異世界に飛ばされたら守護霊として八百万の神々も何故か付いてきた。

いけお

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第37話 レミアとラメルの気になる関係

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「ちょっといいかな?ラメルさん」

「ラメルでいいよ、私も君のことは護と呼び捨てにさせてもらうから。それでいいだろ?」

「その方が気兼ね無く話せそうだし、異論は無いよ」

「ところで護、私に何か用かい?」

「ラメルと生前のレミアは知り合いだったのかい?」

少しだけラメルは考える素振りを見せたが、すぐに聞きたい事を話してくれた。

「私の父上とレミアの母親が兄妹だった、つまり私とレミアは従兄妹の関係になるんだ」

「へ~従兄妹だったのか、そうなると気になってくるのがラメルのお父さんとクトア陛下が知り合ったきっかけだよね」

俺に両親の馴れ初めを聞かれて、ラメルも自分の事の様に恥ずかしそうな顔をする。

「両親の出会いを説明するのって、結構恥ずかしいんだぞ!?まあ、あれだ。母上が火竜に謝罪を行った直後に傷も癒えぬまま闇竜様の下へ向かった。そして闇竜様に謝罪した後に一旦国に帰る途上、ツオレの村でとうとう倒れてしまうのだがその時に母上を介抱したのが私の父上だった訳だ」

「ツオレの村で知り合ったって訳か!?」

「そうだ、そして親身になって世話をする内にお互いに惹かれあい結ばれて私を宿した。しかし、魔族との交流も今ほど寛容的では無かったので父上は村の中で異端扱いされる様になり母上と共にキストに住む事となった」

「・・・」

「その後、私が産まれた後に村に残っていた父上の妹君も結婚して娘が誕生する。それがレミアという訳だ、母上が産まれたばかりの私をヤミ様に見せる為に再びツオレを訪れた際にはレミアはまだ産まれていなかった。そしてヤミ様からラメルの名を頂き国に戻ると、母上は政務が忙しくなり身動きが取れなくなる。それから数年後走り回れるまで成長していた私は社会勉強としてツオレを経由してヤミ様のお身体の調子を伺うお使いを頼まれては幼いレミアと楽しく遊んでから用事を済ませる生活を送る様になっていた」

「あれ!?そうなると、ヤミはラメルからレミアの事は聞かされてなかったの?」

「うん、聞いてないよ。きっとラメルにとってはレミアが初恋の人で私に知られたくなかったんじゃないかな?」

「わわわ!ヤミ様、そんなにはっきりと言わないで下さい!?」

ラメルがレミアの方を見ながら、顔を赤くして慌てている。

「そうです、私はレミアと会う為に毎年の様にヤミ様の様子を伺いに行くと理由を付けてはツオレを訪れていました。しかし、100年以上前のある年を最後に今まで足繁く通っていたツオレの村とヤミ様の下を訪れなくなりました」

「それが・・・レミアが死んだ年って事か?」

『!?』

「はい、その年の春に私の下へレミアから1通の手紙が届きました。シスターとなって村に少しでも恩返しをしたいから夏頃に大きな街へ礼拝しに行こうと思うと」

しかし、レミアは村へ戻る事は出来なかった・・・。

「レミアが心配だった私は夏になりツオレの村を訪れると、村中が悲しみに包まれていた。数日前に村の為に礼拝に向かおうとしたレミアが村を出た直後に倒れそのまま帰らぬ人となったのだと・・・栄養失調だったそうだ」

『うそ・・・!?』

「お前は覚えていないのかもしれないが、その年は穀物が不作でお前は礼拝に行く為の費用として貯めていたお金で小麦の種を買い畑に撒いて村を少しでも救おうとした。お陰で費用が足りなくなり、食事を切り詰めて生活した結果栄養失調に陥ったんだ」

『それじゃあ・・・私は道に迷って餓死したと今まで思い込んでいただけだったの!?』

「皮肉にも、お前の撒いた小麦のお陰でその年は村で飢えて死ぬ者は出なかった。そして村の者達はお前の事を村を飢餓から救ってくれた【聖女】として祀り今まで大切に墓を守ってきたんだ」

『私は【聖女】なんかじゃない!?餓死したと思い込み、何の罪の無い人達を迷わせ食料を尽かせて殺しその魂を喰らってきた怪という化け物なのよ!』

「お前が化け物の訳無いだろ!村の為に何か出来る事をしようと願いシスターを夢見て楽しそうに話してくるお前が、私は好きだった。そのお前が例えどんな姿になっていようと、私にとってはかけがえの無い従兄妹であり初めて恋した女性レミアなんだよ」

