異世界に飛ばされたら守護霊として八百万の神々も何故か付いてきた。

いけお

文字の大きさ
71 / 87

第66話 世界の外から見ている者

しおりを挟む
「はははははっ!見ろよ、あいつ発情すると竜の鱗さえ素手で引き裂ける様になっているぞ」

『お戯れを、彼と最初に話す時は私も上手く騙せるか凄く心配だったのですよ」

「けど、お前も内心じゃ腹を抱えて笑いそうだったんじゃないのか?」

『それはまあ、そうですけど。付いてきている神達も元の箱庭に戻る為の方法を何度も試そうとしませんし、お人好しばかりなのか間抜け揃いなのかと呆れちゃいましたよ』

「しかし、彼らのお陰でこの箱庭もつまらない世界にならずに済みそうだ。最初から作り直すのも面倒だからな」

『この箱庭の神族達も自分達が創られた存在だとは全く気付いていませんし、だから己が最も優れた種族だと勘違いしているのでしょうね』

「最も優れた種族は、この箱庭の数々を創り出した我々創作者(メイカー)だ。だが我々も今や残るは俺とお前だけ、この箱庭の管理を託すに値する者が現れない限りいずれ全ての箱庭は崩壊するだろうな」

『ありとあらゆる物に神が宿る教えをわざと広めてあげたのに、箱庭を司る神だけは結局現れませんでした。最後の試しとして別の箱庭の者達と交わらせてみる事にしましたが、もしかすると彼は我々の想像を上回ってくれるかもしれませんよ』

それまで時折笑いながら話していた男は急に笑うのを止め、真剣な顔で神守 護を観察する。

「ぜひそうあって欲しいものだ、箱庭の管理をするという事は己の気分次第で世界その物を壊して最初から創り直す事も可能となる。神守 護が創作者の新たな仲間になれるのか、もう少し見ていようか陰?」

『ええ、陽。けれど、もしなれなかった場合は?』

「なれなかった場合は・・・全ての箱庭を結合させ管理を放棄する。我々の存在が消えた後の事まで面倒は見きれないよ」





世界の外でそんな会話がされている事など知る筈の無い、護と天照達はランベリーとの国境まで後数日の所まで近付いていた。

「後もう少しでようやくランベリーか、クロ大変だけど頑張ってくれよ」

「ダイジョウブ、マモルパパ。オレ、ケッコウチカラツイタ。アトハ、ナニカキッカケガアレバ、マタセイチョウデキル」

「クロ、更に大きくなるのか?」

「ワカラナイ、スガタモカワルノカ、ヨソウデキナイ」

(クロがこれ以上大きくなったら、家の中を動き回るのも難しくなりそうだな。もしも大きくなったら家を建て直すか)

護がそんな事を考えていると、天照が先に忠告を言ってきた。

「護、クロがもしも大きくなったら家を建て直そうか考えているようですけど今度からは私達の意見も入れて貰いますから1人で勝手に作らないでくださいね」

「うっ!?何で俺の考えが分かるかな」

「どれだけ傍に居ると思っているのですか、いい加減顔を見るだけで大体予想が付きます」

「じゃあ、今の俺が何を考えているかも分かるって事だよな?」

「ちょっと!私何も悪い事言ってないのに何でお仕置きになるんですか!?みんな、護を止めてください!」

天照は理不尽な護のお仕置きから身を守ろうと助けを求めるが、他の妻達が即答で

「ごめん、無理」

と拒否するので、そのまま寝室に連れて行かれた・・・。

「それにしても・・・レミアがあそこまで強化されるとは思いませんでしたね」

「そうだね、タケミカヅチとラメルが野獣化を護から教わり始めたのも恐ろしかったけどその2人から逆に力を搾り取り始めたレミアは本当にサキュバスそのものだと思った」

「護さんとレミアさん、どちらが強いのでしょうか?」

チィが興味本位でそんな質問をしてみたが、ヤミに注意される。

「ダメだよチィ、それって2人でW不倫するって事何だから!」

スパウダとの戦いが迫ってきているにも関わらず、護達は今日も平和そのものである。






「なあ陰、あのレミアって娘だけど本来は怪のまま死ぬ筈だったよな?」

『確かそうでした、彼に出会った事で死んだ後にラメルの子として転生する運命から外れてしまってますね』

「本来、ラメルと結ばれる筈だった娘はどうなっている?」

『これは・・・残念ながら既に死んでしまった様です、ポロフの村に住んでいたのですが住人が皆殺しに遭っています』

「それは済まない事をした、せめてもの詫びでレミアの代わりにラメルの子として転生させてあげるとしよう」

『本来、夫となる筈の男の子として産まれるのが幸せかどうか分かりませんがそうしておきますね』

陽はしばらくの間、レミアを眺めていたが急に何か思い付いた様に陰に相談し始める。

「あのレミアって娘と神守 護を試しに結ばせてみるのはどうだろうか?」

『確かに面白そうですが、それをするなら箱庭を結合させた後の方が効果的だと思います。もしかしたら、2人の子が我々が居なくなった後にこの場所まで辿り着くかもしれません』

「それよりも先に、2人でここまで来てくれた方が助かるのだがな」

『2人は既に別の相手と結ばれております、両方の相手がその場合障害になりますね』

「それなら、箱庭を結合させる前に事故を装って幾らでも離れさせる事が出来る。もしくは退場してもらう事もね」

箱庭を管理出来る同類を生み出す事に執着するあまり、多くの運命を逆に弄んでいる事に2人は気付いていない。

『そろそろ、また神守 護にとって都合の良い展開が起こる頃合ですね」

「ああ、あの犬の怪が更に成長する。悦んでくれると良いのだが・・・」
しおりを挟む
感想 97

あなたにおすすめの小説

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...