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一年生
模擬戦開始です!
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いつもの教室でルナ先生の授業を受ける。
俺を含めて後衛を選択したのは8人だ。
「まずは後衛スタイルにも複数のタイプがあります。回復、防御を担当し、召喚獣を援護するタイプ。攻撃を召喚獣と一緒にするタイプ。相手の召喚獣に妨害魔法、自分の召喚獣に強化魔法で援護するタイプなど様々なことが可能なのが後衛スタイルの特徴だと言えます」
「理想は回復、攻撃、防御、補助、妨害、全てをを兼ね備えた後衛スタイルですが、そう簡単に習得できるものではありません。まずは自分の得意なタイプを習得していきましょう」
得意なのは攻撃タイプだよな。ていうか俺、ほとんど攻性魔法しか使えないしな。
回復とか防御は派手さがないからあまり勉強しなかったのを少し後悔する。
マスター守ることは大事ですよ。
今からでも身につけていきましょう。
それは分かるけどファーナが守ってくれるだろう?
必ずお守りします。
この名に誓いをたてて。
それを信じてるさ。
ありがとうございます、マスター……
ですが、ちゃんと防御魔法や回復魔法も習得しましょう。
闘いでは何が起こるか分かりませんからね。
備えあれば患いなしです。
……分かりました。
言ってることに何の反論も出来ん。
苦手なんだけど、そうも言ってられないか。
「ここまででみなさんは一通りの理解はできたと思います。ですので明日の午後からは模擬戦を行う予定です」
おおやっとか!
騒ぎたつクラス。
「ただしその前に書いていただくものがあります。遺書と保険の契約書です」
だが、先生の続く言葉により一瞬でシーンと静まり返ってしまった……
「……学園の闘技場にはダメージを軽減する防御結界を展開していますし、治癒師もいます。ですが事故は突然に起こりうるものです。それも最悪な形で。事故が起こって亡くなってしまった場合の為に、御家族や親しい人への手紙を書いていただきます」
「保険は亡くなった場合は御家族に、大怪我を負い、障害を抱えた場合はあなた方に支払われます」
一呼吸、時間を置きルナ先生が続けた。
「改めて問います。それでもあなた方の覚悟に変わりはありませんか?」
静まり返るクラス。
だが俺には迷いはない。
「変わりはありません!」
俺は声高に叫んだ。
小さい時から見てきた一生懸命闘う召喚師の必死な姿を思い出しながら。
……大好きだった召喚師の死を見たこともある。
悲しくて一杯泣いた。
それでも憧れた。
勝利し大歓声を受ける姿に、敗北しても、次は頑張れよ!と応援を受ける姿に。
そんな感動を俺も伝えていきたい。
俺の言葉に続き、クラス中に賛同の声が響く。
「分かりました。手紙と契約書を配ります。明日までに書いて持って来てください」
「そしてこの模擬戦で1位になった方は、他のスタイルの1位の方と模擬戦を行います。その結果、見事クラス一位となった場合、表彰と特別に報奨金が与えられます。頑張ってくださいね」
おおっ!
盛り上がるクラスに対して一人だけ真剣な眼差しをしたリーナがいる。
何か覚悟を決めたような表情は危なさを秘めている、そう思えて仕方なかった。
彼女にもフレアの様な理由があるんだろうな。
俺は心配になり、少しの間彼女を見つめていた。
すると、
マスターの女好き。
なんでだよ!そういう意味で見てた訳じゃねぇよ!
そうですか?それは失礼いたしました。
……なんだか生意気になってきたな、ファーナ。
まあ模擬戦頑張ろうぜ、頼りにしてるからな?
はい、マスター。
この身に代えてもお守りいたします。
少し重苦しい場面もあったが全ての授業が終了し、夕食の時間になった。
そして当たり前の様にフレアが隣に座る。
「模擬戦の話を聞いたか?」
「ああ聞いたよ」
「ならば、勝ってこい」
「簡単に言うけどリーナもいるんだぜ?」
「オーレリア様とカイなら勝てるはずだ」
「随分と評価されたもんだな?」
「私は勝つ。待っているぞ」
そのまっすぐな瞳には有無を言わさぬ力が感じられ、ふざけることを許さない。
フレアは言うだけ言うと、食事を終えて静かに立ち去っていった。
なんていうプレッシャーだよ……
きっと小さなころから訓練しているんだろうな。
「たいへんだね。カイも」
一部始終を見ていたルースが励ましてくれる。
「ああ、本当だよ……ルースの方はどうなんだ?」
「サリアさんで決まりじゃないかな?僕も頑張るつもりだけどちょっとね……」
「ルースは万能だけどやっぱり召喚獣の差は大きいか?」
「……そうだね。僕は魔法と剣の両方で闘うつもりだけど近づく前に弓で射たれちゃいそうだし、魔法でセツナを捉えられるかって考えてみたら無理っぽいんだよね……」
確かに召喚獣を呼んで走っていたセツナは速かった。
俺ならどう闘うんだろう?
