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不死の王
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半分忘れかけている方も居るかもしれないが、覚えているだろうか?
ブレサの広場で放置されたままの、櫻木 誠(さくらぎ まこと)のことを。
ディザイアがミゼッタを連れてカルミアから戻った時には、既に事切れていた。
死体は街の外に捨てられ野犬のエサとなったが、残された人骨は数日もしない内にどこかに消えている。
そしてもう1つだけ、街の中でも不思議なことが発生していた。
自殺して街の墓地に埋葬された河合 今日子(かわい きょうこ)の遺体が、何者かの手によって掘り起こされ奪われていたのである。
残っている女子生徒達にそのような真似をする者などおらず、復讐を終えていない残りの女子達の処分は一旦保留とされた。
だがこの2つの出来事は、有る人物の手によって引き起こされていたのである。
その人物の名はカルマ、欲望を叶えるのが好きなこの世界の神の1人……。
(くそっ! この世界で好き勝手に生きれると思っていたのに、なんで僕がこんな目に遭わないといけないんだ!? こんな仕打ちをする世界など、滅びてしまえばいい)
野犬に喰われている自分の死体を見ながら、櫻木の魂はこの世のすべてを呪う。
すると彼の頭の中に、知らない男の声が響いた。
『おや、佐伯 一平を自殺に追い込んでおきながら、復讐されて死んだのがそんなに不服かい?』
(当たり前だ! 奴には何の価値もない、僕の存在こそがこの世でもっとも尊いものであれば良いんだ)
『その歪みきった心、とても面白い。 ならば1度だけ、チャンスを与えてやっても良いぞ』
(チャンス?)
櫻木の問いに、男はチャンスの中身を説明する。
『お前に【不死の身体】と【眷属化】の力を与えよう、仲間を増やして復讐を果たしついでにこの世界も不死の王国としてみせよ。 そうすれば、お前の思い通りになる世界の誕生だ』
(面白い、その話乗らせてもらう)
『本当に良いのか? 眷属となった者の魂は再び死を迎えると解放されるが、お前の場合は永遠にこの世界を彷徨うこととなる。 誰1人居ない世界に取り残されることも考えられるが、それでも構わないか?』
櫻木は男に即答した。
(構うものか。 眷属にする奴らも、殺されない限り僕の命令に永久に従う。 僕の道連れにするには丁度良い)
男はその返答に呆れながら、櫻木の歪んだ願いを叶えることにする。
『わかった、お前のその望みを叶えよう。 これよりお前は不死の王だ。 原子まで分解されても再生し、決して死ぬことはない。 お前の復讐が果たされるかどうか、楽しく見させてもらうよ』
(最後にお前の名を教えてくれ)
『…………カルマ』
スケルトンとして生まれ変わった櫻木に、カルマはもう1つだけ力を与えた。
『お前にはもう1つだけ力を与える、それは【能力再生】だ。 お前が持っていた力は再生出来ないが、眷属にした者が生前持っていた力は再生させることが出来る。 上手く使いこなすといい』
こうしてカルマの気まぐれによって、不死の王サクラギは誕生する。
サクラギがまず最初に行ったのは、手駒となる死体の調達だった……。
「私の名はミザリー、魔族を統べる王よ。 カルミアの民の皆さん、悪いけどその門を開けて降伏してくださらない? 抵抗さえしなければ、あなた達の家と財産そして家族の命は保証します。 必要なのはカルミアの領主の地位と、その屋敷だけ……」
ミゼッタが連れ去られてから数日後、カルミアを魔王ミザリー率いる一軍が完全に包囲する事件が勃発する。
魔王の突然の襲来に住人は恐怖したが、彼女の要求の内容が領主の地位とその屋敷だったので、逆に拍子抜けした。
しかし次の彼女の言葉で、一部の人間は不安と恐怖を感じることとなる。
「ああ、言うのを忘れていたけど、教会に居るシスターの皆さんだけは別です。 私の御主人様に最低でも1度、その身を献げてもらいます」
魔王すら従わせることが出来る者が、この世に誕生したことへの不安。
そしてその者に、半ば強制的に貞操を献げなければならないことへの恐怖。
シスターの中には闇に紛れて街から逃げだそうとする者も居たが、行方が分からずにいたミゼッタが魔王の協力者となったことで、すぐに見つかり捕縛される。
「ミゼッタ、あなたは自分が何をしているのか分かっているの!?」
「はい、分かっております。 御主人様のために、私の役目を果たしているだけ」
「御主人様?」
「ええ。 その方は姉さん、いいえ魔王ミザリーの御主人様でもあるのですから」
カルミアの教会に在籍していたシスターは全員、後日ディザイアに力を奪われた。
力を失ったシスター達は、同時にカルミアで生きていく術まで失う。
教会が名ばかりの存在となり、その神聖な場所で元シスター達が身体を売って生活するようになるまで、そう時間はかからなかった……。
降伏の後に逃亡した領主の屋敷で、ミザリーは主であるディザイアを歓迎する。
「ディザイア様、言いつけの通り領主の屋敷を手に入れておきました」
「ご苦労、では早速この屋敷で商いを始めるとしよう」
「商い……ですか?」
不思議そうな顔をするミザリーに、ディザイアはどんな商いをするのか説明した。
「おまえやミゼッタのおかげで、様々な顔や体つきのエルフの娘を俺は創造が出来るようになった。 だからここをクローンエルフを使った高級娼館として利用し、今後の資金を稼ぐのさ」
