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カニを求める者達
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「お義兄ちゃん。 私、カニが食べたい」
「カニ?」
「そう、カニ……」
突然ウミが、カイにカニを食べたいとお願いし始めた。
この異世界は何でもアリだが、例外と呼べるものも中には存在する。
その1つとしてあげられるのが、カニだ。
イカや魚などの魚介類は豊富なのだが、何故かカニを見る事は無い。
王女として数年偽りの生活をしてきたウミでさえ、口にしていないのだ。
リアやアニスも、当然食べたことが無い。
「そうね。 私もカニを久しぶりに、お腹一杯食べてみたくなってきたわ」
そう言いながら口からよだれを垂らすリア、傍目から見て非常に行儀が悪い。
こんな彼女でも一応侯爵令嬢なんだから、世も末である。
「おいリア、口からよだれが出ているぞ」
「うるさいわね! だって前の世界も入れれば、百年以上カニを口にしていないのよ。 無性に食べたくなっても、不思議じゃないでしょ?」
「百年以上!? 確かにそれじゃあ、よだれを垂らしても怒ることは出来ないな」
ここでアニスが、根本的な問題に関わる質問をしてきた。
「あの~? ところで、カニって何ですか?」
「カニってのはね、こう2本の腕にハサミがあって甲羅があって……」
身振り手振りで説明するリア、するとアニスは両手の拳を握り気合いを入れる。
「わかりました! 私はこれでも神の力を持つ者。 カニの10匹や20匹、すぐにでも見つけてきましょう」
そう言うとカイ達の制止を振り切り、外に飛び出していった……。
「どうする? アレ」
「どうしようもないわよ、せめてスライムにならない物体である事を願うだけよ」
スラミンを横目で見ながら話すリア、ミルク粥からスライムを創り出すアニスの料理の腕前はいまだに健在である。
(実はスラミンがおふくろの転生した姿だと言っても、誰も信じないよな……)
先日スラミンことスミが、自身の母親の転生体だと知らされたカイ。
この衝撃の事実を、まだ誰にも打ち明けられずにいた。
さらに付け加えると母親の正体も、今居る世界を治めていた女神でイレイアとアニスの妹だというから話がややこしい。
考え事をしていると、ウミナがカイの頬を指で軽く突く。
「こら! カイ君、また仏頂面で考え事をしてる。 相談しづらい悩み事が有るなら、私が話し相手になってあげるわよ」
尻尾をパタパタと振りながらアピールするウミナ、リアやウミがそれを黙って見ている訳がない。
「カイ! 悩みが有るのなら、主である私に相談するのが筋よ。 今夜にでも、わ、私の部屋に来なさい。 私に出来ることなら、何でもしてあげるわ」
「リアちゃん、その役目は義妹であるわたしよ。 お義兄ちゃんの悩みは、家族の一員であるわたしが解決します。 兄と妹の絆は誰よりも、そして何よりも強いのよ」
睨み合いを始める3人を見て、カイは胃に小さな痛みを感じた。
仮にも元勇者が胃潰瘍でダウンなど、冗談では済まない。
彼は隠れてエリクサーを1本飲むと、会話に割って入るタイミングを探り始める。
すると……。
「リア様、お待たせしました! この通り、アニスは出来るメイドなのです」
ドヤ顔でカゴを突き出すアニス、中からカサカサと何かが動く音がした。
「そ、そう。 とりあえず、中を確認するわね」
恐る恐る、カゴの中を覗くリア。
しかし次の瞬間、中のいた1匹を掴むとアニスの顔に叩きつけた!
「これはカニじゃなくて、サソリじゃない! 私達を殺す気!?」
「ふぇ~ん、すいません。 次は、気付かれないように上手くやります」
あわよくばライバルを消そうとしていたのを、アニスは自分から白状してしまう。
この日、彼女は罰として晩飯抜きの刑が執行された……。
翌朝気を取り直したアニスは再び、カニを捕まえる準備を始める。
今度こそ失敗は許されない、そんな気合いで臨んでいるがそもそも失敗ばかりの彼女に期待する方が無理なのだ。
そして案の定、今日も漁の成果が顔に叩きつけられる。
だが顔に当たった瞬間、何やら鈍い音が部屋の中に響いた。
「これはザリガニ! しかも何よこの個体名、【ゴーレムザリガニ】って!? 食べられる奴を、せめて見つけてきなさい」
彼女はハサミがあるという理由だけで、石で出来た非生命体のザリガニをカニと勘違いして持ち帰っていたのである……。
「はぁ、どうして私ってこう失敗ばかりなのかしら? たまにはカイ様にも、私もやる時はやるって所を見せたいのに」
夜の砂浜で、体育座りをしながら落ち込むアニス。
すると波打ち際で、月明かりに白く反射する物体が目に入った。
(あれは一体なにかしら? 白くて、とても綺麗……)
立ち上がり近づくと、それは両腕にハサミと背中に甲羅を持つ真っ白なカニだった!