いや、今は自分のことを優先するべきだ。
「まあお互いに頑張ろうぜ?頑張って攻略方を考えないとな」
「そうだね。やる前から負けるのは嫌だからね」
そう言うと静かに闘志を燃やしているようだ。
かわいらしい見た目から想像できないほど負けず嫌いなんだよな。
そうして食事を終えて、自室に戻る。
俺はノートを開き、後衛型を選択した相手の召喚獣を調べる。
「やっぱりキリンだよなぁ?」
他の召喚獣にはいい勝負ができるとは思うが、リーナだけは特別だ。
キリンはスピードがあり、突進力の破壊力は相当なものだと容易に想像できる。
空を飛んでの攻撃、離れたら位置からの強力な雷。
ダメージを与えてもリーナによって回復されてしまう。
何度考えても完璧な布陣に思える。
何かいい戦略ないか?
相手の召喚師狙いでいいのでは?
そうかもしれないけどなんとなく気がひけるんだよ。
それは相手が女の子だからですか?
……まあ、そうだな。
覚悟を決めている相手に対して失礼ですし、それを負けた時の言い訳にするつもりですか?
言い訳にはしない。でも、失礼か……
確かにその通りだ。
彼女も覚悟を決めて闘うのだから。
ならば真剣に最適な作戦を練るべきです。
これはまぎれもない闘いなのですから。
またしても反論できなかった。
どっちがマスターか分かったもんじゃないな。
恐らくリーナは命令型で指揮に集中する可能性が高い、その連携の隙を狙う。
キリンの相手任せられるか?
任せてください。
引き付けておきますよ。
マスターに直接攻撃がいった場合はイージスの盾で守ります。
おっ、新しいスキルか?どんなスキルなんだ?
そうですね。
そのまま盾ですよ?
位置はある程度ならどこにでも出現可能で大きさも自由です。
ただ大きければ魔力の消費は激しいので必要最小限がいいと思います。
なるほど、使い勝手がよさそうなスキルだな。
よし、作戦は決まった。
……勝てるよな?
ある程度の勝算はできた。
だが、改めて闘うことへの恐怖が俺を不安へと導いていく。
マスターの盾となり、初陣に勝利を捧げましょう。
俺は相棒の頼もしさに心が救われる思いだった。
ガラガラッ。
私は授業が終わると、職員室へと戻りました。
そこではガレフ先生とサフィール先生が今年の生徒の話をしており、私にも話しかけてきます。
「おお、ルナ先生!今年の生徒のレベルは高いな!」
ガレフ先生が豪快に話かけてきました。
少し声の大きさを落としてほしいとは思いますが、職業病なので仕方ないでしょう。
前衛の指導中には大きな声が必要ですからね。
「確かにそうですね。Sランクが三体なんて過去にありませんから」
「ふふふ……私もそう思いますよ」
サフィール先生も会話に参加してきました。
少しナルシストな一面が気に障るときがありますが、優秀な先生です。
「二人は模擬戦のトップは誰になると思ってる!?俺はフレアだと思うぜ!攻撃力の高さは群を抜いているからな!」
「いえ、やはり私の担当のサリアさんで間違いないでしょう。あの速さには攻撃が当たらないと思います」
「ルナ!お前さんはやっぱりリーナって子か!?」
確かに順当に考えればそうでしょう。
召喚獣のランクを第一に考えるのならば。
しかし私の感性での答えは違いました。
「カイ君だと思います」
「「カイ?」」
二人が、不思議そうに聞いてくる。
「誰だっけかな?」
「覚えがないですね」
担当でもない生徒ですからね。
覚えている方が不思議でしょう。
「リビングメイルと契約した生徒です」
「はぁ!?Dランクじゃねえか!」
「流石にそれは無理なのでは?」
「では、賭けますか?」
にこりと笑う。
私には確かな自信があります。
当然絶対とは言えませんが、分の悪い賭けではないでしょう。
