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第一部
ベールルーベ王国飛行騎士団
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ぎゅっと抱きしめられ――そうでもしないと体が浮いただろう――、着陸を果たした飛行機からサリヤは降ろされた。正確には、サリヤを助けた男が彼女を抱えたまま鞍から飛び降りたのだが。
「後で詳しく教えるが、飛行機に乗るときは安全ベルトを締めるんだ。ベアトリクスの鞍にもついていると思うんだが、まだ確認していなくてな」
『ベアトリクスは試験飛行しかしていないかもしれませんね。フードを閉じないで人を乗せるなど、ありえません』
カーティスは体をゆすってため息をついた。
「整備も訓練もせずに飛ぶとはなぁ。ははっ、さすが飛行機の女王」
男は快活に笑う。
サリヤは抱き上げられたまま話が進んでいることに焦り、「すまないが」と声を上げた。
「降ろしてくれないだろうか」
「却下だな。靴がない」
「それでもかまわない。人に抱えられているなど、落ち着かないのだ」
サリヤが言うと男は首を傾げた。
「サリヤと言ったか」
「なぜその名前を」
「ベアトリクスから聞いた。あの洞窟の遺跡からここまで連れてきたのは俺だ」
「ああ、そうなのか……。助けてくれて感謝する。ありがとう」
「いや……」
男は再び首を傾げ、サリヤの髪をつまんだ。
「見事にざんばらだが、切ったのか?」
「え。あ……まあ」
「うーん、サリヤはメデスディスメ王国の出身か? 川に落ちたそうだな。もしかして逃げてきたのか?」
「……逃げて、きた?」
「隣国で政変が起こったらしいんだが、何か知っているか?」
「政変? は? ……待ってくれ」
隣国?
メデスディスメ王国が隣国?
サリヤが暮らしていた離宮はメデスディスメ王国の辺境にあった。旧フスチャットスフ王国の領土だった場所だ。サリヤが飛び込んだ川は国境線に当たる。対岸はベールルーベ王国。
落下したときに見た景色は見慣れない街だった。遥かにあった城壁も初見だ。
サリヤを抱える男の服装は装飾の多い騎士服だが、メデスディスメ王国の騎士団とは違う。
「ここは……ベールルーベ王国なのか?」
「そうだ」
呆然としたサリヤのつぶやきに力強い返事。
「ベールルーベ王国、飛行騎士団。俺は団長のミクラだ」
一瞬頭が真っ白になったが、今だ彼の腕に抱えられていることを思い出し、サリヤは身をよじった。
「なおさら、抱えられているわけにはいきません」
記憶が正しいなら、ベールルーベ王国の飛行騎士団長は王弟だ。
サリヤは教師から習っていたベールルーベ王国の情勢を思い出す。
ベールルーベ王国の王弟ミクラは二十八歳。年の離れた国王とは異母兄弟になる。公爵位を与えられているが、王の嫡子に次ぐ王位継承権を持っていたはずだ。
サリヤは三年前の十三歳から母の静養につきそう名目で離宮暮らしだった。それ以前の王宮時代は子どもだったから外交を行うこともなく、十二人いる王子王女の一番年下で母も平民というサリヤ――もといカッラ王子は式典などでも王族席の隅の隅だった。ミクラがメデスディスメ王国の王宮に来たことがあったとしても、カッラ王子の顔は知らないだろう。旧フスチャットスフ王国出身の母に似たサリヤは、父王や他の王女王子ともあまり似ていない。気づかれないと思うが、サリヤは微妙に顔を俯けた。
「降ろしていただけますか?」
「いや、却下だな」
降りる降りないの押し問答がまた始まりそうになったときに、風が起こり、赤と白のフレドリックが降りてきた。
フレドリックは埃を巻き上げて広場を走りながら速度を落とし、ぐるりと回ってカーティスの隣に止まった。
続いて降りてきたベアトリクスは、鳥が舞い降りるように静かに着地してフレドリックの横に並ぶ。
カーティスも着陸してから止まるまでカーティスのように走っていたが、ベアトリクスはそれをしなかった。
「ここは滑走路と言って、飛行機が飛び立つときや降りるときに走る道なんだ」
ミクラはサリヤにそう説明してから、傍らのカーティスを見上げる。