ディザイアはエルフの娼館を作るためだけに、魔王ミザリーに城塞都市カルミアを攻略させたのである……。
ブレサの広場で放置されたままの、櫻木 誠(さくらぎ まこと)のことを。
ディザイアがミゼッタを連れてカルミアから戻った時には、既に事切れていた。
死体は街の外に捨てられ野犬のエサとなったが、残された人骨は数日もしない内にどこかに消えている。
そしてもう1つだけ、街の中でも不思議なことが発生していた。
自殺して街の墓地に埋葬された河合 今日子(かわい きょうこ)の遺体が、何者かの手によって掘り起こされ奪われていたのである。
残っている女子生徒達にそのような真似をする者などおらず、復讐を終えていない残りの女子達の処分は一旦保留とされた。
だがこの2つの出来事は、有る人物の手によって引き起こされていたのである。
その人物の名はカルマ、欲望を叶えるのが好きなこの世界の神の1人……。
(くそっ! この世界で好き勝手に生きれると思っていたのに、なんで僕がこんな目に遭わないといけないんだ!? こんな仕打ちをする世界など、滅びてしまえばいい)
野犬に喰われている自分の死体を見ながら、櫻木の魂はこの世のすべてを呪う。
すると彼の頭の中に、知らない男の声が響いた。
『おや、佐伯 一平を自殺に追い込んでおきながら、復讐されて死んだのがそんなに不服かい?』
(当たり前だ! 奴には何の価値もない、僕の存在こそがこの世でもっとも尊いものであれば良いんだ)
『その歪みきった心、とても面白い。 ならば1度だけ、チャンスを与えてやっても良いぞ』
(チャンス?)
櫻木の問いに、男はチャンスの中身を説明する。
『お前に【不死の身体】と【眷属化】の力を与えよう、仲間を増やして復讐を果たしついでにこの世界も不死の王国としてみせよ。 そうすれば、お前の思い通りになる世界の誕生だ』
(面白い、その話乗らせてもらう)
『本当に良いのか? 眷属となった者の魂は再び死を迎えると解放されるが、お前の場合は永遠にこの世界を彷徨うこととなる。 誰1人居ない世界に取り残されることも考えられるが、それでも構わないか?』
櫻木は男に即答した。
(構うものか。 眷属にする奴らも、殺されない限り僕の命令に永久に従う。 僕の道連れにするには丁度良い)
男はその返答に呆れながら、櫻木の歪んだ願いを叶えることにする。
『わかった、お前のその望みを叶えよう。 これよりお前は不死の王だ。 原子まで分解されても再生し、決して死ぬことはない。 お前の復讐が果たされるかどうか、楽しく見させてもらうよ』
(最後にお前の名を教えてくれ)
『…………カルマ』
スケルトンとして生まれ変わった櫻木に、カルマはもう1つだけ力を与えた。
『お前にはもう1つだけ力を与える、それは【能力再生】だ。 お前が持っていた力は再生出来ないが、眷属にした者が生前持っていた力は再生させることが出来る。 上手く使いこなすといい』
こうしてカルマの気まぐれによって、不死の王サクラギは誕生する。
サクラギがまず最初に行ったのは、手駒となる死体の調達だった……。
「私の名はミザリー、魔族を統べる王よ。 カルミアの民の皆さん、悪いけどその門を開けて降伏してくださらない? 抵抗さえしなければ、あなた達の家と財産そして家族の命は保証します。 必要なのはカルミアの領主の地位と、その屋敷だけ……」
ミゼッタが連れ去られてから数日後、カルミアを魔王ミザリー率いる一軍が完全に包囲する事件が勃発する。
魔王の突然の襲来に住人は恐怖したが、彼女の要求の内容が領主の地位とその屋敷だったので、逆に拍子抜けした。
しかし次の彼女の言葉で、一部の人間は不安と恐怖を感じることとなる。
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魔王すら従わせることが出来る者が、この世に誕生したことへの不安。
そしてその者に、半ば強制的に貞操を献げなければならないことへの恐怖。
シスターの中には闇に紛れて街から逃げだそうとする者も居たが、行方が分からずにいたミゼッタが魔王の協力者となったことで、すぐに見つかり捕縛される。
「ミゼッタ、あなたは自分が何をしているのか分かっているの!?」
「はい、分かっております。 御主人様のために、私の役目を果たしているだけ」
「御主人様?」
「ええ。 その方は姉さん、いいえ魔王ミザリーの御主人様でもあるのですから」
カルミアの教会に在籍していたシスターは全員、後日ディザイアに力を奪われた。
力を失ったシスター達は、同時にカルミアで生きていく術まで失う。
教会が名ばかりの存在となり、その神聖な場所で元シスター達が身体を売って生活するようになるまで、そう時間はかからなかった……。
降伏の後に逃亡した領主の屋敷で、ミザリーは主であるディザイアを歓迎する。
「ディザイア様、言いつけの通り領主の屋敷を手に入れておきました」
「ご苦労、では早速この屋敷で商いを始めるとしよう」
「商い……ですか?」
不思議そうな顔をするミザリーに、ディザイアはどんな商いをするのか説明した。
「おまえやミゼッタのおかげで、様々な顔や体つきのエルフの娘を俺は創造が出来るようになった。 だからここをクローンエルフを使った高級娼館として利用し、今後の資金を稼ぐのさ」
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