「おっ!いいねぇ!」
「勝負となると血が騒ぐのは召喚師の性質ですかね?」
二人も面白そうに笑う。
「何を賭けるんだ?」
「ワイン、秘蔵の一本でどうですか?」
「のった!」
「のりましょう」
「さて、軽い話はここまでです。明日の準備は万全ですか?」
「おうよ!治癒師の手配はバッチリだぜ!」
「こちらもダメージを抑える結界を三重に掛けておきました。まず大怪我をする恐れは無いでしょうが、何が起こるか分かりませんからね。出来うる限りのことはしますよ」
「よろしくお願いします」
準備は整っています。
しかし何事にも絶対はありえません。
無事に生徒達が模擬戦を終えるように……私はそう願うしかありませんでした。
朝になり、眠い目を擦りながら着替えを済ませる。
そして夜遅くまで悩んで書いた遺書と契約書を持ち、登校した。
これらのお世話になりたくないな。
そう思いながら教室に着くと、いつも通りルースに声をかける。
「おはよう」
「おはよう、カイ」
「あれ……書いてきたか?」
「書いたけど複雑だよね……」
「全くだ……」
教室内が少し重い空気の中、ルナ先生が入ってきた。
「おはようございます。昨日言ったものは書いて来ましたか?」
「「「「はいっ!」」」」
「では回収しますので、持ってきてください」
皆が持っていく中、サリアは動かなかった。
「サリアさんは、忘れたのですか?」
「必要ない……私には誰もいない」
悲しみもなく、淡々とした様子で話す彼女を見ていると胸が痛い。
ここまで一人で生きてきたのだろうか?
それはとても寂しいものだ。
そうして少しづつ、感情を失っていったのだろう。
これ以上傷つかない為に。
「そうですか……わかりました」
サリア以外が提出を終えると、
「では、学園の隣にある闘技場へ向かいます」
クラス全員で移動を始める。
着いた場所は円形の闘技場だ。
観客席もあり、小さい頃から通っていた闘技場とほとんど一緒だった。
「すごいな!本物だぜ!?」
「そうだね!闘技場の中心ってこんな風に周りが見えるんだ!」
「はい、皆さん。落ち着いてください」
興奮する生徒達を落ち着かせるルナ先生。
「では、まず前衛スタイルの生徒から始めます。各自自分にあった装備を身に付けて来て下さい。大体の装備は揃っています。その他の生徒は観客席で観戦をしてください」
「「「はいっ!」」」
俺たちは中心部から観客席へと移動すると、見やすい位置に席を取りルースと観戦をする。
審判はガレフ先生だった。
やっぱり闘技場は楽しいな!
クラスメイトたちは迫力ある闘いを繰り広げる。
その一生懸命に闘っている姿は俺が憧れた姿そのものだった。
そして何戦かが終わりを迎えると、フレアの順番がきた。
二人とも装備は白銀のライトメイルに片手剣だ。
装備による差はない。
お互いが相手と一定の距離を取り、構える。
「始め!」
合図と同時に二人が召喚する!
フレアはもちろんフェニックス。
対戦相手は風の精霊シルフィだった。
シルフィは補助的な召喚獣で攻撃には向かない。
だがランクはBランクで好んで使用する召喚士も多い。
その理由は召喚師自身に宿すことで、スピードの強化、風による鎧を纏わせることである程度の物理攻撃や攻性魔法を防ぐことが可能になる。その攻守万能さが前衛タイプによく好まれている。
相手の男子は高速で剣を繰り出すが、全てを弾かれる。
フレアはフェニックスを動かしてすらいない。
そうしているうちに相手の剣は弾き飛ばされ、フレアが剣を突き付けるとギブアップにより決着がついた。
「……なんちゅう強さだよ?」
「ホントだね……」
見事ですね。
ファーナから見てどうだった?
あの年であそこまでのレベルに至るのはすごいですね。
勝てそう?