「こ、これよ、これこそ正真正銘のカニ。 リア様~! このアニスにもやっと、お役目を立派に果たせる日が来ました」
アニスは素早くカニを捕まえると、家に急いで戻る。
そして既に寝ていたリアやカイ達を叩き起こすと、捕まえたカニを皆の前で披露した。
「どうですか、皆さん! 私だって、やる時はやる女なのです」
「すごいわアニス。 こんな立派なカニ、よく見つけてきたわね」
「えへへ、それほどでも……あります♪」
リア達女性陣が褒め称える中、カイだけは苦虫を噛み潰したような顔を浮かべている。
「どうされましたか? ほら、カイ様も私を褒めてくださいよ~!」
満面の笑みを浮かべる彼女に申し訳なさそうに、彼はこう言うのだった。
「お前、持ってくる前にちゃんと鑑定したのか?」
『えっ!?』
ウミナがそのカニを鑑定してみると、恐るべき内容が書かれていたのである。
ホワイトスリップクラブ…………純白の外骨格を持つカニ、しかしその見た目とは裏腹に殻を含む全ての部位にタラスクさえ秒殺の猛毒を含む。
喰えば死ぬ、解毒方法は現時点では不明。
「………………」
たしかに異世界は何でもあるらしい、タラスクを秒殺する猛毒を持つ生き物も生息しているのだから……。
その後この白いカニは、カイ特製の25mプールで飼育されることとなった。
プール一杯に満たされたエリクサーの中で、ようやく解毒されたのはおよそ半月後。
苦労してやっと口にしたこのカニの味は、ところてんの味だったそうである。
「カニ?」
「そう、カニ……」
突然ウミが、カイにカニを食べたいとお願いし始めた。
この異世界は何でもアリだが、例外と呼べるものも中には存在する。
その1つとしてあげられるのが、カニだ。
イカや魚などの魚介類は豊富なのだが、何故かカニを見る事は無い。
王女として数年偽りの生活をしてきたウミでさえ、口にしていないのだ。
リアやアニスも、当然食べたことが無い。
「そうね。 私もカニを久しぶりに、お腹一杯食べてみたくなってきたわ」
そう言いながら口からよだれを垂らすリア、傍目から見て非常に行儀が悪い。
こんな彼女でも一応侯爵令嬢なんだから、世も末である。
「おいリア、口からよだれが出ているぞ」
「うるさいわね! だって前の世界も入れれば、百年以上カニを口にしていないのよ。 無性に食べたくなっても、不思議じゃないでしょ?」
「百年以上!? 確かにそれじゃあ、よだれを垂らしても怒ることは出来ないな」
ここでアニスが、根本的な問題に関わる質問をしてきた。
「あの~? ところで、カニって何ですか?」
「カニってのはね、こう2本の腕にハサミがあって甲羅があって……」
身振り手振りで説明するリア、するとアニスは両手の拳を握り気合いを入れる。
「わかりました! 私はこれでも神の力を持つ者。 カニの10匹や20匹、すぐにでも見つけてきましょう」
そう言うとカイ達の制止を振り切り、外に飛び出していった……。
「どうする? アレ」
「どうしようもないわよ、せめてスライムにならない物体である事を願うだけよ」
スラミンを横目で見ながら話すリア、ミルク粥からスライムを創り出すアニスの料理の腕前はいまだに健在である。
(実はスラミンがおふくろの転生した姿だと言っても、誰も信じないよな……)
先日スラミンことスミが、自身の母親の転生体だと知らされたカイ。
この衝撃の事実を、まだ誰にも打ち明けられずにいた。
さらに付け加えると母親の正体も、今居る世界を治めていた女神でイレイアとアニスの妹だというから話がややこしい。
考え事をしていると、ウミナがカイの頬を指で軽く突く。
「こら! カイ君、また仏頂面で考え事をしてる。 相談しづらい悩み事が有るなら、私が話し相手になってあげるわよ」
尻尾をパタパタと振りながらアピールするウミナ、リアやウミがそれを黙って見ている訳がない。