「エフ種は助走も要らないのか?」
『そのようですね。おそらく魔力を使っているのだと思います』
「サリヤの負担が大きくなる、か。平時は助走させた方がいいだろうな」
サリヤは彼らが話しているすきに降りようとしたけれど、腕ごと抑えられて無理だった。
『サリヤ! ごめんなさい! 怪我はない? 大丈夫?』
ベアトリクスの大声が響く。
「私は大丈夫だ」
『わぁん、ごめんなさい!』
今度は泣き声だ。白い体ががたがたと震えている。
「私をベアトリクスの元に降ろしていただけますか?」
さすがに今度はミクラも希望通りにしてくれた。
ベアトリクスの鼻先を撫で、サリヤは彼女をなだめる。
「アラーイ!」
ミクラが声を張ると、フレドリックから降りてきたアラーイがびしっと姿勢を正した。
アラーイはサリヤよりいくつか年上の、十代後半くらい。短く刈ったこげ茶の髪の小柄な青年だった。
「私闘は禁止だと知っているだろう? 簡単に煽られるな。短気な性格を直せ」
「でも、フレドリックを馬鹿にされて」
「それは怒っていいが、状況を見極めろ。怒り方を間違うな。よく考えてから動け」
ミクラはアラーイを見据えると、
「罰として一週間の飛行禁止だ」
「一週間も!」
「なんだ? 文句があるのか」
「いえ、ありません」
「今日この後は、フレドリックを厩舎に入れてから滑走路の草取りだ」
行け、と命令され、アラーイはフレドリックに乗り込んで去っていった。
二人のやりとりを横目に、サリヤはずっとベアトリクスを撫でていた。大丈夫と繰り返すうちに、泣き声は落ち着いてきていた。
そんなベアトリクスの前にアラーイを見送ったミクラがやってきた。
「ベアトリクス、わかっただろう」
『なによ』
「経験も大事だってことだ」
『……わかったわよ』
ベアトリクスの鼻先を軽く叩いて、ミクラは、
「まずベアトリクスは整備だ。鞍も旧時代のままだろう。サリヤが安全に乗れるようにしないとな」
『そうね。サリヤのためだもの、整備させてあげるわ』
ベアトリクスの言い方にミクラは笑い、今度はサリヤに顔を向けた。
「サリヤはまずは体調の確認。それから着替えだな」
「あ……」
サリヤは、いかにも病衣といった麻の簡素な貫頭衣のままの自分を見下ろす。
自分を着替えさせたのは誰だ。
離宮では胸に布を巻いた上で、腹と肩まわりの薄さを隠すために綿の入った下着をつけていた。あれを見たらサリヤが男装していたのは明らかだ。
思わず一歩下がったサリヤに、ミクラは微笑んだ。
「飛行騎士団は女性団員も多いから安心してくれ」
「…………」
「着替えたら話がある」
ミクラはサリヤの背後に向かって手を振る。
「マーナベーナ! 案内を頼む」
振り返ると赤い髪を一つに束ねた二十代半ばの女性騎士がやってくるところだった。
「後で詳しく教えるが、飛行機に乗るときは安全ベルトを締めるんだ。ベアトリクスの鞍にもついていると思うんだが、まだ確認していなくてな」
『ベアトリクスは試験飛行しかしていないかもしれませんね。フードを閉じないで人を乗せるなど、ありえません』
カーティスは体をゆすってため息をついた。
「整備も訓練もせずに飛ぶとはなぁ。ははっ、さすが飛行機の女王」
男は快活に笑う。
サリヤは抱き上げられたまま話が進んでいることに焦り、「すまないが」と声を上げた。
「降ろしてくれないだろうか」
「却下だな。靴がない」
「それでもかまわない。人に抱えられているなど、落ち着かないのだ」
サリヤが言うと男は首を傾げた。
「サリヤと言ったか」
「なぜその名前を」
「ベアトリクスから聞いた。あの洞窟の遺跡からここまで連れてきたのは俺だ」
「ああ、そうなのか……。助けてくれて感謝する。ありがとう」
「いや……」
男は再び首を傾げ、サリヤの髪をつまんだ。
「見事にざんばらだが、切ったのか?」
「え。あ……まあ」
「うーん、サリヤはメデスディスメ王国の出身か? 川に落ちたそうだな。もしかして逃げてきたのか?」
「……逃げて、きた?」
「隣国で政変が起こったらしいんだが、何か知っているか?」
「政変? は? ……待ってくれ」
隣国?
メデスディスメ王国が隣国?