可能ではあります。マスター次第ですが。
そうですか……
最近、厳しくないか?俺の召喚獣。
その後も圧倒的強さで勝ち抜いていくフレア。
しかもほぼ剣だけでだ。
手の内を明かす必要がないと言わんばかりにフェニックスは動かない。
フェニックスはなんだか少し退屈そうに羽ばたいていた。
「試合終了!」
最後の闘いもフレアが勝利を飾り、ガレフ先生が終了の言葉を告げた。
「お疲れ様でした。大きな怪我もなく嬉しく思います。次の中衛スタイルの生徒による模擬戦は午後からになります。またこの闘技場に集まってください」
「「「はいっ!」」」
「お疲れさま」
「すごかったよ!フレアさん!」
「ああ、ありがとう」
闘いを終えたフレアと合流し、食堂に向かう。
「圧倒的だったな」
「まあ彼らも召喚獣に慣れていないからな。剣の勝負なら負けないさ」
「いや、ファーナも誉めてたぞ」
カシャン!
急にフォークを落とすフレア。
「オーレリア様が私を……?」
「ああ」
みるみると赤くなり、
「ふふっ、嬉しいな……」
女の子らしく呟いた。
……やっぱりかわいいよな。
マスターは誰でもいいんですか?
いやいや可愛かったら可愛いって言うだろう?
そうですか。
なんかトゲがあるな?
ただ肯定しただけですよ?
……よし、話を変えよう。
「次はルースの番だな」
「自信ないよ……結局サリアさんに勝てる策は思いつかなかったし……」
「危ないと思ったらギブアップしろよ?ただの模擬戦なんだからな」
「……うん、そうだね、今の僕の力でやれるだけやってみるよ。応援してね?カイ」
そう言うと可愛く微笑むルース。
えへへ……いくらでもするよぉ……
やはりマスターは……
違うってぇの!
食事が終わると、三人で闘技場へと向かう。
「貴方達の闘いぶりを見させてもらおう」
席に着くとすぐにプレッシャーをかけてくるフレア。
もう少し抑えてくれない?怖いんですが?とは口が裂けても言えない。
「えっと……僕もなの?」
ルースはそのプレッシャーに少しひるんだ様子で応じる。
「ああ、外から観る闘いは参考になる。対策も考えなければならないしな」
どこまでも闘うことで頭がいっぱいなんだな。
そして更なる高みを目指して飛躍しようとしている。
本当強敵だよな。
「そろそろ準備してくるよ」
「頑張れよ!」
「う、うん!」
少し緊張した様子だが、笑いながら戦場へと向かっていった。
俺を含めて後衛を選択したのは8人だ。
「まずは後衛スタイルにも複数のタイプがあります。回復、防御を担当し、召喚獣を援護するタイプ。攻撃を召喚獣と一緒にするタイプ。相手の召喚獣に妨害魔法、自分の召喚獣に強化魔法で援護するタイプなど様々なことが可能なのが後衛スタイルの特徴だと言えます」
「理想は回復、攻撃、防御、補助、妨害、全てをを兼ね備えた後衛スタイルですが、そう簡単に習得できるものではありません。まずは自分の得意なタイプを習得していきましょう」
得意なのは攻撃タイプだよな。ていうか俺、ほとんど攻性魔法しか使えないしな。
回復とか防御は派手さがないからあまり勉強しなかったのを少し後悔する。
マスター守ることは大事ですよ。
今からでも身につけていきましょう。
それは分かるけどファーナが守ってくれるだろう?
必ずお守りします。
この名に誓いをたてて。
それを信じてるさ。
ありがとうございます、マスター……
ですが、ちゃんと防御魔法や回復魔法も習得しましょう。
闘いでは何が起こるか分かりませんからね。
備えあれば患いなしです。
……分かりました。
言ってることに何の反論も出来ん。
苦手なんだけど、そうも言ってられないか。
「ここまででみなさんは一通りの理解はできたと思います。ですので明日の午後からは模擬戦を行う予定です」
おおやっとか!
