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第3話 GMによるお仕置き事件は、国会まで巻き込んだ。
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お仕置きの内容は全プレイヤーに告示されなかったが、間近で見たプレイヤーの一部が掲示板に投稿して翌日各局のワイドショーで大々的に報じられた。更に次の日にはその話題が国会にまで及んで、野党が人命尊重等を理由に与党の足を引っ張ろうと総理を追及する。
「総理、たかがゲームの中で悪質な行為を行った人間を何度も殺すのはお仕置きのレベルを超えていると思いますが、どうお考えですか?」
「あなたはたかがと仰いましたが、ご自身はそのゲームをされておりませんよね?悪質な行為を行ったプレイヤーは、たった90分の間に20人ものプレイヤーをPKの名の下に殺害しております。それだけの人数に苦痛を与え殺した責任をアカウントの停止等で済ませても構わないと言いたいのですか!?」
「しかし総理!一部情報によりますとこのお仕置きに関しましては死刑に変わる新たな刑罰として法務局が実験的に許可したとGMが発言していたそうですが、これは事実でしょうか?事実だとすれば、それはゲームの名を借りた人体実験ではありませんか!?」
「もう1度、お聞きします。あなたは人体実験と言いましたが、このプレイヤーはゲーム内で殺された20人の苦痛を実際に味わってみないと、自分がどれだけの事を起こしたのか理解出来なかったのではないでしょうか!?大勢の人に苦痛を与えて、自分はアカウントを凍結もしくは削除だけで許されるならばこのプレイヤーはその後も同じ行為を繰り返すでしょう。尚、このゲームのお仕置き担当として勤務されているGMは・・・・実際に死刑を執行している刑務官達の中からランダムで配置しております」
「では総理、このゲームは国家の主導で運営されているという事で間違いありませんね!?」
「厳密に言いますと、我が国だけでは有りません。現在、死刑を行っている国々で今後死刑を廃止する代わりにどの様な刑罰を取り入れるべきか検討する中で、仮想現実の世界で死を体感させる刑罰の効果を確かめる為に行っております。これはあなたももちろんですが、国民全体、世界全体で考えていかないとならない問題なのです!現実世界での1度の死と、仮想世界で殺害した人数と同じ回数の死の体験。どちらが凶悪犯罪に対する抑止力を発揮するのか、実際に調べてみなければ分からない事です!ちなみに先程の悪質プレイヤーはその後の調査で、他のMMOでも行っていたPK行為を一切しなくなったと報告が上がっております。実際に痛みを感じた事で、殺される恐怖を覚え反省したと見るべきではないでしょうか?」
「それこそが人体実験の証拠では無いのですか!?総理、あなたは人が死ぬところを見て楽しんでいる殺人鬼だ!」
「私がこの死の体験を一切する事無く許可を出したと思っているのですか?」
「それはどういう事ですか?」
「実際の証拠の映像を残してありますので、この場の皆様にも見て頂きましょう」
秘書達の手によってプロジェクターが用意され、スクリーンに総理が実際にVRヘッドセットを繋ぎ色々な死を体感している動画が、国会内だけでなくTVの生中継でも視聴者の目に入る。
「私はこのゲームの認可を出すにあたり、合計で15の死を体感しました。その上であなたに質問します。私と同様に15の死を体感する勇気をお持ちですか?意識が遠のいていく感覚、視界が深い闇に包まれていく感覚、口の中に鉄の味が広がる感覚など、さまざまな感覚を経て死に至る経験をしてきました。あなたもこの中の最低1つの死の経験をしてみてください。そしてもう1度考えてみてください、今後の死刑のあり方についてを・・・」
翌日の新聞各社の一面は、このゲーム一色となった。【殺人ゲーム】【署名運動を起こしてゲームの即時終了を実現させるべきだ!?】等々、否定的な内容ばかりだったが一部新聞内で掲載された一読者からの意見が注目を集めた。
『わたしは家族4人を犯人の身勝手な理由で殺されました、しかしその家族を失った苦しみや怒りを本当に理解してくれている政治家の方はどれだけ居るのでしょうか?犯人の命を奪うのが許されないのならば、殺されたわたしの家族の命の価値は犯人よりも低いのでしょうか?犯人にはたった1度の現実の死では無く、殺された家族と同じ回数の死の体験を与えて欲しいとわたしは願います。同じだけの苦痛を味わい、己が犯した罪と向き合って欲しい。そうして貰えるのならば、現実での死刑を廃止しても構わないと思っております。そして・・・今回の問題のゲームを認可する前に幾つもの死を体験された総理の行動を大変素晴らしいと感じました』
帰宅途中の車の中で聞いていたラジオでも、この意見が取り上げられ賛否両論となっていたが、実際にPKされて死んだ俺の側からすれば、あのお仕置きをやり過ぎだったとは思えなかった。与えられただけの苦痛と同じだけの罰が与えられなければ、到底水に流そうと思う事は出来なかっただろう。ここ数日の間、残業が続いてログインする事が出来なかったが久々に入ってみるとゲーム内に居る人の姿が明らかに減っていた。仮想現実での死の体験を恐れたユーザーがこぞって退会した為だ、軽い気持ちで始めたゲームが実は幾つもの国が関与した物だった事実も後押ししている。
それでも俺はこのゲームを続けていく決意を固めている。実際に痛みを感じる事の出来るこのゲームのお陰で命の大切さを再度学ぶ事が出来たからだ。翌日、運営からとある発表が有った。
