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風呂場の異文化交流
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「まさかあの時の魔王が、図々しく人間として生まれ変わっていたとはな!?」
拳を握り構えを取ろうとするカイを、リアは手で制した。
「落ち着け小僧、わらわはお主と戦う為にこうして名乗った訳ではない」
構えを解こうとしたカイに向けて、勝ち誇った顔をしながらリアはこう告げる。
「元魔王が勇者を奴隷として連れ歩く、こんな愉快で滑稽なものは無かろう。 まあ精々わらわの為に額に汗を流して働くのじゃぞ、カイよ」
「お前、相変わらず性格悪いな!」
カイが大声をあげたので、外で控えていたアニスが部屋に飛び込む。
「リア様、大丈夫ですか!?」
「大丈夫よアニス。 どうやら彼、私の侍従奴隷となれる事に大変驚いたみたいなの。 お風呂場に案内しながら、緊張を解いてあげて」
「わ、分かりました、リア様」
悔しそうな顔をしているカイと、込み上げる笑いを抑えるのに必死なリア。
対照的な2人を見て、アニスは首を傾げた。
風呂場へと歩きながら、アニスとカイの間には少し気まずい空気が流れている。
主に対して声を荒げるような野蛮な男、アニスが抱いた第一印象は最悪だ。
何とか現在の状況を確かめようと、カイはアニスに質問した。
「なあ、あのリアってお
ゴンッ!
質問を始めた途端、カイの頭にアニスのゲンコツが飛んでくる。
思わぬ攻撃に、カイは頭を抑えた。
「痛ってぇ! 一体何をしやがる!?」
「無礼者! リーアベルトお嬢様を短くリアと呼べるのは、侍従長に旦那様と奥方様それと私だけです。 口を慎みなさい」
文句を言おうとしたがアニスの目が本気だったので、カイは黙るしかない。
すると今度はアニスが、カイを問い質す。
「それよりもあなた、リア様と面識が有るようですがどのような関係ですか?」
リアの前世を知らないであろうこの女性に、魔王だった事を話すのはまずい。
出来る限り当たり障りが無いように、カイは答えた。
「昔、何度か彼女と喧嘩をしたんだよ」
「喧嘩?」
リアを子供の頃から見てきたが、公の場で喧嘩している所を見たことが無い。
もしかしたらどこかで没落した貴族の嫡男かもしれないと、アニスはリアには内緒で彼の素性について調べてみようと考えるのだった。
風呂場に着いてカイが服を脱ごうとした時、隣でアニスも何故か服を脱ぎ始める!
下着姿に思わず見惚れそうになるが、カイは理性で何とか背を向ける事が出来た。
「きゅ、急に服を脱ぐとは何事ですか!?」
「いえ私も外で汗をかいていますから、お風呂に入ろうかと」
「今日初めて会った方と、お風呂に入って平気なんですか?」
「はあ? 風呂は、男女共同が当たり前じゃないですか」
アニスの返答に、カイは絶句した。
こちらの世界では、風呂は男女共同が当たり前らしい。
だが自分が居た世界は、男女別が当たり前。
カイは、先に自分だけ済ませることを選んだ。
「とりあえず自分が先に入浴を済ませておきますから、アニスさんは自分が出た後で1人でゆっくり湯に浸かってください」
そう言い残すと、カイは大急ぎで湯船に入ろうと浴場の戸を開ける。
ガラッ!
(!?)
