復讐のためオークに転生した元いじめられっ子、魔王を牝犬にして飼う。【R18】

いけお

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ブレサの赤い霧(その1)

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 ある日のこと、ディザイアは復讐する相手の残り人数を確認してみた。
 これまでに復讐を終えた相手は、以下の者達である。

 1組目
 江藤 進(えとう すすむ)、紅葉院 玲奈(こうよういん れいな)

 2組目
 安藤 沙織(あんどう さおり)、佐々木 小梅(ささき こうめ)

 3組目
 桂井 達也(かつらい たつや)、山田 遊(やまだ ゆう)
 中畑 透(なかはた とおる)

 4組目
 手平 還(てひら たまき)、闇峰 武留(やみね たける)

 5組目
 稲原 聡美(いねはら さとみ)、水尾 舞(みなお まい)
 神内 透(じんない とおる)、王谷 賢(おうや けん)
 追加で伊勢谷 弘(いせや ひろし)

 6組目
 苅屋 光輝(かりや こうき)、鳳 舞依華(おおとり まいか)

 以上の計16人で、残るのは男子9人、女子12人の合計21人。
 この中に最も憎んでいる相手、櫻木 誠(さくらぎ まこと)も含まれる。
 全員が能力者だと考えると、少しも油断は出来ない。

 それに対してこちらの戦力は息子のコージや、部下のオーク達、暗殺&密偵要員のメリナ、そして沙織と小梅のみである。
 これまでは拠点の防衛のみを重視してきたが、今後は戦力の増強およびオーク達を率いることが出来る、有能な人材を確保しなければならない。

 主要メンバーを集めて今後の方針を決める話し合いを設けると、開口一番沙織からある提案が出された。



「街を1つ攻め落とし、支配しましょう」

 これには流石のディザイアや他の者達も、驚きを隠せない。
 人間の街を攻め落とすということは、国を相手に戦争を仕掛けることでもある。
 たったこれだけの戦力で、対等に戦えるとは思えなかった。

「おいおい、街を攻め落とすってことはその後は国1つを相手にすることになるぞ。
 俺達に、それだけの戦力があるとでも言うのか!?」

「ねえディザイア、あなた自分のクローンを量産しようって考え思い浮かばなかったの? 伊勢谷でさえ100機のドローンを操れたのだから、あなたならもっと多くの自分自身を指揮出来るんじゃない?」

 たしかに自分自身を増やしてしまえば、大幅な戦力増強が見込める。
 しかも自身の復讐が目的なのだから、クローンに裏切られる心配も無い。 

「それでどこの街を攻めれば良いんだ、沙織?」

 ディザイアの問いに、沙織はすぐに答える。

「……ブレサ」

 その日は朝から街全体が、深い霧につつまれていた。
 城壁の上で巡回している警備兵も、交代の時間を前に気が緩んでいる。

「ふぁ~、もうすぐ交代の時間だな。 そろそろ詰め所に戻るか?」

「そうだな。 おいマーク、詰め所に戻るぞ」

 しかし後ろを付いてきているはずの、マークからの返事がない。
 不審に思った2人が引き返すと、首をへし折られ既に息絶えたマークの死体を発見する。

「マ、マーク!?」

 慌てて呼子笛を取り出してみたものの、その笛を吹くことは出来なかった。

「おそい、お前らは大人しく先にあの世に行くがいい」

 口を塞がれ背後から腕が胸を貫く、悲鳴をあげる間もなく絶命する警備兵達。
 数刻後、城壁の上には数百体の巨大なオークが立っていた。
 街全体を包囲するように並ぶその内の1体が、外に向けて手をあげる。

 やがて数千、いや1万に近い軍勢の足音が街に近づいてきた。
 それらはすべてディザイアのクローン、沙織の提案で初手から最大戦力をこの戦いに投入したのである。

「さあ、ショータイムのはじまりだ」

 のちにブレサの赤い霧と呼ばれる虐殺劇の幕が、こうして切って落とされた。



(なんだか、外の様子がおかしいな?)

 最初に街の異変に気が付いたのは寺尾 知也(てらお ともや)、降霊術の能力を覚えており街に大量の霊が出没したことで目が覚めたのである。

「おい寺尾! これは一体どうなっているんだ!?」

 次いで寺尾の部屋に飛び込んできたのは、荒垣 渡(あらがき わたる)。
 こちらも亡霊を操る死霊術の使い手で、寺尾と同じくらいの霊感を持っていた。

「自分にも分からないよ、他の連中も起こしに行かないと!」

「……それはさせない」

 天井から音もなく何かが落ちてきた、地面につくと同時に隣にいた荒垣の首が床に落ちる……。

「ひ、ひぃっ!」

 寺尾は腰を抜かしつつも、這いつくばるようにしながら窓の方へ逃げた。

「た、たのむ、何でもする! だから命だけは

 命乞いを言い終える前に、寺尾の首が床を転がる。
 仕事の1つを終えたメリナは目を覆っている布の位置を直しながら、新しい獲物の位置を確認した。

(次は……こちらの3人にしよう)

 邪魔になりそうな男子生徒の暗殺を命じられたメリナは、再び天井裏に飛び移ると次の獲物の隙をうかがい始めたのである。

(この騒ぎ……もしかして、佐伯 一平の仕業か!?)

 外の叫び声で、さすがの櫻木 誠(さくらぎ まこと)も目を覚ました。
 毛布をめくりながら、隣で寝ている全裸の河合 今日子(かわい きょうこ)の顔を軽く叩いて起こす。

「おい、起きろ。 そのままの格好でかまわないから、僕を守れ」

「はい、かしこまりました。 勇者サクラギ」

 立ち上がる今日子の股間を、白い体液が伝う。
 街の住人を犯すのに飽きた櫻木は、クラスメートの女子を抱くようになっていた。

 今日子を連れて櫻木が部屋を出ると、同じように異変に気付いたクラスの女子達が7人ほど廊下で集まっている。

「すぐに集まり、僕を前後から守れ。 死ぬまで戦い、僕が逃げる時間を稼ぐんだ」

『わかりました、勇者サクラギ』

 他の男子生徒の姿が見えないのは気がかりだが、まずは自分の身を守る方が先決。
 女子8人を引き連れ宿の裏口から逃走を図った櫻木だったが、既に宿の周囲は完全に包囲されていた。

「いいご身分だな、櫻木。 女を侍(はべ)らせて、うつつを抜かしているとこんな風に足下をすくわれる結果を招く」

「…………佐伯!?」

 歯ぎしりしながら、自殺に追い込んだ相手の名を口にする櫻木。
 だがここ以外の場所でも、クローンによる復讐が行われていたのである……。
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