと、こちらが優先度が高いものとなっておりますので、こちらから先に決裁していただきたく思いますが」
「優先度が低いものってハオルがやっていてくれたんじゃないの?」
「ええ、ハオルシア様は頑張ってくださいました。ですがお嬢様の処理速度と比べては可哀想です」
「そうね……小説一本読むのも時間がかかる子だものね……」
ええい!やってやるわよ!
私は椅子に座ると、即座に書類の山を読み始めた。
決裁!決裁!修正!決裁決裁決裁ぃぃぃ!
ポンポンポンポン!
そして凄まじい勢いで判子を押す。
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