浴場内では、他の侍従奴隷達が既に入浴していた。
間近で女性の裸を見てしまったカイは、鼻血を出してその場で失神したのである。
「ぷっあははは! 女の裸を見て気を失うって、あなた変じゃない!?」
事の経緯を聞いたリアが、自分のベッドの上で大笑いしている。
気絶しているカイの身体を洗い着替えさせるのは大変だった、とはアニスの弁だ。
当のカイは真っ赤な顔を隠すように、背を向けて床に座り込んでいた。
「あなたの身近な人で、一緒にお風呂に入る人は居なかったの?」
追い討ちをかけるべく更に質問をぶつけてみると、2人が持つ常識とは異なる答えが返ってくる。
「しょうがないだろ! 俺の昔住んでいた所じゃ家族以外の異性で裸を見せ合えるのは、愛し合っている者同士なんだよ」
愛し合っている者同士……カイのその言葉を聞いて、リアとアニスは急に全身から湯気が吹き出そうになった。
今まで当たり前にしてきたことが、とても恥ずかしい行為に思えてきたのだ。
好きでもない男性に自分の裸を見せていたのかと思うと、今すぐどこかに消えたい衝動に駆られてしまう。
特にアニスは、カイの目の前で下着姿まで晒している。
「ね、ねえアニス。 カイの現地での習慣を尊重して、これからは男女の入浴は別の時間にするのはどうかしら?」
「そ、それは良い考えですリア様! 異なる入浴の習慣が有る事も覚えられますし、大変素晴らしいことだと思います」
2人はすぐに侍従長の部屋を訪ねると、その日の内に屋敷内で働く者の入浴時間が男女別となった。
そしてこの習慣は口伝てで他の貴族にも伝わり、この世界でも入浴は男女別が当たり前となる。
さらには『一緒に風呂に入らないか?』が、新しいプロポーズの言葉として流行る結果を招くとはカイはもちろんリア達が知る由も無かった。
翌日、リアはカイとアニスを連れて再び街へ向かった。
カイが着る執事服を仕立てたり、家財道具を用意するためだ。
侍従奴隷が給金が出ない代わりに衣食住を保障されている事は既に説明済だが、住にはベッドやタンスなども含まれる。
奴隷契約が解除される際に、その与えられた衣類や家具が退職金となるのだ。
次の仕事が見つかるまで、売って生活していけるだけの品を先に与えておく。
雇い主の器を示すだけでなく、奴隷が無下に扱れていない事の証明でもある。
(奴隷市で売られていた人は、何故ボロ切れ1枚だったのか?)
こんな疑問を抱く方もいるかもしれない。
しかしこの場合出品主との間に奴隷契約は結ばれておらず、住所不定無職の人間が保護されている状態であり、最低限の食事さえ与えていれば問題は無かった。
つまり出品主に支払われるお金は、契約が結ばれるまでの間の食費に報酬を上乗せしたようなものである。
奴隷市で売れ残ってしまった者は、一体どうなるのか?
採算が取れないと判断されると、街の外へ容赦なく捨てられる。
何も持たない彼らは、飢えて死ぬか人を襲い食料を奪うしか生きる術がない。
奴隷にすらなれなかった者の成れの果て、それがこの世界の盗賊なのだ。
その盗賊の話を何故しているのかというと……。
「囲まれているわね」
「……そうですね」
「あ~めんどくせぇ」
リア達を乗せている馬車が、その盗賊30人ほどに囲まれていたからである。
拳を握り構えを取ろうとするカイを、リアは手で制した。
「落ち着け小僧、わらわはお主と戦う為にこうして名乗った訳ではない」
構えを解こうとしたカイに向けて、勝ち誇った顔をしながらリアはこう告げる。
「元魔王が勇者を奴隷として連れ歩く、こんな愉快で滑稽なものは無かろう。 まあ精々わらわの為に額に汗を流して働くのじゃぞ、カイよ」
「お前、相変わらず性格悪いな!」
カイが大声をあげたので、外で控えていたアニスが部屋に飛び込む。
「リア様、大丈夫ですか!?」
「大丈夫よアニス。 どうやら彼、私の侍従奴隷となれる事に大変驚いたみたいなの。 お風呂場に案内しながら、緊張を解いてあげて」
「わ、分かりました、リア様」
悔しそうな顔をしているカイと、込み上げる笑いを抑えるのに必死なリア。
対照的な2人を見て、アニスは首を傾げた。
風呂場へと歩きながら、アニスとカイの間には少し気まずい空気が流れている。
主に対して声を荒げるような野蛮な男、アニスが抱いた第一印象は最悪だ。
何とか現在の状況を確かめようと、カイはアニスに質問した。
「なあ、あのリアってお
ゴンッ!
質問を始めた途端、カイの頭にアニスのゲンコツが飛んでくる。
思わぬ攻撃に、カイは頭を抑えた。
「痛ってぇ! 一体何をしやがる!?」
「無礼者! リーアベルトお嬢様を短くリアと呼べるのは、侍従長に旦那様と奥方様それと私だけです。 口を慎みなさい」
文句を言おうとしたがアニスの目が本気だったので、カイは黙るしかない。
すると今度はアニスが、カイを問い質す。
「それよりもあなた、リア様と面識が有るようですがどのような関係ですか?」
リアの前世を知らないであろうこの女性に、魔王だった事を話すのはまずい。
出来る限り当たり障りが無いように、カイは答えた。
「昔、何度か彼女と喧嘩をしたんだよ」
「喧嘩?」
リアを子供の頃から見てきたが、公の場で喧嘩している所を見たことが無い。
もしかしたらどこかで没落した貴族の嫡男かもしれないと、アニスはリアには内緒で彼の素性について調べてみようと考えるのだった。
風呂場に着いてカイが服を脱ごうとした時、隣でアニスも何故か服を脱ぎ始める!