騒ぎたつクラス。
「ただしその前に書いていただくものがあります。遺書と保険の契約書です」
だが、先生の続く言葉により一瞬でシーンと静まり返ってしまった……
「……学園の闘技場にはダメージを軽減する防御結界を展開していますし、治癒師もいます。ですが事故は突然に起こりうるものです。それも最悪な形で。事故が起こって亡くなってしまった場合の為に、御家族や親しい人への手紙を書いていただきます」
「保険は亡くなった場合は御家族に、大怪我を負い、障害を抱えた場合はあなた方に支払われます」
一呼吸、時間を置きルナ先生が続けた。
「改めて問います。それでもあなた方の覚悟に変わりはありませんか?」
静まり返るクラス。
だが俺には迷いはない。
「変わりはありません!」
俺は声高に叫んだ。
小さい時から見てきた一生懸命闘う召喚師の必死な姿を思い出しながら。
……大好きだった召喚師の死を見たこともある。
悲しくて一杯泣いた。
それでも憧れた。
勝利し大歓声を受ける姿に、敗北しても、次は頑張れよ!と応援を受ける姿に。
そんな感動を俺も伝えていきたい。
俺の言葉に続き、クラス中に賛同の声が響く。
「分かりました。手紙と契約書を配ります。明日までに書いて持って来てください」
「そしてこの模擬戦で1位になった方は、他のスタイルの1位の方と模擬戦を行います。その結果、見事クラス一位となった場合、表彰と特別に報奨金が与えられます。頑張ってくださいね」
おおっ!
盛り上がるクラスに対して一人だけ真剣な眼差しをしたリーナがいる。
何か覚悟を決めたような表情は危なさを秘めている、そう思えて仕方なかった。
彼女にもフレアの様な理由があるんだろうな。
俺は心配になり、少しの間彼女を見つめていた。
すると、
マスターの女好き。
なんでだよ!そういう意味で見てた訳じゃねぇよ!
そうですか?それは失礼いたしました。
……なんだか生意気になってきたな、ファーナ。
まあ模擬戦頑張ろうぜ、頼りにしてるからな?
はい、マスター。
この身に代えてもお守りいたします。
少し重苦しい場面もあったが全ての授業が終了し、夕食の時間になった。
そして当たり前の様にフレアが隣に座る。
「模擬戦の話を聞いたか?」
「ああ聞いたよ」
「ならば、勝ってこい」
「簡単に言うけどリーナもいるんだぜ?」
「オーレリア様とカイなら勝てるはずだ」
「随分と評価されたもんだな?」
「私は勝つ。待っているぞ」
そのまっすぐな瞳には有無を言わさぬ力が感じられ、ふざけることを許さない。
フレアは言うだけ言うと、食事を終えて静かに立ち去っていった。
なんていうプレッシャーだよ……
きっと小さなころから訓練しているんだろうな。
「たいへんだね。カイも」
一部始終を見ていたルースが励ましてくれる。
「ああ、本当だよ……ルースの方はどうなんだ?」
「サリアさんで決まりじゃないかな?僕も頑張るつもりだけどちょっとね……」
「ルースは万能だけどやっぱり召喚獣の差は大きいか?」
「……そうだね。僕は魔法と剣の両方で闘うつもりだけど近づく前に弓で射たれちゃいそうだし、魔法でセツナを捉えられるかって考えてみたら無理っぽいんだよね……」
確かに召喚獣を呼んで走っていたセツナは速かった。
俺ならどう闘うんだろう?
いや、今は自分のことを優先するべきだ。
「まあお互いに頑張ろうぜ?頑張って攻略方を考えないとな」
「そうだね。やる前から負けるのは嫌だからね」
そう言うと静かに闘志を燃やしているようだ。
かわいらしい見た目から想像できないほど負けず嫌いなんだよな。
そうして食事を終えて、自室に戻る。
俺はノートを開き、後衛型を選択した相手の召喚獣を調べる。
「やっぱりキリンだよなぁ?」
他の召喚獣にはいい勝負ができるとは思うが、リーナだけは特別だ。
キリンはスピードがあり、突進力の破壊力は相当なものだと容易に想像できる。
空を飛んでの攻撃、離れたら位置からの強力な雷。
ダメージを与えてもリーナによって回復されてしまう。
何度考えても完璧な布陣に思える。
何かいい戦略ないか?
相手の召喚師狙いでいいのでは?
そうかもしれないけどなんとなく気がひけるんだよ。
それは相手が女の子だからですか?
……まあ、そうだな。
覚悟を決めている相手に対して失礼ですし、それを負けた時の言い訳にするつもりですか?
言い訳にはしない。でも、失礼か……
確かにその通りだ。
彼女も覚悟を決めて闘うのだから。
ならば真剣に最適な作戦を練るべきです。
これはまぎれもない闘いなのですから。
またしても反論できなかった。
どっちがマスターか分かったもんじゃないな。
恐らくリーナは命令型で指揮に集中する可能性が高い、その連携の隙を狙う。
キリンの相手任せられるか?
