とあるVRMMOにおける平凡じゃない日常

いけお

文字の大きさ
2 / 20

第1話 ようやく始められたのにあんまりだよ・・・。

しおりを挟む
俺、泉 聖亜(いずみ せいあ)は上司からお願いされた残業を断り急ぎ帰宅していた。その理由は、新作VRMMO【フリーファンタジーオンライン~自由の幻想~】の第2次募集に入る事が出来て、今日の18時からログイン可能となっているからだ。

【フリーファンタジーオンライン~自由の幻想~】は、昨今数多く誕生しているVRMMOの世界でも、つい半月程前にサービスが開始されたばかりのゲームだ。ただしこれまでの作品よりも更に現実味を持たせる為に5感に対する感度を上げ、特に痛覚を擬似的にだが再現した事でよりリアルに戦闘時の緊迫感を味わう事が出来るとあって、当初の募集人員を大幅に超え第1次の募集は開始から数秒で埋まってしまった。

そして大幅なサーバー増強を施して再度募集を掛ける事となったが、第1次募集が数秒で埋まった事で更に話題を呼び今回の第2次募集でも定員を3倍近くオーバーしていた。それでも俺は第2次募集に見事当選して今日を迎えていた。

夕飯はコンビニでサンドイッチを買って車の中で食べながら帰る。今晩はもしかすると徹夜になってしまうかもしれないから、一応朝食のパンも買っておいてある。アパートに着くと大急ぎでPCの電源を入れて無線式のVRヘッドセットを繋ぐ、仕組みはよく知らないが脳に特殊な電磁波を浴びせる事で5感を刺激する様だ。

【フリーファンタジーオンライン~自由の幻想~】はユーザー登録を行う際に医師の診断書を必要としている、痛覚を再現している為に5感に過敏に反応が出てしまう人の中ではショック死を起こす人が出る可能性も有る為だ。(仮想5感過敏症)と仮の命名をされているが発症原因や対処方法も不明の為、発症した場合には強制退会させる場合も有ると規約に明記されている。

俺の場合は医師の診断で兆候は見られなかった為に一安心したが、もしも実際にゲーム内で死者が出てしまった場合最悪サービス終了となる可能性も有るから当然の措置だと思う。

PCが立ち上がると早速床に敷いた敷き布団の上でヘッドセットを装着する。ベッドの上や椅子に座った状態でゲームすると、何かの拍子で転倒や転落した際にヘッドセットが故障してログアウト出来なくなる事故が年に数回起きている。最新のVRヘッドセットでは振動や衝撃を感知すると、強制ログアウトさせて事故を防ぐ機能が追加されている様だが、1台20万近くするそんな代物を買えるほど生活に余裕は無いから旧式で我慢するしかない。

布団の上で横になると、俺は興奮しながらゲームにログインを始める。時計を確認すると19時の少し手前だった。ゲーム内での1日は現実の時間にしておよそ2時間。徹夜して朝5時までやった場合、ゲーム内に5日間も滞在出来る計算だから初日は色んな武器を試したりしようと考えているので既にかなり興奮状態だ!

(ようこそ【フリーファンタジーオンライン~自由の幻想~】の世界へ)

お、女性のアナウンスが流れてきたぞ。

(この世界では現在5つのエリアが確認されております。まず旅の始まりの地であるフロンティア平原が在る中央のセントラル連邦、北に凍てつく大地の広がるノース自治領、東には緑が生い茂るイースタン諸島連合、西に荒れ果てた荒野が広がるウェスタン部族会議、そして・・・南には暗黒の雲に覆われたサウスアイランド魔王領が存在します)

(魔王領は過去に起きた争いの為に現在は他の種族の入国を制限しておりますが、現魔王がこれからの魔族の発展や共存を目指して鎖国状態を解除する意向を示していますので、近い将来入国出来る様になるかもしれません)

(まず始めにプレイするキャラクターの名前を決めてください)

名前か、これからこのゲームでプレイしていく上で重要だよな。あまりふざけた名前だとフレンドとなってくれる人も限られてくるし、本名でやるのは論外だ。まあ、無難に名前の頭文字を取って【イセア】と名付けるか。

(イセアでよろしいですか?)

はい と いいえ の選択肢が現れたので、はいを選択する。

(名前はイセアで決定しました、続きましてアバターを選択して下さい)

アバターは開始時に着ている服装だ、皮の鎧を着込んだりローブで体を覆ったりと選択肢は結構多い。外見は重装騎士の癖に実際には魔法使いだったりと意表を突いたプレイをして楽しむ人が居るのもこのゲームの特徴でもある。

アバター自体には、防御力の設定は無いが追加の効果を持つ物が今後追加されていくらしい。

俺はあまり目立つつもりも無いので、一般的な初心者の服を選択した。事前に調べた情報ではこの服を着ているとチュートリアルを協力してもらい易かったりするらしい。

(アバターは初心者の服でよろしいですか?)