(GMによるお仕置き事件の後、PK等の被害に一切遭わずに退会された方47319人。お仕置き事件でPKされた被害者20人の中で退会された方0人)
実際に被害に遭った人間と、被害を受けなかった人間の温度差を感じさせるこの発表をしばらくの間俺は忘れる事が出来なかった。
「総理、たかがゲームの中で悪質な行為を行った人間を何度も殺すのはお仕置きのレベルを超えていると思いますが、どうお考えですか?」
「あなたはたかがと仰いましたが、ご自身はそのゲームをされておりませんよね?悪質な行為を行ったプレイヤーは、たった90分の間に20人ものプレイヤーをPKの名の下に殺害しております。それだけの人数に苦痛を与え殺した責任をアカウントの停止等で済ませても構わないと言いたいのですか!?」
「しかし総理!一部情報によりますとこのお仕置きに関しましては死刑に変わる新たな刑罰として法務局が実験的に許可したとGMが発言していたそうですが、これは事実でしょうか?事実だとすれば、それはゲームの名を借りた人体実験ではありませんか!?」
「もう1度、お聞きします。あなたは人体実験と言いましたが、このプレイヤーはゲーム内で殺された20人の苦痛を実際に味わってみないと、自分がどれだけの事を起こしたのか理解出来なかったのではないでしょうか!?大勢の人に苦痛を与えて、自分はアカウントを凍結もしくは削除だけで許されるならばこのプレイヤーはその後も同じ行為を繰り返すでしょう。尚、このゲームのお仕置き担当として勤務されているGMは・・・・実際に死刑を執行している刑務官達の中からランダムで配置しております」
「では総理、このゲームは国家の主導で運営されているという事で間違いありませんね!?」
「厳密に言いますと、我が国だけでは有りません。現在、死刑を行っている国々で今後死刑を廃止する代わりにどの様な刑罰を取り入れるべきか検討する中で、仮想現実の世界で死を体感させる刑罰の効果を確かめる為に行っております。これはあなたももちろんですが、国民全体、世界全体で考えていかないとならない問題なのです!現実世界での1度の死と、仮想世界で殺害した人数と同じ回数の死の体験。どちらが凶悪犯罪に対する抑止力を発揮するのか、実際に調べてみなければ分からない事です!ちなみに先程の悪質プレイヤーはその後の調査で、他のMMOでも行っていたPK行為を一切しなくなったと報告が上がっております。実際に痛みを感じた事で、殺される恐怖を覚え反省したと見るべきではないでしょうか?」
「それこそが人体実験の証拠では無いのですか!?総理、あなたは人が死ぬところを見て楽しんでいる殺人鬼だ!」
「私がこの死の体験を一切する事無く許可を出したと思っているのですか?」
「それはどういう事ですか?」
「実際の証拠の映像を残してありますので、この場の皆様にも見て頂きましょう」
秘書達の手によってプロジェクターが用意され、スクリーンに総理が実際にVRヘッドセットを繋ぎ色々な死を体感している動画が、国会内だけでなくTVの生中継でも視聴者の目に入る。
「私はこのゲームの認可を出すにあたり、合計で15の死を体感しました。その上であなたに質問します。私と同様に15の死を体感する勇気をお持ちですか?意識が遠のいていく感覚、視界が深い闇に包まれていく感覚、口の中に鉄の味が広がる感覚など、さまざまな感覚を経て死に至る経験をしてきました。あなたもこの中の最低1つの死の経験をしてみてください。そしてもう1度考えてみてください、今後の死刑のあり方についてを・・・」
翌日の新聞各社の一面は、このゲーム一色となった。【殺人ゲーム】【署名運動を起こしてゲームの即時終了を実現させるべきだ!?】等々、否定的な内容ばかりだったが一部新聞内で掲載された一読者からの意見が注目を集めた。
『わたしは家族4人を犯人の身勝手な理由で殺されました、しかしその家族を失った苦しみや怒りを本当に理解してくれている政治家の方はどれだけ居るのでしょうか?犯人の命を奪うのが許されないのならば、殺されたわたしの家族の命の価値は犯人よりも低いのでしょうか?犯人にはたった1度の現実の死では無く、殺された家族と同じ回数の死の体験を与えて欲しいとわたしは願います。同じだけの苦痛を味わい、己が犯した罪と向き合って欲しい。そうして貰えるのならば、現実での死刑を廃止しても構わないと思っております。そして・・・今回の問題のゲームを認可する前に幾つもの死を体験された総理の行動を大変素晴らしいと感じました』
帰宅途中の車の中で聞いていたラジオでも、この意見が取り上げられ賛否両論となっていたが、実際にPKされて死んだ俺の側からすれば、あのお仕置きをやり過ぎだったとは思えなかった。与えられただけの苦痛と同じだけの罰が与えられなければ、到底水に流そうと思う事は出来なかっただろう。ここ数日の間、残業が続いてログインする事が出来なかったが久々に入ってみるとゲーム内に居る人の姿が明らかに減っていた。仮想現実での死の体験を恐れたユーザーがこぞって退会した為だ、軽い気持ちで始めたゲームが実は幾つもの国が関与した物だった事実も後押ししている。
それでも俺はこのゲームを続けていく決意を固めている。実際に痛みを感じる事の出来るこのゲームのお陰で命の大切さを再度学ぶ事が出来たからだ。翌日、運営からとある発表が有った。
(GMによるお仕置き事件の後、PK等の被害に一切遭わずに退会された方47319人。お仕置き事件でPKされた被害者20人の中で退会された方0人)
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