下着姿に思わず見惚れそうになるが、カイは理性で何とか背を向ける事が出来た。
「きゅ、急に服を脱ぐとは何事ですか!?」
「いえ私も外で汗をかいていますから、お風呂に入ろうかと」
「今日初めて会った方と、お風呂に入って平気なんですか?」
「はあ? 風呂は、男女共同が当たり前じゃないですか」
アニスの返答に、カイは絶句した。
こちらの世界では、風呂は男女共同が当たり前らしい。
だが自分が居た世界は、男女別が当たり前。
カイは、先に自分だけ済ませることを選んだ。
「とりあえず自分が先に入浴を済ませておきますから、アニスさんは自分が出た後で1人でゆっくり湯に浸かってください」
そう言い残すと、カイは大急ぎで湯船に入ろうと浴場の戸を開ける。
ガラッ!
(!?)
浴場内では、他の侍従奴隷達が既に入浴していた。
間近で女性の裸を見てしまったカイは、鼻血を出してその場で失神したのである。
「ぷっあははは! 女の裸を見て気を失うって、あなた変じゃない!?」
事の経緯を聞いたリアが、自分のベッドの上で大笑いしている。
気絶しているカイの身体を洗い着替えさせるのは大変だった、とはアニスの弁だ。
当のカイは真っ赤な顔を隠すように、背を向けて床に座り込んでいた。
「あなたの身近な人で、一緒にお風呂に入る人は居なかったの?」
追い討ちをかけるべく更に質問をぶつけてみると、2人が持つ常識とは異なる答えが返ってくる。
「しょうがないだろ! 俺の昔住んでいた所じゃ家族以外の異性で裸を見せ合えるのは、愛し合っている者同士なんだよ」
愛し合っている者同士……カイのその言葉を聞いて、リアとアニスは急に全身から湯気が吹き出そうになった。
今まで当たり前にしてきたことが、とても恥ずかしい行為に思えてきたのだ。
好きでもない男性に自分の裸を見せていたのかと思うと、今すぐどこかに消えたい衝動に駆られてしまう。
特にアニスは、カイの目の前で下着姿まで晒している。
「ね、ねえアニス。 カイの現地での習慣を尊重して、これからは男女の入浴は別の時間にするのはどうかしら?」
「そ、それは良い考えですリア様! 異なる入浴の習慣が有る事も覚えられますし、大変素晴らしいことだと思います」
2人はすぐに侍従長の部屋を訪ねると、その日の内に屋敷内で働く者の入浴時間が男女別となった。
そしてこの習慣は口伝てで他の貴族にも伝わり、この世界でも入浴は男女別が当たり前となる。
さらには『一緒に風呂に入らないか?』が、新しいプロポーズの言葉として流行る結果を招くとはカイはもちろんリア達が知る由も無かった。
翌日、リアはカイとアニスを連れて再び街へ向かった。
カイが着る執事服を仕立てたり、家財道具を用意するためだ。
侍従奴隷が給金が出ない代わりに衣食住を保障されている事は既に説明済だが、住にはベッドやタンスなども含まれる。
奴隷契約が解除される際に、その与えられた衣類や家具が退職金となるのだ。
次の仕事が見つかるまで、売って生活していけるだけの品を先に与えておく。
雇い主の器を示すだけでなく、奴隷が無下に扱れていない事の証明でもある。
(奴隷市で売られていた人は、何故ボロ切れ1枚だったのか?)
こんな疑問を抱く方もいるかもしれない。
しかしこの場合出品主との間に奴隷契約は結ばれておらず、住所不定無職の人間が保護されている状態であり、最低限の食事さえ与えていれば問題は無かった。
つまり出品主に支払われるお金は、契約が結ばれるまでの間の食費に報酬を上乗せしたようなものである。
奴隷市で売れ残ってしまった者は、一体どうなるのか?
採算が取れないと判断されると、街の外へ容赦なく捨てられる。
何も持たない彼らは、飢えて死ぬか人を襲い食料を奪うしか生きる術がない。
奴隷にすらなれなかった者の成れの果て、それがこの世界の盗賊なのだ。
その盗賊の話を何故しているのかというと……。
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