任せてください。
引き付けておきますよ。
マスターに直接攻撃がいった場合はイージスの盾で守ります。
おっ、新しいスキルか?どんなスキルなんだ?
そうですね。
そのまま盾ですよ?
位置はある程度ならどこにでも出現可能で大きさも自由です。
ただ大きければ魔力の消費は激しいので必要最小限がいいと思います。
なるほど、使い勝手がよさそうなスキルだな。
よし、作戦は決まった。
……勝てるよな?
ある程度の勝算はできた。
だが、改めて闘うことへの恐怖が俺を不安へと導いていく。
マスターの盾となり、初陣に勝利を捧げましょう。
俺は相棒の頼もしさに心が救われる思いだった。
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「おお、ルナ先生!今年の生徒のレベルは高いな!」
ガレフ先生が豪快に話かけてきました。
少し声の大きさを落としてほしいとは思いますが、職業病なので仕方ないでしょう。
前衛の指導中には大きな声が必要ですからね。
「確かにそうですね。Sランクが三体なんて過去にありませんから」
「ふふふ……私もそう思いますよ」
サフィール先生も会話に参加してきました。
少しナルシストな一面が気に障るときがありますが、優秀な先生です。
「二人は模擬戦のトップは誰になると思ってる!?俺はフレアだと思うぜ!攻撃力の高さは群を抜いているからな!」
「いえ、やはり私の担当のサリアさんで間違いないでしょう。あの速さには攻撃が当たらないと思います」
「ルナ!お前さんはやっぱりリーナって子か!?」
確かに順当に考えればそうでしょう。
召喚獣のランクを第一に考えるのならば。
しかし私の感性での答えは違いました。
「カイ君だと思います」
「「カイ?」」
二人が、不思議そうに聞いてくる。
「誰だっけかな?」
「覚えがないですね」
担当でもない生徒ですからね。
覚えている方が不思議でしょう。
「リビングメイルと契約した生徒です」
「はぁ!?Dランクじゃねえか!」
「流石にそれは無理なのでは?」
「では、賭けますか?」
にこりと笑う。
私には確かな自信があります。
当然絶対とは言えませんが、分の悪い賭けではないでしょう。
「おっ!いいねぇ!」
「勝負となると血が騒ぐのは召喚師の性質ですかね?」
二人も面白そうに笑う。
「何を賭けるんだ?」
「ワイン、秘蔵の一本でどうですか?」
「のった!」
「のりましょう」
「さて、軽い話はここまでです。明日の準備は万全ですか?」
「おうよ!治癒師の手配はバッチリだぜ!」
「こちらもダメージを抑える結界を三重に掛けておきました。まず大怪我をする恐れは無いでしょうが、何が起こるか分かりませんからね。出来うる限りのことはしますよ」
「よろしくお願いします」
準備は整っています。
しかし何事にも絶対はありえません。
無事に生徒達が模擬戦を終えるように……私はそう願うしかありませんでした。
朝になり、眠い目を擦りながら着替えを済ませる。
そして夜遅くまで悩んで書いた遺書と契約書を持ち、登校した。
これらのお世話になりたくないな。
そう思いながら教室に着くと、いつも通りルースに声をかける。
「おはよう」
「おはよう、カイ」
「あれ……書いてきたか?」
「書いたけど複雑だよね……」
「全くだ……」
教室内が少し重い空気の中、ルナ先生が入ってきた。
「おはようございます。昨日言ったものは書いて来ましたか?」
「「「「はいっ!」」」」
「では回収しますので、持ってきてください」
皆が持っていく中、サリアは動かなかった。
「サリアさんは、忘れたのですか?」
「必要ない……私には誰もいない」
悲しみもなく、淡々とした様子で話す彼女を見ていると胸が痛い。
ここまで一人で生きてきたのだろうか?
それはとても寂しいものだ。
そうして少しづつ、感情を失っていったのだろう。
これ以上傷つかない為に。
「そうですか……わかりました」
サリア以外が提出を終えると、
「では、学園の隣にある闘技場へ向かいます」
クラス全員で移動を始める。
着いた場所は円形の闘技場だ。
観客席もあり、小さい頃から通っていた闘技場とほとんど一緒だった。
「すごいな!本物だぜ!?」
「そうだね!闘技場の中心ってこんな風に周りが見えるんだ!」
「はい、皆さん。落ち着いてください」
興奮する生徒達を落ち着かせるルナ先生。
「では、まず前衛スタイルの生徒から始めます。各自自分にあった装備を身に付けて来て下さい。大体の装備は揃っています。その他の生徒は観客席で観戦をしてください」
「「「はいっ!」」」
俺たちは中心部から観客席へと移動すると、見やすい位置に席を取りルースと観戦をする。
審判はガレフ先生だった。
やっぱり闘技場は楽しいな!