『それじゃあ私の願いも言えば聞いてもらえるのかしら?』

「ああ、何でも言ってくれて構わない」

『私を殺して』

「「レミア!?」」

俺とラメルは同時に大きな声をあげていた。

『護、大事な事をすっかり忘れていたわ。私は無関係の人を大勢殺して魂を糧に生きてきた、その罪は償わないとならないのよ』

「レミア、君は私に人殺しになれと言うのか!?」

『違うわ、あなたには私の罪を償うお手伝いを頼んでいるだけ。人として扱ってくれるのなら、人として死なせて欲しいの』

「レミア、ちょっとこちらを向いてくれる?」

それまで黙っていたトリーがレミアに話しかけてきた、レミアがトリーの方を向いた次の瞬間

パーン! トリーがレミアの頬を平手打ちしていた。

『え!?』

「あなた、わたくしに言ったわよね。村の為に出来る別の道を探すって、そして見つけた時にはロレッツで最後の祈りをしたいと」

『はい、言いました』

「交わした約束を短い時間で簡単に裏切る事の出来るあなたは確かに人間じゃないわ、怪という化け物よ」

『ひどい!私だって人のままで居たかった、だけどもうこんな姿で人だと名乗れる訳無いじゃないですか!?』

「話し中の所悪いけど、口を挟ませてもらっていいかな?」

俺はレミアのこちらの世界の常識で固められた頭を砕く事にした。

「レミアはこれまでの罪を償いたいんだよな?」

『ええ、そうよ』

「怪としてではなく、人間として罪を償いたいと?」

『何が言いたい訳?』

「怪として積み重ねてきた罪を、人として償うのは駄目だろ?お前は怪として償うべきだ」

『「「はい!?」」』

レミアだけじゃなく、トリーとラメルまで信じられない様な顔で俺を見た。

「俺からレミアに提案なんだけどさ、この間のクロの母親の様に本来なら救える筈の怪も大勢居る筈だ。だから、レミアはこれまでの罪を他の怪の命を助ける事で償っていくのはどうだろうか?」

『それはちょっと・・・ねえ?』

「これまで例の無い話ですし・・・」

「怪が怪を助けたって話は聞いた事も無いですよ!?」

「じゃあ、それを行えばレミアは誰もしようとしてこなかった事を成し遂げた功績を作り出せるじゃないか!俺が言いたいのは、レミアには怪でも人間でも無く怪を司る神様になる事を提案したい!!」

『「「怪を司る神様になるだって!?」」』

「俺の居た世界の考え方では、天照達八百万の神々はありとあらゆる物を司る神の集まりなんだよ。全ての物に神が宿ると信じられてきているから、怪が神様になったって別に不思議は無いんだ」

3人は口を開いたまま、思考が停止している。ヤミを見てみると面白そうに俺を眺めていた。

「レミア、お前の様に迷い彷徨う怪を見つけて教え導いていく神となる事でこれまでの罪を償うといい。俺は甘い罰を与えているつもりは無いぞ。神となる以上は永い年月を生きていく事になる、償っていく時間は無限に近い。何人もの命を奪ったと言うんだから、これくらいの罰でないと意味が無いんじゃないのか?」

『ちょっと答えは保留でも良いですか?発想が予想を上回るので、すぐに決められません。どの罪の償い方が最も良いのか考える時間をください』

「この場で決めろとは言わないから大丈夫だよ、時間も一杯有るしね。まずは生まれ故郷のツオレの景色を見ながら考えてみるといいよ」

『そうします』

レミアは急に神様になれと言われて混乱したのか、ラメルに殺してとお願いした事も忘れてその場から離れる。

「なんだか、問題を先延ばしにしただけの様な気もしますが」

「うん、その通りだよ」

「どうして、あんな事を言ったのですか!?」

「村の為に出来る事を色々と考えられるなら、自分の罪の償い方だって死ぬ以外の方法を考えたっていいじゃないか。レミアが怪の神様になれば、正直に言ってスパウダの連中よりも人格的にも素晴らしい神になれると思うぞ」

(確かにそうかもしれない・・・)

トリーとラメルは同じ事を思っていた。

「とりあえずは、ああやってラメルに殺してと頼んだ事さえ忘れさせれば十分だ。これから俺達もじっくりと考えていけば良い」

未だに納得しきれていないトリーとラメルを連れて、ツオレの村を目指す事にした。だが、この時実は俺は内心で別の事を心配していた。

(つい神様になれと言ってしまったけど、神様の中には複数の物を司る者も大勢居る。レミアが怪だけでなくこちらの世界のイギリス料理を司る神様にだけはならない事を心から祈りたい)
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