再び、はい と いいえの選択肢が現れたので、はいを選択した。

(アバターは初心者の服となりました。以上であなたは無事この世界の住人となる事が出来ましたが、この世界の住人達などについての説明が有りますのでもう少しの間お付き合いください)

早く始めさせてくれ!?っとスキップしたい衝動に駆られるが、大事な事を聞き逃してBANされたりするのも嫌だから大人しく聞く事にした。

(この世界では、人族・獣人族・妖精族・龍人族・ドワーフ族・エルフ族・魔族と大きく分けて7つの種族が存在しています。ゲーム内においてあなたは自由に生活する事が可能ですが、犯罪行為等を行うとその種族の者達から追われる事になったり、最悪の場合敵対した種族と戦争状態に陥り全てのプレイヤーにも損害を与える事も有りますのでご注意下さい。全プレイヤーに対する迷惑行為を繰り返し行った場合や、運営に支障をきたすまでのNPCの殺傷行為等をした場合、アカウントの凍結またはアカウントの削除の措置を取らせて頂く事もございます)

(大変お待たせいたしました、ただいまよりプレイヤーネーム【イセア】をフロンティア平原の中央に有ります召喚神殿に転移いたします。方角を確認して頂きまして神殿から東の方向に進みますと【始まりの村】が在ります。尚、スキルや特技などの詳しい説明は試行錯誤する楽しみを奪い、プレイスタイルを狭める可能性が有るのでこの場ではご案内致しません。ご自身で試行錯誤して見つけて頂き望む力を手に入れてください。さあ神殿から外に出た時から、あなたは何もかもが自由です!あなただけの【自由の幻想】をお楽しみください)

(全てのプレイヤーが楽しめる様、皆様のご理解とご協力よろしくお願いいたします。 運営スタッフ一同)

目の前が闇に包まれると、次の瞬間白い光に覆われ俺は神殿の中に居た。

「召喚神殿へよくぞ参られました、イセアよ」

祭壇の中央に1人の神官が立っている。

「わたしは召喚神殿を管理している神官の1人アーウェン、この世界に渡ってきたばかりの人間を癒したりまた蘇生をしております。あなたはこの世界に来たばかりで武器を持っておりません、なのでわたしから短剣を授けますからそれを用いて【始まりの村】を目指してください。尚、白い線で囲まれている中はセーフティエリアとなっていますが、その外に出ますとモンスターから攻撃を受けますのでご注意ください」

俺はアーウェンから短剣を受け取ると神殿を出る、目の前には平原が広がり子犬並の大きさのウサギが飛び回っている。初級モンスターのラビットだ、頭の中に浮かぶ方位磁石で東の方向を確認すると、白い線を越えてこのゲームの輝かしい第1歩を踏み出した!!

ドスッ!!

突如、胸に衝撃が走り激痛が襲う!見ると胸に矢が突き刺さり視界が暗転する。意識が徐々に遠のく中でアナウンスが流れた。

(イセアはプレイヤーの攻撃を受け死亡しました、召喚神殿にて蘇生致します)

待ち望んでやっと手に入れた俺だけの【自由の幻想】は、初心者狩りのPKの歓迎から始まった・・・ようやく始められたのにあんまりだよ。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

(完結)姑が勝手に連れてきた第二夫人が身籠ったようですが、夫は恐らく……

泉花ゆき
恋愛
蘭珠(ランジュ)が名門である凌家の嫡男、涼珩(リャンハン)に嫁いで一年ほど経ったころ。 一向に後継ぎが出来ないことに業を煮やした夫の母親は、どこからか第二夫人として一人の女性を屋敷へ連れてくる。 やがてその女が「子が出来た」と告げると、姑も夫も大喜び。 蘭珠の実家が商いで傾いたことを口実に、彼女には離縁が言い渡される。 ……けれど、蘭珠は知っていた。 夫の涼珩が、「男女が同じ寝台で眠るだけで子ができる」と本気で信じているほど無知だということを。 どんなトラブルが待っているか分からないし、離縁は望むところ。 嫁ぐ時に用意した大量の持参金は、もちろん引き上げさせていただきます。 ※ゆるゆる設定です ※以前上げていた作の設定、展開を改稿しています

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

この離婚は契約違反です【一話完結】

鏑木 うりこ
恋愛
突然離婚を言い渡されたディーネは静かに消えるのでした。

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...