「カイ! 悩みが有るのなら、主である私に相談するのが筋よ。 今夜にでも、わ、私の部屋に来なさい。 私に出来ることなら、何でもしてあげるわ」
「リアちゃん、その役目は義妹であるわたしよ。 お義兄ちゃんの悩みは、家族の一員であるわたしが解決します。 兄と妹の絆は誰よりも、そして何よりも強いのよ」
睨み合いを始める3人を見て、カイは胃に小さな痛みを感じた。
仮にも元勇者が胃潰瘍でダウンなど、冗談では済まない。
彼は隠れてエリクサーを1本飲むと、会話に割って入るタイミングを探り始める。
すると……。
「リア様、お待たせしました! この通り、アニスは出来るメイドなのです」
ドヤ顔でカゴを突き出すアニス、中からカサカサと何かが動く音がした。
「そ、そう。 とりあえず、中を確認するわね」
恐る恐る、カゴの中を覗くリア。
しかし次の瞬間、中のいた1匹を掴むとアニスの顔に叩きつけた!
「これはカニじゃなくて、サソリじゃない! 私達を殺す気!?」
「ふぇ~ん、すいません。 次は、気付かれないように上手くやります」
あわよくばライバルを消そうとしていたのを、アニスは自分から白状してしまう。
この日、彼女は罰として晩飯抜きの刑が執行された……。
翌朝気を取り直したアニスは再び、カニを捕まえる準備を始める。
今度こそ失敗は許されない、そんな気合いで臨んでいるがそもそも失敗ばかりの彼女に期待する方が無理なのだ。
そして案の定、今日も漁の成果が顔に叩きつけられる。
だが顔に当たった瞬間、何やら鈍い音が部屋の中に響いた。
「これはザリガニ! しかも何よこの個体名、【ゴーレムザリガニ】って!? 食べられる奴を、せめて見つけてきなさい」
彼女はハサミがあるという理由だけで、石で出来た非生命体のザリガニをカニと勘違いして持ち帰っていたのである……。
「はぁ、どうして私ってこう失敗ばかりなのかしら? たまにはカイ様にも、私もやる時はやるって所を見せたいのに」
夜の砂浜で、体育座りをしながら落ち込むアニス。
すると波打ち際で、月明かりに白く反射する物体が目に入った。
(あれは一体なにかしら? 白くて、とても綺麗……)
立ち上がり近づくと、それは両腕にハサミと背中に甲羅を持つ真っ白なカニだった!
「こ、これよ、これこそ正真正銘のカニ。 リア様~! このアニスにもやっと、お役目を立派に果たせる日が来ました」
アニスは素早くカニを捕まえると、家に急いで戻る。
そして既に寝ていたリアやカイ達を叩き起こすと、捕まえたカニを皆の前で披露した。
「どうですか、皆さん! 私だって、やる時はやる女なのです」
「すごいわアニス。 こんな立派なカニ、よく見つけてきたわね」
「えへへ、それほどでも……あります♪」
リア達女性陣が褒め称える中、カイだけは苦虫を噛み潰したような顔を浮かべている。
「どうされましたか? ほら、カイ様も私を褒めてくださいよ~!」
満面の笑みを浮かべる彼女に申し訳なさそうに、彼はこう言うのだった。
「お前、持ってくる前にちゃんと鑑定したのか?」
『えっ!?』
ウミナがそのカニを鑑定してみると、恐るべき内容が書かれていたのである。
ホワイトスリップクラブ…………純白の外骨格を持つカニ、しかしその見た目とは裏腹に殻を含む全ての部位にタラスクさえ秒殺の猛毒を含む。
喰えば死ぬ、解毒方法は現時点では不明。
「………………」
たしかに異世界は何でもあるらしい、タラスクを秒殺する猛毒を持つ生き物も生息しているのだから……。
その後この白いカニは、カイ特製の25mプールで飼育されることとなった。
プール一杯に満たされたエリクサーの中で、ようやく解毒されたのはおよそ半月後。
苦労してやっと口にしたこのカニの味は、ところてんの味だったそうである。
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