クラスメイトたちは迫力ある闘いを繰り広げる。
その一生懸命に闘っている姿は俺が憧れた姿そのものだった。
そして何戦かが終わりを迎えると、フレアの順番がきた。
二人とも装備は白銀のライトメイルに片手剣だ。
装備による差はない。
お互いが相手と一定の距離を取り、構える。
「始め!」
合図と同時に二人が召喚する!
フレアはもちろんフェニックス。
対戦相手は風の精霊シルフィだった。
シルフィは補助的な召喚獣で攻撃には向かない。
だがランクはBランクで好んで使用する召喚士も多い。
その理由は召喚師自身に宿すことで、スピードの強化、風による鎧を纏わせることである程度の物理攻撃や攻性魔法を防ぐことが可能になる。その攻守万能さが前衛タイプによく好まれている。
相手の男子は高速で剣を繰り出すが、全てを弾かれる。
フレアはフェニックスを動かしてすらいない。
そうしているうちに相手の剣は弾き飛ばされ、フレアが剣を突き付けるとギブアップにより決着がついた。
「……なんちゅう強さだよ?」
「ホントだね……」
見事ですね。
ファーナから見てどうだった?
あの年であそこまでのレベルに至るのはすごいですね。
勝てそう?
可能ではあります。マスター次第ですが。
そうですか……
最近、厳しくないか?俺の召喚獣。
その後も圧倒的強さで勝ち抜いていくフレア。
しかもほぼ剣だけでだ。
手の内を明かす必要がないと言わんばかりにフェニックスは動かない。
フェニックスはなんだか少し退屈そうに羽ばたいていた。
「試合終了!」
最後の闘いもフレアが勝利を飾り、ガレフ先生が終了の言葉を告げた。
「お疲れ様でした。大きな怪我もなく嬉しく思います。次の中衛スタイルの生徒による模擬戦は午後からになります。またこの闘技場に集まってください」
「「「はいっ!」」」
「お疲れさま」
「すごかったよ!フレアさん!」
「ああ、ありがとう」
闘いを終えたフレアと合流し、食堂に向かう。
「圧倒的だったな」
「まあ彼らも召喚獣に慣れていないからな。剣の勝負なら負けないさ」
「いや、ファーナも誉めてたぞ」
カシャン!
急にフォークを落とすフレア。
「オーレリア様が私を……?」
「ああ」
みるみると赤くなり、
「ふふっ、嬉しいな……」
女の子らしく呟いた。
……やっぱりかわいいよな。
マスターは誰でもいいんですか?
いやいや可愛かったら可愛いって言うだろう?
そうですか。
なんかトゲがあるな?
ただ肯定しただけですよ?
……よし、話を変えよう。
「次はルースの番だな」
「自信ないよ……結局サリアさんに勝てる策は思いつかなかったし……」
「危ないと思ったらギブアップしろよ?ただの模擬戦なんだからな」
「……うん、そうだね、今の僕の力でやれるだけやってみるよ。応援してね?カイ」
そう言うと可愛く微笑むルース。
えへへ……いくらでもするよぉ……
やはりマスターは……
違うってぇの!
食事が終わると、三人で闘技場へと向かう。
「貴方達の闘いぶりを見させてもらおう」
席に着くとすぐにプレッシャーをかけてくるフレア。
もう少し抑えてくれない?怖いんですが?とは口が裂けても言えない。
「えっと……僕もなの?」
ルースはそのプレッシャーに少しひるんだ様子で応じる。
「ああ、外から観る闘いは参考になる。対策も考えなければならないしな」
どこまでも闘うことで頭がいっぱいなんだな。
そして更なる高みを目指して飛躍しようとしている。
本当強敵だよな。
「そろそろ準備してくるよ」
「頑張れよ!」
「う、うん!」
少し緊張した様子だが、笑いながら戦場へと向かっていった。
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そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
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