サリヤが暮らしていた離宮はメデスディスメ王国の辺境にあった。旧フスチャットスフ王国の領土だった場所だ。サリヤが飛び込んだ川は国境線に当たる。対岸はベールルーベ王国。
落下したときに見た景色は見慣れない街だった。遥かにあった城壁も初見だ。
サリヤを抱える男の服装は装飾の多い騎士服だが、メデスディスメ王国の騎士団とは違う。
「ここは……ベールルーベ王国なのか?」
「そうだ」
呆然としたサリヤのつぶやきに力強い返事。
「ベールルーベ王国、飛行騎士団。俺は団長のミクラだ」
一瞬頭が真っ白になったが、今だ彼の腕に抱えられていることを思い出し、サリヤは身をよじった。
「なおさら、抱えられているわけにはいきません」
記憶が正しいなら、ベールルーベ王国の飛行騎士団長は王弟だ。
サリヤは教師から習っていたベールルーベ王国の情勢を思い出す。
ベールルーベ王国の王弟ミクラは二十八歳。年の離れた国王とは異母兄弟になる。公爵位を与えられているが、王の嫡子に次ぐ王位継承権を持っていたはずだ。
サリヤは三年前の十三歳から母の静養につきそう名目で離宮暮らしだった。それ以前の王宮時代は子どもだったから外交を行うこともなく、十二人いる王子王女の一番年下で母も平民というサリヤ――もといカッラ王子は式典などでも王族席の隅の隅だった。ミクラがメデスディスメ王国の王宮に来たことがあったとしても、カッラ王子の顔は知らないだろう。旧フスチャットスフ王国出身の母に似たサリヤは、父王や他の王女王子ともあまり似ていない。気づかれないと思うが、サリヤは微妙に顔を俯けた。
「降ろしていただけますか?」
「いや、却下だな」
降りる降りないの押し問答がまた始まりそうになったときに、風が起こり、赤と白のフレドリックが降りてきた。
フレドリックは埃を巻き上げて広場を走りながら速度を落とし、ぐるりと回ってカーティスの隣に止まった。
続いて降りてきたベアトリクスは、鳥が舞い降りるように静かに着地してフレドリックの横に並ぶ。
カーティスも着陸してから止まるまでカーティスのように走っていたが、ベアトリクスはそれをしなかった。
「ここは滑走路と言って、飛行機が飛び立つときや降りるときに走る道なんだ」
ミクラはサリヤにそう説明してから、傍らのカーティスを見上げる。
「エフ種は助走も要らないのか?」
『そのようですね。おそらく魔力を使っているのだと思います』
「サリヤの負担が大きくなる、か。平時は助走させた方がいいだろうな」
サリヤは彼らが話しているすきに降りようとしたけれど、腕ごと抑えられて無理だった。
『サリヤ! ごめんなさい! 怪我はない? 大丈夫?』
ベアトリクスの大声が響く。
「私は大丈夫だ」
『わぁん、ごめんなさい!』
今度は泣き声だ。白い体ががたがたと震えている。
「私をベアトリクスの元に降ろしていただけますか?」
さすがに今度はミクラも希望通りにしてくれた。
ベアトリクスの鼻先を撫で、サリヤは彼女をなだめる。
「アラーイ!」
ミクラが声を張ると、フレドリックから降りてきたアラーイがびしっと姿勢を正した。
アラーイはサリヤよりいくつか年上の、十代後半くらい。短く刈ったこげ茶の髪の小柄な青年だった。
「私闘は禁止だと知っているだろう? 簡単に煽られるな。短気な性格を直せ」
「でも、フレドリックを馬鹿にされて」
「それは怒っていいが、状況を見極めろ。怒り方を間違うな。よく考えてから動け」
ミクラはアラーイを見据えると、
「罰として一週間の飛行禁止だ」
「一週間も!」
「なんだ? 文句があるのか」
「いえ、ありません」
「今日この後は、フレドリックを厩舎に入れてから滑走路の草取りだ」
行け、と命令され、アラーイはフレドリックに乗り込んで去っていった。
二人のやりとりを横目に、サリヤはずっとベアトリクスを撫でていた。大丈夫と繰り返すうちに、泣き声は落ち着いてきていた。
そんなベアトリクスの前にアラーイを見送ったミクラがやってきた。
「ベアトリクス、わかっただろう」
『なによ』
「経験も大事だってことだ」
『……わかったわよ』
ベアトリクスの鼻先を軽く叩いて、ミクラは、
「まずベアトリクスは整備だ。鞍も旧時代のままだろう。サリヤが安全に乗れるようにしないとな」
『そうね。サリヤのためだもの、整備させてあげるわ』
ベアトリクスの言い方にミクラは笑い、今度はサリヤに顔を向けた。
「サリヤはまずは体調の確認。それから着替えだな」
「あ……」
サリヤは、いかにも病衣といった麻の簡素な貫頭衣のままの自分を見下ろす。
自分を着替えさせたのは誰だ。
離宮では胸に布を巻いた上で、腹と肩まわりの薄さを隠すために綿の入った下着をつけていた。あれを見たらサリヤが男装していたのは明らかだ。
思わず一歩下がったサリヤに、ミクラは微笑んだ。
「飛行騎士団は女性団員も多いから安心してくれ」
「…………」
「着替えたら話がある」
ミクラはサリヤの背後に向かって手を振る。
「マーナベーナ! 案内を頼む」
振り返ると赤い髪を一つに束ねた二十代半ばの女性騎士がやってくるところだった。
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